Claude Code全体の使い方は Claude Code完全ガイド2026:インストールから本番運用まで をご覧ください。
「全セッションを一覧化する」というClaude Code新UIの位置づけ
2026年5月11日、Anthropicの公式アカウント @claudeai が短い動画とともにこう投稿した。「New in Claude Code: agent view. One list of all your sessions, available today as a research preview.」。同じ日に公開された Claude Code CLI v2.1.139 のチェンジログで、agent view は 新機能 として正式に告知されている。
このアップデートが大きいのは、Claude Code がこれまで「ターミナル1枚=セッション1つ」という前提でずっと走ってきたからだ。バックグラウンド実行や --bg フラグは存在していたが、複数走らせると進捗が散らばり、どれが詰まっているか把握しづらかった。agent view はその常識を破り、「全セッションを1画面で並べ、どれが動いているか・どれが詰まっているか・どれが完了したかを一目で把握する」という Linear や Slack のスレッド一覧に近い体験を CLI に持ち込んでいる。
公式ドキュメントの冒頭はこう要約している。
“Agent view, opened with
claude agents, is one screen for all your background sessions: what’s running, what needs your input, and what’s done.”
つまり、claude agents というたった1つのコマンドが、エージェント管理画面のエントリポイントになった。Anthropicは2026年4月のCloudホスティング型 Managed Agents、5月のDreaming機能と立て続けに「エージェントを並列で大量に走らせるための足場」を整えてきた。agent view はその流れをローカル CLI にも降ろす一手だ。
2026-05-11 にAnthropic公式アカウントから告知、Claude Code v2.1.139 で提供開始
コマンドは
claude agents。全バックグラウンドセッションを1画面に列挙する位置づけは research preview。UIやショートカットは今後も変わる前提
agent view の起動と画面構成 — まず何が見えるか
Claude Code agent view は、claude agents を実行するだけで開く。すでに claude --version が v2.1.139 以上 であれば追加インストールは不要で、初回起動時にユーザー単位の supervisor プロセスが裏で立ち上がる仕組みになっている。Esc キーで画面を抜けても、起動中のセッションは止まらず裏で動き続ける。
公式ドキュメントが例示する画面はこんな構成だ。
Pinned
✽ clawd walk cycle Write assets/sprites/clawd-walk.png 3m
Ready for review
∙ jump physics github.com/anthropics/example/pull/2048 2h
Needs input
✻ power-up design needs input: double jump or wall climb? 1m
Working
✽ collision detection Edit src/physics/CollisionSystem.ts 2m
✢ playtest level 3 run 12 · all checkpoints cleared in 4m
Completed
✻ title screen result: menu, options, and credits done 9m
∙ sound effects result: 14 SFX exported to assets/audio 4h
… 6 more
セッションは 状態ごとにグルーピング され、ユーザーの判断を待っているもの (Needs input) が上位に来るよう優先表示される。各行に出る文字列は、その時点で何のツールを叩いているか、もしくは何の入力を待っているかの1行サマリーで、これは設定した Haiku クラスのモデルが裏で生成している。重い transcript を開かなくても進捗が読めるのはこの仕組みのおかげだ。
アイコンが伝える6つの状態
| アイコン | 状態 | 意味 |
|---|---|---|
| アニメ ✽ | Working | ツール実行中・応答生成中 |
| 黄色 ✻ | Needs input | 許可待ち、または質問待ち |
| 薄色 ∙ | Idle | 待機中だが特定の質問はない |
| 緑 | Completed | 正常終了 |
| 赤 | Failed | エラー終了 |
| 灰色 | Stopped | Ctrl+X または claude stop で停止 |
また、形にも意味がある。✻ はプロセス生存中で即返信可、∙ は一度プロセスが終了したが状態は残っており、ピーク・返信・アタッチ操作のいずれかで再開できる。✢ は /loop で繰り返し走るセッションの「次イテレーションまでのスリープ中」を表す。状態が瞬時に読めるよう絵文字より色とシェイプを優先しているのが Anthropic らしい。
一覧の構造をMermaidで整理する
agent view の状態フローは、複雑な遷移ではなく「ユーザー入力が来るか・タスクが進むか」の2軸で組まれている。
