AIエージェントを業務システムとして組める人材を、クラウドベンダー自身が資格として認定しはじめた。Google Cloudは新しい認定資格 Professional Agentic Architect のベータを、2026年9月3日に登録開始する。ADK・MCP・A2A・Antigravity——このサイトで日々扱っているツール群が、そのまま出題範囲として名前で列挙された初のベンダー認定である。

しかも構成が変わっている。選択式試験に加えて「ハンズオンラボ」が必須の2部構成で、有効期限は1年。既存のGoogle Cloud Professional認定(2時間・50〜60問・有効期限2年)とは別物のフォーマットだ。本記事は公式試験ガイドPDFを一次情報として、配点・在スコープツール・他認定との差分を構造化する。

AIエージェントの実装手段そのものを比較したい方は AIエージェントフレームワーク比較2026|LangGraph・CrewAI・Dify等9種をStar数・実コードで検証 をご覧ください。

Professional Agentic Architect 出題範囲5セクションの配点。Section 3が約33%で最大
公式試験ガイド(PDF)記載の配点。カスタムエージェント開発が約33%で最大の重みを持つ(出典: Professional Agentic Architect Certification exam guide

30秒でわかる

・Google Cloudの新認定 Professional Agentic Architect のベータ登録が 2026年9月3日 開始。受験料は 120米ドル(正価200米ドルの40%引き)
選択式(Pearson配信・約80問・3時間)+ Google Skills上のハンズオンラボ の2部構成。他のGoogle Cloud認定にはない形式
言語は英語のみ。Professional Cloud Architect等が日本語対応なのに対し、この認定は日本語で受けられない
有効期限は1年(Cloud Architectは2年、Generative AI Leaderは3年)
・出題範囲は5セクション。最大は カスタムエージェント開発が約33%。ADK・Agent Runtime・MCP・A2A・Model Armor など28個のツールが在スコープとして明示されている
・日本には同名の別資格(AICX協会「AIエージェント・アーキテクト」)が存在する。発行元も対象者も別物
筆者は未受験。本記事は受験記ではなく、公式ページと公式試験ガイドPDFの一次情報を突き合わせて構造化したもの

Professional Agentic Architectとは——Google Cloudが認定する「AIエージェント実装者」

Google Cloudの認定ページは、この資格の対象者を次のように定義している。Google Cloud上で自律的でAI駆動のエージェント型ワークフローを設計・管理する技術実務者であり、信頼性・パフォーマンス・コスト・セキュリティ・スケーラビリティを考慮しながらエージェント型ソリューションを構築する経験豊富な開発者またはアーキテクト、というものだ。

抽象的な定義に見えるが、公式ページが列挙する「評価される能力」を並べると輪郭がはっきりする。

・ローコードツールを使ったエージェント構築
・アプリケーション開発におけるコーディングエージェントの活用
・カスタムエージェントの開発
・エージェント型ワークフローの評価とデプロイ
・エージェント型ワークフローのセキュリティとガバナンス

注目すべきは2番目だ。「コーディングエージェントを使ってアプリケーションを開発する能力」が、ベンダー認定の評価対象として正面から入っている。従来のクラウド認定は「クラウドサービスの設計・運用」を問うものであって、開発者がどんな道具で書いているかは問わなかった。この認定は道具の使い方そのものを問う。

前提資格はないが、推奨経験は重い

公式ページの記載は明快で、Prerequisites: None——前提資格は不要である。ただし推奨経験として次の2つが挙がっている。

・クラウドソリューションの構築・テスト・デプロイ・管理の実務経験 3年以上
・Google Cloud上でのエージェント型ソリューション構築経験 1年以上

後者が効いてくる。Google Cloudでエージェントを1年以上作っている、という条件は2026年8月時点ではかなり尖った要件だ。ADK(Agent Development Kit)やAgent Runtimeといったプロダクト自体が新しく、「1年以上の経験」を満たす母集団はまだ厚くない。ベータの位置づけを考えると、初期の受験者はGoogle Cloudのエージェント基盤を早期採用していた層に偏ることになる。

ベータ試験の主要数値:受験料120ドル、約80問、3時間、有効期限1年
公式ページ「Beta exam details」に記載された数値(2026年8月27日時点で取得)

