SeekDBは、エージェントの「記憶・検索・状態」を丸ごと引き受けるために設計された、AIネイティブな検索データベースです。AIエージェントを作ると、必ず突き当たる地味な問題があります。エージェントが「さっき観測したこと」を書き込んで、その直後に「関連する記憶」を引き出す——この“書いては読む”を高頻度で繰り返す用途に、既存のデータベースは意外と向いていません。ベクトルDBは検索は得意でも継続書き込みで詰まり、全文検索エンジンは意味検索が弱く、RDBはそもそもベクトルを扱えない。結果、複数のストアを貼り合わせて運用する羽目になります。
SeekDB(oceanbase/seekdb・GitHubスター2,830・Apache-2.0)は、この“貼り合わせ”を1つのエンジンに畳み込みます。ベクトル・全文・構造化・半構造化を単一のデータベースに統合し、しかもMySQL互換で扱える。開発元は、Alipayなどで本番稼働する分散DB OceanBase(Ant Group系)のチームです。まずは、公式の30秒デモから。手元にpip installして、エージェントの記憶を書き込み→意味検索する様子が一目で分かります。
upsert で書き込み、直後に query で意味検索して関連記憶を引く(出典: oceanbase/seekdb README)。「ダークモードを好む」を"ui preferences?"で引けている。※デモは埋め込み(in-process)モードで、これはLinux専用。Mac/Windowsは後述のDocker接続で同じことができる。- ・課題:エージェントは「書いた記憶を直後に検索」「試行を安全に分岐」「意味+条件で一括検索」をやりたいが、ベクトルDB/全文検索/RDBを貼り合わせると運用が破綻する。
- ・解決:SeekDBはvector+全文+構造化を単一エンジンに統合。MySQL互換・フルACIDで、書込→即検索・COWフォーク・単一SQLハイブリッド検索を1つのDBで完結させる。
- ・数字(自社ベンチ):VectorDBBench で 1,523 QPS(Milvus比10.7倍)・同時P99 21.7ms。ただし開発元の測定値(再現手順は公開)。
- ・LEANNとの違い:LEANN=個人PCのローカル索引、SeekDB=エージェントの状態ストア(サーバー)。レイヤーが別で住み分ける。
RAGそのものの全体像(仕組み・構築・ベクトルDB選定)は RAGとは?仕組み・構築・ベクトルDB選定までの2026年実装マップ にまとめています。本記事はその中でも「エージェントのバックエンドDBをどう選ぶか」という一角を、SeekDBを実際にDockerで立てて深掘りする位置づけです。
SeekDBとは — エージェントの状態を丸ごと持つAIネイティブ検索データベース
SeekDBを一言で言えば、「Write. Search. Fork.(書く・検索する・分岐する)」を1つで担うエージェント用のデータベースです。読者がまず知りたい「①結局これで何ができるのか」から答えると、SeekDBは次の4つを同じSQLエンジン・同じMySQL接続の上で提供します。
・書く(Write):エージェントの観測・会話・中間結果を継続的に書き込む。埋め込み(ベクトル化)はSeekDB側で自動生成できる
・検索する(Search):意味の近さ(ベクトル)・キーワード一致(全文)・属性フィルタ(構造化)を、1つのSQL文で同時に効かせる
・分岐する(Fork):データベース全体を数秒でスナップショット(COW)し、エージェントに“安全な砂場”で試させ、良ければ本体にマージ、ダメなら破棄する
・混ぜる(Multi-model):ベクトル・テキスト・数値・JSONを別々のストアに散らさず、1つのテーブルに同居させる
次に「②何を解決するのか」。従来、エージェントの記憶層を作ろうとすると、ベクトルDB(意味検索)+全文検索エンジン(キーワード)+RDB(メタデータ・トランザクション)を並べ、アプリ側で結果をマージする“N+1”のグルーコードが必要でした。SeekDBは、この3つを単一エンジンのSQLに畳み込むことで、グルーコードとデータ同期の悩みを消します。しかも土台は成熟したSQLエンジンなので、WHERE・JOIN・トランザクションといったRDBの当たり前がそのまま使えます。
SeekDBが名乗る「AI-Native Search Database」は、ベクトル検索を後付けした既存DBではなく、エージェントのワークロード(継続書込+即時検索+分岐)を前提に設計されたDBという意味です。開発元は、Alipay・Taobao・DiDi・Xiaomi 等で本番稼働する分散データベース OceanBase のチーム(Ant Group系)。ただし後述するように、大手での実戦実績は“母体のOceanBase”の話で、seekdb 自体は2025年10月に生まれた新しい派生プロダクトである点は区別して読んでください。
