Markdownプレビューアは世に数多くあるが、その大半はElectronでChromiumを丸ごと同梱する重量級アプリか、エディタの拡張機能のどちらかだ。本記事で扱う MD Preview(vorojar/md-preview は、そのどちらでもない。Rustとシステム標準のWebViewだけで組み上げた、ローカル完結型の軽量Markdownビューア兼クイックエディタである。配布物は公式公表で約5MB前後、Mermaidの図もKaTeXの数式もすべてオフラインで描画する。

きっかけは「AIコーディングツールがとにかく大量のMarkdownを吐くようになった」ことだ。README.mdplan.md、タスク仕様、アーキテクチャメモ、変更履歴——Claude CodeやCodex、Cursorが生成するこれらのファイルを確認するたびに、重いIDEやElectron製アプリを立ち上げるのは割に合わない。MD Previewはその「開いて読むだけ」の一点に振り切って作られている。

MD Previewが3つのウィンドウでMarkdownを描画している様子。Mermaidのフロー図、KaTeXの数式、GitHubスタイルのアラート、チェックリスト、テーブルがオフラインで表示されている
MD Previewの描画例。Mermaid図・KaTeX数式・GitHubアラート・タスクリスト・テーブルがすべてローカルでレンダリングされる(出典: vorojar/md-preview 公式スクリーンショット)
30秒でわかるポイント

Rust + システムWebView:ElectronのようにChromiumを同梱せず、OS標準のWebView(WebKit / WebView2 / WebKitGTK)で描画。配布物は公式公表で約5MB前後
ローカル完結・プライバシー重視:Markdown・ハイライト・数式・図をすべて手元で描画。アカウント/テレメトリ/解析なし
複数タブ+セッション復元:ローカルの`.md`をタブで開き、再起動後も同じタブ順・アクティブ文書に戻る
AI生成Markdown向け:README・plan.md・Mermaid・KaTeXを、IDEを開かず横に並べて確認する用途に最適化
MIT・クロスプラットフォーム:macOS / Windows / Linux に加え、iOS(App Store)とAndroidのネイティブビューアも提供

Markdown編集ツールも含めた「AI時代のツール選び」全体像は AI自動化ツール|ノーコードからコードまで2026年版の比較と選び方 で整理している。あわせて読むと、本記事のMD Previewがどの位置に収まるかが見えてくる。

本記事では、MD Previewが「何をするツールなのか」「なぜElectronを避けたのか」「他のMarkdownプレビューアやエディタと何が違うのか」を、公式リポジトリのREADME・公式サイト・開発者ブログという一次情報だけを根拠に整理する。なお、記事中のバイナリサイズや起動挙動に関する数値は、いずれも作者が公表した値であり、当サイトで実測したものではない点を先に断っておく。

MD Previewとは|Rust製のローカルMarkdownプレビューア

MD Previewは、開発者 vorojar 氏が公開しているオープンソースのMarkdownビューアだ。ひとことで言えば「複数のMarkdownファイルを、ひとつの軽いウィンドウで開き、プレビューし、そのまま少し編集して自動保存できる」ツールである。公式の説明では “Create, preview, and edit with automatic save—without launching a whole IDE.”(IDEを丸ごと立ち上げずに、作成・プレビュー・自動保存つき編集ができる)と表現されている。

従来のMarkdown環境は、大きく2種類に分かれていた。ひとつはTyporaやObsidianのような「本格的な執筆スタジオ」、もうひとつはVS Codeのプレビュー拡張のような「エディタの一機能」だ。前者は高機能だが起動が重く、後者はエディタを開いていないと使えない。MD Previewが狙うのはその隙間——エディタを開かずに、ただMarkdownファイルを開いて読むためだけの小さな窓である。

MD Previewの起動画面。ファイルを開くボタンと最近開いたファイルの一覧が表示されている
起動直後のスタート画面。何も読み込んでいない状態でも「ファイルを開く」と最近使ったファイルがすぐ選べる(出典: vorojar/md-preview 公式スクリーンショット)

なぜこの「隙間」が価値を持つのか。作者はREADMEの “Why It Exists” で理由をはっきり書いている。AIコーディングツールが、いまや大量のMarkdownを生成するようになったからだ。README.mdplan.md、タスク仕様書、アーキテクチャノート、変更履歴、KaTeXの数式、Mermaidの図——こうした成果物を確認するのに、多くのMarkdownツールは「重すぎる」か「エディタに紐づきすぎている」。MD Previewは意図的に小さく作られており、次の設計原則を掲げている。

