「SpiderFoot」は、ドメイン名やIPアドレスを1つ入力するだけで、多数の公開情報源に自動で問い合わせて結果を1か所に集約するOSINT(オープンソースインテリジェンス)自動化ツールだ。GitHubスター21,520・MITライセンス・Python 3製で、Kali Linux にも標準パッケージとして入っている。ただし日本語の解説記事はKali 2021年前後で時計が止まっており、このツールが今どういう状態にあるのか——本家の開発が動いているのか、どのバージョンのPythonなら入るのか、APIキーを1つも持っていない人が実際に何を得られるのか——に答えているものが見当たらない。そこで本日、公式リポジトリの実データをGitHub APIで取り、手元のmacOSに入れて当サイトが管理する自社ドメイン1本に対して実際に走らせた結果をまとめる。

SpiderFootをコマンドラインから実行し、自社ドメイン ai-heartland.com に対してAPIキー不要のモジュールだけでDNSレコード・IPv4/IPv6アドレスを取得している端末の録画
本記事の検証環境で実際に録画したSpiderFootのCLI実行。対象は当サイトが管理する ai-heartland.com、APIキーは未設定。キー不要のモジュールだけでDNS・IPv6・実IPまで到達する(2026-08-30 macOS 14 / Python 3.12 で撮影)
30秒でわかる SpiderFoot(2026年8月30日時点)
  • 正体:ドメイン/IP/メールアドレス等を起点に、公開情報源へ自動照会して結果を集約するOSINT自動化ツール。Python 3・MIT・WebUIとCLIの両方を持つ。
  • 規模の実測modules/ のファイルは233個だが、内部用2個と雛形1個を除いた実モジュールは230個。うち83個がAPIキーを要求し、147個はキー不要。相関ルールは38本。
  • いちばん重要な注意:本家 master の最終コミットは2023年11月5日、最新タグはv4.0(2022年4月7日)。2022年11月にIntel 471が買収し、spiderfoot.net は現在 intel471.com へ301リダイレクトする。
  • 導入の落とし穴requirements.txt の上限ピンが古く、Python 3.14では lxml のビルドに失敗して入らないPython 3.12なら約22秒で完了した(実測)。
  • もう1つの落とし穴pip install spiderfoot で入るのは本体ではなく、「名前の予約用」と自称する1,302バイトの空パッケージ
  • 使う前提対象は自分が管理する資産に限る。 自社ドメイン1本の既定 passive スキャンは14分35秒かかり、生成された632件のうち508件(80%)は自社でなく同居する第三者に関する事実だった(実測)。

外から見えている資産の棚卸しは、依存パッケージ側の点検とセットで初めて意味を持つ。取り込む側の経路についてはサプライチェーン攻撃とは|手口・防御ツール比較・npm 12の新機構まで実践解説で扱っている。本記事は「外に出ている自分の情報を、自分で見に行く」側の話だ。

SpiderFootとは——230モジュールが公開情報源を手分けして叩く仕組み

SpiderFootの情報収集の設計は素直だ。利用者が「調べる起点」を1つ与えると、それがイベントとしてモジュール群に配信される。あるモジュールが「ドメイン名」を受け取ってIPアドレスを吐き出すと、そのIPアドレスが新しいイベントとして別のモジュールに配られ、そこからさらに別の事実が出てくる。README はこれを publisher/subscriber モデルと表現している。

起点として指定できるのは、ドメイン/サブドメイン名、ホスト名、IPアドレス、ネットワークサブネット(CIDR)、ASN、メールアドレス、電話番号、ユーザー名、人名、Bitcoinアドレスだ。

SpiderFootのモジュール数の内訳。実モジュール230個のうち83個がAPIキーを要求し、147個はキー不要で動作する
モジュール数は README の公称値でなく、本日 clone した実ファイルを数えた値(出典: smicallef/spiderfoot の modules/sf.py -M の出力)

