2026年7月24日、Anthropicが Claude Opus 5(APIのモデルIDは claude-opus-5)を公開した。Opus世代としてはOpus 4.8に続く新モデルで、公式発表は「Claude Fable 5のフロンティア知能に迫る性能を、半額で提供する、思慮深く先回りするモデル」と位置づけている。ただしこの記事で最初に押さえたいのは、性能の宣伝文よりも 価格が$5/$25でOpus 4.8から1セントも動いていない という事実と、思考(thinking)が既定オンになったことでAPIの挙動が変わった という2点だ。速報の見出しには出にくいが、実装と請求書に直接効くのはこちらである。

Claude Opus 5の位置づけ。入力$5/出力$25はOpus 4.8と同額、コンテキスト1Mトークン、最大出力128k、思考が既定オン、知識カットオフ2026年5月。出力単価はFable 5 $50、Opus 5 $25、Sonnet 5 $15、Haiku 4.5 $5
Claude Opus 5の主要スペックと、現行モデルの出力単価の位置関係(Anthropic公式ドキュメントの公表値をもとに作図・2026年7月26日時点)
30秒でわかる Claude Opus 5(2026年7月26日時点)
  • 正体:2026年7月24日公開のOpus世代の新モデル。モデルIDは claude-opus-5。コンテキスト1Mトークン(既定かつ上限)、最大出力128kトークン。
  • 価格:入力$5/出力$25(100万トークンあたり)でOpus 4.8から据え置き。Batchで$2.50/$12.50、キャッシュヒットは$0.50。
  • 最大の変更思考が既定オンになった。加えて thinking: {"type": "disabled"} は effort high 以下でしか受け付けられず、xhighmax では400エラーになる(Opus 4.8からの破壊的変更)。
  • ベンチの注意:公開されているのは絶対スコア表ではなく「Opus 4.8の2倍以上」「next-best modelの3倍」といった相対表現とコスト当たりの効率。競合ベンダーのモデル名は挙げられていない。
  • 使える面:Claude API・Amazon Bedrock・Google Cloud・Microsoft Foundry、Claude.ai/アプリ(Maxの既定モデル)、Claude Code、Claude Cowork。
  • 限界の明記:Anthropic自身が「サイバーセキュリティのタスクではMythos 5に及ばない」「長時間の自律的な生物学研究でもMythos 5が上」と書いている。

料金体系そのものの全体像(Sonnet 5・Haiku 4.5・Fable 5を含む現行モデルの単価とシミュレーション)は Claude API 料金完全ガイド2026|Sonnet 5/Opus 4.8/Fable 5を計算機で試算 にまとめてある。本記事はそのうち Opus 5に固有の差分 に絞って掘り下げる。

Claude Opus 5とは — Opus 4.8から何が変わったのか

Claude Opus 5は、Anthropicの表現では「incremental(漸進的)ではなくstep-change(段階的な飛躍)」の改善とされる。ただし外形的なスペックを並べると、変わっていない項目のほうが目立つ。コンテキストウィンドウは1Mトークンのまま、最大出力は128kトークンのまま、単価も$5/$25のままだ。

変わったのは中身と、APIの既定の振る舞いである。まず数字で追える差分を並べる。

項目 Claude Opus 4.8 Claude Opus 5
モデルID claude-opus-4-8 claude-opus-5
入力/出力単価(100万トークン) $5/$25 $5/$25(据え置き)
コンテキストウィンドウ 1Mトークン 1Mトークン(既定かつ上限)
最大出力 128kトークン 128kトークン
思考(thinking)の既定 オフ(指定しなければ思考なし) オン(モデルが自分で判断)
thinking無効化の可否 effort段と独立に指定可 effort high 以下のみxhighmax は400
プロンプトキャッシュ最小長 1,024トークン 512トークン
ツール利用のシステムプロンプト増分 290/410トークン 286/406トークン
信頼できる知識カットオフ 2026年1月 2026年5月
Fast mode 対応($10/$50) 対応($10/$50・約2.5倍速)
Opus 5は「値段が上がった代わりに強くなったモデル」ではなく、同じ値札のまま中身だけ入れ替わったモデルである。だからこそ、変わったのが単価ではなく消費トークン量と挙動であることを理解しないと、請求額の変化を読み違える。