2部構成という珍しい形式

この認定の最大の構造的特徴は、認定が2つのパートで構成される点にある。公式ページは以下のように説明している。

Pearson配信の監督付き選択式試験 — 概念的な知識、システム設計上の選択、アーキテクチャ標準を評価する
Google Skills上で受けるハンズオンラボ — 実際の実行力とコーディング能力を検証する

筆者が同日に4認定(Professional Cloud Architect・Professional Machine Learning Engineer・Professional Cloud Developer・Generative AI Leader)の公式ページ本文を hands-on / lab で検索したところ、ヒットはすべて「学習リソースとしてのハンズオンラボ」か「推奨される実務経験(hands-on experience)」の文脈で、認定の構成要素としてラボを要求する記述は1件も無かった。Cloud Architect にはケーススタディがあるが、これは選択式試験の内側の話である。ラボを試験と別枠で必須にするのは、少なくともこの4認定との比較では新しい形式と言える。

ベータ受験者への結果通知が「試験ウィンドウとラボウィンドウの両方が終了してから4〜6週間後」と書かれていることからも、選択式とラボがそれぞれ独立した実施期間を持つ設計であることが読み取れる。

flowchart TD A["2026年9月3日
ベータ登録開始"] --> B["パート1
選択式試験(Pearson)
約80問・3時間・英語"] A --> C["パート2
ハンズオンラボ
(Google Skills)"] B --> D["試験ウィンドウ終了"] C --> E["ラボウィンドウ終了"] D --> F["両方の終了から
4〜6週間後に結果通知"] E --> F F --> G["合格:Google Cloud Certified
Professional Agentic Architect"] F --> H["不合格:ベータの再受験は不可
GA版を待つ"]

「AIエージェント・アーキテクト」は日本に2つある——AICX協会の資格との判別

ここで日本語話者が確実に踏む落とし穴を先に潰しておく。「AIエージェント・アーキテクト」という名前の資格は、2026年8月時点で日本に2つ存在する。

一般社団法人AICX協会は2026年2月13日のプレスリリースで、「AIエージェント・ストラテジスト」「AIエージェント・アーキテクト」という2つの資格制度の創設を発表している。戦略設計と実装を分離した人材基準を提示するもので、同協会は3年で約1万人の受験を見込むとしている。

つまり日本語で「AIエージェント アーキテクト 資格」と検索したとき、Google Cloudの認定を探している人と、AICX協会の国内資格を探している人が混在する。両者は発行元も対象者も試験形式もまったく違う。

比較軸 Google Cloud
Professional Agentic Architect
AICX協会
AIエージェント・アーキテクト
発行元 Google Cloud(米国・ベンダー認定) 一般社団法人AICX協会(日本・団体認定)
想定対象 経験ある開発者・アーキテクト 情報システム企画担当・社内SE・自動化担当
中心スキル コードを書いてGoogle Cloud上に構築(ADK・MCP・A2A) ノーコードツールでのAIエージェント構築・API連携
試験形式 選択式 約80問(3時間)+ハンズオンラボ 未公表(2026年8月27日時点)
実施時期 ベータ登録 2026年9月3日開始 追って公表(姉妹資格のストラテジストは2026年6月中旬に第1回)
受験料 120米ドル(ベータ・正価200米ドル) 未公表(2026年8月27日時点)
言語 英語のみ 日本語
前提資格 なし(推奨経験3年以上+エージェント1年以上) 学歴・実務経験を問わない

AICX協会側の未公表項目について

AICX協会の「AIエージェント・アーキテクト」は、プレスリリース時点で実施時期を「追って公表」としており、受験料・試験時間も公表されていません。二次情報として「75分・14,800円」という数字が流通していますが、これは先行して実施された姉妹資格「AIエージェント・ストラテジスト」の条件であり、アーキテクト側の条件として確認できたものではありません。本記事では確認できない数値は空欄のまま「未公表」として扱います。

判別の実務的な目安はシンプルだ。コードを書いてGoogle Cloud上にエージェントを構築する人なら前者、ノーコードで社内業務にAIエージェントを載せる人なら後者である。名前が同じだからといって、片方の対策教材がもう片方に通用することはない。

Google Cloud Professional Agentic ArchitectとAICX協会AIエージェント・アーキテクトの対象者・スキルの違い
同名の2資格。発行元・対象者・中心スキルが異なるため、対策も別物になる

出題範囲を5セクションで読む——配点が示す試験の重心

ここからが本記事の中心である。Google Cloudは公式試験ガイド(PDF・英語)を公開しており、5つのセクションとそれぞれの配点、さらに各セクションの評価項目が具体的に列挙されている。日本語で読める形に整理する。