READMEは「Over 200 modules」と書く。実際に数えると modules/sfp_*.py233ファイルあるが、sf.py -M が一覧に出すのは230個だった。差の3個は内訳がはっきりしている——sfp__stor_dbsfp__stor_stdout は結果を保存・出力するための内部モジュール、sfp_template は自作モジュールを書くときの雛形だ。つまり「200を超える」という公称値は正しく、実数は230である。

同様に相関エンジンのルールは README が「37 pre-defined rules」と書いているが、correlations/ 配下の YAML は実測で38本あった。1本ぶんの差は README の更新漏れとみられる。

SpiderFootの価値は「1つのツールが何でも知っている」ことではなく、230個の小さな調査手順を1回の実行で並列に走らせ、結果を1つのデータベースに揃えることにある。

APIキー無しで動く範囲はどこまでか

外部サービス依存のモジュール(Shodan、HaveIBeenPwned、GreyNoise、SecurityTrails など)はAPIキーが要る。設定項目にAPIキーを持つモジュールを機械的に数えると、230個のうち83個だった。残る147個はキー無しで動作する。

本記事の検証ではキーを1つも新規取得していない。それでもDNSレコードの解決、IPv4/IPv6アドレスの特定、WHOIS情報の取得、証明書透明性ログの照会、逆引き、国名の解決といった基礎的な事実は取れた。「キーを揃えないと何もできないツール」ではないというのが実測の結論だ。

読者の3つの問いへの答え
何ができる:起点を1つ与えるだけで、230個のモジュールが公開情報源を手分けして照会し、結果を1つのSQLiteに集約する。② 何を解決する:「自社ドメインについて外から何が見えているか」を、手作業のdig/whois/証明書検索の寄せ集めでなく1コマンドで棚卸しできる。③ 何を代替できる:外形調査の初期フェーズを代替する。ただし本家は開発が止まっているため、継続運用の基盤としては後述のフォークか他ツールを検討したほうがよい。

メンテナンス状況——masterは2023年11月で止まり、会社はIntel 471の傘下にある

ここが本記事のいちばん伝えたい部分だ。SpiderFootはスター21,520・フォーク3,471という規模のプロジェクトで、Kali Linux にも入っているため「現役の定番ツール」に見える。しかし公式リポジトリの実データはそう言っていない。

SpiderFootのメンテナンス状況の時系列。2012年4月にリポジトリ作成、2022年4月にv4.0リリース、2022年11月にIntel 471が買収、2023年11月にmasterの最終コミット
すべて2026-08-30にGitHub APIおよびHTTPヘッダで実測した値(出典: GitHub REST API /repos/smicallef/spiderfoot、Intel 471 の買収発表)

2026年8月30日時点でGitHub APIから取った値は次のとおり。

項目 実測値 備考
スター / フォーク 21,520 / 3,471 archivedfalse(アーカイブ宣言はされていない)
リポジトリ作成 2012-04-28 14年前
最新のタグ付きリリース v4.0(2022-04-07) それ以降タグ無し
master の最終コミット 2023-11-050f815a20 jQuery 3.6.0→3.7.1 の更新
pushed_at 2026-04-13 master ではなく Dependabot ブランチへのpush
ブランチ master / fix-install-error / dependabot/pip/test/pytest-9.0.3 3本のみ
ライセンス MIT LICENSE実体で確認

pushed_at が2026年4月になっている点に注意したい。 リポジトリ一覧やダッシュボードで「4か月前に更新」と表示されるのはこの値だが、実際に押されたのは Dependabot が作った依存更新ブランチであって、master は2023年11月5日から1コミットも動いていない。star数や「最終更新」表示だけを見て現役と判断すると、ここを取り違える。

会社側の動き

2022年11月2日、脅威インテリジェンス企業の Intel 471 が SpiderFoot を買収したと発表している。創業者の Steve Micallef 氏は Intel 471 の Vice President of Attack Surface Technology として合流した。発表文はオープンソース版がGitHubで公開されていることに触れているが、その後の開発・保守を継続するとは書いていない