知識カットオフが2026年5月へ

地味だが実務では効くのが知識カットオフだ。Opus 5の「信頼できる知識カットオフ(reliable knowledge cutoff)」は2026年5月で、これは同時期の他モデルより新しい。Claude Fable 5とClaude Sonnet 5はいずれも2026年1月、Claude Haiku 4.5は2025年2月である。Anthropicはこの「信頼できる知識カットオフ」を「モデルの知識が最も広範かつ信頼できる日付」と定義し、より広い範囲を指す「訓練データのカットオフ」とは区別している。Opus 5では両者とも2026年5月だ。

ライブラリのバージョンやAPIの仕様変更を扱う開発用途では、この4か月の差がそのまま「知らないフレームワークの新機能」の量になる。フロンティア性能で言えば上位に置かれるFable 5のほうが知識は古い、という逆転が起きている点は、モデル選定の際に見落とされやすい。

挙動そのものの変化

公式ドキュメントは、コードを1行も変えなくても気づく違いとして次を挙げている。

・ユーザーに見える既定の応答と、ディスクに書き出す成果物(レポート・Markdown文書・サマリ)が従来より長くなる
・エージェント作業中に進捗を頻繁にナレーションする(何をしようとしているかを先に宣言する傾向)
・マルチエージェント構成ではサブエージェントへより積極的に委譲する
指示されなくても自分の作業を検証する

最後の項目は特に重要で、公式は「旧モデルから引き継いだ検証指示(『最後に検証ステップを入れて』『サブエージェントで検証させて』)は削除せよ」と明記している。Opus 5ではそれらが自前の検証行動と二重になり、品質を上げないままトークンを消費するためだ。この「消すべき指示」については後段の移行セクションで具体的に扱う。

読者の3つの問いへの答え
何ができる:1Mトークンの文脈を保ったまま、長時間のエージェント作業・複数ファイルにまたがる実装・コードレビューを、自前の検証込みで走らせる。
何を解決する:「Fable 5の品質は欲しいが単価$10/$50は重い」という費用の断絶。Opus 5は$5/$25でその間を埋めにいく。
何を代替できる:Fable 5を使っていた経路の一部。ただしサイバーセキュリティと長時間の生物学研究はMythos 5が上と公式が明記しており、全面的な代替ではない。

Claude Opus 5の公称ベンチマークの読み方 — 「2倍」「3倍」は何との比較か

Opus 5の発表で最も引用されるのはベンチマークの数字だが、ここには読み方の作法がある。Anthropicが公開したのは モデル横並びの絶対スコア表ではなく、相対表現とコスト当たりの効率 だからだ。公式文の記載を、原文の構造を保ったまま整理する。

ベンチマーク 公式の記載 比較相手 付帯条件
Frontier-Bench v0.1 全モデルを上回り、Opus 4.8の性能を2倍以上に Opus 4.8 タスク当たりコストはより低い
ARC-AGI 3 スコアはnext-best modelの3倍 next-best model(名指しなし) 新規問題を解く評価
CursorBench 3.2 Fable 5のピークスコアと0.5%以内 Fable 5 max effort時・タスク当たりコストは半分
OSWorld 2.0 任意のコスト帯で全モデルを上回る 全モデル/Fable 5 Fable 5の最高値をコスト約1/3で超える
Zapier AutomationBench 合格率はnext-best modelの約1.5倍 next-best model(名指しなし) 同じタスク当たりコストで比較
有機化学(社内ベンチ) Opus 4.8より10.2ポイント高い Opus 4.8 分光データからの分子構造推定
タンパク質関連タスク 7.7ポイント高い Opus 4.8 配列変異が機能に与える影響の予測
公称ベンチマークの読み方。ベンチ名・比較対象・主張の形の3段。そのまま読むと誤解する点と、実務での読み方の対比
公称値の構造。比較相手が項目ごとに入れ替わり、コスト当たりが評価軸になっている(Anthropic公式発表の記載をもとに作図)

