Rust製のセルフホストAIエージェント基盤「ZeroClaw」が、2026年2月の公開から約7か月で32,000★を超えた。ただしREADMEの数字をそのまま信じると、実機で困る。本記事はv0.8.5の配布バイナリを実際にダウンロードして起動し、サイズ・プロバイダ数・起動時間・日本語UIの出し方まで自分で測った結果をまとめる。あわせて、名前が似ているOpenClawやAnthropic(Claude)との関係を一次資料で切り分ける。

ZeroClaw v0.8.5 を実機で起動し、SHA256照合・バイナリサイズ確認・日本語ロケール取得までを行うターミナル操作
本記事で実際に行った検証(2026-09-09 / macOS 14・Apple Silicon)。--versionの確認から、locales fetch jalocale = "ja"で日本語CLIが出るまで。

この記事のポイント(30秒でわかるZeroClaw)

正体:単一のRustバイナリで動くエージェントランタイム。フレームワークではなく、設定して動かすもの
規模:★32,746/フォーク4,934/コントリビュータ多数、直近12週で週70〜229コミットと活発(2026-09-09時点、GitHub API実測)
Anthropicとは無関係:Anthropicは接続できる77プロバイダのうち1つ。公式・非公式どちらの提携記述も存在しない
OpenClawのフォークでもないが、zeroclaw migrate openclawで移行を受け入れる設計
実測で分かった落とし穴:本体バイナリは32.8 MiB(READMEは「around 26 MiB」)、日本語UIは設定を書かないと出ない

内部リンクとして、エージェント基盤全体の選び方は「AIエージェントフレームワーク比較2026|LangGraph・CrewAI・Dify等9種をStar数・実コードで検証」にまとめてある。本記事はその中の「セルフホスト型ランタイム」1本を深掘りする位置づけになる。

ZeroClawとは——Rust製のセルフホストAIエージェントランタイム

ZeroClawは、zeroclawという1本の実行ファイルを設定して常駐させるタイプのAIエージェント基盤だ。公式ドキュメントの「What this isn’t」は、自分たちが何でないかを4点で明示している——SaaSではない(ホスト版・課金・アカウントが存在しない)、チャットUIだけの製品でもない、フレームワークでもない(この上にアプリを作るのではなく、設定して繋ぐ)、そしておもちゃでもない。

ZeroClawの4層構成:入力チャネル、エージェントループ、セキュリティポリシーとSOPエンジン、プロバイダ/ツール/メモリ
公式ドキュメントのアーキテクチャ記述と、v0.8.5のCLIサブコマンド構成から起こした4層図。

構造としては、外側に入力経路(チャットプラットフォーム、HTTP/WebSocketゲートウェイ、エディタ連携用のACP=Agent Client Protocol)があり、その内側にエージェントループ・セキュリティポリシー・SOPエンジンが並び、最下層にモデルプロバイダ・ツール・メモリが来る。設定は~/.zeroclaw/config.tomlのTOML1枚に集約される。

配布物にはzeroclaw本体のほかにzerocodeというターミナルUIが同梱されており、CLIで済ませたくない場面はこちらが受け持つ。エディタ・IDE連携はACP(Agent Client Protocol、JSON-RPC 2.0 over stdio)経由で、zeroclaw acpを起動すれば対応クライアントから同じランタイムを叩ける。ブラウザから使うWebダッシュボード(チャット、メモリ閲覧、設定編集、cron管理、ツール検査)も配布物に静的ファイルとして同梱されている。同じエージェントに、CLI・TUI・Web・IDE・チャットアプリという5系統の入口がある構造だ。

実機のzeroclaw --helpで確認できるサブコマンドは34個あり、agent(対話)、daemon(常駐)、gateway(HTTPサーバ)、service(systemd/launchd登録)、cronsophardwareperipheral(GPIO/I2C/SPI/USB)まで並ぶ。Raspberry Piクラスの小型ボードで常時稼働させる想定が、CLIの形にそのまま出ている。

特徴的なのがSOPエンジンだ。MQTT・Webhook・cron・周辺機器イベントをトリガーにした「標準作業手順(Standard Operating Procedure)」を定義し、途中に承認ゲートを挟みながら、中断しても再開できる形で実行する仕組みで、zeroclaw sop配下に定義の検証・表示コマンドが並ぶ。「人間が見ていない時間帯にエージェントが何かを実行する」ことを前提に、その実行を手順として書き下せるようにした設計だと読める。ハードウェア側もPeripheralトレイト経由でGPIO / I2C / SPI / USBを扱い、Raspberry Pi・STM32・Arduino・ESP32を名指しでサポート対象に挙げている。

