dexter-jpは、日本の上場企業に対して1つの質問だけで多段階の調査・分析・レポート生成を自動完結させるAIエージェント。EDINET DB(電子情報提供システム)から有価証券報告書・財務データを取得し、J-Quantsから株価・業績データを組み合わせて、自律的に分析を走らせる。GitHubには227スターが集まり(2026年4月時点)、日本株特化の金融AIエージェントとして急速に注目度が上がっている。
この記事ではClaude Codeに特化して解説します。Claude Code全般は Claude Code完全ガイド2026:インストールから本番運用まで をご覧ください。
dexter-jpとは:日本株分析に特化したAIエージェントの全体像
dexter-jpはvirattt/dexter(米国株向け金融AIエージェント)のフォークプロジェクト。オリジナル版がSEC開示書類とFinancial Datasets APIを使う設計だったのに対し、dexter-jpは日本独自の情報基盤(EDINET DB・J-Quants・TDNet)に全面対応し、日本語ネイティブで動作するように再設計された。
LangChainをバックエンドに採用したエージェントループが核心。単なるデータ取得ツールではなく、「計画立案→ツール選択→実行→自己検証→繰り返し」を人間の介在なしに自律実行できる点が差別化要因だ。
① 自律実行——「分析して」と一言投げるだけで多段階の調査が自動で走る
② EDINET特化——日本独自の有報構造・セグメント分類を深く理解した解析エンジン
③ マルチLLM——OpenAI・Claude・Gemini・Grokなど複数LLMに対応、CLIで切替可能
よくある金融ツールとの本質的な違い
よくある金融ツールは「スクリーニングできます」「財務データ見れます」で終わる。dexter-jpは違う。
「ソニーと任天堂、投資先としてどちらが優れているか分析して」と聞くと:
- まず計画を立てる——比較に必要な指標(収益性・成長性・財務健全性・リスク)を自分で決める
- 複数のツールを自律的に呼び出す——両社の財務データ・有報のリスク要因・決算短信を並列取得
- 途中で検証する——数字とナラティブに矛盾がないか、データが足りているか自己判断
- レポートを仕上げる——比較表と結論付きの構造化された分析結果を出力
これを1回の質問で、人間が介在せずに実行する。
dexter-jpの主な機能:株式分析を自律実行するツール群
メタツール(get_financials)の仕組み
get_financials は単なるAPIラッパーではない。内部にLLMを持つルーティングエージェントだ。
- ユーザーの自然言語クエリを受け取る
- 内部LLMがどのサブツール(financial_statements・key_ratios・analysis・earnings等)を呼ぶか判断
- 複数サブツールを並列実行して結果を統合する
「ソニーとトヨタの利益率を比較して」と入力するだけで、内部で4つのAPI呼び出しが自動で走る。
搭載ツール一覧
| ツール | 機能 | データソース |
|---|---|---|
get_financials |
財務データ総合取得(ルーティングエージェント) | EDINET DB |
read_filings |
有報テキスト・大量保有報告書 | EDINET DB |
company_screener |
100+指標・33業種でスクリーニング | EDINET DB |
get_stock_price |
株価OHLC | J-Quants V2(東証公式) |
web_search |
Web検索 | Exa / Perplexity / Tavily |
browser |
Webブラウジング | — |
アーキテクチャと動作の仕組み
(自然言語)"] --> Loop["エージェントループ
LangChain"] Loop --> Plan["計画立案
どの指標が必要か判断"] Plan --> Tools["ツール選択・実行"] Tools --> GF["get_financials
(ルーティングエージェント)"] Tools --> RF["read_filings
有報テキスト"] Tools --> CS["company_screener
100+指標・33業種"] Tools --> SP["get_stock_price
J-Quants V2"] GF --> Merge["結果の統合・検証
矛盾・不足チェック"] RF --> Merge CS --> Merge SP --> Merge Merge -->|不足あり| Plan Merge -->|完了| Report["構造化レポート出力"]