ここから読み取れる注意点は4つある。

第一に、「2倍」は絶対スコアが2倍という意味ではない。 Frontier-Bench v0.1における「more than doubles Opus 4.8’s performance」は、そのベンチマーク上の測定値がOpus 4.8比で2倍を超えたという記述であり、たとえば正答率が40%から80%になったのか、10%から25%になったのかは公表されていない。ベースが低いベンチマークで倍率が大きく出るのは珍しくないため、倍率だけを切り出して「性能が2倍になった」と要約するのは正確ではない。

第二に、比較相手が項目ごとに入れ替わる。 対Opus 4.8の項目、対「next-best model」の項目、対Fable 5の項目が混在している。「next-best model」は次点のモデルを指す一般名詞で、それが自社の別モデルなのか他社モデルなのかは記載がない。数字を引用するときは倍率とセットで比較相手を明示しないと、意味が変わってしまう。

第三に、effort設定という条件が付く場合がある。 CursorBench 3.2の「Fable 5のピークスコアと0.5%以内」は max effort時 の結果だ。max effortはトークン消費に上限を置かない最上段であり、既定のhighで同じ差になるとは書かれていない。「タスク当たりコストは半分」という併記があるとはいえ、条件を落として引用すると別の主張になる。

第四に、評価軸そのものが「cost per task(タスク当たりコスト)」である。 OSWorld 2.0の「任意のコスト帯で全モデルを上回る」やZapier AutomationBenchの「同じコストで1.5倍の合格率」は、品質単独ではなくコスト効率の比較だ。予算を無制限に置ける状況での純粋な性能比較とは前提が異なる。

この発表からは競合他社との横並び比較は作れない
Anthropicの公式発表は、比較相手を「next-best model」と記すにとどまり、他ベンダーのモデルを実名で挙げていない。したがって「Claude Opus 5がGPT系/Gemini系の何を上回った」という記述を、この一次資料から導くことはできない。他社モデルとの比較が必要なら、第三者の独立ベンチマークを別途参照するか、自社のevalで実測するのが筋である。

なお安全性については、Anthropicは「自動化された行動監査(automated behavioral audit)で、Opus 5は全体的な逸脱行動について2.3のスコアであり、これは最近のモデルの中で最も低い」と記載している。スコアが低いほど望ましい指標だが、この監査の詳細な方法論や他モデルの具体値は発表文からは追えないため、社内の安全性評価をそのまま置き換える材料にはならない。

料金と使いどころ — 単価据え置きでコストは下がるのか

Opus 5の料金は、Claude APIの公式値で 入力$5/出力$25(100万トークンあたり)。Opus 4.8とまったく同額である。付随する単価まで含めると次のようになる。

課金項目 Claude Opus 5 Claude Fable 5 Claude Sonnet 5 Claude Haiku 4.5
入力(基本) $5 $10 $2(〜8/31の導入価格・以降$3) $1
出力 $25 $50 $10(〜8/31・以降$15) $5
5分キャッシュ書き込み $6.25 $12.50 $2.50 $1.25
1時間キャッシュ書き込み $10 $20 $4 $2
キャッシュヒット $0.50 $1 $0.20 $0.10
Batch API(入力/出力) $2.50/$12.50 $5/$25 $1/$5 $0.50/$2.50
コンテキスト 1M 1M 1M 200k

Sonnet 5の$2/$10は2026年8月31日までの導入価格で、9月1日から標準の$3/$15になる。8月末を境に、Sonnet 5とOpus 5の出力単価の差は2.5倍から約1.67倍へ縮まる計算だ。乗り換え判断をしている途中なら、この日付は押さえておきたい。