ZeroClaw v0.8.5の実測値:本体32.8 MiB、プロバイダ77件、起動0.07秒、サブコマンド34個
2026-09-09にmacOS 14(Apple Silicon)で測定。数値はいずれも配布バイナリv0.8.5に対する実測。

セキュリティモデル:既定はsupervised、承認ゲートとツールレシート

自律エージェントをVPSやSBCに常駐させる以上、権限設計は無視できない。ZeroClawの公式ドキュメントは「Security-first, with escape hatches」を4つの信条の2番目に置き、既定の自律度をsupervised——中リスク操作は承認を要求し、高リスク操作はブロック——と定めている。ワークスペース境界、コマンドポリシー、OSレベルのサンドボックス(Linux Landlock / Bubblewrap、macOS Seatbelt、Docker)、そして各アクションに暗号学的な「ツールレシート」を残す仕組みが並ぶ。開発機向けに全部を外すYOLO modeも用意されている。

flowchart TD A["ユーザー/チャネル
Discord・Telegram・メール"] --> B["エージェントループ"] B --> C{"リスク判定
既定: supervised"} C -->|"低リスク"| D["そのまま実行"] C -->|"中リスク"| E["承認を要求
人間が許可するまで停止"] C -->|"高リスク"| F["ブロック"] D --> G["OSサンドボックス
Landlock / Seatbelt / Docker"] E --> G G --> H["ツールレシートを記録
実行の暗号学的な証跡"]

CLI側にも設計が現れている。zeroclaw security配下にはstatus(現在のセキュリティ姿勢の表示)のほか、デーモンのmTLS CAからクライアント証明書を発行するissue-client-cert、失効させるrevoke-client-cert、有効な証明書を一覧するlist-client-certs、リレーのnode-idをローテートするrelay-rotate-node-idが並ぶ。別コマンドとして緊急停止用のestop(engage / inspect / resume)も独立している。遠隔から常駐エージェントを操作する構成を最初から想定した権限設計になっている、と読める。

なお本記事の検証は起動確認までで、サンドボックスの実効性やツールレシートの改ざん耐性は実測していない。ここは公式ドキュメントの記述を紹介したにとどまる点を明記しておく。

ZeroClawとOpenClaw・Anthropic(Claude)の関係を正確に整理する

名前が「Claw」で終わるOSSは複数あり、ZeroClawはそのどれとも混同されやすい。ここは推測でなく、確認できた事実だけを並べる。

Anthropic/Claudeとは無関係だ。 ZeroClawはAnthropicのAPIを叩けるクライアント側の実装で、zeroclaw providersが出力する77のモデルプロバイダのうちanthropicが1行あるにすぎない。READMEにも公式ドキュメントにも、Anthropicとの資本関係・提携・公認を示す記述は存在しない。名前の「Claw」もClaudeの短縮ではなく、Rustの非公式マスコットであるカニ(🦀)に由来する甲殻類系の命名で、README冒頭・Organizationの説明文いずれもその系列で統一されている。

OpenClawのフォークでもない。 GitHub APIのfork属性はfalseで、親リポジトリの記録がない。言語構成も、OpenClawがTypeScript製なのに対しZeroClawはGitHub API上100% Rust(35,734,458バイト)だ。コントリビュータ上位を突き合わせても、ZeroClawの原作者@theonlyhennygodとプロジェクトリード@JordanTheJetはOpenClawの上位コントリビュータ30名に含まれない。

ただし無関係でもない。 ZeroClawのCLIにはmigrateサブコマンドがあり、その配下は現時点でopenclawただ1つ——実機のzeroclaw migrate --helpは「Import memory from an OpenClaw workspace into this ZeroClaw workspace」と表示する。ソースを見ると、OpenClawのSQLiteメモリとMarkdownメモリの両方を読み、openclaw_接頭辞つきのキーで取り込む実装になっている。さらに公式ドキュメントのreference/feature-matrix.mdは、自分たちの機能をOpenClawおよびHermesと並べた対比表を持ち、そのOpenClaw側の値をdocs/book/feature-matrix-parity.tomlという「レビュー可能な事実ソース」として別管理している。乗り換え先として名指しで意識している、という関係が正確なところだ。

