「3日前にSlackで見たあのURLは何だったか」「先週のミーティングで言及されたAPIの名前は」——こうした問いに答えるツールがScreenpipeだ。画面と音声を24時間ローカルで記録し、OCRとWhisperでテキスト化してSQLiteに保存するRust製ツールで、GitHub ★20,654(2026-08-01 実測)、最新リリースは app-v2.5.158(2026-07-31)と開発は活発に続いている。

THE NUMBERS数字で見る

変化したときだけ撮るので、8時間で約300MBに収まる

20,654★

GitHub スター

2026-08-01 実測

5〜10%

CPU 使用率

公称値

300MB

8時間の記録

月 5〜10GB(公称値)

出典: GitHub screenpipe/screenpipe(★は2026-08-01実測)、CPU・容量は公式ドキュメントの公称値

30秒でわかるScreenpipe

  • ・画面と音声を記録し、アクセシビリティツリー+OCRとWhisperでテキスト化してSQLiteに溜める
  • ・処理は100%ローカル。データは ~/.screenpipe/ から外に出ない
  • ・localhost:3030 のREST API、MCPサーバー、Pipe(AIエージェントのプラグイン)から使える
  • ・2026-06-10にMITから「Screenpipe Commercial License」へ変更。企業の業務利用は7日の評価期間後に有償

この記事はAIエージェントの中でも「画面の記憶」を扱うツールに絞って解説する。AIエージェント全般は AIエージェントフレームワーク比較2026|LangGraph・CrewAI・Dify等9種をStar数・実コードで検証 をご覧ください。

【最重要・2026-08-01 追記】ライセンスがMITから独自の商用ライセンスへ変わった

  • ・初出(2026-04-11)時点ではMITだったが、2026-06-10のコミットでリポジトリ全体が「Screenpipe Commercial License」へ移行した(コミットメッセージ license: move core from MIT to Screenpipe Commercial License)
  • ・「MITのOSSだから会社で自由に使える」前提で検討していたなら、下の「ライセンス変更」の節を必ず確認してほしい

Screenpipeのデスクトップアプリ画面

Screenpipeとは:イベント駆動で画面と音声を記録する仕組み

従来の画面録画ツールとの違いは2つ。100%ローカル処理であることと、記録をAIエージェント(Pipe)で自動処理できることだ。そのうえで、連続的なスクリーンショットではなくイベント駆動型キャプチャを採っている。アプリ切り替え、クリック、タイピング停止、スクロール、クリップボードコピーなどのOSイベントを検出し、変化があった時だけ撮る。

EVENT DRIVEN記録の通り道

OSのイベントで撮り、SQLiteに溜めて API で渡す

  1. イベント検出

    アプリ切替・クリック

  2. キャプチャ

    画面 JPEG・音声

  3. テキスト化

    OCR・Whisper

  4. SQLite

    FTS5 で全文検索

  5. localhost:3030

    REST API・MCP・Pipe

出典: Screenpipe アーキテクチャドキュメント

テキスト抽出は2段階で行う。

  1. OSアクセシビリティツリー——macOSのAccessibility API / WindowsのUI Automationから、画面上のテキスト要素を直接取る。OCRより高速かつ正確
  2. OCRフォールバック——ツリーでテキストが取れない場合(画像内テキスト等)だけOCRを走らせる

この方式でCPU使用率5〜10%を保ち、ストレージも8時間で約300MB(連続キャプチャの約1/7)、月間5〜10GBに収まる。

Screenpipeのインストールと、REST API・MCPでの検索

# macOS / Linux — ワンラインインストール
curl -fsSL get.screenpi.pe/cli | sh

# macOSならHomebrewも可
brew install screenpipe

# デーモン起動
screenpipe

macOSでは初回起動時に画面収録・アクセシビリティの権限付与が要る(システム設定 → プライバシーとセキュリティ)。音声記録を使うならマイク権限も必要。CLI以外にmacOS / Windows / Linux向けのデスクトップアプリもあり、タイムラインUIで記録を時系列に見られる。

