会議のたびに「議事録を誰が取るか」でモヤモヤした経験は、リモートワークが当たり前になった今、多くの人が共有する悩みです。近年はOtterやFirefliesのようなAI議事録SaaSが解決策として広まりましたが、そこには見過ごせない代償があります——自社の機密会議の音声が、自分の管理下にないクラウドサーバーに丸ごとアップロードされるという事実です。この記事で解説する Meetily(ミートリー) は、その代償を払わずに済ませるためのオープンソースです。会議の録音・文字起こし・要約という一連の処理を、100%あなたのPCの中だけで完結させる、プライバシーファーストのAI議事録アシスタントです。

Meetilyは、インドのAI開発企業 Zackriya Solutions が公開するMITライセンスのプロジェクトで、2026年7月時点で GitHubスター22,000超、Rust製プロジェクトの週間トレンド1位を記録するなど、いま最も勢いのあるローカルAIツールの一つです。この記事では、公式リポジトリの一次情報をもとに、Meetilyが「結局何ができて」「どんな課題を解決し」「クラウド議事録AIの何を代替できるのか」を、アーキテクチャのレベルまで踏み込んで整理します。

なお、Meetilyのような単体ツールを含む自動化ソフト全体の見取り図は、AI自動化ツール完全ガイド2026|ノーコードからコードまで徹底比較 にまとめています。本記事はそのクラスタの一部として、「議事録の自動化」に絞って深掘りする位置づけです。

Meetilyの実動作デモ。会議中にライブで文字起こしが流れ、終了後にAI要約が生成される(出典: Zackriya-Solutions/meetily 公式デモ)
この記事のポイント

Meetilyは「クラウドに音声を送らない」AI議事録——録音・文字起こし・要約のすべてが手元のPCで完結し、データが一切外に出ない
中身はTauri+Rustのデスクトップアプリ——Whisper/Parakeetでローカル文字起こし、Ollama等でローカル要約、保存先もローカルSQLite
会議サービスに依存しない——Zoom/Teams/Meetを問わず、PCで鳴っている音声を直接キャプチャして議事録化する

1. Meetilyとは何か — 100%ローカルで動くAI議事録

Meetilyのメイン画面。会議の録音開始ボタンとローカル文字起こしのステータスが表示されている
Meetilyのホーム画面。ここから録音を開始すると、端末上のWhisper/Parakeetがリアルタイムに文字起こしを行う(出典: Zackriya-Solutions/meetily

Meetily の正体を一言で言えば、「会議を録って・文字起こしして・要約するまでを、すべて自分のマシンの中だけで行うデスクトップアプリ」です。公式リポジトリの説明はこう始まります。

Meetilyは、あなたのローカルマシン上で完全に動作するプライバシーファーストのAI議事録アシスタントである。会議をキャプチャし、リアルタイムに文字起こしし、要約を生成する。そのすべてを、いかなるデータもクラウドに送ることなく行う。

ここで重要なのは、Meetilyが特定の会議プラットフォームの「プラグイン」ではないという点です。ZoomのAPIに接続したり、会議URLを渡したりするのではなく、PCで再生されている音(システム音声)と、あなたのマイク音声を直接キャプチャして文字起こしします。つまり、音が鳴っていさえすれば対象を選びません。具体的には次のような場面すべてで使えます。

・オンライン会議(Zoom / Microsoft Teams / Google Meet / Webex など、プラットフォームを問わない)
・オフラインの対面会議(PCのマイクで集音)
・録画済みの動画・音声ファイルのインポート(後述の「Import & Enhance」機能)
・ウェビナーやポッドキャストなど、PCで再生する任意の音声コンテンツ

そして最大の特徴が、冒頭から繰り返している 「ローカル完結」 です。一般的なクラウド議事録SaaSは、会議音声を事業者のサーバーへアップロードして処理します。Meetilyはこの構造を根本から否定し、文字起こしモデルも、録音データも、生成された要約も、すべてあなたのPCの中に留めます。金融・法務・医療・防衛といった、会議の中身が「外に出た」だけでコンプライアンス違反になりうる業種にとって、この設計は単なる好みではなく必須要件です。

Meetilyが対応するOSは macOS と Windows(Linuxはソースからビルド)で、2026年6月にリリースされた v0.4.0 が最新の安定版です。ライセンスはMIT——つまり商用利用も改変も自由な、正真正銘のオープンソースです。

2. なぜ今Meetilyなのか — クラウド議事録AIのプライバシー問題

「便利ならクラウドでいいのでは?」——この疑問に、Meetilyの公式リポジトリは具体的な数字で答えています。会議AIツールがもたらすプライバシー・コンプライアンスのリスクとして、READMEは以下を挙げています。

