make help と make status を実行した様子(起動前の状態)。.claude/agents/ には14人分のペルソナ定義が並び、make start で30秒間隔のループが始まる。設定値はすべて公式ソースコードの既定値。「AIエージェントに会社を丸ごと運営させる」——SF的に聞こえるこの発想を、自宅のPC上で24時間動くシェルスクリプトのループとして実装したOSSが Auto Company(MaxMiksa/Auto-Company、⭐1,345) です。14人の専門家AIエージェント(CEOはジェフ・ベゾス、投資判断の批評役はチャーリー・マンガー……といった具合に実在の専門家の思考モデルを模したもの)が、製品のアイデア出しから実装・デプロイ・集客までを、人間の承認を待たずに回し続けることを目指します。
ただし、名前やREADMEの勢いを鵜呑みにするのは禁物です。本記事は誇張された宣伝文句ではなく、実際にリポジトリをcloneし、ループのソースコード(auto-loop.sh)まで読んで検証したうえで、「これは結局何をするものか」「本当に使えるのか」を正直に整理します。結論を先に言えば、これは新しいエージェントフレームワークではなく、Claude Code/Codex CLI を“エンジン”として繰り返し叩く薄いオーケストレーション層です。その割り切りこそが面白さであり、同時に注意すべき点でもあります。
- ・Auto Companyは14人の専門家ペルソナAIが自宅PCで24時間・無人で「会社」を回すことを目指すOSS(Python/Shell中心)。
- ・実体はフレームワークではなく、Claude Code/Codex CLI を30秒間隔で叩き続ける薄いループ層。状態は
consensus.md1枚だけ。 - ・「議論だけの周回を禁止」する強制収束フローと、サーキットブレーカ・利用上限待機・ロールバックといった耐障害ロジックは実装済みで堅実。
- ・一方でライセンスはMIT表記のみでLICENSEファイルが無く、コントリビューターは実質1人(バス係数=1)、直近約2か月は更新なし。
- ・既定で bypassPermissions / danger-full-access。承認なしでホスト上を触るため、隔離環境・専用アカウントが前提。
本記事は、Auto Companyを使えば儲かる・稼げると勧めるものではありません。扱うのは「14人のAIエージェントを、どんな仕組みで24時間自律稼働させているか」という技術的な設計と、その実態(活性度・ライセンス・安全性)の正直な評価です。会社憲章のミッションは「合法的にお金を稼ぐ」ですが、これは目標であって収益の実績ではありません。実行にはモデル利用枠のコストと、無人でホスト環境を操作するリスクが伴います。実験は隔離した環境で、内容を理解したうえで行ってください。
複数のAIに別々の専門家の役を割り当て、意見を1つの意思決定へまとめるという発想は、いまマルチエージェント設計でもっとも面白いテーマの一つです。その全体像を俯瞰したい方は、まず各フレームワークの位置づけを整理した AIエージェントフレームワーク比較2026|LangGraph・CrewAI・Dify等9種をStar数・実コードで検証 を土台にすると、本記事の「フレームワークではない」という主張がより立体的に理解できます。この記事は 2026年7月20日(JST)時点 の公式リポジトリ(README / CLAUDE.md / PROMPT.md / ソースコード)と GitHub API の実測値をもとにしています。
Auto Companyとは?14人のAIエージェントが会社を24時間自走させるOSS
Auto Company をひとことで言うと、「AIのCLIツールを、終わらせずに永遠に呼び続けるための仕組み」 です。ふつうClaude CodeやCodex CLIは、1回の対話が終わればセッションも終わります。Auto Companyはそこに auto-loop.sh という無限ループ をかぶせ、「1回の呼び出し(=1サイクル)が終わったら、少し眠ってまた次の呼び出しを始める」を延々と繰り返します。これにより、単発の会話だったAIが「24時間働き続ける従業員」に化けるわけです。
各サイクルでAIは、まず 共有メモリ memories/consensus.md を読んで「いまどこまで進んでいて、次に何をすべきか」を把握します。そして14人のエージェントから3〜5人のチームを動的に編成し、調査・意思決定・コード実装・デプロイ・マーケティングのいずれかを実行し、最後に consensus.md を書き戻して次のサイクルへバトンを渡します。README の言葉を借りれば、「You start a loop. The AI team wakes up, reads shared consensus memory, decides what to do, forms a 3-5 person squad, executes, updates consensus memory, then sleeps briefly. Then it repeats.(ループを起動すると、AIチームが起きて共有メモリを読み、やることを決め、3〜5人の分隊を組み、実行し、メモリを更新して、少し眠る。そしてこれを繰り返す)」 という素朴な設計です。