セクション テーマ 配点
Section 1 ローコードツールを使ったエージェント構築 約13%
Section 2 アプリケーション開発におけるコーディングエージェントの活用 約17%
Section 3 カスタムエージェントの開発 約33%
Section 4 エージェント型ワークフローの評価とデプロイ 約22%
Section 5 エージェント型ワークフローのセキュリティとガバナンス 約15%

配点の形がそのまま試験の性格を語っている。Section 3(33%)とSection 4(22%)で合計55%——つまり「自分でコードを書いてエージェントを作る」と「作ったものを評価して本番に載せる」が試験の過半を占める。ローコードツールでの構築は13%にすぎない。これはローコード担当者向けの資格ではなく、実装者向けの資格であるという設計思想が数字に出ている。

Section 1:ローコードツールを使ったエージェント構築(約13%)

Gemini Enterpriseまわりのローコード基盤が対象になる。

1.1 ローコードツールでのエージェント型ワークフロー・振る舞いの設定 — Gemini Enterprise Agent Designer や Customer Experience Agent Studio(CX Agent Studio)を使った、ページ・遷移ルート・イベントハンドラといった状態ベースのワークフロー設定。few-shot や chain-of-thought といったコンソール内プロンプトテンプレート、システム指示の作成
1.2 Gemini Enterpriseへのエンタープライズデータ接続 — Gemini Enterprise と Agent Search を使い、社内の独自データソースへ安全に接続してクエリする設定。動画・音声・画像といった非構造化マルチモーダルデータのワークフローへの取り込み

「状態ベースのワークフロー(ページ・遷移ルート・イベントハンドラ)」という語彙は、Dialogflow CX系の設計モデルをそのまま引き継いでいる。ここは製品固有の知識が問われるセクションで、汎用的なエージェント知識では埋まらない。

Section 2:コーディングエージェントの活用(約17%)

このセクションが、当サイトの読者にとって最も見慣れた領域だろう。

2.1 コーディングエージェントを効果的に使うMCP(Model Context Protocol)サーバー・カスタムスキル・ツールアクセスの設定(例として AntigravityClaude Code on Google Cloud が明記)。GKE・Cloud Workstations・Antigravity といったセキュアなサンドボックスでのコーディングエージェント実行。ソースコードのリファクタリング、実行時の最適化、アプリケーション層の脆弱性パッチ適用
2.2 エンタープライズワークフロー向けのコーディングエージェントのカスタマイズ — Antigravity を使ったスキル・プラグイン・拡張フック・ルール・サブエージェントの作成。Agents CLI による Antigravity の拡張

公式試験ガイドがClaude Codeを名指しで例示している点は記録しておく価値がある。ベンダー認定の出題範囲に、他社のコーディングエージェントが「Google Cloud上で使う道具」として載っているという構図だ。スキル・フック・サブエージェントという語彙も、Claude Code のエコシステムで定着した概念がそのまま試験用語になっている。

当サイトの読者が有利な範囲

Section 2(17%)で問われるMCPサーバー設定、カスタムスキル、サブエージェント、サンドボックス実行は、日常的にコーディングエージェントを使っている開発者なら概念の再学習がほぼ不要な領域です。逆にSection 1(13%)のGemini Enterprise系ローコード設定は、実際に触っていないと用語から入り直す必要があります。配点の大きさと自分の既知度は一致しないので、学習計画は配点ではなくギャップで立てるほうが効率的です。

Section 3:カスタムエージェントの開発(約33%・最大)

最大配点のセクション。3つのサブセクションに分かれる。

3.1 コードでのエージェント型ワークフローの設計と構築 — 適切な言語モデルの選定と設定(LLM対SLM、セルフホスト対SaaS、OSS対プロプライエタリを、コスト・セキュリティ・エージェントアーキテクチャの観点で判断)。ADK(Agent Development Kit)などのオープンソースライブラリでのカスタムエージェント構築。セッションとメモリの設定(Agent Platform Memory Bank、マネージドセッション)。Agents CLI でのスキル設定
3.2 エンタープライズのドメイン知識の統合RAGパイプラインとベクトル検索システムの設計・設定・管理(埋め込みモデル、類似度スコアリング、リランキング)。Vector Search や Agent Retrieval といったベクトルデータベースの利用。Agent Identity によるエージェント権限の設定。Agent Registry・Google Cloud MCP Servers を使った、事前構築済み/カスタム機能の設定
3.3 エージェント型ワークフローのオーケストレーションと連携MCP と A2A(Agent2Agent)によるエージェントのオーケストレーション。並列エージェント・逐次エージェント・グラフワークフローといったマルチエージェントのハンドオフ選定(Agent Identity、Agent Registry、Agent Runtime、エージェントポリシー)

