この記事ではAIエージェントに特化して解説します。AIエージェント全般は AIエージェントフレームワーク比較2026年版 をご覧ください。

Screenpipeとは——「画面の記憶」をAIで検索・自動化する

「3日前にSlackで見たあのURLは何だったか」「先週のミーティングで言及されたAPIの名前は」——こうした問いに即座に答えられるツールがScreenpipeだ。

Screenpipeは、画面と音声を24時間ローカルで記録し、OCR(光学文字認識)とWhisper(音声認識)でテキスト化し、SQLiteデータベースに保存するRust製ツールだ。GitHub ★20,654(2026-08-01 実測)、最新リリースは app-v2.5.158(2026-07-31)と開発は活発に続いている。

【最重要・2026-08-01 追記】ライセンスがMITから独自の商用ライセンスへ変更された
本記事の初出(2026年4月11日)時点でScreenpipeはMITライセンスだった。しかし2026年6月10日のコミットでリポジトリ全体がMITから「Screenpipe Commercial License」へ移行している(コミットメッセージに license: move core from MIT to Screenpipe Commercial License と明記)。業務利用・商用利用は原則として有償ライセンスが必要になったため、「MITのOSSだから会社で自由に使える」という前提で検討していた場合は、下記「ライセンス変更」セクションを必ず確認してほしい。

従来の画面録画ツールとの最大の違いは2つ:100%ローカル処理(データが外部に出ない)と、AIエージェント(Pipe)による自動化だ。記録したデータをClaude DesktopやCursorから直接検索でき、カスタムPipeで議事録の自動生成やCRM更新まで可能になる。

Screenpipeのデスクトップアプリ画面


アーキテクチャ:イベント駆動キャプチャの仕組み

Screenpipeは連続的なスクリーンショットではなく、イベント駆動型キャプチャを採用している。アプリ切り替え、クリック、タイピング停止、スクロール、クリップボードコピーなどのOSイベントを検出し、変化があった時だけキャプチャする。

flowchart LR A["OSイベント検出
(アプリ切替・クリック・スクロール)"] --> B["画面キャプチャ
(JPEG保存)"] A --> C["音声キャプチャ
(マイク入力)"] B --> D["テキスト抽出
(アクセシビリティツリー+OCR)"] C --> E["音声認識
(ローカルWhisper)"] D --> F["SQLite
(FTS5全文検索)"] E --> F F --> G["REST API
(localhost:3030)"] G --> H["Pipe(AIエージェント)"] G --> I["MCP サーバー"]

テキスト抽出の2段階アプローチ

  1. 第1段階:OSアクセシビリティツリー——macOSのAccessibility API / WindowsのUI Automationから、画面上のテキスト要素を直接取得。OCRより高速かつ正確
  2. 第2段階:OCRフォールバック——アクセシビリティツリーでテキストが取得できない場合(画像内テキスト等)にOCRを実行

この2段階方式により、CPU使用率5〜10%を維持しながら高精度なテキスト抽出を実現している。ストレージ効率も優秀で、イベント駆動キャプチャにより8時間で約300MB(連続キャプチャの約1/7)、月間で5〜10GBに収まる。


インストールと初期設定

# macOS / Linux — ワンラインインストール
curl -fsSL get.screenpi.pe/cli | sh

# macOSならHomebrewも可
brew install screenpipe

# デーモン起動
screenpipe

macOSでは初回起動時に画面収録アクセシビリティの権限付与が必要(システム設定 → プライバシーとセキュリティ)。音声記録を使う場合はマイク権限も必要。データは~/.screenpipe/に保存される。

CLI以外に、macOS / Windows / Linux向けのデスクトップアプリも提供されている。タイムラインUIで記録された画面を時系列で閲覧でき、検索も直感的に行える。