観点 ZeroClaw OpenClaw
GitHub zeroclaw-labs/zeroclaw openclaw/openclaw
主言語 Rust(100%) TypeScript
★(2026-09-09時点) 32,746 389,236
ライセンス MIT OR Apache-2.0(デュアル) GitHub上はNOASSERTION表示
リポジトリ作成 2026-02-13 2025-11-24
フォーク関係 fork: false(親なし)
相互参照 migrate openclaw/機能対比表を実装

なお、Google検索で「zeroclaw」と打つと公式ドメイン(zeroclaw.com)ではないサイトが上位に混ざる。実際に3位に出るzeroclaw.netはページのmeta descriptionで自ら「An independent guide to ZeroClaw」と名乗る第三者の解説サイトで、公式リポジトリへリンクしている。一方でZeroClawのREADMEには「Official repository & impersonation notice」という節があり、https://github.com/zeroclaw-labs/zeroclawだけが唯一の公式リポジトリであること、それ以外でZeroClawを名乗るリポジトリ・組織・ドメイン・パッケージは非公認であることが明記されている。インストール元は必ず公式リポジトリのReleasesかそこから配られるinstall.shに限る、と考えておくのが安全だ。

インストールと起動確認:v0.8.5を実機で動かす

Rustのビルド環境は要らない。v0.8.5のGitHub Releasesには20個のアセットが並び、Linux(gnu/musl、x86_64/aarch64/armv7)、macOS(Intel/Apple Silicon、.dmg)、Windows(.msi/.exe)、Android(aarch64)、AppImage、.debがそろっている。CycloneDX/SPDX両形式のSBOM(zeroclaw-v0.8.5-sbom.cdx.json / .spdx.json)に加え、zeroclaw-v0.8.5-verification.tar.gzという検証用アセットまで添付されているのは、この規模のOSSとしては丁寧な部類だ。ダウンロード数を見るとzeroclaw-x86_64-unknown-linux-gnu.tar.gzが突出しており(本記事執筆時点で1,012回、次点のWindows版が153回)、実際の利用の中心はLinuxサーバ上での常駐であることがうかがえる。

本記事では、意図せぬ設定ファイル生成を避けるため、公式のinstall.shではなくtarballを直接落として展開する経路で確認した。実際に流したコマンドは次の通り。

# 1) 配布物とチェックサムを取得(macOS / Apple Silicon の例)
curl -sL -o zc.tar.gz https://github.com/zeroclaw-labs/zeroclaw/releases/download/v0.8.5/zeroclaw-aarch64-apple-darwin.tar.gz
curl -sL -o SHA256SUMS https://github.com/zeroclaw-labs/zeroclaw/releases/download/v0.8.5/SHA256SUMS

# 2) 改ざんが無いか照合(この行が一致しなければ以降に進まない)
shasum -a 256 zc.tar.gz
grep aarch64-apple-darwin SHA256SUMS

# 3) 展開して起動確認
tar xzf zc.tar.gz && ./zeroclaw --version

手元の結果は7036f71b11e3dc8fd4de589b130b08faa792b9b2952e752d975c27bc572f7671で公式SHA256SUMSと一致し、./zeroclaw --versionzeroclaw 0.8.5を返して終了コード0で終わった。--versionの実行時間を5回測ると0.04〜0.11秒(中央値0.07秒)で、常駐前提のCLIとして待たされる感覚はない。

展開して分かることがひとつある。tarballの中身はzeroclaw単体ではなく、zeroclaw(本体)・zerocode(ターミナルUI)・zerorelay(リレー)の3バイナリと、Webダッシュボードの静的ファイル一式だ。「単一バイナリ」という説明はzeroclaw本体について正しいが、配布物としては3本+Web資産が入っている。

macOSで注意する点(実測):tarball内のzeroclawcodesign -dvで調べるとSignature=adhoc(linker-signed)で、Appleの公証(notarization)は付いていない。curlで落とした場合はquarantine属性が付かないためそのまま起動できたが、ブラウザ経由でダウンロードするとGatekeeperに止められる可能性が高い。止められた場合は、配布元が公式リポジトリのReleasesであることをSHA256で確認したうえで、システム設定から個別に許可する運用になる。

