「herdr 使い方」を調べている人の多くは、こんな状態のはずです。Claude Codeを3つ、Codexを1つ、別プロジェクトでDroidを1つ——気づけばタブが増えすぎて、どのエージェントが手を止めて自分の入力を待っているのか分からない。herdr(ハーダー)は、この“放牧崩壊”のために作られたRust製のエージェント・マルチプレクサ、ひとことで言えば「AIコーディングエージェントのためのtmux」です。GitHubで25,117スター(2026-08-06時点)を集めています。
WHAT IT REPLACES何を代替するか
タブを覗いて回るのをやめ、待っているエージェントを一覧で見る
tmux や素のタブ
エージェント以前の道具
- どれが入力待ちかはタブを開くまで分からない
- 閉じるとセッションごと消える(素の端末)
- 状態の概念が無い
herdr
エージェント向けマルチプレクサ
- 状態をサイドバーに表示作業中・入力待ち・完了・アイドル
- 永続セッションと再アタッチSSH で入り直しても続きから
- 約10MBの単一RustバイナリGUI・アカウント・テレメトリなし
30秒でわかるherdr
- ・複数のAIコーディングエージェントを1つのターミナルで並列管理するRust製マルチプレクサ
- ・各エージェントの状態(作業中・入力待ち・完了・アイドル)をサイドバーで可視化
- ・約10MBの単一バイナリで、GUI・アカウント・テレメトリなし。SSHで再接続してもセッションは死なない
- ・ソケットAPIでエージェント同士を連携させ、多段の自動オーケストレーションも組める
- ・ライセンスは2026-07-22にAGPL-3.0+商用からApache-2.0へ変更。最新は v0.8.0(2026-08-03)
どのエージェント基盤を選ぶか迷っている方は、AIエージェントフレームワーク比較2026|LangGraph・CrewAI・Dify等9種をStar数・実コードで検証を合わせて読むと、herdrが担う“運用レイヤー”の位置づけが掴みやすくなります。
herdrとは:AIコーディングエージェントのための「ターミナル・マルチプレクサ」
herdrは、複数のコーディングエージェントを1つのターミナルの中でまとめて動かすマルチプレクサです。作者はogulcancelik氏で、90%以上がRustの単一バイナリ。公式は「tmuxがターミナルに対して果たす役割を、herdrはエージェントに対して果たす」と表現しています。
単なる画面分割ツールではありません。tmuxやzellijと同じくペインを永続化しつつ、その上で動くエージェントの“状態”を理解するのが核心です。各ペインは本物のターミナル(実PTY)なので、Claude Codeの対話画面のようなフルスクリーンTUIや色付き差分もネイティブと同じ見え方になります。永続性・状態の認識・軽量な単一バイナリの3つを同時に満たした点が新しく、tmuxでは状態が見えず、GUIの管理アプリは重い・macOS限定・リモートに弱い、とどこかで妥協が生じていました。
herdrの読み方——公式に発音表記は無い
公式のREADMEにも herdr.dev のドキュメントにも、発音を明記した記述はありません。綴りは英単語 herder(牧夫)から e を落とした形で、ドメインも herdr.dev、Xも @herdrdev、READMEの説明も「the runtime your coding agents live on」と herd=群れ の比喩です。英語では herder と同じ発音、日本語では「ハーダー」と読むのが自然です(公式表記ではなく綴りと語源からの推定)。配布チャネルの名前は全部 herdr で揃っているので、綴りに迷ったらこの文字列をそのまま使えば間違いありません。
なぜ必要か:複数エージェントの「放牧崩壊」と状態の可視化
エージェントが1体なら普通のターミナルで足ります。2体、3体と増えると、Aは長い実装の最中、Bは確認を求めて止まっている、Cはすでに終わっている——のに、タブを1つずつ覗かないと分かりません。入力待ちに気づかず放置して全体が詰まり、ノートPCを閉じればセッションごと消え、外出先からSSHで入っても元の状態に戻れない。状態が見えないと人間がボトルネックになり、エージェントを増やすほど遅くなるという逆説が起きます。
AGENT STATES状態のライフサイクル
4つの状態を自動で判定し、入力待ちから先に片づける
サイドバーに色分け
プロセス名と端末出力から推定
- アイドル
- 作業中
- 入力待ち
- 完了
herdrはこのライフサイクルを、プロセス名の照合とターミナル出力のヒューリスティック(入力プロンプトが出て待機している、スピナーが回り続けている、など)で自動判定し、サイドバーに色分けで出します。人間は入力待ちから先に対応するだけです。一部のエージェントには、セッション復元やセマンティックな状態報告を強化する公式連携もあります。
| 機能 | 中身 |
|---|---|
| エージェントごとに本物のターミナル | 独立した実PTY。対話型TUIも崩れない |