Screenpipeの機能概要


REST APIで画面履歴を検索する

Screenpipeはlocalhost:3030でREST APIを提供する。キーワード検索、時間範囲指定、音声/画面のフィルタリングが可能だ。

# キーワードで画面履歴を検索
curl "http://localhost:3030/search?q=API+endpoint&limit=10"

# 特定の時間範囲 + 音声データに絞る
curl "http://localhost:3030/search?q=deadline&content_type=audio&start_time=2026-04-10T09:00:00"

検索結果にはテキスト内容に加え、アプリ名・ウィンドウ名・タイムスタンプが含まれるため、「どのアプリで」「いつ」見た情報かまで特定できる。


MCP連携:Claude DesktopやCursorから画面履歴を検索

ScreenpipeはMCPサーバーとして動作するため、Claude DesktopやCursorから直接画面履歴を検索できる。Claude Desktopの設定ファイルに以下を追加するだけで連携完了だ。

// claude_desktop_config.json
{ "mcpServers": { "screenpipe": { "command": "screenpipe", "args": ["mcp"] } } }

MCP経由ではsearch_screen(画面テキスト検索)、search_audio(音声検索)、get_recent_activity(直近アクティビティ)の3ツールが使える。「昨日のミーティングで話されたデプロイの手順をまとめて」のような自然言語の質問に、AIが画面と音声の記録から回答できるようになる。


Pipe(プラグイン)システム:AIエージェントによる自動化

ScreenpipeのPipe(パイプ)は、記録されたデータに対してAIエージェントを実行するプラグインシステムだ。スケジュールベースで自動実行され、データアクセス権限はYAMLで宣言する。

各PipeはYAMLで権限を宣言し、スケジュールベースで自動実行される。データアクセスはOSレベルで強制されるため、宣言外のデータにはアクセスできない。

# pipe.yaml — Pipeの定義例
name: daily-digest
description: 1日の作業サマリーを自動生成
schedule: "0 18 * * *"  # 毎日18時に実行
permissions:
  screen: read           # 画面データの読み取り
  audio: read            # 音声データの読み取り
  filesystem: none       # ファイルシステムアクセスなし

代表的なPipeの例

Pipe名 機能
daily-digest 1日の作業サマリーを自動生成
obsidian-sync 画面アクティビティをObsidianのデイリーノートに自動記録
meeting-notes ミーティング検出→議事録自動生成
expense-tracker 経費関連の画面を検出→経費レポート作成
crm-update 顧客とのやり取りを検出→CRM自動更新

PipeはNext.jsアプリとして開発でき、マーケットプレイスに公開・収益化も可能。@screenpipe/sdkを使って画面データの検索や通知送信がTypeScriptで書ける。


類似ツールとの比較

ツール 対象 ローカル処理 AI自動化 ストレージ 料金
Screenpipe 画面+音声の記録・自動化 100% Pipe + MCP ~5-10 GB/月 有償(商用は要ライセンス・後述)
ActivityWatch アプリ使用時間の追跡 100% なし 最小 無料
Rewind AI / Limitless 画面記録 クラウド依存 限定的 クラウド サブスク
Granola 会議メモ 一部ローカル 会議特化 クラウド サブスク

Screenpipeの最大の差別化ポイントはローカル完結 × AI自動化の組み合わせだ。ActivityWatchはアプリ名と使用時間しか記録しない。Rewind AIはクラウドにデータを送信する。Screenpipeは画面の実際の内容を記録しつつ、すべてローカルで処理する。


プライバシーとセキュリティの設計

  • 100%ローカル処理がデフォルト——データは~/.screenpipe/から外に出ない
  • 広告利用・第三者共有・AIモデル学習への使用は一切なし
  • オプションの暗号化screenpipe --encryptでChaCha20-Poly1305暗号化 + Argon2id鍵導出を有効化可能
  • Pipeのデータアクセスは3層のOSレベル権限で制御——マーケットプレイスからPipeをインストールする際は、権限宣言を必ず確認すべき

ライセンス変更:MITから「Screenpipe Commercial License」へ(2026年6月10日)

Screenpipeを検討するうえで、いま最も重要な変更点がここだ。2026年8月1日にリポジトリの LICENSE.md とそのコミット履歴を実測した結果を整理する。

時期 ライセンス
〜2026年3月4日 MIT License(リポジトリ全体)
2026年3月5日 ee/ ディレクトリを追加し、そこだけプロプライエタリ化
2026年6月10日以降 リポジトリ全体が Screenpipe Commercial License