3.1の「LLM対SLM、セルフホスト対SaaS、OSS対プロプライエタリ」という判断軸の立て方に注目したい。単に「Geminiを使え」ではなく、モデル選定をコストとセキュリティのトレードオフとして問う構成になっている。ベンダー認定でありながら、自社モデル一択に誘導していない。

Section 3の3サブセクション:ワークフロー設計、ドメイン知識統合、オーケストレーション
最大配点セクションの内訳。モデル選定・RAG・マルチエージェント連携が並ぶ

マルチエージェントの協調戦略そのものを整理したい場合は マルチエージェントシステムとは|協調戦略の違いを3メソッドで読み解くPicoAgentsのコード解説 が参考になる。並列・逐次・グラフという3つのワークフロー型は、試験ガイドが列挙する分類とほぼ対応する。

Section 4:評価とデプロイ(約22%)

「作れる」の次に「測れる・載せられる」を問うセクション。

4.1 開発時と本番でのエージェント評価 — エージェント評価用テストセットの作成(ゴールデンデータ、プロンプト、エッジケース)。確立された成功基準に基づいてツール実行を評価する継続的評価パイプラインの構築。評価フレームワークとツーリングの選定(ADKの評価ツーリング(evalset)、Agent Platform Gen AI evaluation service、カスタムオートレーター)。ゴールデンデータセットに対する応答品質・検索品質の評価
4.2 本番ワークロードのデプロイとスケーリング — ユースケース・要件・コストに基づく最適なデプロイランタイムの選定(Agent Runtime、Cloud Run、GKE)。エージェントの問題のトラブルシューティング(ドリフト、ツール呼び出しレイテンシ、エージェントの推論ループ、システム障害)。パフォーマンス・信頼性・コストの監視と最適化(ロジックエラー、レイテンシのボトルネック、ハルシネーションの特定)

「エージェントの推論ループ(agent reasoning loops)」がトラブルシューティング対象として名指しされているのは実務的だ。ツールを呼び続けて終わらないエージェントは、デモでは見えず本番で燃える典型的な失敗である。

Section 5:セキュリティとガバナンス(約15%)

5.1 エージェントのセキュリティとガバナンスの設定 — 認証とセキュアなツール実行の実装(OAuth 2.0 によるエージェント→ツールのAPI呼び出し)。Agent Identity による PAB(principal access boundary)ポリシーの設定。Agent Gateway によるトラフィック監視とエージェント追跡。Agent Registry と Model Armor によるガバナンスとポリシー適用
5.2 セキュアなエージェントの振る舞いと実行の実装 — 適切な安全フレームワークとガードレールの設計(Agent Gateway、Model Armor、HITL(human-in-the-loop))。データへのセキュアなアクセスとアイデンティティ伝播の設定

エージェントに独立したアイデンティティを与え(Agent Identity)、権限境界をポリシーで縛り(PAB)、通信をゲートウェイで監視する(Agent Gateway)——という構成は、エージェントを「人間ユーザーの代理」ではなく「独立したプリンシパル」として扱う設計思想を前提にしている。エージェント設計の型そのものを俯瞰したい場合は AIエージェント設計パターン入門|プロンプトチェーンからマルチエージェントまで21の型を体系理解する が地図になる。

在スコープの28ツール——ADKからModel Armorまで

公式試験ガイドは末尾に「この試験の対象範囲となるツール」を28項目列挙している。これは学習範囲を確定させるうえで最も価値のある情報だ。分類して並べる。

在スコープ28ツールをエージェント基盤・開発・データ・セキュリティ・実行基盤に分類
公式試験ガイド末尾の in scope ツール一覧を筆者が5系統に分類したもの
系統 ツール
エージェント基盤 Agent Development Kit(ADK)/Agent Runtime(旧 Agent Engine)/Agent Registry/Agent Identity/Agent Gateway/Agents CLI in Agent Platform/Skill Registry
検索・データ連携 Agent Search(旧 Vertex AI Search)/Agent Retrieval and Vector Search 1.0/RAG Engine/BigQuery/Cloud SQL/Cloud Storage/Firestore/Memorystore for Redis
プロトコル・開発ツール Agentic protocols(A2A・MCP)/Model Context Protocol(MCP)servers/Antigravity(CLI・SDK・App)/Auth Manager(OAuth 2.0)
モデル・評価 Gemini LLMs/Gemini Enterprise/Model Garden/Agent evaluation
実行基盤・運用・セキュリティ Cloud Run/Google Kubernetes Engine(GKE)/Google Cloud Observability(Cloud Logging・Cloud Trace)/Model Armor/Sensitive Data Protection