現在の状況はURLにも表れている。READMEのバナーやリンク先である公式サイト spiderfoot.net は、本日 curl で確認したところ 301で intel471.com へリダイレクトする。README中の「SpiderFoot HX」(商用SaaS版)へのリンクも、open-source-vs-hx の比較ページも、同じく企業サイトのトップへ吸収されている。

# 実行して確認したリダイレクト(2026-08-30)
curl -sIL -A "Mozilla/5.0" http://www.spiderfoot.net | grep -Ei '^(HTTP|location)'
# HTTP/1.0 308 Permanent Redirect
# Location: https://www.spiderfoot.net/
# HTTP/2 301
# location: https://www.intel471.com/
# HTTP/2 200
「アーカイブされていない=現役」ではない。 smicallef/spiderfoot は archived フラグが立っていないため、GitHub上では通常のリポジトリとして表示される。だが実体はタグ付きリリースが4年4か月前、masterの最終コミットが2年9か月前で止まっている。導入を検討するなら、この事実を前提に判断するのが対策の第一歩になる。

SpiderFootのインストールと起動——Python 3.14では入らない、3.12なら22秒(実測)

開発が止まっているプロジェクトで最初に壊れるのは依存関係だ。SpiderFootの requirements.txt は26行あり、そのほとんどに上限ピンが付いている(lxml>=4.9.2,<5cryptography>=3.4.8,<4networkx>=2.6.3,<2.7PyPDF2>=1.28.6,<2 など)。この上限は2022〜2023年時点の最新版で切られているため、新しいPythonでは事前ビルド済みのホイールが存在しない。

SpiderFootのインストール可否。Python 3.14ではlxmlのビルドに失敗し、Python 3.12では26パッケージすべてがホイールで解決して約22秒で完了する
同一マシン(macOS 14 / Apple Silicon)で、Pythonの版だけを変えて同じ requirements.txt を入れた結果

Python 3.14 で試した結果:失敗する

手元の既定である Python 3.14.4 で仮想環境を作り、そのまま入れると lxml のホイールビルドで落ちた。ソースからのコンパイルに進み、CPython 3.13 以降で _PyLong_AsByteArray の引数が5個から6個に変わった影響で15件のコンパイルエラーになる。

src/lxml/etree.c:270440:70: error: too few arguments to function call, expected 6, have 5
ERROR: Failed building wheel for lxml
× Failed to build installable wheels for some pyproject.toml based projects
╰─> lxml

lxml は5系以降でこの変更に追随済みだが、requirements.txt<5 で上限を切っているため、その修正版は選ばれない。この上限ピンこそが、開発停止の実害が最初に出る場所である。

Python 3.12 で試した結果:通る

同じマシンで Python 3.12 に切り替えると、26パッケージすべてがホイールで解決し、約22秒で完了した。ビルドは1件も発生していない。

# 実際に成功した手順(macOS 14 / Apple Silicon / 2026-08-30)
git clone --depth 1 https://github.com/smicallef/spiderfoot.git
python3.12 -m venv venv
./venv/bin/pip install --no-cache-dir -r spiderfoot/requirements.txt
cd spiderfoot && ../venv/bin/python sf.py -V
# => SpiderFoot 4.0.0: Open Source Intelligence Automation.

入った cryptography は 3.4.8、lxml は 4.9.4、networkx は 2.6.3 だった。いずれも上限ピンの直下に張り付いた古い版で、cryptography 3.4.8 は2021年8月のリリースだ。依存が古いまま固定されることは、このツール自体を長期運用の基盤に据えるうえでの実務的なリスクになる。