| 状態のサイドバー表示 | 作業中・入力待ち・完了・アイドルの4状態 |
| ワークスペース・タブ・ペイン | プロジェクト単位で分け、マウスで追加・分割 |
| 永続セッション | デタッチしても動き続け、任意の端末から再アタッチ |
| 単一バイナリ | 約10MB。Linux・macOS・Windows(ベータ)、外部依存なし |
| スクリプタブル | ローカルのUnixソケットAPIとCLIで自動化 |
対応エージェントは Claude Code・Codex・Devin CLI・GitHub Copilot CLI・Droid・Amp・OpenCode・Grok CLI・Cursor・Kimi Code など15種類以上で、基本は「ターミナルで動くCLIエージェント」なら載ります。
herdr 使い方①:インストールと基本操作
# Linux / macOS(公式インストーラ)
curl -fsSL https://herdr.dev/install.sh | sh
# Homebrew
brew install herdr
# mise(ツールバージョン管理)
mise use -g herdr
# Nix(ビルドせず即実行)
nix run github:herdrdev/herdr
Windows(プレビュー)はPowerShellから入れます。
powershell -ExecutionPolicy Bypass -c "irm https://herdr.dev/install.ps1 | iex"
herdr と打てば常駐サーバーが立ち上がり、以降はそこにアタッチ/デタッチします。リモートで走らせるなら --remote を付け、手元の端末はビューア、実行はリモート側に分けられます。
herdr # 起動(永続サーバーが立ち上がる)
herdr --remote workbox # 事前に登録したリモート名を指定
herdr --remote ssh://you@yourserver:2222 # SSH先を直接指定
操作はtmuxに近く、プレフィックスキー ctrl+b の後にコマンドキーを押します。
| キー | 動作 |
|---|---|
ctrl+b → shift+n |
新しいワークスペースを作る |
ctrl+b → v または minus |
ペインを分割する |
ctrl+b → c |
新しいタブを作る |
ctrl+b → w |
ワークスペースを切り替える |
ctrl+b → q |
デタッチする(セッションは生きたまま) |
プレフィックスが tmux と同じ ctrl+b なので、tmux経験者はほぼ学習コストなしで移れます。インストール手段はいくつもあるので、チーム内では1つに揃えておくとバージョン差異のトラブルを避けられます。
herdr 使い方②:放牧ワークフローとソケットAPI連携
プロジェクトごとに ctrl+b → shift+n でワークスペースを分け、ctrl+b → v でペインを割って、左でClaude Codeに機能実装、右でCodexにテスト作成を指示します。あとはサイドバーだけを見て、入力待ちになったエージェントから順に対応します。長い処理は ctrl+b → q でデタッチして放置し、移動中に別マシンからSSHで再アタッチして結果を見る。人間の仕事は実装そのものから、待っているエージェントの解消に変わります。
ARCHITECTURE入れ子の構造
サーバーが生かし続けるので、端末を閉じても中身は無傷
-
上
セッション
永続のバックグラウンドサーバー。デタッチ/再アタッチの土台
-
中
ワークスペース
プロジェクトやフォルダ単位で文脈を分ける
-
下
タブ/ペイン = 1エージェント
実PTY(portable-pty)。ソケットAPIの操作単位
疑似端末の管理には portable-pty を使い、デタッチ/再アタッチをまたいでプロセスを生かし続けます。並行I/Oは tokio の非同期ランタイムが受け持ちます。セッション=サーバーが独立しているので、見ている端末を落としても中身は無傷で、ペイン=1エージェントという対応がそのまま自動化の単位になります。
herdrはUnixドメインソケット経由のAPIを公開しており、あるエージェントが別のエージェント用のペインを作り、コマンドを実行し、その完了を待つことができます。1つのタスクを実装・テスト・ドキュメントに割って別ペインに投げ、完了したものから親が回収する分担並列や、実装エージェントのコードをレビュー用エージェントに渡して差し戻す検証ループを、追加インフラなしで組めます。サブコマンドやAPIの仕様は更新が入りやすいので、実装時は公式ドキュメントで最新の形を確かめてください。
tmux・zellij・GUI管理ツールとの比較
| 観点 | herdr | tmux | zellij | GUIエージェント管理ツール |
|---|---|---|---|---|
| 主目的 | AIエージェントの多重化 | 汎用ターミナル多重化 | 汎用ターミナル多重化 | エージェントの可視化・管理 |