速く開く:ネイティブバイナリ+システムWebViewで、ブラウザランタイムを同梱しない
ローカルに留める:Markdown・シンタックスハイライト・数式・図はすべて手元のマシンで描画する
文書をまとめて扱う:複数の.mdやテキストファイルをタブで開き、後からセッションを再開できる
寄り道せず編集:タブバーやFinderからMarkdownを新規作成し、すぐ入力を始め、デバウンス付き自動保存に任せる
外部の編集に追従:Vim・VS Code・Cursor・Zedなどでファイルを保存すると、プレビューが自動で更新される

つまりMD Previewは「Markdownを書くためのアプリ」ではなく、「(主にAIや外部エディタが生成した)Markdownを軽く開いて読み、必要なら少し直すためのアプリ」だ。この立ち位置の割り切りが、後述する技術選定にもそのまま反映されている。

なぜElectronを使わないのか|システムWebViewという設計

MD Previewの最大の特徴は、実装スタックにある。作者は開発者ブログで、選定理由をこう述べている——「Markdownのプレビューは小さな仕事だ。この用途のためにChromiumランタイムを丸ごと同梱するのは、釣り合いが取れていないと感じた」。ElectronもTauriも使わず、OSがすでに積んでいるWebレンダラを借りるという判断だ。

具体的には、GUIシェルとMarkdownパイプラインをRustが受け持ち、描画は wry を介してプラットフォームのWebViewに委ねる。内訳は次のとおりだ。

Rust:ネイティブシェルとMarkdown処理パイプライン本体
wry:システムWebViewへの橋渡し(macOSはWebKit、WindowsはWebView2、LinuxはWebKitGTK)
tao:クロスプラットフォームのウィンドウ/イベントループ
pulldown-cmark:Markdownのパース
notify:ファイル監視(外部保存の検知)
rfd:OSネイティブの「開く」ダイアログ

この構成が効くのは、レンダラを同梱しないぶん配布物が小さくなる点だ。作者ブログの公表値では、リリース資産はおおよそmacOSのDMGが約4.5MB、WindowsのZIPが約1.8MB、Linuxのtarballが約2.4MBで、いずれもElectronアプリの配布サイズより桁違いに小さい(README上ではバッジで「binary ~5MB」と表記)。繰り返すが、これらは作者公表の数値であり、当サイトで計測した値ではない。

flowchart LR A["Markdownファイル
(.md / .txt)"] --> B["Rust シェル
ファイルIO・監視・パッケージング"] B --> C["pulldown-cmark
ベースのMarkdown変換"] C --> D["wry 経由の
システムWebView"] D -->|macOS| E["WebKit"] D -->|Windows| F["WebView2"] D -->|Linux| G["WebKitGTK"] C -.初回描画後/必要時のみ.-> H["highlight.js
KaTeX / Mermaid
(オフライン同梱)"] H --> D

もうひとつの肝が 「コールドパスを小さく保つ」 設計だ。まず通常のMarkdownを素早く描画し、highlight.js(40言語以上のシンタックスハイライト)・KaTeX(数式)・Mermaid(図)といった重い描画アセットは、初回の可視描画が終わってから、あるいはその機能を実際に使う文書のときだけ読み込む。数式やMermaidを含まない普通のMarkdownは、これらの起動コストを一切払わずに開ける。作者はこの遅延ロードを「文書が実際にそのパターンを使うときだけ支払う」と表現している。

一般的なElectron製Markdownアプリ アプリUI(Markdown描画) Chromium ランタイムを同梱(配布物が数十〜100MB級) Node.js ランタイム MD Preview Rust シェル + Markdownパイプライン wry → OS標準WebView を借用(同梱ランタイムなし・約5MB前後) 重い描画は初回描画後に遅延ロード 出典: MD Preview README「How It Stays Small」および開発者ブログの記述をもとに作図(数値は作者公表値)
ElectronがChromiumを丸ごと抱えるのに対し、MD PreviewはOS標準のWebViewを借りることで配布物を小さく保つ

もちろん、この方式にはトレードオフもある。作者自身が「プラットフォームのWebViewは同一ではない」と認めており、パッケージング・file URLの扱い・印刷・GPU挙動などでOSごとの差異に個別対応が必要になる。ブラウザランタイムを同梱するElectronが「どこでも同じ描画」を保証するのに対し、システムWebView方式は「軽さと引き換えに、環境差の吸収を自前で引き受ける」設計だと言える。