Web UIの起動と、そこで見つかるもう1つの停止の痕跡

SpiderFootはコマンドラインだけでなく、内蔵のWebサーバーからも操作できる。-l にバインド先を渡すだけで起動する。

# Web UI を localhost だけに公開して起動
python sf.py -l 127.0.0.1:5001
# ブラウザで http://127.0.0.1:5001/ を開く

実際に起動して curl で叩くと HTTP 200 が返り、ページタイトルは SpiderFoot v4.0.0 だった。CLIで走らせたスキャン結果もそのまま同じ画面から参照できる。

SpiderFootのWeb UIで自社ドメインのスキャン結果を表示した画面。Affiliate - Email Address が83件、Co-Hosted Site が190件など、イベント種別ごとの件数が一覧表示されている
本記事の実行結果をSpiderFoot v4.0.0のWeb UIで表示したもの。同居サイト(Co-Hosted Site)190件、第三者WHOIS由来のメールアドレス83件が、自社ドメインのスキャン結果として並んでいるのが確認できる

ただし起動時のログに、開発停止の影響がもう1つ現れる。

Warning: passwd file contains no passwords. Authentication disabled.
Please consider adding authentication to protect this instance!
Refer to https://www.spiderfoot.net/documentation/#security.

既定では認証が無効という警告自体は正しい挙動だが、その対処法として案内されている spiderfoot.net/documentation/ を実際に開くと、301で intel471.com/documentation へ飛ばされたうえで404になる。つまりツールが自分で指し示している安全設定の手引きが、もう存在しない

バインド先は -l に書いた値がそのまま使われる(sf.py はソース上 sfWebUiConfig['host'] = '127.0.0.1' を持つが、-l を渡さないとそもそもWebサーバーが起動しないので、実質は指定した値で決まる)。問題はリポジトリ同梱の DockerfileCMD ["sf.py", "-l", "0.0.0.0:5001"] になっている点で、コンテナで動かすと既定で全インターフェースに待ち受ける。認証が無効なまま到達可能なネットワークへ出せば、誰でもスキャンを起動・閲覧できる。

対策は2点。①手元で使うだけなら -l 127.0.0.1:5001 と明示する、②コンテナや共有環境で使うなら passwd ファイルに認証情報を置いたうえで、公開範囲をリバースプロキシやセキュリティグループで絞る。

影響を受ける範囲

ここまでの導入上の問題が誰に当たるのかを整理しておく。

影響を受ける対象 影響 回避策
Python 3.13以降の環境 lxml<5 の上限ピンによりインストール不能 Python 3.12以下の仮想環境を用意する
pip install spiderfoot を試す人 中身の無いプレースホルダーが入る GitHubから clone する
Web UIを既定のまま外部公開した環境 認証なしで誰でも操作可能 127.0.0.1 に限定、または passwd を設定
CDN/共有IPの背後にある資産 既定 passive スキャンが第三者へ波及 -m でモジュールを限定する
長期運用したい組織 依存が2021〜2022年版で固定・上流の修正が入らない フォークまたは他ツールを検討

配布経路ごとの差

入手経路 実測した版 備考
GitHub master 4.0.0(2023-11-05 の内容) tag ではなくブランチ先端
GitHub 最新タグ v4.0(2022-04-07) 4年4か月前
Kali Linux パッケージ spiderfoot 4.0-0kali5 上流は v4.0 のまま。Kali側の修正が5回入っている
PyPI spiderfoot 0.0.1(中身なし) 下記参照
Docker Hub 公式 無しspiderfoot/spiderfoot は404) リポジトリ同梱の Dockerfile を自分でビルドする
pip install spiderfoot では本体は入らない。 PyPI に登録されている spiderfoot は 2026年7月19日に公開されたバージョン 0.0.1 で、パッケージ本体は1,302バイト、説明文は「Reserved name placeholder. No code, no functionality.(名前の予約用のプレースホルダー。コードも機能も無い)」と自称している。悪意のあるコードは含まれていないが、「pipで入れたつもりで何も入っていない」状態になる。導入は GitHub からの clone で行う。

なおDocker Hubには dtagdevsec/spiderfoot(220万プル)などサードパーティのイメージが複数ある。公式が用意したものではないため、使うなら中身を自分で確認する必要がある。