ここで大事なのは、Auto Companyがゼロから作ったAIモデルやフレームワークではないという点です。実際のコードを読むと、1サイクルの中核は次のように、単に既存のCLIをヘッドレス(対話なし)で叩いているだけだと分かります。
・Claude エンジンなら claude -p "<プロンプト>" --output-format json --permission-mode bypassPermissions
・Codex エンジンなら codex exec -c sandbox_mode="danger-full-access" "<プロンプト>"
つまり、ファイルの読み書き・シェル実行・git操作・デプロイといった「実際に手を動かす能力」はすべて下層のCLIから継承しています。Auto Company が足しているのは、「いつ・どんなプロンプトで・どんな状態を渡して呼ぶか」という制御と、失敗したときの立て直しです。この割り切りのおかげで、コード量は驚くほど小さく、Python 約188KB・Shell 約50KB・PowerShell 約26KB・TypeScript 約61KB(サンプル製品を含む)に収まっています。
make dashboard で起動)。サイクル状態・コスト消費・エージェント活動を可視化する。画像は公式リポジトリ presentation/dashboard-showcase.png より。読者の多くが気にする「結局これで何ができるのか」に率直に答えると、現状は 「AIが自律的にプロダクトの雛形を作り、意思決定の記録を残していく様子を、自分のPCで観察・操縦できる実験装置」 というのが誠実な表現です。リポジトリの projects/snapog/ には、エージェントチームが生成したサンプル製品「SnapOG」(Cloudflare Workers上で動くOG画像生成API、無料/Pro/Businessの料金階層まで設計済み)の骨組みが含まれています。これは「パイプラインが製品の形まで到達できる」証拠ではありますが、稼働中の収益事業ではなく、あくまで生成物のサンプルである点は誤解しないようにしましょう。
仕組み:consensus.md 1枚でつながる自律ループと5層アーキテクチャ
Auto Company の技術的な肝は、複雑な仕組みを徹底的に避けていることにあります。多くのマルチエージェント基盤がベクトルデータベースや専用のメモリ管理を導入するのに対し、Auto Company は サイクルをまたぐ状態を memories/consensus.md という1枚のMarkdownファイルに圧縮します。各サイクルの開始時に読み込み、終了前に書き戻す——この1ファイルが、チーム全員で受け渡す「バトン」です。
consensus.md を軸に、編成→実行→書き戻しを30秒間隔で繰り返す。consensus.md には「Current Phase(Day 0 / Exploring / Building / Launching / Growing)」「What We Did This Cycle」「Key Decisions Made」「Active Projects」「Next Action」「Company State(Product / Revenue / Users)」といった決まった見出しが並びます。人間が介入したいときは、このファイルの Next Action を書き換えるだけ。次のサイクルで起きたAIチームがそれを読み、方針を即座に転換します。これが Auto Company の「操縦桿」であり、ファイルベースの Human-in-the-Loop(HITL)です。
耐障害ロジックは意外としっかりしている
「ただCLIを叩くだけ」と侮ってはいけません。auto-loop.sh を読むと、無人で回し続けるための 失敗処理が丁寧に作り込まれていることが分かります。1サイクルごとに consensus.md をバックアップし、サイクルが失敗すれば書き戻す(ロールバック)。API利用上限(429やrate limitの文字列)を検知したら既定で1時間待機。連続で5回失敗するとサーキットブレーカが作動し、5分間クールダウンしてからカウンタをリセットして再開します。各サイクルには30分(1800秒)のタイムアウトがあり、ウォッチドッグが超過プロセスを強制終了します。
タイムアウト 1800秒] C --> D{正常終了かつ