Working から Needs input に振れたときに人間がピーク(後述)すれば、即座にやり取りして Working に戻せる。Completed まで進めば PR リンクが行に表示され、CI のステータスまで併載されるので、レビュー・マージで仕事を回収する流れに自然に乗る。
ピークとアタッチ — agent view の核心操作
ここが本機能の最大の発明だ。ピーク (peek) とは、対象セッションのトランスクリプトを開かずに、最新の状況だけをサイドパネルで覗き見るアクションを指す。
操作は単純で、矢印キーで行を選んで Space を押すだけ。ピークパネルには次の3つが表示される。
- ・現在何を待っているか(多くは権限承認や選択肢の提示)。
- ・直近の出力テキスト。
- ・セッションが開いた pull request(あれば)。
選択肢を提示している場合は数字キーでそのまま回答できる。許可待ちなら Tab で 推奨返信を埋めて編集 してから送信できる。「ほとんどの場合トランスクリプトを開く必要すらない」と公式が明言している通り、これは UX 上の重要な意図的設計だ。
アタッチとデタッチ
ピークで足りない、対話の文脈をしっかり共有して進めたい場合は Enter または → でアタッチ する。挙動的にはそのディレクトリで claude を再起動したのと同じで、対話モードのすべての機能・スラッシュコマンド・キーボードショートカットがそのまま使える。
アタッチした直後、Claude は「離れている間に何が起きたか」の短い recap を出す。これは人間が複数セッションを行き来する時の「Where was I?」問題を消すために入れた配慮で、地味だが効く。
← を空のプロンプトで押すとデタッチ。Ctrl+C/Ctrl+D/Ctrl+Z//exit のいずれもバックグラウンドセッションを止めずに離脱する。セッション自身を終わらせたい時のみ /stop を打つ。
キーボードショートカット早見表
公式ドキュメントが公開しているショートカットの主要分は次のとおり。? で全一覧が呼び出せる。
| ショートカット | 動作 |
|---|---|
↑ / ↓ |
行移動 |
Enter |
選択行にアタッチ、または入力がある時はdispatch |
Space |
選択行のピークパネル開閉 |
Shift+Enter |
dispatchと同時にアタッチ |
→ |
選択行にアタッチ |
Alt+1 ~ Alt+9 |
フォーカスグループ内の N 番目にアタッチ |
Ctrl+S |
状態別/ディレクトリ別グルーピング切替 |
Ctrl+T |
選択セッションをピン留め |
Ctrl+R |
セッション名のリネーム |
Ctrl+G |
プロンプトを $EDITOR で開く |
Ctrl+X |
停止(2秒以内に再押下で削除) |
Esc |
パネル閉じ/入力クリア/退出 |
これだけのショートカットを揃えるあたり、Anthropic 内部でかなり使い込まれた UI であることが推し量れる。
Spaceで開くピークパネルがagent viewの核心。transcriptを開かず判断できる許可待ちは数字キー即答、複雑な返信は
Tab で推奨文を埋めて編集可アタッチ後の recap で「離れている間の進捗」を毎回受け取れる
バックグラウンド実行を支える supervisor の設計
agent view のもう1つの肝は、セッションをホストする per-user supervisor process だ。ターミナルを閉じても、agent view を閉じても、ユーザーがログアウトせずマシンが動いている限り、走らせたエージェントは止まらない。
supervisor は何をしているか
supervisor は次のことを引き受ける。
- ・各セッションを独立した Claude Code プロセスとして起動・管理する。
- ・対話相手のターミナルがなくても応答待ちを維持する。
- ・1時間程度アイドルが続いたセッションのプロセスを停止しリソースを解放する。
- ・停止したセッションの状態をディスクに保持し、再アクセス時に復元起動する。
- ・Claude Codeのバイナリ更新を検知して自己再起動する。
特に4つ目のリストア動作は重要だ。supervisor がプロセスを落としても transcript と state が ~/.claude/jobs/<id>/state.json に残っているため、再度ピーク・返信・アタッチした瞬間に「最後の状態から続き」を始められる。マシン再起動やスリープでセッションが停止した場合は claude respawn --all で一括復帰させられる。
supervisorと永続化ファイル
| パス | 役割 |
|---|---|
~/.claude/daemon.log |
supervisor 自身のログ |
~/.claude/daemon/roster.json |
起動中セッションの一覧(再接続用) |
~/.claude/jobs/<id>/state.json |
セッション単位の状態スナップショット |
~/.claude/worktrees/ |
自動作成された分離ワークツリー |
CLAUDE_CONFIG_DIR を別パスに切ると、supervisor も別インスタンスとして立ち上がる。これはチーム共用マシンやコンテナ環境で「2つの独立した agent view」を同時に運用する正式な分離手段として用意されている。
supervisor のライフサイクル図
/bg をセッション内部で打てば、その対話セッションをそのままバックグラウンド化できる。claude --bg "<prompt>" で最初からバックグラウンド起動も可能で、戻り値で短いセッション ID と管理コマンドが出力される。