自社ドメインで実際に回した結果——数分では終わらず、大半が「隣の家」の情報だった

ここからが本題だ。当サイトが管理する ai-heartland.com を対象に、既定の passive(受動的)ユースケースでスキャンを実行した。APIキーは1つも設定していない。

# 実際に流したコマンド(対象は自分が管理するドメインのみ)
python sf.py -s ai-heartland.com -u passive -q -o csv > scan.csv
自社ドメインに対するpassiveスキャンで得られたイベント種別の内訳。同居サイト関連が最多を占める
本記事の実測。イベント種別ごとの件数で、自社そのものの事実より第三者(同居ドメイン)に関する事実のほうが桁で多い

分かったこと1:既定のpassiveスキャンは「数分で終わる」ものではない

このスキャンで有効化されたモジュールは200個だった(スキャン設定 _modulesenabled に記録された実数)。そのうち大半はAPIキーが必要で、キーが無い場合は何も返さないまま待機・タイムアウトする。結果として、ドメイン1本の受動スキャンに874.7秒(14分35秒)かかった。スキャンのSQLiteに記録された開始・終了時刻から計算した値である。

そして実際にイベントを1件でも返したモジュールは22個だけだった。200個のうち178個は、まるまる待ち時間だけを消費して何も返していない。「とりあえず回してコーヒーを淹れて戻ってくる」という感覚だと合わない。実務では後述のようにモジュールを絞るのが前提になる。

分かったこと2:自社ドメインを指定しても、出てくる事実の大半は第三者のもの

これが最も注意すべき挙動だ。ai-heartland.com は Cloudflare の背後にあり、共有IP(104.21.2.214 / 172.67.129.182)で配信されている。SpiderFootはこのIPを解決したあと、同じIPに同居している他サイトの列挙に進む。

実測の内訳は次のとおり。生成された全632イベントのうち、種別名が「Co-Hosted(同居)」または「Affiliate(関連先)」で始まるもの——すなわち当社の資産ではない第三者に関する事実——が508件(80%)を占めた。逆に、明確に自社の資産そのものを指すイベント(ドメイン名・IPv4/IPv6アドレス・WHOIS・ネームサーバ等)はわずか16件である。

イベント種別 件数(延べ) 誰についての事実か
Co-Hosted Site(同居サイト) 190(実数97) 第三者
Co-Hosted Site - Domain Name 97(実数91) 第三者
Affiliate - Email Address 83(実数47) 第三者のWHOIS由来のメールアドレス
Co-Hosted Site - Domain Whois 73(実数73) 第三者
Country Name 72 主に第三者ドメインの国
Affiliate - Internet Name 14 第三者
Blacklisted Co-Hosted Site 12 第三者
Malicious Co-Hosted Site 3 第三者
自社資産そのもの(DNS/IP/WHOIS等) 16 自社

重複を除いた同居ドメイン/ホストは110件。SpiderFootはそのうち73件についてWHOIS照会を実行し、そこから「Affiliate - Email Address」として延べ83件・重複を除いて47件のメールアドレスを収集していた。さらに12件は「Blacklisted Co-Hosted Site」、3件は「Malicious Co-Hosted Site」として記録されている——これらは当社と関係のない他社のドメインである。

CDNの背後にあるサイトでは、「同居サイト」=単に同じCDNを使っている無関係な他社である。自社のリスクを示す情報ではないうえ、第三者に対する照会を自動で発生させている
flowchart TD A["起点: ai-heartland.com
(自分が管理するドメイン)"] --> B["DNS解決
sfp_dnsresolve"] B --> C["共有IP
104.21.2.214 / 172.67.129.182"] C --> D{"同居サイトを列挙するか"} D -- "既定では実行される" --> E["無関係な第三者ドメイン
100件超を取得"] E --> F["その一部へWHOIS照会
sfp_whois"] D -- "モジュールを絞れば起きない" --> G["自社の事実だけが残る
DNS / 証明書 / WHOIS"]