consensus.md 検証OK?} D -->|Yes| E[進捗を確定
error_count=0] D -->|No| F[consensus.md をロールバック] F --> G{利用上限
429 を検知?} G -->|Yes| H[3600秒 待機して再開] G -->|No| I{連続エラー
5回に到達?} I -->|Yes| J[サーキットブレーカ作動
300秒クールダウン] I -->|No| K[30秒眠って次サイクルへ] E --> K H --> K J --> K K --> A
さらに細かい防御も入っています。consensus.md は「# Auto Company Consensus と ## Next Action と ## Company State の見出しを含むか」を検証され、条件を満たさなければ失敗扱いでロールバックされます。また、生成されたシェルコマンドが誤って .gitignore を書き換えたり、リダイレクトの失敗で = から始まる空ファイルをルートに作ってしまうケースを検知して自動で復元・掃除するガードまであります。プロンプトには「ヒアドキュメント(cat <<EOF)でファイルを書くな、apply_patch を使え」「> や >= で始まる行をシェルで実行するな」といった但し書きが注入されており、これは裏を返せば実運用で実際に踏んだ失敗を、地道にパッチしてきた痕跡でもあります。堅実さと「まだ荒削り」の両方が同居しているのが正直なところです。
5層アーキテクチャで読み解く「フレームワークではない」設計
READMEは自らの構成を5層のアーキテクチャとして説明しています。一次情報から再構成すると次のようになります。
最下層のL1(実行エンジン)が Claude Code / Codex CLI そのものである点が、この設計を「フレームワーク」から分けます。一般的なエージェントフレームワークは、LLMのAPIを直接叩き、ツール実行やファイルI/Oを自前で実装します。対してAuto Companyは、すでにツール実行能力を持つ成熟したCLIを土台に据え、その上に「繰り返し」と「役割」と「収束ルール」だけを乗せているのです。この「既存の実行基盤の上に薄く役割と並列性を乗せる」という発想は、フレームワーク各種との違いを実コードで整理した 並列エージェントとは?Orcaの仕組みとLangGraph・CrewAI・OpenHands・Devin比較 と併せて読むと、「フレームワークではない」という位置づけがより鮮明になります。Auto Company は、この“ループで回す”思想を「会社」という題材へ最大限に振り切った実例と言えます。
14人の専門家ペルソナと「議論で終わらせない」強制収束フロー
Auto Company の“顔”は、.claude/agents/ に定義された 14人の専門家ペルソナです。README曰く「これは『あなたは一般的な開発者です』ではなく、『あなたはDHHです』というスタイルのロールプロンプトだ」。実在の第一人者の思考モデルを注入することで、判断にビジネス的・工学的な深みを持たせる狙いです。
・戦略層:CEO=ジェフ・ベゾス(PR/FAQ・フライホイール・Day 1思考)/CTO=ヴァーナー・ヴォゲルス(障害前提設計・API優先)/批評役=チャーリー・マンガー(逆張り・事前検死・誤判断チェックリスト)
・プロダクト層:プロダクト設計=ドン・ノーマン/UI=マティアス・デュアルテ/インタラクション=アラン・クーパー
・エンジニアリング層:フルスタック=DHH/QA=ジェームズ・バッハ/DevOps=ケルシー・ハイタワー
・ビジネス層:マーケティング=セス・ゴーディン/オペレーション=ポール・グレアム/セールス=アーロン・ロス/CFO=パトリック・キャンベル
・インテリジェンス層:リサーチ=ベン・トンプソン(アグリゲーション理論・バリューチェーン分析)
面白いのは、これらのペルソナ定義(.claude/agents/*.md)や中核プロンプト(PROMPT.md)が中国語で書かれている点です。作者はカーネギーメロン大学(CMU)在籍のZheyuan (Max) Kong氏で、READMEは英語+中国語(README-ZH.md)のバイリンガル。日本語話者が中身をカスタマイズする際は、この点を把握しておくと読み解きやすいでしょう。加えて、リサーチ・財務モデリング・SEO・セキュリティ監査など 30以上の再利用可能なスキル(.claude/skills/)が同梱され、起きたエージェントが必要に応じて「一時的に読み込む」プラグイン式になっています。
「議論だけ」を許さない強制収束
自律エージェントを放置すると、延々と会議だけして何も出荷しない——という失敗はよく知られています。Auto Company はこれを PROMPT.md にハードコードした収束ルールで防ぎます。優先順位は明快に 「Ship > Plan > Discuss」。具体的には次のような流れです。