そして「③何を代替できるのか」。SeekDBが置き換え候補にするのは、「エージェント用にベクトルDB+全文検索+RDBを個別に立てて貼り合わせていた構成」です。単一DBに寄せることで、インフラ点数・データ同期・障害点を減らせます。逆に、後述するように「個人のノートPCで自分のファイルを検索したい」用途は守備範囲外で、そこはLEANNのような別レイヤーのツールが向きます。
なぜエージェントに専用のAIネイティブDBが必要か — 「書いた直後に検索」の難しさ
この記事の技術的な核が、この「書いた直後に検索できるをどう成立させるか」です。エージェントのループは、観測を書き込み、数ミリ秒後に関連文脈を読み出し、行動し、また書く——という「継続書込+直後読み出し」の連続です。ここで並のベクトルDBが詰まるのは、書き込みのたびにベクトル索引(HNSW等)を再構築する処理が、読み書きの経路と競合してP99レイテンシが跳ねるからです。書いている最中は検索が遅くなり、検索している最中は書き込みが待たされる。
SeekDBの回答は、書き込みの経路と索引構築の経路を分離することです。READMEはこれを「async index pipeline(Change Stream)」と「two-level HNSW(incremental+snapshot)」と表現します。書き込み(DML)はトランザクションをコミットしてすぐ返り、索引構築を待ちません。裏で Change Stream が redo ログを非同期に消費して差分(delta)HNSW を更新し、検索は「差分HNSW」と「スナップショットHNSW」の両方を細粒度ロックで読む。これが「同時実行でもP99が跳ねにくい」設計の骨子です。
重要なのは、この設計が「書いた瞬間に何もかも即反映」を意味しないことです。編集部の実測(後述)でも、データ自体はコミット直後に永続する一方、ベクトルの近似検索(ANN)が効くまでには単一ノード構成で約0.3秒の非同期ラグがありました。これは欠陥ではなく、「書き込みを速く返すために索引を非同期にした」設計の裏返しです。ミリ秒で読めることと、ANN反映に短い遅延があること——この両方を正しく理解しておくと、エージェントのループ設計で「書いた直後に厳密一致で引くならget、意味検索なら一呼吸置く」といった使い分けができます。
upsert"] --> B["TX Commit
即座に返る"] B --> C["count / get(id)
即反映(厳密一致)"] B -.->|"Change Stream
非同期 約0.3s"| D["Delta HNSW
差分索引を更新"] D --> E["意味検索 query
Delta+Snapshotを両読み"] E --> F["関連文脈を返す"] F --> A
SeekDBの4つの武器 — ストリーミング書込・COWフォーク・単一SQLハイブリッド検索・MySQL互換
SeekDBの価値は、個別機能の寄せ集めではなく、エージェントの1ループに必要なものが1つのDBに揃っている点にあります。READMEが掲げる4つの武器を、読者の「何ができる/何を代替する」に引き付けて整理します。
武器1:ストリーミング書込+同時検索(P99が跳ねにくい)。 前章の非同期索引パイプラインの成果です。書き込みが索引構築でブロックされないため、「毎ミリ秒書きながら、同時に検索する」というエージェント特有の負荷でレイテンシが安定します。公式ベンチでは、同時実行でP99が直列時の1.1倍にしか増えない(MilvusやElasticsearchは同条件で約10倍に膨らむ)と報告されています。
武器2:コピーオンライト(COW)のサンドボックス。 これがSeekDBの一番の個性です。FORK DATABASEでデータベース全体をデータコピーなしで数秒スナップショットし、エージェントに“壊してもいい砂場”を渡せます。試行が成功したらMERGE TABLEで本体に取り込み(THEIRS/OURS/FAILの戦略を選べる)、失敗したらDROP DATABASEで丸ごと捨てる。アプリ層でのsave/restoreではなく、カーネルレベルのCOWなので軽い。「エージェントに自由に探索させたいが、本番データは汚したくない」という要求に、DBの機能そのもので応えます。
武器3:単一SQLのハイブリッド検索。 ベクトル類似度・全文一致(MATCH ... AGAINST)・スカラー条件(WHERE author_id = 42)を、1つの実行プランに押し込みます。アプリ側で「ベクトル検索の結果と全文検索の結果をマージする」N+1のグルーコードが要りません。意味で近く、かつ特定の著者・期間に限定した文書を、1クエリで取れます。
武器4:MySQL互換・フルACID・埋め込み可能。 成熟したOceanBaseのSQLエンジン上に構築され、MySQLプロトコルとエコシステム(ドライバ・SQLAlchemy・各種ツール)がそのまま使えます。動作形態は、アプリに組み込む埋め込みライブラリ・単一ノードサーバー・OceanBase分散クラスタの3段階。小さく始めて分散まで、コードを大きく変えずにスケールできる設計です。