「単価据え置き」がそのまま「コスト据え置き」にならない理由

ここが実務で一番効くポイントである。単価は動いていないが、Opus 5は思考が既定オンになった。思考トークンは出力トークンとして課金され、max_tokens は思考と応答テキストを合わせた出力全体の上限として働く。つまりOpus 4.8で思考なしのまま運用していたワークロードをモデルIDだけ差し替えると、同じ入力に対して出力トークンが増え、請求額が上振れしうる。

一方で、コストを下げる方向の変更も同時に入っている。

プロンプトキャッシュの最小長が1,024→512トークンに低下。Opus 4.8では短すぎてキャッシュできなかったプロンプトが、コード変更なしでキャッシュ対象になる
ツール利用時のシステムプロンプト増分が微減autonone で286トークン、anytool で406トークン(Opus 4.8は290/410)。ちなみにOpus 4.7では675/804だったので、4.8世代で大きく削られたぶんが維持されている
effortのlow・mediumが実用域に入った。公式は「low と medium を、トークンコストと応答時間の主要な制御手段として積極的に使え」と明記しており、品質が保てる経路を下げることで従来より大きくコストを削れる

flowchart TD A["Opus 4.8から
Opus 5へ差し替えた"] --> B{"思考なしで
運用していた?"} B -- はい --> C["出力トークンが増える
max_tokensを見直す"] B -- いいえ --> D["出力量の変化は小さい"] C --> E{"品質は足りているか"} D --> E E -- 余裕がある --> F["effortを medium / low へ下げる
→ トークンと遅延を削る"] E -- 足りない --> G["effortを xhigh / max へ上げる
→ max_tokensも大きく取る"] F --> H["自社evalで再測定"] G --> H

どの経路にOpus 5を当てるか

Anthropicの位置づけは「Fable 5のフロンティア知能に迫る性能を半額で」だ。この文をコスト設計に翻訳すると、Opus 5が最も効くのはFable 5を使っている経路 ということになる。出力単価$50が$25になるうえ、CursorBench 3.2ではmax effort時にFable 5のピークと0.5%以内、OSWorld 2.0ではFable 5の最高値をコスト約1/3で超えたと公式が記載しているためだ。

逆に、Sonnet 5($2/$10、9月以降$3/$15)で品質が足りている経路を機械的にOpus 5へ上げる理由はない。出力単価は2.5倍〜1.67倍になる。Sonnet 5の詳細な設計思想と使いどころは Claude Sonnet 5 解説|Opus級の品質をSonnet価格で使う新モデルの全貌 で扱っているので、Sonnet帯との比較で迷う場合はそちらを併読してほしい。

Fast mode(research preview)は、既定の約2.5倍の速度と引き換えに単価が2倍の$10/$50になる。ただし Claude API(ファーストパーティ)専用 で、Amazon Bedrock・Google Cloud・Microsoft Foundryでは利用できない。Batch APIとの併用もできない。対話的な用途で応答速度がユーザー体験に直結する場合だけ検討する位置づけだ。

thinkingとeffort — API挙動の破壊的変更

Opus 5でコードの修正が必要になりうるのは、思考(thinking)とeffortの関係である。ここは3つの事実が混同されやすいので、分けて整理する。

事実1:拡張思考(thinking.type: "enabled")はOpus 5では非対応。 これはClaude Opus 4.8・Sonnet 5・Fable 5でも同じで、現行世代ではHaiku 4.5のみが対応する旧来の方式だ。

事実2:アダプティブ思考は対応で、既定オン。 Opus 4.8では thinking: {"type": "adaptive"} を明示しなければ思考なしで動いたが、Opus 5では同じリクエストが思考ありで動く。モデルがターンごとに、いつ・どれだけ考えるかを自分で決める。ワイヤ上の値は変わっておらず、thinking: {"type": "adaptive"} は引き続き有効で、既定と等価である。