Screenpipeの機能概要

起動すると localhost:3030 でREST APIが立つ。キーワード、時間範囲、音声/画面の種別で絞れる。

# キーワードで画面履歴を検索
curl "http://localhost:3030/search?q=API+endpoint&limit=10"

# 特定の時間範囲 + 音声データに絞る
curl "http://localhost:3030/search?q=deadline&content_type=audio&start_time=2026-04-10T09:00:00"

結果にはテキストに加えてアプリ名・ウィンドウ名・タイムスタンプが入るので、「どのアプリで」「いつ」見たかまで分かる。

MCPサーバーとしても動くので、Claude DesktopやCursorから直接画面履歴を検索できる。Claude Desktopなら設定ファイルに次を足すだけだ。

// claude_desktop_config.json
{ "mcpServers": { "screenpipe": { "command": "screenpipe", "args": ["mcp"] } } }

MCP経由では search_screen(画面テキスト)、search_audio(音声)、get_recent_activity(直近の操作)の3ツールが使え、「昨日のミーティングで話されたデプロイの手順をまとめて」のような質問に、画面と音声の記録から答えられる。

Pipe(プラグイン)システム:AIエージェントによる自動化

Pipeは、記録したデータに対してAIエージェントを走らせるプラグインだ。スケジュールで自動実行され、データへのアクセス権限をYAMLで宣言する。アクセスはOSレベルで強制されるので、宣言外のデータには触れない。

# pipe.yaml — Pipeの定義例
name: daily-digest
description: 1日の作業サマリーを自動生成
schedule: "0 18 * * *"  # 毎日18時に実行
permissions:
  screen: read           # 画面データの読み取り
  audio: read            # 音声データの読み取り
  filesystem: none       # ファイルシステムアクセスなし
Pipe名 機能
daily-digest 1日の作業サマリーを自動生成
obsidian-sync 画面アクティビティをObsidianのデイリーノートに自動記録
meeting-notes ミーティング検出→議事録自動生成
expense-tracker 経費関連の画面を検出→経費レポート作成
crm-update 顧客とのやり取りを検出→CRM自動更新

PipeはNext.jsアプリとして作れ、マーケットプレイスでの公開・収益化もできる。@screenpipe/sdk を使えば、画面データの検索や通知送信をTypeScriptで書ける。

類似ツールとの比較とプライバシー設計

ツール 対象 ローカル処理 AI自動化 ストレージ 料金
Screenpipe 画面+音声の記録・自動化 100% Pipe + MCP ~5-10 GB/月 有償(商用は要ライセンス・後述)
ActivityWatch アプリ使用時間の追跡 100% なし 最小 無料
Rewind AI / Limitless 画面記録 クラウド依存 限定的 クラウド サブスク
Granola 会議メモ 一部ローカル 会議特化 クラウド サブスク

差別化はローカル完結 × AI自動化の組み合わせにある。ActivityWatchはアプリ名と使用時間しか記録せず、Rewind AIはクラウドにデータを送る。エージェントの記憶をローカルで持つ別のアプローチとしては、memory-osが記憶を7層で管理する基盤を作っている。

プライバシー面の設計は次のとおり。

・100%ローカル処理がデフォルト。広告利用・第三者共有・AIモデル学習への使用はない
・screenpipe --encrypt でChaCha20-Poly1305暗号化+Argon2id鍵導出を有効にできる
・Pipeのデータアクセスは3層のOSレベル権限で制御される。マーケットプレイスからPipeを入れるときは権限宣言を必ず確かめる

ライセンス変更:MITから「Screenpipe Commercial License」へ(2026年6月10日)

2026-08-01にリポジトリの LICENSE.md とそのコミット履歴を実測した結果を整理する。

時期 ライセンス
〜2026年3月4日 MIT License(リポジトリ全体)
2026年3月5日 ee/ ディレクトリを追加し、そこだけプロプライエタリ化
2026年6月10日以降 リポジトリ全体が Screenpipe Commercial License

コミット履歴には license: move core from MIT to Screenpipe Commercial License、続いて license: single Screenpipe Commercial License for the whole repo が残っており、明確な意思をもって切り替えられたことが読み取れる。