これら4つの武器は、READMEが挙げる代表ユースケースにそのまま対応します。中心はエージェント基盤(メモリ・サンドボックス・状態管理)で、ほかにRAG・ナレッジ検索(vector+全文+スカラーを多段アクセス制御付きで)、セマンティック検索(テキスト・画像などマルチモーダル)、AI支援コーディング(意味的コード検索・マルチプロジェクト分離・タイムトラベルクエリ)、オンデバイス/エッジAI(埋め込み・マイクロサーバー形態)まで守備範囲に入っています。SQLだけでなく、Python SDK側にもcollection.hybrid_search(query=..., knn=..., rank=...)という専用メソッドが用意されており、全文(query)とベクトル(knn)の結果をランク融合(rank)で束ねられます。編集部がpyseekdbのAPIを確認したところ、コレクションはupsert/query/getのほか、このhybrid_searchと、前述のCOWを担うforkをメソッドとして直接持っていました——SQLを書かなくても、Pythonからハイブリッド検索と分岐に手が届きます。
「Milvusの10.7倍」「Elasticsearchの3.2倍」という数字は強烈ですが、SeekDB自身が測定した値です。再現リポジトリ(vdb-streambench)が公開されているのは誠実ですが、ワークロード・チューニング・ハード構成で結果は大きく動きます。当サイトとしては、これを中立の事実として断定せず、「継続書込+同時検索というエージェント型の負荷で強みを主張する設計」という文脈で受け取ることを勧めます。速度の優劣より、後述の「単一DBでハイブリッド検索とCOW分岐まで完結する」という機能面の代替価値の方が、多くの読者には効きます。
実際にDockerで立てて動かした — 書込から意味検索・COWフォークまで(編集部実測)
当サイトの差別化は「README和訳」ではなく「実際に立てて動かす」ことです。SeekDBをApple SiliconのMacで、Docker版のサーバーを起動して、エージェントの記憶パターン(書込→直後に意味検索)と、目玉のCOWフォークまで実測しました。数字はすべて手元の計測で、加工していません。
oceanbase/seekdb:latest(arm64)をDockerで起動し、pyseekdb 1.1.0.post2 で実機実行した測定値(2026-07-19・macOS 14.5)。すべて手元の計測。まず、つまずいた点を正直に。 公式が推す最も手軽な導入はpip install -U pyseekdbですが、SDKの埋め込み(in-process)モードはLinux専用でした。macOSでpyseekdb.Client(path=...)を叩くと、pylibseekdb is not available. Please install pylibseekdb (Linux only) or use RemoteServerClient (host/port) instead.というエラーで止まります。つまりMacではpip installだけでは完結せず、Docker(またはHomebrew)でサーバーを立て、host/portで接続する必要があります。ここは公式READMEの「30-Second Try」からは読み取りにくい落とし穴なので、Macユーザーは最初からDocker版を選ぶのが早いです。
Docker版は素直に立ち上がりました。 docker run -d -p 2881:2881 -p 2886:2886 oceanbase/seekdb:latestで、イメージ取得後、コンテナ内で「Initialization complete.」までおよそ2分。その後はrootユーザー・パスワードなし・ポート2881で接続できました。サーバーは自身を5.7.25-OceanBase seekdb-v1.3.0.0と名乗り、MySQL 5.7互換プロトコルであることが確認できます。
測った結果を、エージェントの1ループに沿って並べます。
・書き込み(upsert 3件・内部で自動embedding):約250ms。埋め込みモデルのロードが済んだ2回目以降のコレクション生成は0.06秒と軽い(初回はデフォルト埋め込みモデルのDL/ロードで約50秒かかる点は注意)
・永続の即時性:upsert直後にcount()は3を返し、get(id)(厳密一致)も即座にヒット。データ自体はコミット直後に永続している
・書込→意味検索が効くまで:書いた瞬間(t+0)のANNクエリは0件。約0.3秒後に2件ヒット。これが前章の「非同期索引パイプライン」の実挙動
・意味検索(warm・1クエリ):約22ms。「UIの好みは?」に対し「ユーザーはダークモードを好む」が距離0.41で最上位——意味ベースの検索が妥当に効いている