事実3:思考の無効化は effort high 以下でのみ可能。 thinking: {"type": "disabled"} を effort xhigh または max と組み合わせると 400エラー が返る。これはOpus 5以降の一般提供の挙動で、リクエストごとに強制される。Opus 4.8では思考の無効化がeffort段と独立していたため、ここが破壊的変更にあたる。

flowchart TD A["リクエストを組み立てる"] --> B{"thinkingを
disabledにする?"} B -- しない(推奨) --> C["effortは low〜max のどれでも可
コストはeffortで制御"] B -- する --> D{"effortは?"} D -- "low / medium / high" --> E["受理される
ただし出力に副作用の可能性"] D -- "xhigh / max" --> F["400エラー"] E --> G["副作用1: tool_useブロックではなく
本文にツール呼び出しが混じる"] E --> H["副作用2: 内部XMLタグが
可視の応答に漏れる"]
effortパラメータの5段階。max・xhigh・high(既定)・medium・lowの各段の用途と、Opus 5での推奨
effortの5段階とOpus 5での使い分け。既定はhighで、パラメータを省略した場合と完全に同じ挙動になる(Anthropic公式ドキュメントをもとに作図)

思考を無効化したときに起きること

公式ドキュメントは、思考を無効化した状態で起きうる2つの副作用を明記している。ひとつは、構造化された tool_use ブロックを出す代わりに、ツール呼び出しをそのまま本文テキストに書いてしまう ことがある点。ターンは正常終了するが呼び出しは実行されず、エージェントのループでは漏れたテキストが会話履歴に残るため後続のターンにも影響する。検索のようなツール多用のワークロードで起きやすいとされる。

もうひとつは、<thinking> タグなどの 内部XMLタグが可視の応答に混じる ことがある点だ。公式は、システムプロンプトに「思考するな」「推論を書くな」というルールが入っていると、このタグ漏れがむしろ増えると指摘している。該当する指示があるなら削除したほうがよい。

いずれの副作用についても、公式が挙げる第一の対策は「思考を有効のままにして、コストはeffortの段を下げて制御する」ことだ。多くのタスクでは、思考ありのlow effortのほうが、同程度のコストで思考なしより良い結果になる と明記されている。

effortの段の選び方

Opus 5は5段すべて(lowmediumhighxhighmax)に対応する。API既定とClaude Codeの既定はいずれも high で、effort"high" を渡すのはパラメータを省略するのと完全に同じ挙動になる。

公式の推奨は明快だ。既定のhighから始め、自社のevalを見て両方向に振る。 難度の高いコーディングとエージェント作業ではxhighへ、トークン消費に制約を置かない価値があるタスクではmaxへ。逆に品質が保てる経路ではlowとmediumを積極的に使う。旧モデルから引き継いだeffort設定はそのまま流用せず、測り直すことが推奨されている。

xhighやmaxで動かすときは max_tokens を大きく取る必要がある。思考と応答テキストの合計に対する上限なので、サブエージェントやツール呼び出しをまたいで動く余地を残さないと途中で切れる。公式は64kトークンあたりを出発点として調整する例を示している。

# effort を max にして Claude Opus 5 を呼ぶ(64k は非ストリーミングの時間制限を超えうるためストリームする)
curl https://api.anthropic.com/v1/messages \
  -H "x-api-key: $ANTHROPIC_API_KEY" \
  -H "anthropic-version: 2023-06-01" \
  -H "content-type: application/json" \
  -d '{
    "model": "claude-opus-5",
    "max_tokens": 64000,
    "stream": true,
    "output_config": { "effort": "max" },
    "messages": [
      { "role": "user", "content": "この設計の破綻しうる箇所を洗い出してください" }
    ]
  }'

思考は既定でオンなので、thinking フィールドを書く必要はない。

もうひとつ注意したいのが、effortを会話の途中で変えるとプロンプトキャッシュが効かなくなる 点だ。output_config.effort はリクエスト単位の設定で、値がレンダリング後のプロンプトの形を変えるため、前のターンのキャッシュ済みプレフィックスが再利用されない。長いセッションでキャッシュに頼るなら、最初にeffortを決めて固定するのが定石になる。