ワークツリー自動隔離 — 並列編集の衝突を未然に防ぐ仕組み
複数のエージェントを並列で走らせると、必ずファイル編集の衝突が問題になる。Cursor や Codex を含む既存ツールが共通して詰まりやすい所だ。agent view はここに対して、.claude/worktrees/ 配下に git worktree を自動作成する という解を用意している。
動作のフロー
agent view から dispatch されたセッションは、デフォルトでは ファイル書き込みがブロックされる ようになっている。書き込みが必要になった瞬間、Claude が自動で worktree を切り、その隔離ブランチへ移動してから編集を始める。worktree のパスは .claude/worktrees/<random> で、セッション削除時に worktree も削除される。
# agent view から dispatch
claude --bg "fix the flaky SettingsChangeDetector test"
# 内部的にはこういう構造になる
# .claude/worktrees/<random>/ <- 隔離ワークツリー
# src/...
# tests/...
subagent ごとに worktree を強制する
特定の subagent を「常にworktree内で動く」設定にしたい場合は、subagent の frontmatter に isolation: worktree を追加する。
---
name: code-reviewer
description: Review code changes in isolated worktree
isolation: worktree
---
これにより agent view 経由でない起動(CLIから直接 --agent code-reviewer)でもworktreeに入ってからファイル編集を始めるため、プロジェクトの本物のワーキングディレクトリが汚染されない。
worktreeのクリーンアップ
セッションを削除すると、付随する worktree も自動削除される。作業を残したい場合は、削除前にコミット&マージか別ブランチへの push が必須。これを忘れると変更が消えるので、ドキュメントも明示的に警告している。
万一 worktree が残ってしまった場合は、プロジェクト内で git worktree list を実行して残骸を確認し、git worktree remove <path> で削除する。
subagents・Agent Teams との違いを整理する
Claude Code には「agent」という名前が付くものが複数ある。混乱しやすいので、agent view との関係をここで整理しておく。
| 機能 | スコープ | 並列実行 | 主用途 |
|---|---|---|---|
| subagents | セッション内の専門役割 | 親セッション内で逐次的に呼び出される | コードレビュー・テスト生成などの局所タスク |
| Agent Teams | 複数セッションが互いにメッセージ | あり(メッセージング前提) | 設計者・実装者・レビュアーなどの役割分担 |
| agent view | マシン内のすべてのセッション | あり(独立実行) | 大量タスクのファンアウト管理 |
| Managed Agents | Anthropicクラウド側 | あり(無限スケール) | 本番運用のSaaS型エージェント |
agent view は subagents を内部に持つ「親セッション」を並列で管理する画面だと理解するとよい。subagent は agent view の行として独立表示はされない——あくまで親セッションの内部要素として扱われる。
逆に Agent Teams は「互いに通信させたいセッションのまとまり」を表すが、agent view は通信を仮定せず「それぞれが独立に作業し、人間に対してだけ報告する」モデルだ。/loop で長期繰り返し動作を組むのも agent view の領分で、ぐるぐる回している自分のロジックを agent view 上で1行に圧縮できる。
「クラウドにオフロードしないローカルOrchestration」というポジション
Anthropic は4月末から Managed Agents (Anthropicクラウド) を強く推している。並列ファンアウトもクラウド側で組めるなら、なぜローカルにも同じ機能を入れるのか。
答えはおそらく「手元の本物のファイルを編集できる権限」だ。Managed Agents はサンドボックス内で動くので、ユーザーのMacBookの~/code/myrepoを直接編集することはできない。一方 agent view はローカル supervisor 経由で実ファイルを編集する。「複雑だがクラウド化できないコードベース」を抱える開発者にとって、agent view は依然として一番重要なエージェントフロアだ。
制限事項とrate limits — 「10倍走らせたら10倍消費」の現実
最後に、agent view を本番運用に持ち込む前に知っておくべき制限を確認する。
Rate limitsへの影響
公式ドキュメントは明示的にこう書く。
“background sessions draw down your subscription usage the same as interactive sessions, so running ten agents in parallel uses quota ten times faster.”