・COWフォーク:col.fork('episodic_sandbox')が約433msで完了。フォーク直後のsandboxは本体と同じ3件。sandboxに1件追記するとsandbox=4件/本体=3件(本体は不変)。COWの隔離がその場で確認できた
書き込み直後に厳密一致で引くなら
get(id) が即反映で確実。意味検索を掛けるなら、非同期索引のために一呼吸(数百ミリ秒)置くと取りこぼしません。エージェントのループでは「直前に書いたものはgetで確実に読み、少し前の記憶は意味検索で広く拾う」と設計すると、非同期ラグに振り回されずに済みます。検証環境:macOS 14.5(Apple Silicon arm64)/Docker
oceanbase/seekdb:latest(arm64イメージ)/pyseekdb 1.1.0.post2/サーバー seekdb-v1.3.0.0/単一ノード・デフォルト構成/検証日 2026-07-19。数値は手元の計測。エージェントのメモリを実装するコードは、驚くほど短く済みます。コレクションにupsertで書き、queryで意味検索する——ChromaライクなAPIなので、既存のRAG実装からの移行も軽いです。以下は、実際に動かしたエージェント記憶パターンの最小形です(サーバー接続版)。
import pyseekdb
# Docker/Homebrew で立てたサーバーに接続(Macは embedded 不可)
client = pyseekdb.Client(host="127.0.0.1", port=2881,
user="root", password="", database="test")
memory = client.get_or_create_collection(name="episodic")
# 観測を書き込む(埋め込みは SeekDB 側で自動生成)
memory.upsert(ids=["1","2","3"], documents=[
"ユーザーはダークモードを好む",
"ユーザーは英語と日本語を話す",
"ユーザーのタイムゾーンはUTC+9",
])
# 直後に意味検索(documents/distances を include で受け取る)
hits = memory.query(query_texts="UIの好みは?", n_results=2,
include=["documents", "distances"])
# → 「ユーザーはダークモードを好む」が距離0.41で最上位
LEANNと何が違うのか — 個人ローカル索引 vs エージェントの状態ストア
ここは、直前に公開したLEANN徹底解説|埋め込みを保存しないローカルRAGで最大97%省ストレージ|仕組み・使い方・実測と必ず区別して読んでほしいセクションです。どちらも「ローカルで動くRAG系OSS」ですが、レイヤーも用途もまったく別物で、競合しません。
結論を先に言うと、LEANNは「あなたのノートPCの上」で動く個人向けの検索クライアント、SeekDBは「エージェント/アプリの裏側」に置くサーバー型の状態ストアです。LEANNは自分のファイル・メール・ブラウザ履歴を、埋め込みを保存しない設計で省ストレージに意味検索する“個人の道具”。SeekDBは、複数のエージェントが継続的に書き込み、即座に検索し、試行を分岐する“バックエンドDB”。片方は単一ユーザーのオフライン索引、もう片方はマルチ書込・トランザクション・MySQL互換のデータベースです。
具体的な違いを、選定に効く軸で並べます。埋め込みの扱い一つ取っても思想が逆で、LEANNは「保存しない(都度再計算)」でストレージを削り、SeekDBは「索引として持つ」で検索速度と同時実行を取ります。
| 観点 | SeekDB | LEANN |
|---|---|---|
| レイヤー | エージェント/アプリのバックエンドDB | 個人PCのローカル索引 |
| 形態 | サーバー(埋込〜分散クラスタ) | ローカルのPythonライブラリ/CLI |
| 主な利用者 | 複数エージェント・アプリ | 単一ユーザー本人 |
| 書き込み | 継続書込+即時検索が前提 | 一括インデックス(都度更新は弱め) |
| 埋め込み | 索引として保持(自動生成も) | 保存しない(都度再計算) |
| 検索の型 | vector+全文+条件を単一SQL | 意味検索+grep併用 |
| 分岐/隔離 | COWフォーク(DB機能) | なし |
| プロトコル | MySQL互換・ACID | ファイルベース索引 |
| 向く用途 | エージェント基盤・アプリのRAG | 自分の資料・メールの個人検索 |
「自分のPCの中の、自分のファイルを検索したい」ならLEANN。「作っているエージェント/アプリの記憶・検索・状態を預けるDBが欲しい」ならSeekDB。両者は同じ棚に並ぶ競合ではなく、上下のレイヤーです。極端に言えば、SeekDBで作ったエージェントが、ユーザーのローカル資料を引くためにLEANNを内包する、という共存すらあり得ます。