| エージェント状態表示 | あり(作業中/待ち/完了/アイドル) | なし | なし | あり |
| ペイン永続・再アタッチ | あり | あり | あり | ツールにより異なる |
| リモート/SSH運用 | 得意(--remote) |
得意 | 得意 | 不利なことが多い |
| 実行形態 | 単一Rustバイナリ(~10MB) | 単一バイナリ | 単一バイナリ | GUIアプリ(Electron等) |
| プラットフォーム | Linux/macOS/Win(β) | Linux/macOS | Linux/macOS/Win | macOS専用が多い |
| ライセンス | Apache-2.0(2026-07-22に AGPL-3.0+商用 から変更) | ISC | MIT | 製品による |
汎用の多重化は tmux/zellij、エージェント運用に特化した多重化は herdr という住み分けです。既存のtmux設定を捨てる必要はなく、「エージェントを走らせるとき用の端末」として併用する段階的な導入も現実的です。GUI管理ツールとの最大の差は、ヘッドレスなサーバーやリモート環境でそのまま動くことです。
v0.8.0(2026-08-03)では、走っているバイナリに同梱されたエージェントスキルを出力する herdr --skill、Grok CLI(grok --resume <id>)と Antigravity CLI(agy --conversation <id>)のネイティブ復元、ui.pane_scrollbars = false と ui.tab_bar_position = "bottom" の設定、キーバインドヘルプの / 検索、簡体字中国語のREADMEが入りました。
herdrの導入判断:向いている人・注意点とApache-2.0への再ライセンス
・向いている:CLIエージェントを日常的に2体以上走らせる、長時間実行をデタッチして放置したい、リモートサーバーのエージェントを手元から監視したい、Electronアプリを常駐させたくない、将来エージェント同士の自動連携も考えている
・慎重に:エージェントは常に1体だけ(tmuxや素の端末で十分)、GUIのリッチな管理画面が必須、主環境がWindows(ベータ段階)
ライセンスは2026年7月22日に大きく変わりました。公開当初は AGPL-3.0-or-later(+商用ライセンス)のデュアル構成で、ネットワーク越しの提供でもソース公開義務が及ぶ点が、自社SaaSへの組み込みの障壁でした。これがコミット「chore: relicense herdr under apache-2.0」(2026-07-22)で Apache-2.0 になり、現在のLICENSEファイルはApache License 2.0の本文、GitHubのライセンス判定もApache-2.0です。AGPLを理由に見送っていたなら、その前提はもう成立していません。
導入前チェック
- ・ライセンスはApache-2.0(2026-07-22変更)。AGPL時代の解説記事を読んだ場合は前提を読み替える
- ・Windows運用はベータ。主環境がWindowsなら検証から始める
- ・最新は v0.8.0(2026-08-03)で0系のまま活発に動いている。キーバインドやCLIの細部が変わりうるので、チームではバージョンを固定し、変更点を見てから上げる
“放牧崩壊”に心当たりがあるなら、curl -fsSL https://herdr.dev/install.sh | sh で入れて、いつものClaude CodeやCodexを2〜3体、herdrの中で走らせてみてください。エージェント運用を本番品質へ上げる設計思想は本番投入できるAIエージェントの12原則、エージェントに記憶を持たせて長時間タスクを回す発想はエージェントの永続メモリ入門が参考になります。
参照ソース
・herdrdev/herdr (GitHub) — 公式リポジトリ。README・リリースノート・対応エージェント一覧の一次ソース。
・herdr 公式サイト・ドキュメント — インストール・概念(Sessions/Workspaces/Panes)・設定の公式ドキュメント。
・herdr — command-line utility in Rust (lib.rs) — Rustクレートとしてのメタ情報・バージョン。
・Herdr in about 6 minutes(Jilles / YouTube) — 公式サイト掲載の6分ウォークスルー。本記事FVの動画。
・This Tmux “Rewrite” Is Actually Brilliant(DevOps Toolbox / YouTube) — tmux比較の第三者レビュー。
・herdr: Is This the Ultimate Agent Multiplexer?(Better Stack / YouTube) — エージェント多重化としての評価レビュー。