MD Previewの主な機能|タブ・セッション復元・オフライン描画

MD Previewの機能は「複数文書を扱う仕組み」と「Markdownを正しく描く仕組み」の2軸に整理できる。まず前者から見ていく。

デスクトップ版では、.md.txtをドラッグ&ドロップ、開くダイアログ、最近使ったファイル、コマンドラインのいずれからでも開ける。開いた文書はタブとして並び、同じパスを再度開くと既存タブがアクティブになる。タブバーの+またはCmd/Ctrl+Nで、現在の文書の隣に新しいMarkdownを作り、すぐソース編集に入れる。タブの並び順とアクティブ文書は再起動をまたいで復元され、アクティブでないタブの中身はディスク上に置いたまま、選択されて初めて読み込まれる。ファイルが移動・削除された場合も、タブは黙って消えずに「見つからない」状態のまま残り、再探索や明示的なクローズを選べる。

編集まわりは「寄り道させない」思想で統一されている。Cmd/Ctrl+Eでソースモードに切り替わり、編集はデバウンス付きで自動保存。プレビュー切り替え・タブ移動・タブ/ウィンドウのクローズ・終了の前には必ずフラッシュ(確定保存)され、保存に失敗してもタブと本文は保持される。Cmd/Ctrl+Sで即時保存も可能だ。

MD Previewでローカルドキュメントを開き、GitHubスタイルのアラートやハイライト、テーブルが描画されている実際の画面
ローカルのドキュメントフォルダをそのまま開いた例。相対パスの画像もMarkdownファイルの場所を基準に解決される(出典: vorojar/md-preview 公式デモ)

後者の「Markdownを正しく描く仕組み」も充実している。ベースのパースはpulldown-cmarkで行い、必要なときだけ描画を上乗せする。対応する記法・機能は次のとおりだ。

機能 内容
GitHub Flavored Markdown テーブル、タスクリスト、打ち消し線、見出し属性、アンカー
シンタックスハイライト highlight.jsをオフライン同梱、40言語以上(Delphi/Pascalも)
数式 KaTeXで $...$ $$...$$ \(...\) \[...\] を必要時に描画
Mermaidのフェンスブロックをローカル描画(使う文書のときだけ)
GitHubアラート [!NOTE] [!TIP] [!IMPORTANT] [!WARNING] [!CAUTION] をコールアウト表示
ハイライト ==ハイライト== をマーカー表示(ノートやAI生成文書向け)
ダークモード macOS/Windows/Linuxでシステムのカラースキームに追従
プレビュー内検索 Cmd/Ctrl+F で描画済み文書に対する検索バー
ライブリロード 外部エディタの保存を検知して自動更新
ネイティブ印刷 Cmd/Ctrl+P でOSの印刷ダイアログを開き、プレビューのみ印刷

キーボードショートカットも、プレビュー特化らしく最小限にまとまっている。

ショートカット 動作
Cmd/Ctrl + N Markdownを新規作成しソース編集へ
Cmd/Ctrl + O ファイルを開く
Cmd/Ctrl + F プレビュー内を検索
Cmd/Ctrl + E プレビュー/ソース編集を切り替え
Cmd/Ctrl + S ソース編集モードで保存
Cmd/Ctrl + P プレビューを印刷
Cmd/Ctrl + W アクティブなタブを閉じる(文書タブが無くなればウィンドウを閉じる)
ポイント:ツールバーは「隠れている」のが基本

MD Previewは読書体験を邪魔しないよう、ツールバーをホバー時のみ表示する。相対パスの画像はMarkdownファイルのディレクトリを基準に解決されるため、ローカルのドキュメントフォルダ(画像入りのREADMEなど)をそのまま開いても自然に描画される。「読むこと」を最優先に振り切ったUIだ。

AIが生成するMarkdownを開く用途に効く理由

MD Preview自体にAIやLLMの機能は無い。それでも本サイトがこのツールを取り上げるのは、AIコーディングツールが吐き出すMarkdownを扱う道具として、設計が素直にかみ合っているからだ。これは筆者の解釈ではなく、作者自身がリポジトリのトピックにai-docsを付け、READMEに “Fits AI Coding Workflows”(AIコーディングのワークフローに合う)という専用の節を設けて明言している用途である。

具体的には、次のような場面を想定している。

・Claude Code / Codex / Cursor が生成した plan.md・タスクメモ・READMEを、フルIDEを開かずにタブとして並べておく
・アプリを再起動しても同じタブ順・アクティブ文書に戻り、アクティブでないファイルは選択時に初めてディスクから読む
・MD Preview内で小さなソース修正をしつつ、別のエディタがそのファイルを書き換えればライブリロードで追従する
・macOSではFinderから新規Markdownを作り、VS Codeを開くより先にそのままソース編集に入れる
・描画済みプレビューをそのまま印刷/エクスポートして、きれいなPDFにする