つまり並列に10エージェント走らせれば、サブスクのクオータも10倍速で消費する。Maxプランの月次クオータを使い切る速度が変わるので、深夜に大量に並列でファンアウトする運用は、ローカルマシンが空いていてもクオータ側で頭打ちになりやすい。
マシンが落ちると止まる
セッションはすべてローカル supervisor で走る。マシンがスリープしたり電源が切れれば、その瞬間に走っていたセッションは Stopped 扱いになる。claude respawn --all で起こせるが、長時間 unattended で走らせ続けたい本番ワークロードは、Managed Agents(クラウド側)に出す方が合理的だ。
worktreeはセッション削除で消える
すでに触れたが、agent view のセッションを削除すると worktree も消える。リファクタや探索作業で複数 worktree を使い分けている場合は、コミット忘れに対する保険機構が薄い。これは UI が複数並列タスクを抱える性質上、人間が削除トリガを引きやすいことを思うと、Anthropicは将来「pending changes 警告」を強化してくる可能性がある。
disableAgentView で組織単位の無効化
エンタープライズ管理者向けには、disableAgentView 設定または環境変数 CLAUDE_CODE_DISABLE_AGENT_VIEW を使ってバックグラウンドエージェントと agent view 全体を無効化できる。コンプライアンス上「長時間バックグラウンド実行を許可しない」ポリシーを敷きたい現場向けの逃げ道だ。
並列実行はクオータ消費も並列倍。10並列なら10倍消費
ローカル supervisor が前提のため、マシンが落ちたら全停止
組織単位の無効化は
disableAgentView 設定で可能
まとめ — Claude Code は「対話CLI」から「エージェントOrchestrator」へ
Claude Code agent view は、単に新しい便利機能というよりも、Claude Code そのもののポジションを再定義 する一手と読める。
これまで Claude Code は「ターミナル1枚のうえで人間と対話するCLI」だった。ベータの --bg でバックグラウンド実行はできても、それは「1セッションを裏に置く」までで、複数同時実行が前提の UI ではなかった。agent view は次のシフトを起こしている。
- セッションは並列が標準になり、専用 UI で統治される。
- ピークとアタッチの2段操作で「任せる/介入する」を瞬時に切り替えられる。
- supervisor とディスク永続化により、ターミナルやマシンに縛られず走らせ続けられる。
- worktree 自動隔離で並列編集の衝突を未然に防ぐ。
Code with Claude 2026(5月6日のサンフランシスコ基調講演)で Anthropic は「Q3に開発タスクの90%を自律で回せる体制を目指す」と公言した。Dreaming・Outcomes・Multi-Agent Orchestration といったクラウド側の積み増しと並んで、ローカル CLI 側にも「並列が当たり前のUI」が用意された意味は大きい。
開発者の使い方も実際に変わる。claude を立ち上げて1タスクを対話で進めるのではなく、claude agents を常駐させ、1日のタスクを次々と dispatch して、Needs input になった行だけ見にいく。Linear や Notion のスレッド一覧と同じ操作モデルだ。research preview ではあるが、Anthropic の他のプレビュー機能と同様、本流に組み込まれる前提で UI が練られている。
ローカルマシンが10倍働く時代は、agent view から始まる。