Opus 4.8からの移行 — 手順とプロンプトの書き換え

移行そのものは軽い。Messages APIの形は変わらず、モデルIDを差し替えれば動く。

model = "claude-opus-4-8"  # 変更前
model = "claude-opus-5"    # 変更後

問題はそのあとだ。公式が挙げる確認項目は4つに整理できる。

Opus 4.8からOpus 5への移行手順。モデルID差し替え、max_tokens見直し、thinking無効化とeffortの併用制限、検証指示の削除の4点
移行時に見るべき4点。IDの差し替え自体はドロップインだが、思考が既定オンになったことの波及を追う必要がある

max_tokens を見直す。 思考が既定オンになったぶん、同じ max_tokens でも応答テキストに使える余地が減る。Opus 4.8で思考なしのまま運用していたワークロードほど影響が大きい。

② thinking無効化とeffortの組み合わせを検査する。 thinking: {"type": "disabled"} を使っているコードパスがあるなら、そこでeffortが xhighmax になっていないか確認する。なっていれば400エラーになるので、思考を無効のままeffortを high 以下へ下げるか、effortを維持して thinking フィールドを外すかのどちらかを選ぶ。

③ 検証指示を削除する。 これが最も見落とされやすい。Opus 5は言われなくても自分の作業を検証し、自分の誤りを見つけて直す。旧世代向けに書いた「最後に検証ステップを入れて」「サブエージェントで検証させて」「回答前に再確認して」といった指示は、モデル自身の挙動と二重になって過剰検証を招く。公式は「これらを削除すると、品質を落とさずに無駄なトークンが減る」と明記している。ハーネス側に組み込まれた検証ステップも同じ扱いだ。

④ 冗長さを抑える指示を足す。 Opus 5は既定の応答も、ディスクに書き出す成果物も従来より長い。ここでeffortを下げても応答が短くなるとは限らない——effortが制御するのは思考量であって可視の応答長ではないためだ。長さを抑えたいなら、プロンプトで明示的に指示する必要がある。

Opus 5でプロンプトから消すべき指示と足すべき指示の対比。検証指示・再確認指示・思考禁止指示を消し、簡潔さ・ナレーション頻度・委譲上限の指示を足す
Opus 4.8世代のプロンプトからの書き換え方針(Anthropic公式「Prompting Claude Opus 5」の記載をもとに作図)

用途別に効く書き換え

公式ドキュメントが挙げる具体的なパターンのうち、影響が大きいものを挙げる。

コードレビュー用途:Opus 5は実バグを高い割合で見つけ、追加で挙がる指摘も偽陽性が少ないとされる。ここで「重大な問題だけ報告して」「保守的に」と指示すると、モデルがそれを文字通り受け取って報告を減らすことがある。全件報告させて、別パスでフィルタする構成が推奨されている
サブエージェントの制御:委譲に積極的になったぶん、小さなタスクにまで分散すると時間とコストが増える。どういう場合に委譲するかを明示するか、起動数に決定的な上限を設けるのが有効
進捗ナレーション:作業中の実況が増えた。頻度と形(最初のツール呼び出し前に一文、重要な発見か方針転換のときだけ更新、完了時は結論から)を具体的に書くと調整できる。公式は「してほしくないことを禁止するより、してほしい形を肯定的な例で示すほうが効く」としている
視覚(vision)まわり:チャート・文書・図の理解とUI再現が強化されたため、旧モデル向けに入れた回避策は不要になっている可能性がある。画像を切り出して確認するツールを与えると最も性能が出る、とされる
タスクの範囲:Opus 5は自分の判断でタスクの範囲を広げることがある。狭い作業を頼むときは、範囲を明示的に制約する一文を入れる

なおAPIまわりの実装パターンをコード付きで確かめたい場合は、Anthropicが公式に公開しているノートブック集が近道になる。中身の歩き方は Anthropic公式claude-cookbooks完全ガイド|Claude API実践レシピ集の使い方2026 にまとめてある。