つまり 「自分のドメインを入れた」=「自分の範囲だけを調べている」ではない。これは悪用の話ではなく、意図しない範囲へ手が伸びるという運用上の事実であり、対策としてモジュールを明示的に限定する必要がある。

分かったこと3:モジュールを絞れば速く、範囲も自分の資産に収まる

-m でモジュールを明示すると、挙動は一変する。DNS解決・SSL証明書・証明書透明性ログの3つに限定した実行を4回繰り返したところ、所要時間は2.7〜11.9秒、イベントは各回8件で、第三者に関するイベントは0件だった。結果は自社ドメインとそのIPv4/IPv6アドレスだけである。冒頭のFV動画がその実行の録画にあたる。

実行 モジュール指定 所要 イベント数 うち第三者
既定の passive 200モジュール 874.7秒 632 508
絞り込み①〜④ sfp_dnsresolve ほか3つ 2.7〜11.9秒 各8 0
# 範囲を自分の資産に閉じる書き方
python sf.py -s ai-heartland.com \
  -m sfp_dnsresolve,sfp_sslcert,sfp_crt -q -o csv
実務での使い方の結論
① まず -M でモジュール一覧を出し、自分が何を調べたいのかに対応するモジュールだけを選ぶ。② -u passive のような広いユースケース指定は、どこまで手が伸びるかを把握してから使う。③ CDNやクラウドの共有IP上にある資産では、「同居サイト」系のモジュールはノイズにしかならないので外す。

使う前に押さえる前提——対象は自分の資産に限る

SpiderFootは README 自身が「攻撃的にも防御的にも使える」と書いているツールだ。本記事は防御側の用途、すなわち「自社が外部に何を露出しているかを自分で確認する」用途だけを扱っている。

対象範囲

自分が管理する資産だけを対象にする。 所有しているドメイン、契約しているIPレンジ、自社の公開ホストに限る
共有IP上の同居サイトは自分の資産ではない。 前節のとおり既定の挙動でここに手が伸びるため、モジュール選択で明示的に避ける
個人に紐づく起点(人名・メールアドレス・電話番号・ユーザー名)は、本人の同意が無い限り使わない。 SpiderFootはこれらも起点にできるが、他人を対象にした時点で用途が変わる

法令上の位置づけ

許可のない対象に対する調査は、目的・手段によっては日本の不正アクセス禁止法(アクセス制御を回避する行為)、個人情報保護法(目的外の個人データ取得)、状況によってはストーカー規制法などに関わり得る。公開情報を見ること自体が直ちに違法になるわけではないが、「公開されているから何をしてもよい」ということにはならない

本節は一般的な注意喚起であり、法的助言ではない。 実際の案件で適法性が問題になる場合は、必ず弁護士など専門家の判断を仰いでほしい。第三者の資産を対象にする診断業務では、書面での許諾(スコープ・期間・手法の明示)を得るのが実務上の前提になる。

同種のツールカタログを防御側の視点から読む話はawesome-osint-arsenal 解説|OSINTツール集約OSSをブルーチーム視点で読む防御ガイドRedTeam-Tools(A-poc)とは|攻撃ツール集約OSSをブルーチーム視点で読む防御ガイドで扱っている。

SpiderFootの後継と代替——開発が続いているのはフォーク側

本家が止まっている以上、「では今から使うなら何を選ぶか」が現実的な論点になる。GitHub上のフォーク3,471本を star 順に洗ったところ、実質的に開発が継続しているものが1本あった。