エージェントループにはコンテキスト圧縮とセッション間メモリが内蔵されている。長時間のリサーチセッションで大量データを取得した場合、高速LLMが自動的に重要情報を保持したサマリに圧縮する。また、投資方針・過去の分析結果はセッションをまたいで記憶されるため、一度分析した企業情報を次のセッションで活用できる。
dexter-jp のインストール方法
必要なもの
- Bun — JavaScriptランタイム
- EDINET DB APIキー — edinetdb.jp で取得(無料枠あり)
- LLM APIキー — OpenAI・Claude・Geminiなどいずれか1つ
# Bunのインストール(未導入の場合)
curl -fsSL https://bun.sh/install | bash
# dexter-jp のインストール
git clone https://github.com/edinetdb/dexter-jp.git
cd dexter-jp
bun install
cp env.example .env # 編集してAPIキーを設定
bun run start
環境変数の設定
.env ファイルに以下を設定する:
# === 必須 ===
# LLM(1つ以上設定。複数設定してCLIで切替も可能)
OPENAI_API_KEY=sk-... # OpenAI(デフォルト)
ANTHROPIC_API_KEY=sk-ant-... # Claude
GOOGLE_API_KEY=... # Gemini
XAI_API_KEY=... # Grok
OPENROUTER_API_KEY=... # OpenRouter(複数モデル利用可)
# 日本株データ
EDINETDB_API_KEY=edb_... # edinetdb.jp で取得
# === オプション ===
# 株価データ(設定すると get_stock_price ツールが有効化)
JQUANTS_API_KEY=... # jpx-jquants.com で取得(無料・期限なし)
# Web検索(優先順:Exa → Perplexity → Tavily)
EXASEARCH_API_KEY=...
PERPLEXITY_API_KEY=...
TAVILY_API_KEY=...
# メッセージング連携
SLACK_BOT_TOKEN=xoxb-...
DISCORD_BOT_TOKEN=...
edinetdb.jpで無料登録するとAPIキーが発行される。個人利用の範囲であれば無料枠で十分動作確認できる。J-Quants APIも個人向け無料プランが用意されており(jpx-jquants.com)、期限なしで利用可能。
dexter-jp の使い方:実際のプロンプト例
bun run start でCLIが立ち上がる。以下のような質問をそのまま投げるだけでいい。
自律的な分析(エージェントの真価)
トヨタの競争力を総合分析して。財務データ、有報のリスク要因、最新決算を踏まえてレポートにまとめて
ソニーと任天堂、投資先としてどちらが優れているか。財務健全性・収益性・成長性・リスクを比較して結論を出して
高ROE・高配当の割安銘柄を探して、トップ3の財務健全性と事業リスクを深掘り分析して
キーエンスのDCFバリュエーションをして。現在の株価水準が割高か割安か判断して
スクリーニング・シンプルな検索
ROE15%以上、自己資本比率50%以上の企業をスクリーニングして
任天堂の有報のリスク要因を読んで
配当利回り4%以上の高配当銘柄を探して
トヨタの直近5年の財務推移を見せて
英語クエリも動作する。 Analyze Toyota's competitiveness. Cover financials, risk factors from the annual report, and latest earnings. のような英語での分析依頼にも対応している。
/model コマンドでCLI上からLLMをリアルタイム切り替えできる。概要把握にはGPT-4o-mini、詳細分析にはClaudeやGPT-4oと使い分けるのが効率的だ。
RULES.md で自分の投資スタイルを注入する
dexter-jpの特徴的な機能が .dexter/RULES.md だ。自分の投資スタイルや分析方針をMarkdownで定義すると、設定した内容がシステムプロンプトに自動反映され、Dexterの行動指針になる。
mkdir -p .dexter
cp RULES.md.example .dexter/RULES.md