この一覧から3点、事実として拾えることがある。

第一に、プロダクトの改称が確定情報として読める。 試験ガイドは Agent Runtime(formerly Agent Engine)Agent Search(formerly Vertex AI Search) と明記している。旧名で書かれた学習資料や社内ドキュメントを持っている場合、名称の対応表を先に作っておかないと検索が噛み合わない。

第二に、MCPが二重に登場している。 「Agentic protocols(e.g., A2A, MCP)」と「Model Context Protocol (MCP) servers」が別項目として並ぶ。プロトコルとしての理解と、サーバーを立てて運用する側の理解の両方が範囲に入っているという読み方ができる。MCPの仕組みそのものを押さえたい場合は、MCPクラスタの記事群が入口になる。

第三に、汎用のGoogle Cloudサービスが少ない。 BigQuery・Cloud SQL・Cloud Storage・Firestore・Memorystore・Cloud Run・GKE・Observability——インフラ系は8つで、残り20はエージェント専用またはAI専用のプロダクトである。既存のGoogle Cloud認定を持っていても、範囲の7割は新規学習になる構成だ。

難易度はどう見積もるか——未受験でも出題範囲から読めること

先に断っておくと、筆者はこの試験を受験していない(2026年8月27日時点でベータ登録すら開始前)。したがって合格率も体感難易度も書けない。ここで扱うのは、公表情報から事前に見積もれる要素と、構造的に見積もれない要素の切り分けである。この2つを混ぜた「難易度◯◯」という数字を、新設資格について書けると主張する記事は疑ったほうがいい。

難易度について事前に見積もれる要素と、構造的に見積もれない要素の切り分け
公表情報から言えることと言えないことの境界。ベータ認定は合格ラインが受験時点で確定していない

事前に見積もれる要素

推奨経験のハードルが高い — 「Google Cloud上でのエージェント型ソリューション構築 1年以上」。ADK や Agent Runtime といったプロダクト自体が新しく、2026年8月時点でこの条件を素直に満たす母集団は厚くない
配点がコード側に偏っている — Section 3(33%)+ Section 4(22%)で 55%。読み物的な知識より、実際にエージェントを書いて評価してデプロイした経験が効く配分
製品固有知識が避けられない — Section 1(13%)は Gemini Enterprise Agent Designer / CX Agent Studio の状態ベース設計(ページ・遷移ルート・イベントハンドラ)が対象で、触っていないと用語から入り直す必要がある
知識だけでは完結しない — ハンズオンラボが選択式とは別枠で必須。「読んで覚える」型の対策が届かない範囲が構造的に存在する
英語のみという上乗せ — 他の Professional 認定が日本語で受けられるのに対し、この認定は英語のみ。日本語話者にとっては試験内容とは別の負荷が確実に乗る

構造的に見積もれない要素

合格ラインが受験時点で確定していない — 公式ページは、ベータで収集した回答統計をもとに最終的な認定基準を作成すると明記している。つまり「何点取れば受かるか」を事前に知る方法が原理的に存在しない
ラボの課題数・所要時間・採点方法が未公表 — 対策の立てようがない
過去問も受験記も存在しない — 新設のため、難易度の比較対象になる先行事例がまだ無い

「難易度」を語る記事の読み方

新設のベータ認定について、公開前から具体的な合格率・難易度ランクを提示している情報源があれば、その根拠が何かを確認してください。上記のとおり合格基準そのものがベータ受験者の統計から後で作られるため、現時点でそれを知り得る立場にあるのはGoogle Cloud側だけです。本記事も「出題範囲と推奨経験から読める要求水準」以上のことは書いていません。

日本語で受けられるか——他のGoogle Cloud認定資格との違い(言語・受験料・有効期限)