追加された2つのbeta機能

Opus 5と同時に、APIに2つの機能がbetaで入った。どちらも長時間のエージェント運用でコストと安定性に効く。

会話の途中でのツール変更(mid-conversation tool changes)。 これまではセッションの間ずっと固定のツール一覧を送り続ける必要があったが、ターンの間にツールを追加・削除しても プロンプトキャッシュが無効化されない ようになった。betaヘッダ mid-conversation-tool-changes-2026-07-01 を付けて使う。ツールを多く抱えるエージェントほど、キャッシュ維持の恩恵は大きい。

フォールバックの "default" モード。 fallbacks パラメータに新しい "default" モードが加わり、自分でモデル一覧を維持する代わりに、Anthropicが推奨する拒否カテゴリ別のフォールバック先を適用できる。betaヘッダは server-side-fallback-2026-07-01 で、これは明示的なモデル一覧も併せてサポートする(旧 server-side-fallback-2026-06-01 は明示一覧のみ)。安全分類器に引っかかったリクエストが自動で別モデルへ回るため、拒否によるエージェントの停止を減らせる。

使える場所と、他モデルとの位置づけ

Opus 5は公開初日から主要な提供面に揃っている。

Claude Opus 5が使える面。Claude API、Amazon Bedrock、Google Cloud、Microsoft Foundry、Claude.ai/アプリ、Claude Code
提供面とモデルID。Fast modeだけはClaude API専用で、パートナークラウドでは使えない(2026年7月26日時点の公式値)

APIとしては、Claude APIで claude-opus-5、Amazon Bedrockで anthropic.claude-opus-5、Google Cloudで claude-opus-5、そしてMicrosoft Foundryで提供される。Amazon Bedrockでは bedrock-runtimeInvokeModel APIからも同じ基盤で到達できるが、レガシー統合のARN付きモデルID表には含まれていない点が注記されている。

アプリ側では、Claude.aiで Claude Maxの新しい既定モデルClaude Proで選べる最上位モデル になった。Claude CodeとClaude Coworkからも利用できる。Claude CodeでのeffortはAPIと同じく既定 high である。

Opus 4.8はこれらすべての基盤で引き続き提供される。 既存の経路を急いで全部切り替える必要はなく、evalで比較しながら段階的に移す運用が取れる。一方で Claude Opus 4.1(claude-opus-4-1-20250805)は非推奨で、2026年8月5日に廃止予定 だ。まだ4.1を使っている経路があるなら、期限までにOpus 5へ移す必要がある。

現行4モデルの整理

  Claude Fable 5 Claude Opus 5 Claude Sonnet 5 Claude Haiku 4.5
公式の位置づけ 長時間エージェント向けの次世代知能 複雑なエージェント的コーディングと企業業務 速度と知能の最良の組み合わせ フロンティアに近い知能で最速
モデルID claude-fable-5 claude-opus-5 claude-sonnet-5 claude-haiku-4-5-20251001
入力/出力 $10/$50 $5/$25 $2/$10(9月以降$3/$15) $1/$5
コンテキスト 1M 1M 1M 200k
最大出力 128k 128k 128k 64k
アダプティブ思考 常時オン 対応(既定オン) 対応 非対応
拡張思考(enabled 非対応 非対応 非対応 対応
相対的な遅延 遅い 中程度 速い 最速
信頼できる知識カットオフ 2026年1月 2026年5月 2026年1月 2025年2月

Anthropicの選び方の指針は「迷ったら複雑なエージェント的コーディングと企業業務にはOpus 5から始め、利用可能な最高性能が要るならFable 5」というものだ。Fable 5とMythos 5の関係(同じ基盤で安全分類器の有無が違うペア)については Claude Fable 5とMythos 5とは|公式ベンチマーク15項目・価格2倍・使い分けガイド で詳しく扱っている。

Opus 5が上位ではない領域

公式発表が自ら限界を書いている点は、位置づけを正確に理解するうえで重要だ。Anthropicは サイバーセキュリティのタスクではOpus 5がMythos 5に及ばない と記載している(脆弱性の発見については同程度、エクスプロイトについては後ろ)。また 長時間の自律的な生物学研究でもMythos 5が上 としている。