AIが生成するMarkdownは、Mermaidのフロー図やKaTeXの数式を含むことが多い。GitHubのプレビューやエディタ拡張では図が崩れたり、そもそも描画されなかったりする場面があるが、MD Previewはこれらをオフラインで描画する。生成物をサーバに送らずに手元で確認できる、というプライバシー面の利点も、社内の設計メモや未公開の仕様書を扱う開発者には効いてくる。

ここで押さえておきたいのは、MD Previewが「Markdownを作る」ツールではなく「見る(+少し直す)」ツールだという線引きだ。AIやエディタが生成した.mdを受け取り、素早く開いて確認する——このワークフローの“最後の1マイル”を軽くするのがMD Previewの役割である。生成そのものはClaude CodeやCursorが担い、清書・本格編集は既存エディタが担う。その中間に空いていた「サッと開いて読む」の穴を埋める位置づけだ。

他のMarkdownプレビューア・エディタとの違い

Markdown系ツールは数が多く、ひとくくりに比較すると誤解を招く。まず「作る(authoring)」ツールと「見る(previewing)」ツールは別カテゴリである点を分けて考えたい。

・ブラウザ上でブロックを並べてMarkdownを“作る”側のツールとしては、Markdrop(ドラッグ&ドロップで作る無料のMarkdownエディタ) がある。記法を打たずに視覚的にドキュメントを組み立てる用途だ。
・Webアプリに軽量なMarkdown入力欄を“埋め込む”なら、Overtype(~111KBの軽量Markdownエディタ) のような、テキストエリアに重ねる方式のライブラリが候補になる。

これらに対しMD Previewは、ローカルのMarkdownファイルを開いて読む「ネイティブのデスクトップビューア」であり、土俵が異なる。そのうえで、同じ「プレビューア/ビューア」寄りの選択肢と、公表情報ベースで並べたのが次の表だ。優劣を断定するものではなく、設計思想の違いを俯瞰するための整理として読んでほしい。

観点 MD Preview Electron系Markdownアプリ(一般論) エディタ内蔵プレビュー(VS Code等)
実装 Rust + システムWebView Chromium同梱(Electron等) エディタ拡張として動作
配布サイズ 約5MB前後(作者公表) 数十〜100MB級になりやすい エディタ本体に依存
起動 ネイティブバイナリで軽量 ランタイム分の重さがある エディタ起動が前提
オフラインMermaid/KaTeX 同梱・ローカル描画 実装により異なる 拡張・設定により異なる
複数タブ+セッション復元 あり 実装により異なる エディタのタブに依存
対応OS mac / Win / Linux+iOS / Android 主にデスクトップ エディタの対応範囲に依存
価格・ライセンス 無料・MIT・OSS 製品により異なる エディタに依存
Markdownツールの役割分担 作る(authoring) Markdrop ブロックを視覚的に 並べて文書を組み立てる 埋め込む(input) Overtype Webアプリに軽量な Markdown入力欄を載せる 見る(previewing) MD Preview ローカルの.mdを開き ネイティブに描画・軽く編集 同じ「Markdownツール」でも狙う工程が違う。MD Previewは“見る”に振り切ったネイティブアプリ
「作る/埋め込む/見る」の3工程で見ると、MD Previewは“見る”に特化したネイティブビューアだと分かる

要するに、MD Previewの差別化点は機能の多さではなく「軽さ」と「ローカル完結」と「見ることへの割り切り」にある。多機能な執筆スタジオが欲しい人には向かないが、「AIやエディタが吐いた.mdを、重いアプリを立ち上げずに素早く開いて読みたい」という一点なら、この設計は素直に刺さる。

インストールと使い方|macOS/Windows/Linux/モバイル

デスクトップ版は GitHub Releases から最新ビルドを入手できる。プラットフォーム別の配布物は次のとおりだ。

プラットフォーム パッケージ 補足
macOS MD-Preview-macOS-universal.dmg Apple Silicon / Intel両対応のユニバーサル。署名・公証済み
Windows MD-Preview-windows-x64.exe 単一ファイル。アプリ内アップデータがSHA-256検証のうえ自己置換して再起動
Linux MD-Preview-linux-x64.tar.gz システムのWebKitGTKランタイムが必要
iOS / iPadOS App Store「Local Markdown Preview」 Filesやシェアシートからmarkdownを開くネイティブビューア
Android MD-Preview-Android.apk Files・WeChat・WeCom・シェアシートからmarkdownを開ける