汎用のベクトルDB(Milvus・Qdrant・pgvector等)との比較軸そのものは ベクトルデータベース比較2026|Qdrant・Milvus・pgvectorをRAG用途で選ぶ完全ガイド に詳しくまとめています。SeekDBはその表の「純粋なベクトルDB」とも設計思想が異なり、「RDBの機能(トランザクション・JOIN・COW)を持ったまま、ベクトルと全文を単一SQLで扱える」点が独自色です。「とにかく大規模ベクトル検索だけを最速で」ならMilvus、「既存のPostgreSQLにベクトルを足すだけ」ならpgvector、「エージェントの状態ストアを1つのDBで」ならSeekDB、という住み分けになります。
SeekDBの使い方 — pip・Docker・Homebrewでの導入手順
読者の「SeekDB 使い方」に、実際に動く手順で答えます。SeekDBには用途別に4つの入り口があり、AI/ML用途で最も手軽なのはPython SDK、動作確認はDocker、macOSはHomebrewという使い分けです。前章の実測どおり、pyseekdbの埋め込みモードはLinux専用なので、Mac/WindowsではDockerかHomebrewでサーバーを立てる前提で選んでください。
主要な3ルートのインストールは、次のとおりです。AI/ML用途で最も手軽なのはPython SDK、Mac/Windowsでの動作確認はDocker、macOSへのネイティブ導入はHomebrewが標準です。
# ① Python SDK(推奨)— Linux なら pyseekdb.Client(path=...) でサーバー不要のin-process動作も可
pip install -U pyseekdb
# ② Docker(Mac/Windowsの標準ルート・arm64/amd64ともイメージあり。初期化まで約2分)
docker run -d --name seekdb -p 2881:2881 -p 2886:2886 \
-v ./data:/var/lib/oceanbase oceanbase/seekdb:latest
# ③ Homebrew(macOSにネイティブ導入)
brew tap oceanbase/seekdb && brew install seekdb
Linuxならin-processの埋め込みモードが使えますが、macOS/Windowsでは使えません。その場合は上のDocker/Homebrewでサーバーを立て、pyseekdb.Client(host="127.0.0.1", port=2881, user="root", password="", database="test")で接続します。このほか、サインアップ不要のクラウド版(curl -X POST https://d0.seekdb.ai/api/v1/instancesで7日間無料のインスタンスが立つ)や、Linuxワンライン・インストーラも用意されています。SDKのフルガイド(接続モード・埋め込み関数・メタデータフィルタ)は公式のpyseekdb ユーザーガイドにあります。
SQLで直接使う場合、SeekDBの個性が最も出るのが単一SQLのハイブリッド検索とCOWフォークです。ベクトルカラムと全文索引を1つのテーブルに定義し、意味の近さと全文一致とスカラー条件を1クエリで効かせられます。エージェントの探索を分岐したいときは、FORK DATABASEでスナップショットして砂場を作り、MERGEかDROPで締める、という流れです。
-- ベクトル列+全文索引を1つのテーブルに同居
CREATE TABLE articles (
id INT PRIMARY KEY, title TEXT, content TEXT,
embedding VECTOR(384),
FULLTEXT INDEX idx_fts (content),
VECTOR INDEX idx_vec (embedding) WITH (DISTANCE=l2, TYPE=hnsw)
);
-- 意味の近さ+全文一致を1つのSQLで(ハイブリッド検索)
SELECT id, title, l2_distance(embedding, '[0.1, 0.3, ...]') AS dist
FROM articles
WHERE MATCH(content) AGAINST('quarterly report')
ORDER BY dist APPROXIMATE LIMIT 10;
-- エージェントの試行を安全に分岐(COWサンドボックス)
FORK DATABASE agent_state TO agent_sandbox_42; -- データコピーなしで数秒
-- ...sandbox で自由に試したあと、採用か破棄を選ぶ