起動後に最初に叩く3つのコマンド

エージェントを設定する前に、この3つで「自分の環境で何が使えるか」が分かる。いずれも設定ファイルを書き換えず、APIキーも要らない読み取り専用のコマンドで、実際に本記事の数値はここから取っている。

# ① 接続できるモデルプロバイダの一覧(先頭行に総数が出る)
./zeroclaw providers | head -20

# ② channel add で足せるチャネル種別(READMEの「30+」との差はここで分かる)
./zeroclaw channel --help

# ③ 配布バイナリが署名されているかの確認(macOS)
codesign -dv ./zeroclaw

①の先頭行はSupported model model_providers (77 total):、②の説明文はtelegram, discord, slack, whatsapp, matrix, imessage, email、③はSignature=adhoc(linker-signed)を返した。ここまで確認してからzeroclaw quickstartに進むと、プロバイダ選択で迷わない。

なおquickstartは対話形式でプロバイダを選び、APIキーを受け取って~/.zeroclaw/config.tomlを書き出すコマンドだ。本記事では設定ファイルとキーを生成する副作用を避けるため実行していない。Claude Maxのサブスクリプション認証を使う場合は、claude setup-tokenで発行したトークンをQuickstartのsetup_token経路に貼る、という手順が公式ドキュメントに記載されている(この経路自体は未検証)。

日本語UIは「ある」が既定では出ない——locales fetchlocaleキー

日本語話者にとって一番実用的な発見はここだった。ZeroClawはCLIメッセージ・コマンドヘルプ・zerocode TUIの翻訳を持っているが、バイナリに埋め込まれているのは英語だけで、他言語は実行時にダウンロードする方式になっている。

ZeroClawの日本語UI有効化手順:locales fetch jaで翻訳を取得し、configにlocale=jaを書くと34中26のサブコマンド説明が日本語化される
日本語UIを出すまでの実測手順。翻訳ファイルの取得だけでは切り替わらず、設定キーが必要だった。

実際に動いた手順は2手だ。

# 1) 日本語の翻訳カタログを取得(cli / tools / zerocode の3本が入る)
zeroclaw locales fetch ja

# 2) 設定にトップレベルの locale キーを書く
echo 'locale = "ja"' >> ~/.zeroclaw/config.toml

# 3) 確認
zeroclaw --help

locales fetch ja~/.zeroclaw/data/ftl/ja/配下にcli.ftltools.ftlzerocode.ftlの3ファイルを書き込み、「Installed 3 catalogue(s)」と報告して終わる。ここで--helpを叩いてもまだ英語のままで、locale = "ja"を設定に足して初めて最速で最小のAIアシスタント。という日本語のトップ行に切り替わった。

LANG / LC_ALL では切り替わらなかった。 公式ドキュメントは「localeが未設定ならOSの言語を使う」と説明している。しかし本検証機(macOS 14 / Darwin 23.5.0、defaults read -g AppleLanguages("ja-JP"))では、日本語カタログを取得済みでもlocaleキーを書くまで英語のままだった。LANG=ja_JP.UTF-8LC_ALL=ja_JP.UTF-8を付けても結果は変わらない。日本語で使いたいなら、OS任せにせず設定に明示的に書くのが確実だ(n=1の観測であり、他OS・他バージョンでの挙動は未検証)。

翻訳のカバー率も測った。--helpが出力する34個のサブコマンド説明のうち、日本語化されたのは26個、英語のまま残ったのが8個onboardsecurityagentschannelsbrowseevallocaleshelp)。公式ドキュメントも「未翻訳の文字列は設計上、英語にフォールバックする」と明記しており、挙動としては仕様どおりだ。「完全日本語化」ではなく「主要部分は日本語、一部は英語」と理解しておくのが正しい。

READMEの公称値と実測値のズレ

このOSSに限らず、README冒頭のキャッチコピー的な数値は、実際に配布されているバイナリと一致しないことがある。ZeroClaw v0.8.5では3か所で差が出た。

READMEの公称値と実測値の対比:26 MiBに対し32.8 MiB、~20プロバイダに対し77件、30+チャネルに対しchannel addは7種
いずれも2026-09-09時点のv0.8.5配布バイナリと最新READMEの突き合わせ。差は「誤り」ではなく、測っている対象が違う。