LICENSE GATE2026-06-10以降

無償で通れるのは個人・非営利・7日間の評価まで

Screenpipe Commercial License

  • 個人非商用・非営利・研究 無償で使える第2条 Free Use
  • 評価組織での評価・テスト 7日間まで規模を問わない
  • 業務企業の本番利用 有償ライセンス第4条
  • 組込製品に組み込む ライセンスなしは禁止第5条(ホスティングも)
出典: screenpipe/screenpipe の LICENSE.md(2026-08-01 実測)。MIT 時代の過去バージョンは MIT のまま

無償で使える範囲と、禁止される行為

第2条「Free Use」が無償利用を認めるのは、個人の非商用利用、非営利・教育・研究目的、評価・開発・テスト目的(組織の規模を問わず7日間まで)の3つだけだ。企業での業務利用は、7日間の評価期間を過ぎた時点で有償ライセンスが必要になる。第4条は「いかなる商用利用も、企業規模・従業員数・売上・資金調達の状況にかかわらず、別途の有償商用ライセンスを要する」と明記し、Commercial Useを「業務または本番環境での利用」「収益を生む活動、またはそれを支える活動での利用」「営利企業による、または営利企業のための利用(評価期間後)」と定義している。

第5条は、商用ライセンスなしでの次の行為を禁じている。

・商用製品・サービスの一部としての販売・サブライセンス・配布
・第三者へのホスティング/マネージドサービスとしての提供
・顧客向け製品への組み込み・統合
・競合する製品・サービスの構築・提供・運用

公式ビルドの人数制限は別建て

見落としやすいのが第3条だ。LICENSE.md が規律するのはソースコードと、そこから自分(または第三者)がビルドしたバイナリまでで、公式のビルド済みアプリは https://screenpi.pe/terms の利用規約とサブスクリプション条件に従う。LICENSE.md 自身が明記している要点は次のとおり。

条件 内容
ライセンスの単位 1人1サブスクリプション(またはライフタイムライセンス)。本人の複数デバイスと、本人の業務利用までをカバー
1社あたりの上限 個人ライセンスは同一企業内で4人まで。5人以上はTeamまたはEnterpriseプランが必要(誰が支払っているかは関係ない)
サーバー・共有マシン 個人ユーザーに紐づかないマシン(サーバー、共有端末、無人稼働機)は別途の商用契約が必要

LICENSE.md の末尾は「これまでMITライセンスで公開されたバージョンは、引き続きMITライセンスの下で利用できる」と明記している。2026-06-10より前のタグをフォークして使い続ける選択肢は形式上残るが、以降のバグ修正・OS対応・セキュリティ修正は自分で面倒を見ることになる。

採用判断がどう変わるか

・個人利用・研究利用:これまでどおり無償で使える
・企業の業務利用:7日を超える時点で有償。まず4人以内か5人以上かで必要なプランが変わる
・自社プロダクトへの組み込み:MIT時代は自由だったが、現在は商用ライセンスなしでは明確に禁止。ここが最も大きな方針転換
・サーバー常駐・共有端末での運用:個人ライセンスでは賄えず、別途の商用契約が要る

「ローカル完結で外部にデータを出さない」という技術的な性質は変わっていないが、ライセンス上はOSSからソースコード公開型の商用ソフトウェアへ変わった。社内でOSS利用として稟議を通していたなら、前提から見直す必要がある。

ユースケース:どんな場面で使えるか

開発者:「昨日ターミナルで実行したあのコマンド」「3日前にブラウザで見たAPI仕様」をすぐ検索できる。MCP経由でClaude CodeやCursorに渡せば、過去の作業コンテキストを踏まえてコーディングできる。記録を読むだけでなく画面を操作させたいなら、GUIを自律操作するUI-TARS-desktopが対になる。

ナレッジワーカー:会議の議事録、1日の作業サマリー、経費レポートの自動作成。手動のメモ取りから解放される。

セキュリティ意識の高い組織:クラウドにデータを送らない画面記録として、コンプライアンス要件を満たしながら導入できる。ただし業務利用は前節の有償ライセンスが前提になる。

参照ソース