本家smicallef/spiderfootとフォークpoppopjmp/spiderfootの比較。フォークはモジュール309個・相関ルール95本でv6.1.0まで進んでいる
2026-08-30にGitHub APIで実測。フォーク側は本家より1,902コミット先行し、本家に無いコミットは0本(=本家の内容をすべて含んだうえで進んでいる)

poppopjmp/spiderfoot は2025年2月に作られたフォークで、スター192・フォーク31、MITライセンス。バージョンは v6.1.0(2026年6月2日)まで進んでおり、モジュール309個・相関ルール95本と本家を上回る。compare APIで確認すると本家 master より1,902コミット先行・遅れ0コミットで、本家の内容を丸ごと含んだうえで独自に伸びている。Python は 3.11+ を公称し、Docker Compose 構成・GraphQL API・Go製CLIなど本家に無い要素が加わっている。

フォークを採用する場合の注意。 star 192・単独メンテナ体制であり、本家(★21,520)と同じ規模のレビューが入っているわけではない。OSINTツールは多数の外部サービスへ資格情報を持たせる性格上、導入前に自分でコードとネットワーク挙動を確認するのが望ましい。本記事ではフォーク側の実行検証までは行っていない(**未検証**)。

他のツールとの比較

ツール 位置づけ 開発状況(2026-08-30時点) キー無しでの実用度
SpiderFoot(本家) 汎用OSINT自動化・230モジュール 停止(master 2023-11、タグ 2022-04) 147モジュールが動く
SpiderFoot(poppopjmp) 上記のフォーク・309モジュール 継続(v6.1.0 / 2026-06) 未検証
BBOT アタックサーフェス列挙に特化した再設計 継続(Qiitaでも2026年5月に紹介記事) 高い(DNS/証明書中心)
Amass(OWASP) サブドメイン列挙・攻撃面マッピング 継続 高い
SpiderFoot HX / Intel 471 商用SaaS。監視・通知・API 商用として継続 該当なし(有償)

用途で選び分けるのが現実的だ。 「外部に出ているサブドメインや証明書を継続的に洗い出したい」なら BBOT や Amass のほうが目的に合う。「1つの起点から広く浅く、多様な情報源をまとめて当てたい」という SpiderFoot 固有の性格が必要なら、本家の状態を承知のうえで使うか、フォークを自己責任で検証して使うことになる。

まとめ

SpiderFootは「使えるが、状態を知ったうえで使うツール」だ。

・仕組みは今も有効で、230モジュール中147個はAPIキー無しで動く。自社ドメインについてDNS・IPv6・WHOIS・証明書までを1コマンドで揃えられる
・一方で本家は master が2023年11月、タグが2022年4月で停止。star数や「4か月前に更新」表示は Dependabot ブランチ由来で、実態を表していない
・その実害はすでに出ている。Python 3.14 では依存の上限ピンにより導入できない(3.12なら約22秒で完了)。pip install spiderfoot で入るのは中身の無いプレースホルダーである
既定の passive スキャンは想定より広く手が伸びる。 自社ドメイン1本に14分35秒かけ、生成した632件のうち508件(80%)は第三者の事実で、自社資産そのものは16件だった。対策はモジュールを明示的に絞ること
・継続的に使うなら、開発が続いている poppopjmp/spiderfoot(v6.1.0)か、用途特化の BBOT / Amass を検討する

対象は自分が管理する資産に限る。この1点だけは、どのツールを選ぶかに関わらず変わらない。

参照ソース

smicallef/spiderfoot(公式リポジトリ・README) — モジュール構成・機能一覧・v4.0の公称値。star/fork/最終コミット/ブランチ一覧はGitHub REST APIで本日取得
Intel 471 Acquires SpiderFoot(2022-11-02 公式発表) — 買収日・Steve Micallef氏の役職・オープンソース版の位置づけ
poppopjmp/spiderfoot — 開発継続中のフォーク。モジュール309個・相関95本・v6.1.0、本家比1,902コミット先行
spiderfoot | Kali Linux Tools — Kali配布版。パッケージ版数 4.0-0kali5pkg.kali.org で確認
PyPI: spiderfoot 0.0.1 — 「Reserved name placeholder」と自称する1,302バイトのプレースホルダーパッケージ