バイナリサイズ:公式ドキュメントは「A typical release build lands around 26 MiB」と書くが、Releasesで配られるmacOS/arm64版のzeroclaw本体は34,434,096バイト=32.8 MiBだった(約26%大きい)。ただしこれは矛盾ではない。同じドキュメントは、機能をfeature flagで切り出す設計(マイクロカーネル分割)を採っており「--no-default-featuresの最小構成ならさらに縮む」とも書いている。26 MiBは特定のビルド構成の話で、Releasesの配布物はより多くの機能を有効にしている、と読むのが自然だ。自分でサイズを最適化したいならソースから機能を絞ってビルドすることになる。

プロバイダ数:READMEは「Anthropic, OpenAI, Ollama, and ~20 others」と書くが、実機のzeroclaw providersは冒頭にSupported model model_providers (77 total):と出す。内訳はPrimary(OpenRouter・Anthropic・OpenAI・Azure・Ollama・Gemini等)、OpenAI互換(Groq・Mistral・xAI・DeepSeek・Together・Fireworks・Perplexity・LM Studio・llama.cpp・vLLM等)、モデルホスティング、中国系(Stepfun・Baichuan・Yi・Hunyuan)、クラウドエンドポイントに分かれる。READMEの「~20」は明らかに控えめだ。

チャネル数:READMEは「30+ channels」だが、zeroclaw channel --helpが「Supported channel types」として挙げるのはtelegram, discord, slack, whatsapp, matrix, imessage, email7種。これも矛盾というより粒度の違いで、channel addというCLI経路で足せるのが7種、コンパイル時に組み込まれる/設定ファイル直書きで使えるアダプタを含めると30種以上、という構造だと考えられる。「30+」を根拠に特定のチャネルが使えると決め打たないほうがいい。使いたい経路がchannel addでサポートされるかは、導入前にzeroclaw channel --helpで確認するのが確実だ。

誰が使うべきか——OpenClaw・Claude Code等との使い分け

メンテナンス状況——止まっているOSSではない

「★は多いが更新が止まっている」パターンかどうかは、star数でなくコミットとリリースの実績で見る(Apache Maka(Incubating)とは|ログを権威にするローカルファーストAIエージェント基盤でも同じ見方をした)。ZeroClawはいずれも健全だった。

指標 実測値(2026-09-09、GitHub API)
★ / フォーク 32,746 / 4,934
最新リリース v0.8.5(2026-09-05公開、4日前)
リリース間隔 v0.8.0〜v0.8.5が2026-06-12〜09-05の約3か月に6本
直近12週のコミット数 週あたり70〜229(合計1,408)
最終push 2026-09-08(前日)
archived / disabled いずれも false
オープンなissue+PR 812(GitHub APIのopen_issues_countはPRを含む)

ライセンス表記の注意:GitHubのリポジトリページとAPIはApache-2.0とだけ表示するが、READMEとLICENSEファイルの実体はMIT OR Apache-2.0のデュアルライセンスで、利用者がどちらかを選べる。加えて「ZeroClawの名称とロゴはZeroClaw Labsの商標」と明記されている。コード自体の利用は緩いが、名前を冠した派生物を配る場合は商標側の制約が別に効く点に注意したい。

同じ「AIエージェント」でも用途が違うので、選び方を整理しておく。

  ZeroClaw OpenClaw Claude Code等のコーディングCLI
主な役割 常駐する個人向けエージェント基盤 同左(TypeScript実装) リポジトリ内のコーディング支援
実行形態 単一Rustバイナリ+OSサービス登録 Node.js環境 ターミナル常駐(プロジェクト単位)
想定ホスト VPS・自宅サーバ・SBC(Raspberry Pi等) PC・サーバ 開発機
モデル 77プロバイダから選択(ローカルLLM含む) 複数プロバイダ ベンダー固定
向く人 Rustバイナリ1本で24時間動かしたい/ローカルLLMで完結させたい Node資産があり周辺エコシステムを重視 コード作業を速くしたい

ZeroClawが向くのは、(1) 自宅サーバやRaspberry Piでエージェントを24時間動かしたい、(2) Node.jsランタイムを持ち込まずバイナリ1本で完結させたい、(3) Ollama・LM Studio・llama.cpp・vLLMなどローカル推論を含む多数のプロバイダを差し替えながら使いたい、(4) Discord/Telegram/メールなど複数の入口を1体のエージェントに集約したい——という条件のどれかに当てはまる人だ。