Mythos 5はProject Glasswing経由の招待制で一般提供されていないため、多くの利用者にとっては選択肢に入らない。だが「Opus 5が全領域で現行最強」という要約は公式の記載と食い違う、という点は押さえておきたい。

拒否まわりの扱いにも変更が入っている。Claude.ai・Claude Code・Claude Coworkでは、安全分類器に引っかかったリクエストが 既定でOpus 4.8へフォールバック する。分類器が介入する頻度については「自社のテストに基づき、Fable 5に対してよりも約85%少なくなると見込む」とされる(実測値ではなく見込み値である点に注意)。またこの公開に合わせて、Fable 5でブロックされた生物学関連のリクエストは、Opus 4.8ではなくOpus 5へ回される ようになった。

「〜とされる」で読むべき数値
本記事の数値はすべてAnthropicの公式発表・公式ドキュメントの記載である。ただしベンチマークはいずれも同社自身の測定(Frontier-Bench・有機化学・タンパク質は社内ベンチマークを含む)であり、第三者による再現・検証を経たものではない。行動監査の2.3というスコアも方法論の詳細は公開されていない。実運用への採用判断は、自社のevalでの実測を伴わせるのが確実である。

まとめ

Claude Opus 5をどう扱うか(2026年7月26日時点)
1. 価格は動いていない。 $5/$25はOpus 4.8と同額。値札で判断する材料は無く、変わったのは中身と既定の挙動である。
2. 請求額は上下どちらにも動きうる。 思考が既定オンになったぶん出力トークンは増える方向、キャッシュ最小長512化とlow/mediumの実用化はコストを下げる方向に働く。
3. コードの修正が要るのは1か所だけ。 `thinking: {"type": "disabled"}` を effort `xhigh`/`max` と併用しているパス。ここは400エラーになる。
4. プロンプトからは「足す」より「消す」。 旧世代向けの検証指示・再確認指示は過剰動作の原因になる。代わりに簡潔さと委譲上限を明示する。
5. ベンチの数字は条件込みで引用する。 「2倍」「3倍」は相対表現で、比較相手もeffort条件も項目ごとに違う。競合他社との横並びは、この発表からは作れない。
6. 最も効くのはFable 5からの置き換え検討。 出力単価が半分になる。Sonnet 5で足りている経路を上げる理由は無い。

Opus 5の発表は「新しいモデルが出た」という一行に圧縮されがちだが、実務で読む価値があるのは性能の宣伝文ではなく、思考の既定値が変わったこと、effortとの組み合わせに制約が入ったこと、そしてプロンプトから消すべき指示が公式に名指しされたことのほうだ。単価が据え置かれたぶん、差分はすべて挙動側に現れている。まずは自分のコードベースで thinkingeffort の組み合わせを検索し、max_tokens の余裕を確認するところから始めるのが手堅い。

参照ソース

Introducing Claude Opus 5(Anthropic公式ニュース・2026年7月24日) — 公開日・位置づけ・ベンチマークの記載・行動監査スコア・Mythos 5との能力差・beta機能の一次情報
What’s new in Claude Opus 5(Anthropic公式ドキュメント) — モデルID・思考の既定オン・thinking無効化の400エラー・キャッシュ最小長512・提供面・移行ガイド
Models overview(Anthropic公式ドキュメント) — 現行4モデルの仕様比較表・知識カットオフ・レガシーモデル一覧・Opus 4.1の廃止予定
Pricing(Anthropic公式ドキュメント) — 単価・キャッシュ書き込み/ヒット・Batch API・Fast mode・ツール利用のシステムプロンプトトークン数
Effort(Anthropic公式ドキュメント) — 5段階の定義・Opus 5向けの推奨・キャッシュとの相互作用
Prompting Claude Opus 5(Anthropic公式ドキュメント) — 消すべき検証指示・冗長さの制御・サブエージェント委譲の抑制・思考無効時の副作用