・Cycle 1:各エージェントがアイデアを1つずつ出し、トップ3を選ぶ
・Cycle 2:第1候補について、マンガーが事前検死、トンプソンが市場検証、キャンベルが採算計算 → GO / NO-GO を判定
・Cycle 3以降:GOならリポジトリを作ってコードを書き始める。議論の継続は禁止。NO-GOなら次の候補へ
・同じ Next Action が2周連続で出たら「詰まっている」と見なし、方向転換か範囲縮小で強制的に出荷へ倒す
「新製品評価」「機能開発」「ローンチ」「価格設計」「週次レビュー」「機会発見」の6つの標準ワークフローには、それぞれ担当エージェントの連鎖(例:リサーチ→CEO→マンガー→プロダクト→CTO→CFO)が定義されています。この「役割の連鎖+出荷への強制」という設計は、投資家ペルソナに議論させて1つの判断へ統合する AI Hedge Fund徹底解説|13人の投資家AIがLangGraphで議論する教育目的シミュレータ とよく似た発想であり、両者を並べると「複数ペルソナの意見をどう収束させるか」という共通課題の異なる解き方が見えてきます。
Auto Companyは既存の自律・マルチエージェントOSSとどう違うのか(比較表)
Auto Company の立ち位置は、「エージェントフレームワーク」でも「クラウドの自律エージェント」でもありません。既存の代表的なアプローチと比べると、その特徴がはっきりします。以下は設計思想レベルの位置づけ比較であり、優劣ではなく「何が違うか」を整理したものです。
| 観点 | Auto Company | 汎用エージェントFW (LangGraph / CrewAI 等) |
自律ループ単体 (AutoGPT 系) |
ソフト会社シミュレータ (ChatDev / MetaGPT 等) |
|---|---|---|---|---|
| 実体 | 既存CLIを回す薄いShell層 | LLM APIを叩くライブラリ/SDK | 自律型の単体エージェント | 役割分担のソフト開発フロー |
| 実行基盤 | 自宅PCの常駐デーモン | 自前のPython等アプリ | 自前スクリプト/サービス | 自前Pythonアプリ |
| 状態の持ち方 | consensus.md 1枚のMarkdown |
フレームワーク依存(グラフ状態等) | タスクリスト/メモリ | 会話ログ・成果物 |
| エージェント構成 | 14人の実在専門家ペルソナ | 自分で定義 | 単体〜少数 | CEO/CTO/開発者等の役職 |
| 主目的 | 「会社を回して稼ぐ」全業務 | 汎用(自分で用途を作る) | 汎用タスク自動化 | ソフトウェアを作る |
| 人の関与 | ファイル編集で介入(既定は無人) | 実装者が設計 | 最小限 | 起動時の要件指定が中心 |
| エンジン | Claude Code / Codex CLI | 任意のLLM | 主にOpenAI系 | 主にOpenAI系 |
ポイントは、Auto Company が 「AIに何をさせるか(=会社経営という広い業務)」を強く決め打ちし、その代わり実行の重い部分は既存CLIに丸投げしていることです。フレームワークが「部品を提供するから自分で組め」という思想なのに対し、Auto Company は「完成形の運用ループを提供するから、あとは方向だけ指示しろ」という思想に近い。この振り切りは、自己改変・自律稼働の安全境界を扱う ouroboros解説|自分のコードを書き換える自己改変AIエージェントの仕組みと安全境界 のような「どこまでAIに任せ、どこで人が止めるか」という議論と地続きです。Auto Company の場合、その“止める”仕組みが consensus.md の編集とサーキットブレーカ、そしてCLAUDE.mdのガードレールに集約されています。
実際に触って分かった「使えるのか」——ライセンス・活性度・安全性を正直に
star数が四桁あると期待が先行しますが、当サイトの流儀として star数だけで飛びつかず、リポジトリの体力を実測しました。GitHub API(2026-07-20時点)で見た実態は次の通りです。
まず中身は伴っています。累計約502コミットは、スタブ同然のリポジトリやフォーク量産(fork farming)とは明確に異なり、2〜3か月にわたる集中的な開発の跡が見えます。リリースも v1.0.0 と v1.1.0 の2本が切られ、macOS(launchd)・Windows/WSL(systemd –user)・クロスプラットフォームのダッシュボードまで実装されています。star 1,345 に対してコミット502という比率は健全で、「注目だけ集めて中身が無い」タイプではありません。
一方で、正直に伝えるべき弱点も明確です。