既存の認定と横に並べると、この資格の異質さが数字で見える。以下はすべて2026年8月27日時点で各認定の公式ページから取得した値である。

認定資格 試験時間 受験料 対応言語 出題形式 有効期限
Professional Agentic Architect(ベータ) 3時間 120米ドル(正価200米ドル) 英語のみ 選択式 約80問 +ハンズオンラボ 1年
Professional Cloud Architect 2時間 200米ドル 英語・日本語 選択式・複数選択 50〜60問(ケーススタディあり) 2年
Professional Machine Learning Engineer 2時間 200米ドル 英語・日本語 選択式・複数選択 50〜60問 ページに明記なし(更新FAQ参照)
Professional Cloud Developer 2時間 200米ドル 英語・日本語 選択式・複数選択 50〜60問 ページに明記なし(更新FAQ参照)
Generative AI Leader 90分 99米ドル 英語・日本語ほか 選択式 50〜60問 3年

差分は4つある。

① 試験時間と問題数が増えている。 3時間・約80問は、既存Professional認定の2時間・50〜60問より明確に重い。筆者が公表値から割り算すると1問あたりの時間は約2分15秒で、既存認定(約2分〜2分24秒)とほぼ同じ帯に収まる。結果として、1問あたりの持ち時間は変えずに問題数と総時間だけが増えた形になっている(Google Cloudがこの配分の意図を説明しているわけではない)。

② 日本語がない。 これは日本の受験者にとって最も実務的な差だ。Professional Cloud Architect も Machine Learning Engineer も Cloud Developer も英語・日本語の両対応だが、Agentic Architect のベータは英語のみ。認定ヘルプセンターのFAQも「ベータ試験は全世界で英語のみ提供」と述べており、これはベータ共通のポリシーである。GA版で日本語が追加されるかは2026年8月27日時点で公表されていない

③ 有効期限が1年しかない。 Cloud Architect の2年、Generative AI Leader の3年に対して1年。取得後の再認定サイクルが最も短い認定になる。なおベータ試験詳細に書かれた値であるため、GA版でも1年のままかは現時点では確認できない。

④ 費用構造が違う。 ベータ受験料120米ドルは正価200米ドルの40%引きで、認定ヘルプセンターによれば全ベータ試験に共通の割引である。加えてベータの受験は「許可される総受験回数(GA版は4回)」にカウントされない。ただしベータの受験機会は1回のみで、不合格ならGA版を待つことになる。

既存Google Cloud Professional認定とAgentic Architectの形式差分
既存Professional認定との差分。形式・言語・有効期限のすべてが異なる

Generative AI Leader との棲み分け

Google Cloud には既に生成AI系の認定として Generative AI Leader(90分・99米ドル・有効期限3年)がある。ただしこちらは日本語のSERPでも「Google Cloud AI 資格」の受け皿になっている通り、ビジネスリーダー向けの基礎レベルで、コードを書くことを前提としていない。Agentic Architect は Professional レベルかつハンズオンラボ必須であり、同じ「AI系のGoogle Cloud認定」でも要求される行為が根本的に違う。両者は上位互換の関係ではなく、対象読者が別と考えるのが正確です。

ベータ受験の実務と、まだ公表されていないこと

最後に、申し込みを検討する場合の実務条件と、現時点で分からないことを分けて整理する。事実と未確定を混ぜないことがこの種の新設資格では最も重要になる。

公式に確認できること

登録開始日:公式ページは「Registration for the new Professional Agentic Architect beta certification will open on September 3!」と告知。同ページには「Beta coming in September」の表記もある
受験料:120米ドル(正価200米ドルの40%引き、税別)。バウチャーはベータ受験にも使用可能
受験形式:オンライン監督付き、またはテストセンターでの監督付き
結果通知:試験ウィンドウとラボウィンドウの両方が終了してから4〜6週間後
受験回数:ベータでの受験は総受験回数(GA版は4回)にカウントされない。ベータでの不合格者はGA版を待つ
認定の同等性:ベータ版・GA版のどちらに合格しても「Google Cloud Certified - Professional Agentic Architect」になる

「September 3」の年について

公式ページの告知文には年の表記がありません。ただし同ページが2026年8月27日時点で「Beta coming in September」と現在進行形で告知していること、および学習パス側が「9月上旬に正式な登録情報を確認してください」と案内していることから、2026年9月3日を指すと読むのが唯一整合的な解釈です。本記事はその前提で記述していますが、公式ページ上に「2026」の明記はないことを付記します。申し込み前に必ず公式ページで日付を再確認してください。