コミット履歴には license: move core from MIT to Screenpipe Commercial License、続いて license: single Screenpipe Commercial License for the whole repo というメッセージが残っており、段階的にではなく明確な意思をもって切り替えられたことが読み取れる。

無償で使える範囲

LICENSE.md の第2条「Free Use」が無償利用を認めるのは、次の3つに限られる。

個人の非商用利用
非営利・教育・研究目的の利用
評価・開発・テスト目的での利用(組織の規模を問わず、ただし7日間まで)

逆に言えば、企業での業務利用は「7日間の評価期間」を過ぎた時点で有償ライセンスが必要になる。第4条は「いかなる商用利用も、企業規模・従業員数・売上・資金調達の状況にかかわらず、別途の有償商用ライセンスを要する」と明記している。ここでいうCommercial Useの定義は「業務または本番環境での利用」「収益を生む活動、またはそれを支える活動での利用」「営利企業による、または営利企業のための利用(評価期間後)」だ。

有償ライセンスなしでは禁止される行為

第5条は、商用ライセンスを持たない場合に禁止される行為を列挙している。

・商用製品・サービスの一部としての販売・サブライセンス・配布
・第三者へのホスティング/マネージドサービスとしての提供
・顧客向け製品への組み込み・統合
・競合する製品・サービスの構築・提供・運用

公式ビルドの人数制限は別建てになっている

見落としやすいのが第3条だ。LICENSE.md が規律するのはソースコードと、そこから自分(または第三者)がビルドしたバイナリまでで、Screenpipeが配布する公式のビルド済みアプリは対象外になる。公式ビルドの利用は https://screenpi.pe/terms の利用規約とサブスクリプション条件に従う。

その規約の要点として、LICENSE.md 自身が次の条件を明記している。

条件 内容
ライセンスの単位 1人1サブスクリプション(またはライフタイムライセンス)。本人の複数デバイスと、本人の業務利用までをカバー
1社あたりの上限 個人ライセンスは同一企業内で4人まで5人以上はTeamまたはEnterpriseプランが必要(誰が支払っているかは関係ない)
サーバー・共有マシン 個人ユーザーに紐づかないマシン(サーバー、共有端末、無人稼働機)は別途の商用契約が必要
過去バージョンはMITのまま残る
LICENSE.md の末尾は「これまでMITライセンスで公開されたバージョンのScreenpipeは、引き続きMITライセンスの下で利用できる」と明記している。本ライセンスが適用されるのは当該バージョンとそれ以降だ。したがって、2026年6月10日より前のタグをフォークして使い続けるという選択肢は形式上は残る。ただしその場合、以降のバグ修正・OS対応・セキュリティ修正は自分で面倒を見ることになる点は織り込んでおきたい。

採用判断がどう変わるか

個人利用・研究利用:これまでどおり無償で使える。判断は変わらない
企業の業務利用:7日を超える時点で有償ライセンスが必要。まず4人以内か5人以上かで必要なプランが変わる
自社プロダクトへの組み込み:MIT時代は自由だったが、現在は商用ライセンスなしでは明確に禁止されている。ここが最も大きな方針転換
サーバー常駐・共有端末での運用:個人ライセンスでは賄えず、別途の商用契約が要る

「ローカル完結で外部にデータを出さない」という技術的な性質は変わっていないが、ライセンス上の性質はOSSからソースコード公開型の商用ソフトウェアへ変わった。社内でOSS利用として稟議を通していた場合、前提から見直す必要がある。


ユースケース:どんな場面で使えるか

開発者:「昨日ターミナルで実行したあのコマンド」「3日前にブラウザで見たAPI仕様」を即座に検索。Claude Codeとの連携で、過去の作業コンテキストを活用したコーディングが可能。

ナレッジワーカー:会議の議事録自動生成、1日の作業サマリー、経費レポートの自動作成。手動のメモ取りから解放される。

セキュリティ意識の高い組織:クラウドにデータを送信しない画面記録ソリューションとして、コンプライアンス要件を満たしながら生産性ツールを導入できる。

参照ソース