ソースからビルドする場合はRustツールチェーンがあれば次の手順で動く。

git clone https://github.com/vorojar/md-preview.git
cd md-preview
cargo build --release
./target/release/md-preview README.md

日常の使い方はシンプルだ。ファイルを引数に渡せばそのまま開き、引数なしなら空のウィンドウが立ち上がる。

# 1つ、または複数のファイルを直接開く
md-preview README.md plan.md task.md

# 引数なしで起動し、Open File・最近使ったファイル・ドラッグ&ドロップで開く
md-preview

Linuxで起動しない場合は、ディストリのWebKitGTK 4.1パッケージが不足していることが多い。Debian/Ubuntu系なら次を導入する。

sudo apt-get install libwebkit2gtk-4.1-dev libgtk-3-dev libayatana-appindicator3-dev

なお、NVIDIAドライバ環境でウィンドウが真っ白になる場合、MD Previewは自動で保守的なWebKitGTKフォールバックを適用するが、それでも直らないときは WEBKIT_DISABLE_DMABUF_RENDERER=1WEBKIT_DISABLE_COMPOSITING_MODE=1 を付けて起動する回避策が公式に案内されている。

macOSでは、公証済みアプリにFinder拡張が同梱される。MD Preview.appをApplicationsへ入れて一度起動し、必要なら「システム設定 → 一般 → ログイン項目と機能拡張 → Finder機能拡張」で有効化すると、Finderの右クリックからMarkdown・テキスト・JSON・HTMLファイルを作れる。New Markdownは衝突しないファイル名を作り、そのままMD Previewのソースエディタで開く。モバイルでは、iOSはFiles/シェアシートから、AndroidはOSの「アプリで開く」やシェアフローからMarkdownを開ける。

導入前に知っておきたいこと|ライセンス・開発体制・注意点

最後に、採用を検討するうえで押さえておきたい実態を、誇張なく整理しておく。

ライセンスと配布:MITライセンスで、商用利用・改変・再配布いずれも自由度が高い(Copyright (c) 2025 vorojar)。GitHub Releasesに加え、iOS版はApp Storeで「Local Markdown Preview」として公開されている。

開発体制:本記事執筆時点(2026-07-22)で、リポジトリはStar 194・約154コミット・12リリース(最新は2026-07-17のv1.3.0)。直近も活発に更新されている一方、コントリビュータは実質的に作者vorojar氏1名(もう1名は軽微な貢献)で、いわゆるバス係数は1だ。個人開発ゆえの機動力と、その裏返しの継続リスクの両面がある点は理解しておきたい。作者のコミットメッセージやREADMEの一部は中国語で、WeChat/WeCom連携が入っているなど、開発の重心は中国語圏にあると見られる。

プライバシー:アカウント・テレメトリ・解析は無く、Markdownファイルは手元に留まる。デスクトップ版が行う唯一のネットワーク通信は、初回描画後の任意のアップデート確認のみで、失敗しても起動を妨げない。macOSのアップデートはSparkleがEdDSA公開鍵で検証し、WindowsはSHA-256ダイジェストを検証してからexeを置換する。

「執筆スタジオ」を期待すると肩透かしになる

MD Previewはプレビュー優先の割り切ったツールだ。ソース編集はできるが、アウトライン、WYSIWYG、プラグイン、豊富なテーマといった本格エディタの機能は持たない。「AIや外部エディタが生成した.mdを軽く開いて読む窓」として使うと真価を発揮する一方、これ一本で長文をゼロから執筆しようとすると物足りなさが出る。用途を見極めて選びたい。

環境差への注意:システムWebViewを借りる設計上、OSごとにWebViewの挙動差がある。前述のLinux/NVIDIA問題のほか、Windowsではアプリが自動でファイル関連付けを奪えない(「アプリで開く」への登録に留まる)といった、プラットフォーム固有の制約が公式Troubleshootingに列挙されている。導入前に自分の環境に該当する項目がないか、READMEのTroubleshootingを一読しておくと安心だ。

総じてMD Previewは、「AI時代に増えたMarkdownを、重いアプリを立ち上げずに素早く開いて読む」という一点に振り切った、小さくて筋の良いツールだ。多機能さで勝負するのではなく、軽さ・ローカル完結・クロスプラットフォームという土台で明確な居場所を作っている。Markdownプレビューアの選択肢として、まずは手元の.mdを1つ開いてみる価値はある。

参照ソース

vorojar/md-preview(公式リポジトリ・README)
MD Preview 公式サイト
Building a Native Markdown Previewer for AI-Generated Docs with Rust and WebView(開発者ブログ)
MD Preview リリース一覧(GitHub Releases)