・バス係数=1:コントリビューターは実質1人(作者本人)。単独開発は動きが速い反面、作者が離れれば保守が止まるリスクを常に抱えます。
・直近は静穏:最終コミットは2026-05-20で、約2か月アップデートがありません(本記事執筆時点)。放棄とまでは言えませんが、活発とも言い切れない段階です。
・Issue/Discussionが手薄:オープンIssueは0、Discussionsも無効。コミュニティによる検証・議論の蓄積は乏しい状態です。
作者情報の透明性は比較的高い部類です。READMEには作者名(Zheyuan (Max) Kong氏、カーネギーメロン大学)と連絡先メールが明記され、フォークではない自作リポジトリとして開発が続いてきました。誰が作っているか分からない匿名リポジトリよりは信頼の土台があると言えます。とはいえ「会社 自動化」というテーマの性質上、「動く実験装置」と「そのまま任せられる本番システム」の距離は依然として大きいという現実は変わりません。派手なREADMEの文言(「fully autonomous」「without human intervention」)を額面通り受け取るのではなく、いま手元で何がどこまで動くのかを、consensus.md と logs/ を自分の目で追いながら確かめる姿勢が要ります。実際、ループのプロンプトに後から注入された数々の但し書き(ヒアドキュメント禁止・不正リダイレクト対策など)は、その「理想と現実の距離」を作者自身が地道に埋めてきた証拠でもあります。
ライセンス:MITと書いてあるが、LICENSEファイルが無い
最も注意すべきはライセンスです。READMEのバッジには「License: MIT」とあり、package.json にも "license": "MIT" と記載があります。ところが、リポジトリのルートに実際の LICENSE ファイルが存在しません(LICENSE / LICENSE.md / LICENSE.txt をいずれも確認し、すべて404)。GitHubもライセンスを検出しておらず(API上 license: null)、派生元として謝辞に挙げられている nicepkg/auto-company も同様にLICENSEファイルがありません。
これは「作者を疑う」という話ではなく、利用者側のリスク管理の問題です。バッジや package.json の記載は「作者がMITを意図している」ことを強く示しますが、正式なMITライセンスは著作権者名と無保証条項を含むライセンス文の掲示によって成立します。ライセンス文が無い状態は、著作権法の既定に照らすと全権利留保(all rights reserved)と解釈され得ます。個人が手元で試す分にはまず問題になりませんが、商用利用・再配布・フォーク公開を考えるなら、作者へLICENSEファイルの追加を依頼するか、書面で許諾を得てからにするのが安全です。
安全性:既定で「承認なし・全権限」でホストを触る
Auto Company は設計上、高い自律性と引き換えに強い権限を要求します。同梱の .claude/settings.json は "defaultMode": "bypassPermissions" を既定にし、Bash Edit Write WebFetch などを許可リストに入れています。ループ側も既定で Claude の bypassPermissions / Codex の danger-full-access を使い、承認プロンプトなしでホスト環境上のファイル操作・シェル実行・git・デプロイを実行します。READMEも「System-level operations occur directly in the host environment(システムレベルの操作がホスト環境で直接起きる)」と、実質的なサンドボックスが無いことを認めています。
CLAUDE.md には「GitHubリポジトリを削除しない」「Cloudflareプロジェクトを削除しない」「~/.ssh や ~/.config を触らない」「main/masterへ強制プッシュしない」といったガードレールが宣言されていますが、これらはプロンプト上の約束事であり、OSレベルの強制ではありません。gh や wrangler の認証情報がある環境では、GitHubリポジトリ作成やCloudflareデプロイのような外部への不可逆な操作も無人で走り得ます。したがって、試すなら隔離した環境・使い捨ての専用アカウント・最小権限のトークンを用意し、CLAUDE.mdのガードレールを自分の環境に合わせて厳格化することが前提になります。
導入手順とコスト設計(macOS / Windows WSL)
ここでは実際に動かす場合の最小手順を、公式READMEに沿って示します。前提として、Claude Code か Codex CLI のいずれかがインストール済みかつ認証済みで、利用枠が残っている必要があります。まずは常駐(デーモン)ではなく、出力が見えるフォアグラウンド実行から始めるのが安全です。