# 自分のルールに書き換える
設定例:
# My Investment Rules
- 分析時は必ず同業他社5社と比較する
- 財務指標はJPY百万円で表示する
- バリュー投資基準(ROE > 10%、PBR < 1.5)でスクリーニングする
- リスク評価では有報のリスク要因セクションを必ず参照する
- 割安判断にはPBR・PER・EV/EBITDAを必ず使う
CLIで /rules と入力すると現在のルールを確認できる。個人投資家なら自分のスクリーニング基準を、アナリストなら業界別のベンチマーク比較ルールを設定するといった使い方が有効だ。
SKILL.mdで定義されたDCFバリュエーションスキルが最初から使える。日本国債利回りベースのWACC計算(米国版の約4%に対して日本版は約1%)と東証PBR1倍割れ問題を考慮した円建て分析に対応している。
Slack・Discord・LINE 連携
CLIだけでなく、メッセージングプラットフォーム経由でも使える。bun run gateway で起動する。
| プラットフォーム | 動作 | 必要な設定 |
|---|---|---|
| Slack | DM・スレッド返信 | Bot Token + App Token |
| Discord | @メンション・DMで返信 | Bot Token + Message Content Intent ON |
| LINE | Webhook方式 | 外部公開URL必須(常時稼働サーバー) |
LINEはWebhook方式のため長寿命プロセスが必要。Railway・Fly.io・Renderなどの常時稼働サービスが推奨。VercelやNetlifyはサーバーレスのため不可。
dexter-jp 株式分析の強み:米国株版との比較
dexter-jpはオリジナル版(virattt/dexter)のフォークだが、日本市場特有の情報構造に合わせて大幅に改修されている。
| 比較項目 | オリジナル(米国株版) | dexter-jp(日本株版) |
|---|---|---|
| データソース | Financial Datasets API | EDINET DB API |
| 対象市場 | 米国株 | 日本株(約3,800社) |
| 開示書類 | SEC 10-K/10-Q/8-K | 有価証券報告書(EDINET) |
| 決算情報 | 8-K earnings | TDNet 決算短信 |
| 株主情報 | SEC Form 4(インサイダー) | 大量保有報告書(5%超) |
| 株価データ | Financial Datasets | J-Quants V2(東証公式) |
| スクリーニング | GICS分類 | 33業種・100+指標 |
| DCF前提金利 | 米国金利(約4%) | 日本国債(約1%) |
| 言語 | 英語 | 日本語・英語両対応 |
最大の差別化は「EDINET構造の深い理解」だ。有価証券報告書のセクション分類・財務テーブルの位置・業界別セグメント利益の開示箇所など、日本市場固有の情報構造を最初から織り込んだ設計になっている。海外ツールが日本株対応を後づけしているのに対し、dexter-jpは最初からEDINETの規則的な構造に最適化されている。
動作デモ
実際の動作画面はリポジトリで確認できる:

OpenHandsのようなコーディングエージェントとは異なり、dexter-jpは日本の財務情報という特定ドメインに特化することで、汎用エージェントでは難しかった有報の深い解析を実現している。
こんな人に向いている
- 個人投資家・トレーダー — EDINET情報を自分のペースで深掘りしたい。データ集計より分析に時間を使いたい人
- 金融機関のアナリスト — 複数企業の初期リサーチを自動化して、より高度な分析に集中したい人
- 企業の経営企画・IR部門 — 競合企業の経営状況をモニタリングし、経営会議資料の初稿作成を効率化したい人
- 経営コンサルタント — クライアント企業の業界ポジション診断に必要な公開情報収集を自動化したい人
- 研究者・学生 — 日本企業の財務パターンを大規模データセットで分析したい人
✅ 1つの質問で有報・財務・株価を横断した自律分析
✅ RULES.mdで自分の投資スタイルを注入
✅ 100+指標・33業種でのスクリーニング
✅ Slack/Discord/LINEからの利用
✅ セッション間メモリで過去の分析結果を保持
✅ OpenAI・Claude・Gemini・Grokなど複数LLMに対応
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