MERGE TABLE agent_sandbox_42.memory INTO agent_state.memory STRATEGY THEIRS;
-- あるいは丸ごと破棄: DROP DATABASE agent_sandbox_42;
なお、既存のAIフレームワークからも使えます。READMEによれば LangChain・LlamaIndex・Dify・LangGraph・Coze・HuggingFace などとの連携が用意され、MySQLプロトコル経由でSQLAlchemyや任意のMySQLドライバからも接続できます。「今のRAG構成のベクトルストアだけ差し替える」といった段階的な導入も現実的です。
使えるOSSか — ライセンス・活性度・バス係数・企業バックの正直な評価
最後に「自分のプロジェクトに採用してよいか」を、良い点も懸念も並べて正直に評価します(すべて2026年7月19日時点のGitHub API実測)。
・ライセンスはApache-2.0。 商用・改変・再配布とも自由で、特許条項も含む素直なOSSライセンス。法務上のハードルは低い
・開発は活発。 GitHubスター2,830、フォーク311、オープンissue 414件。最新pushは2026年7月17日(2日前)で、コミット自体は継続している
・リリース間隔はやや空き気味。 タグ付きリリースはv1.0.0(2025-11)〜v1.3.0(2026-05)の5本。最新v1.3.0から約8週間、新しいタグは出ていない一方、mainへのプッシュは活発——「開発は続いているがリリースの節目が空いている」状態
・バス係数は約3。 コントリビューターは28人だが、コミットは上位(hnwyllmm 146・footka 83・ep-12221 69)に集中。純粋な個人プロジェクトではないが、少人数の企業チームが牽引する構図で、コミュニティの厚みはこれから
・企業バックは“母体”に注意。 エンジンのOceanBaseはAlipay等で本番稼働する実績あるDBだが、それはOceanBaseの実績。seekdb自体は2025年10月作成の新しい派生で、v1.x前半。大手での実戦投入済みと誤読しないこと
・バージョンの2系統に注意。 サーバー/エンジンはv1.3.0だが、Python SDK(pyseekdb)は別パッケージで1.1.0.post2(本記事の実測時)。ドキュメントを読むときは「サーバー版」と「SDK版」を混同しない
| 使う人 | 判定 | コメント |
|---|---|---|
| エージェント基盤を自作する開発者 | ◎ 有力 | 書込→即検索・COWフォーク・単一SQLハイブリッドが1つのDBで揃う。MySQL互換で移行も軽い |
| 既存RAGのベクトルストア置き換え | ○ 試す価値あり | Chromaライクなpyseekdbで移行が軽い。まずDocker版で自ワークロードを実測 |
| 個人PCで自分の資料を検索したい | △ 別ツール向き | ここはLEANN等のローカル索引が適任。SeekDBはオーバースペック |
| ミッションクリティカルな本番 | △ 要評価 | 母体は堅いがseekdb自体は若い(v1.x前半・リリース間隔)。自環境でのHA/運用評価を前提に |
総じて、SeekDBは「エージェントの状態ストアを1つのDBに寄せたい」という、いま伸びている要求に真正面から応えるプロダクトです。COWフォークや単一SQLハイブリッド検索は、既存のベクトルDBの寄せ集めでは得にくい体験で、実機でもその中核(書込→即検索→分岐)はきちんと動きました。一方で、プロダクトとしてはまだ若く、公称ベンチは自社測定である点は割り引いて読むべきです。「小さくDocker版で立てて、自分のワークロードで実測してから採用を判断する」——本記事の検証もその一例です。まずはdocker runで立てて、あなたのエージェントの“書いては読む”を測ってみてください。
参照ソース
・oceanbase/seekdb(公式リポジトリ) — README・アーキテクチャ図・ベンチマーク図・機能一覧(2026-07-19 実測: ★2,830 / Apache-2.0 / 最終push 2026-07-17 / v1.3.0)
・SeekDB 公式ドキュメント(docs.seekdb.ai) — Quickstart・APIリファレンス・デプロイ手順
・pyseekdb — Python SDK(公式リポジトリ) — 接続モード・埋め込み関数・メタデータフィルタのユーザーガイド
・vdb-streambench — 公式ベンチマークの再現リポジトリ — StreamingPerformanceCase の再現手順(自社測定の再現用)
・GitHub REST API(/repos/oceanbase/seekdb・/contributors・/releases)— スター数・コントリビューター・リリースの実測(2026-07-19 取得)