現時点で分からないこと

以下は推測で埋めず、未確定として記録する

ベータの受験ウィンドウの終了日 — 登録開始日は告知されているが、いつまでに受験すればよいかは公式ページに記載がない
ハンズオンラボの具体的な内容・所要時間・課題数 — 「Google Skillsで受ける」以上の情報は公表されていない
合格ライン — ベータ認定の性質上、公式ページは「ベータで収集した回答統計をもとに最終的な認定基準を作成する」と明記しており、受験時点では合格基準が確定していない
GA版の提供時期・価格・言語 — いずれも未公表
日本語対応の予定 — 未公表
有効期限1年がGA版でも維持されるか — ベータ試験詳細に記載された値であり、GA版の条件は別途公表待ち

学習リソースについての注意

Google Skills の学習パス(Path 4525)は13のアクティビティで構成されていますが、同ページ自身が「このパスは受験準備を支援するものだが、公式試験ガイドの全トピックをカバーしているわけではない」と明記しています。また同ページには「公式試験ガイドは9月上旬に提供予定」という案内が残っている一方、認定ページからはすでに試験ガイドPDFがリンクされています(本記事の配点・在スコープツールはこのPDFに基づく)。案内の更新ラグと見られますが、学習範囲を確定させるなら学習パスの説明文ではなく試験ガイドPDFを一次情報として使うのが安全です。

この認定をどう位置づけるか

事実の整理として言えることは、この認定が「クラウドの設計ができる」ではなく「エージェントを作って本番に載せて運用できる」を問う方向へ、ベンダー認定の評価軸を移したという点だ。ハンズオンラボの必須化、有効期限1年、コーディングエージェントの活用そのものが評価対象に入ったこと——これらはいずれも同じ方向を向いている。

一方で、この記事の筆者はこの試験を受験していない。ベータの登録すら開始前だからだ。難易度・合格率・実際の出題傾向については、一次情報が存在しないため何も述べられない。本記事で難易度に触れた箇所は、すべて出題範囲から読み取れる要求水準の話であり、受験体験の証言ではない。受験記が読みたい場合は、2026年10月以降に一次受験者の記録が出てくるのを待つのが正しい。

まとめ

・Google Cloud の Professional Agentic Architect は、ベータ登録が 2026年9月3日(公式ページに年の明記はない)開始、受験料 120米ドル
選択式 約80問(3時間)+ Google Skills のハンズオンラボという2部構成で、既存の Professional 認定にはない形式
・出題範囲は5セクション。カスタムエージェント開発が約33%で最大、評価・デプロイの22%と合わせて過半を占める
在スコープのツールは28個。Agent Runtime(旧 Agent Engine)・Agent Search(旧 Vertex AI Search)という改称も試験ガイドで確認できる
英語のみ・有効期限1年は既存 Professional 認定(日本語対応・2年)との明確な差分
・日本には同名の別資格(AICX協会)があるため、教材を探す前に発行元を確認する
筆者は未受験。本記事は一次情報(公式認定ページ・公式試験ガイドPDF・認定ヘルプセンター)の構造化であり、受験記ではない

参照ソース

Professional Agentic Architect Certification | Learn | Google Cloud — 認定の定義、ベータ試験詳細(3時間・120米ドル・英語・約80問・有効期限1年)、2部構成、登録開始日の告知。2026年8月27日取得
Professional Agentic Architect Certification exam guide(PDF) — 5セクションの配点と評価項目、在スコープの28ツール一覧。2026年8月27日取得
Beta certification FAQ | Google Cloud 認定資格ヘルプ — ベータ試験の40%割引、英語のみ提供、受験回数の扱い(GA版は4回)
Professional Agentic Architect Certification | Google Skills(学習パス) — 学習パスの構成(13アクティビティ)と、パスが試験ガイドの全トピックを網羅しない旨の注記
Professional Cloud ArchitectProfessional Machine Learning EngineerProfessional Cloud DeveloperGenerative AI Leader — 比較表の試験時間・受験料・言語・有効期限。いずれも2026年8月27日取得
AICX協会、国内初となるAIエージェント実装人材の資格制度を創設|設計と実装を分離した人材基準を提示(PR TIMES) — 一般社団法人AICX協会による「AIエージェント・ストラテジスト」「AIエージェント・アーキテクト」創設の一次発表(2026年2月13日)