この記事ではLLMに特化して解説します。LLM全般は LLMとは?仕組みからローカル実行まで徹底解説【2026年完全ガイド】 をご覧ください。

概要

Distributed Llamaは、複数の家庭用デバイスをローカルネットワークで繋ぎ、LLM推論をテンソル並列処理で分散実行するオープンソースフレームワークです。高スループットが必要な本番環境にはvLLM 高速推論:LLM推論を高速化してコストを削減する方法も合わせて検討してみてください。2023年にBartłomiej Tadych(b4rtaz)が公開し、2025年には大規模なコードベースリファクタリングとVulkan(GPU)対応を追加しました。

自宅に眠っているデスクトップPCやRaspberry Piを接続するだけで、クラウドAPIに頼らない推論環境を構築できます。

2025年9月にはQwen 3 MoEモデルのVulkan対応が追加され、Raspberry Pi 5を4台並べてQwen3-30B-A3B-Q40を13.04 tok/sで動かす事例もREADMEで報告されています。デバイス数を増やすほど、線形に近いスケールで速度が上がる点が特徴です。

主な機能

  • テンソル並列推論: モデルの重みをデバイス間で自動分割し、各デバイスが担当スライスを並列処理することで推論を高速化します
  • ワンコマンドセットアップ: python launch.py llama3_1_8b_instruct_q40のようにモデル名を指定するだけでモデルダウンロードからクラスタ起動まで完了します
  • Qwen3 MoEモデル対応: 2025年9月に追加されたQwen3 MoEシリーズ(0.6B〜30B A3B)をCPUとVulkan両方で実行できます
  • Vulkan GPU加速: 2025年3月に実験的Vulkan対応が追加され、NVIDIA・AMD・Intel GPUで推論を高速化できます
  • 幅広いデバイス互換性: Linux・macOS・Windows・Raspberry Pi OSに対応し、ARM・x86_64 AVX2 CPUを最適化サポートします
  • APIサーバーモード: dllama-apiコマンドでREST APIサーバーを起動でき、既存アプリケーションからHTTPで推論を呼び出せます
  • プライバシー完全保護: すべての推論がローカルネットワーク内で完結するため、データがクラウドに一切送信されません

技術スタック

  • 言語: C++(コア推論エンジン)、Python(起動スクリプト・モデル変換)
  • 量子化形式: Q40(モデル重み)+ Q80(通信バッファ)、F32対応
  • GPU対応: 実験的Vulkan(2025年3月〜)、CPU向けARM NEON・x86 AVX2最適化
  • 対応モデル: Llama 3.1/3.2/3.3、DeepSeek R1 Distill、Qwen3シリーズ(MoE含む)
  • ビルドツール: CMake、gcc/clang
  • プラットフォーム: Linux、macOS、Windows、Raspberry Pi OS

導入方法

ステップ1: クローンとビルド

git clone https://github.com/b4rtaz/distributed-llama.git
cd distributed-llama
make

ステップ2: ワンコマンドでRootノードを起動

# Llama 3.1 8B Instruct Q40(6.32GB)を自動ダウンロード・起動
python launch.py llama3_1_8b_instruct_q40

ステップ3: Workerノードを他のデバイスで起動

# 各ワーカーデバイスで実行
./dllama worker --port 9999 --nthreads 4

ステップ4: RootノードにWorkerを接続して推論

./dllama chat \
  --model ./dllama_model_meta-llama-3-8b_q40.m \
  --tokenizer ./dllama_tokenizer_llama3.t \
  --buffer-float-type q80 \
  --workers 192.168.1.2:9999 192.168.1.3:9999 \
  --nthreads 4

APIサーバーとして起動する場合はdllama chatdllama-apiに替えるだけです。

競合比較

項目 Distributed Llama llama.cpp vLLM
複数デバイス分散 ネイティブ対応 非対応 GPU クラスタ対応
対応デバイス PC・Mac・Raspberry Pi等 同左(単一デバイス) NVIDIA GPU 主体
セットアップ難易度 低(LAN接続のみ) 低(単体起動) 高(クラウド/K8s推奨)
Vulkan対応 実験的(2025年〜) 安定版 非対応
導入コスト ほぼ0円(既存機器活用) 0円 GPU購入費(数十万円〜)
プライバシー 完全ローカル 完全ローカル クラウド前提が多い

llama.cppは単一デバイスでの推論に最適化されており、分散には対応していません。vLLMは高スループットに優れますが高価なGPUが前提です。Distributed Llamaは手元にある複数の低スペック機器をクラスタ化できる点で唯一の選択肢です。ローカルLLMをベースにしたRAG構築方法についてはHelixDB:RAGに特化した組み込みベクターグラフデータベースも参考になります。

こんな人におすすめ

  • クラウドAPI費用を削減したい個人開発者・スタートアップ: 複数の既存デバイスを繋ぐだけで高性能な推論環境が手に入り、月額API費用を大幅に削減できます
  • 医療・法務・金融など機密データを扱うユーザー: データがローカルネットワーク外に出ないため、コンプライアンス要件を満たしながらLLMを業務利用できます
  • Raspberry PiやARMデバイスを使い倒したい組み込みエンジニア: ARM NEONおよびVulkan最適化により、低消費電力デバイスでも実用的な推論速度を発揮します
  • 社内オンプレミスAIを構築したい企業IT部門: 既存サーバーをクラスタ化してOpenAI互換APIを内製化でき、クラウド依存ゼロの推論基盤を構築できます
  • 最新LLMアーキテクチャを試したいMLエンジニア: DeepSeek R1やQwen3 MoEなど話題のモデルをローカル分散環境で動かせるため、モデル評価や実験コストを抑えられます

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参考リンク