macOS の場合:
# 前提: Codex CLI か Claude Code が認証済み・利用枠あり
git clone https://github.com/MaxMiksa/Auto-Company.git
cd auto-company
# フォアグラウンドで起動(ライブ出力)
make start
# 状態確認・ライブログ・停止
make status
make monitor
make stop
Windows(WSL2/Ubuntu)の場合は、PowerShellが制御層、実行の中核はWSL内という構成です:
# 前提: WSL2(Ubuntu)内に Claude Code か Codex CLI と jq/make を用意
git clone https://github.com/MaxMiksa/Auto-Company.git
cd auto-company
# 既定エンジン=claude で起動(PowerShell経由でWSLのデーモンを管理)
.\scripts\windows\start-win.ps1
# エンジンを明示指定 / 状態確認 / 停止
.\scripts\windows\start-win.ps1 -Engine codex
.\scripts\windows\status-win.ps1
.\scripts\windows\stop-win.ps1
コスト設計はいくつかの環境変数で調整できます。ループ間隔は既定30秒(LOOP_INTERVAL)、1サイクルのタイムアウトは既定1800秒(CYCLE_TIMEOUT_SECONDS)、サーキットブレーカの閾値は5回(MAX_CONSECUTIVE_ERRORS)。間隔を長くすればモデル消費は減りますが、進みも遅くなります。エンジンやモデルは ENGINE=claude|codex・MODEL=sonnet などで切り替えます。無人で24時間回すと利用枠を継続的に消費するため、まずは短時間のフォアグラウンド運用でコスト感を掴み、consensus.md の Next Action で方向を確認しながら、必要に応じてデーモン化(macOSは make install、WSLは systemd –user)へ段階的に移行するのが現実的です。
なお、macOSはスリープでプロセスが止まることがあるため、長時間運用には make start-awake(caffeinate 併用)が用意されています。細かな運用コマンドは make help で一覧できます(本記事冒頭のターミナル画像がその実行結果です)。
まとめ:どんな人が試すべきか
Auto Company は、「AIエージェントに会社を丸ごと運営させる」という壮大なテーマを、驚くほど素朴な道具立て(無限ループ+Markdown 1枚+既存CLI)で実装したOSSです。ベクトルDBも独自フレームワークも使わず、consensus.md をバトンに14人のペルソナを回し、「議論で終わらせない」収束ルールとサーキットブレーカで無人稼働を支える——この割り切りの美学が最大の見どころです。耐障害ロジックは想像以上に丁寧で、単なるネタリポジトリではありません。
一方で、手放しで勧められるものでもありません。ライセンスはMIT表記のみでLICENSEファイルが無く(商用は要確認)、実質1人の単独開発で直近は静穏、そして既定で承認なし・全権限という強い自律性はそのまま強いリスクでもあります。したがって現時点でのおすすめは、次のような人です。
・自律エージェントの「ループ設計」を学びたい人:auto-loop.sh は、失敗処理・状態管理・収束ルールの実装例として読む価値が高い
・マルチエージェントの役割分担を実験したい人:14ペルソナ+強制収束フローを、自分の題材に組み替える土台になる
・隔離環境で安全に遊べる人:使い捨てアカウント・最小権限・厳格なガードレールを用意できることが前提
・逆に、すぐ稼ぐ手段を求める人・本番の重要環境で無人運用したい人にはまだ早い
「AIに仕事を任せる」時代の実験装置として、Auto Company は覗く価値のある一台です。動かすなら内容を理解し、隔離し、コストと権限を制御したうえで——という前提を、どうか忘れないでください。
参照ソース
・MaxMiksa/Auto-Company(公式GitHubリポジトリ・README)
・Auto Company — CLAUDE.md(会社憲章:ミッション・ガードレール・チーム構成)
・Auto Company — scripts/core/auto-loop.sh(自律ループの実装)
・nicepkg/auto-company(謝辞に挙げられた派生元の初期macOS版)
・Claude Code(Anthropic公式ドキュメント)
・OpenAI Codex CLI(npm 公式パッケージ)