向かないのは、GUIで完結させたい人、ホスト型SaaSとして運用を任せたい人(そもそも存在しない)、そして日本語の解説記事やコミュニティの厚みを重視する人だ。日本語圏の情報量は、同じ領域でもOpenClawとは|38.6万★AIアシスタントOSSの使い方・インストール・運用を解説で扱ったOpenClawのほうが現時点では厚い。複数のエージェントを並行して回す運用に興味があるなら、herdrとは|使い方・読み方とtmuxとの違い、AIエージェント多重化ターミナルを実測解説のような多重化の道具と組み合わせる選択肢もある。

日本語の情報源も確認しておく。「zeroclaw」の日本語SERP上位10件は、公式GitHubを筆頭に、note.comの派生プロジェクトまとめ、zenn.devの実際に触ってみた記事、Redditの日本語スレッド、デプロイ手順を扱うPaaSのドキュメント、そして海外の解説サイトが並ぶ。公式ドキュメント以外はほぼ全てUGC(ユーザー生成コンテンツ)か第三者の解説で、ベンダー公式サイトが上位を占有している状態ではない。日本語の一次情報はまだ薄く、公式ドキュメントの英語版を読むのが現状もっとも確実だ。

運用に入ってからよく使うことになるのは、zeroclaw doctor(デーモン・スケジューラ・チャネルの鮮度診断)、zeroclaw status(システム状態の詳細表示)、zeroclaw self-test(診断用セルフテスト)、そしてzeroclaw estop(緊急停止の発動・確認・解除)あたりになる。自律エージェントを常駐させる以上、「今どうなっているか」と「今すぐ止める」の2つに専用コマンドが割かれているのは合理的な設計だ。本記事ではこれらのコマンドの存在をヘルプで確認したのみで、実際の常駐運用は行っていない。

検索需要の面でも同じ傾向が出ている。日本国内の月間検索ボリューム(DataForSEO実測)はzeroclawが880、openclawが60,500で約69倍の開きがある。ZeroClawの検索需要は2026年2〜3月(リポジトリ公開直後)の3,600〜4,400をピークに、2026年7月には320まで下がっている。話題性のピークは過ぎており、いま触るなら「流行だから」ではなく上の適合条件に当てはまるかで判断するべきフェーズだ。

まとめ——READMEでなく手元のバイナリを信じる

ZeroClawは、Rustで書かれた本気のセルフホスト型エージェントランタイムだった。★32,746・週70〜229コミット・4日前の最新リリースという実績は、看板倒れではないことを示している。設計思想(ホスト版を作らない、既定をsupervisedにする、機能をfeature flagで切る)も一貫している。

一方で、READMEの数字は3か所とも実機と一致しなかった。バイナリは26 MiBでなく32.8 MiB、プロバイダは「~20」でなく77、channel addが受けるチャネルは「30+」でなく7種。いずれも嘘ではなく測っている対象が違うのだが、この差を知らずに導入計画を立てると見積もりを外す。そして日本語で使いたいなら、zeroclaw locales fetch jalocale = "ja"の2手が必須で、OSの言語設定任せでは(少なくとも本検証機では)英語のままだった。

同種のOSSを評価するときの一般則として持ち帰れるのは、「公称値は起点であって結論ではない」という一点に尽きる。バイナリを1本落として--version--helpを叩くだけで、README何ページ分よりも確実な事実が手に入る。

参照ソース

  • zeroclaw-labs/zeroclaw — GitHub(公式リポジトリ):README、Releases(v0.8.5 / 2026-09-05)、SHA256SUMS、GitHub APIによる★・フォーク・言語構成・コミット統計
  • ZeroClaw Documentation(公式ドキュメント):Philosophy(You own it / Security-first / Minimal / Provider-agnostic)、What this isn’t、Language & translations、Feature and support matrix
  • 本記事の実測:v0.8.5(aarch64-apple-darwin)配布バイナリを2026-09-09にmacOS 14(Darwin 23.5.0 / Apple Silicon)で実行。計測レコードは data/measurements/runs/2026-09-09-zeroclaw.json に登録