データ侵害1件あたりの平均コストは440万ドル(IBM 2024年調査)
2025年時点でGDPR違反の制裁金は累計58.8億ユーロ
・カリフォルニア州だけで、今年400件超の不正録音に関する訴訟が提起された

会議の中身とは、要するに「まだ公開されていない意思決定」の塊です。M&Aの検討、人事評価、未発表の製品仕様、患者情報、係争中の案件——これらが、データの保存場所やアクセス権限が不透明な第三者サーバーに蓄積されていく状態は、利便性と引き換えにするには重すぎるリスクを抱えています。Meetilyはこの構造的な問題を、「そもそもデータを外に出さない」という最もシンプルな方法で解決します。

Meetilyの設定画面。文字起こしモデルや保存先がすべてローカルであることを示している
設定画面。モデル・録音・トランスクリプトの保存先はすべてローカル。クラウドへの送信経路が構造的に存在しない(出典: Zackriya-Solutions/meetily

Meetilyが「他の議事録ツールと違う」と主張する4つの軸を、公式は次のように整理しています。

価値軸 Meetilyのアプローチ
プライバシー第一 すべての処理を端末上で実行。音声もテキストもPCの外に出ない
コスト効率 高価なAPIの代わりにオープンソースAIモデルを使用。従量課金がない
柔軟性 オフラインで動作し、あらゆる会議プラットフォームに対応
カスタマイズ性 セルフホストでき、自分のニーズに合わせて改変可能

特に見落とされがちなのが「コスト効率」です。クラウド議事録SaaSの多くは1ユーザー月額十数ドルのサブスクリプションで、参加人数や利用時間が増えるほど費用がかさみます。Meetilyは文字起こしにオープンソースのWhisper/Parakeetを、要約にローカルのOllamaを使えるため、初期のダウンロード以降、会議を何時間文字起こししても追加コストはゼロです。ハードウェア(自分のPC)さえあれば、ランニングコストが原理的に発生しません。

こうした「ローカルAIで運用コストと主権を取り戻す」という発想は、Meetily単体の思想ではなく、2026年のOSSトレンドそのものです。たとえば画面と音声を24時間ローカル記録する Screenpipe完全ガイド(Meetilyは実際にScreenpipeのコードを一部借用しています)や、Ollama 0.24でOpenAI Codex CLIがローカルLLMで動く も、同じ「クラウド依存からの脱却」という文脈にあります。

3. Meetilyのアーキテクチャ — Tauri+Rustで一つに束ねる

Meetilyの「ローカル完結」を技術的に支えているのが、Tauri(タウリ)を土台にしたアーキテクチャです。Tauriは、Rust製バックエンドとWeb技術のフロントエンドを組み合わせて、軽量なクロスプラットフォーム・デスクトップアプリを作るためのフレームワークです。Meetilyは、Rustの高速なコアロジックNext.js(React)のUI を、単一の自己完結型アプリケーションに束ねています。

flowchart TD subgraph UI["ユーザーインターフェース"] A["Next.js フロントエンド
(React / TypeScript)"] end subgraph CORE["コアロジック(Rust)"] B["Tauri コア
ウィンドウ・イベント・IPC"] C["オーディオエンジン
マイク+システム音声"] D["文字起こしエンジン
Whisper / Parakeet"] E["データベース
ローカル SQLite"] F["要約エンジン
Ollama / Claude / Groq"] end A -- "Tauri コマンド" --> B B --> C B --> D B --> E B --> F C --> D D --> E E --> F

この図が示すように、Meetilyのコアは5つのコンポーネントで構成されます。

Tauri コア:ウィンドウ管理やイベント処理を担い、RustのコアをフロントエンドのUIに公開する心臓部
オーディオエンジン:マイクとシステム音声をキャプチャし、文字起こし用に整える
文字起こしエンジン:WhisperまたはParakeetのローカルモデルで音声をテキスト化。GPUで加速できる
データベース:会議のメタデータ・トランスクリプト・要約を保存するローカルSQLite
要約エンジン:Ollama等のLLMで要約を生成する

かつてのMeetilyは、Python/FastAPIの独立したバックエンドサーバーを別途起動する構成でしたが、現在のバージョンではそれが不要になりました。公式のCLAUDE.md(開発者向けドキュメント)は、旧Pythonバックエンドを「アーカイブ済み・非サポート」と明記しており、会議の永続化・ローカル文字起こし・要約のオーケストレーションは、すべてRust/Tauriのコアで処理されます。これにより、ユーザーは「サーバーを立てる」という一手間から解放され、アプリを起動するだけで使えるようになりました。この構成の詳細は公式のアーキテクチャドキュメントでも公開されています。

なぜRustなのか

会議のリアルタイム文字起こしは、音声のキャプチャ・ノイズ処理・モデル推論を低遅延でこなす必要がある、CPU/メモリに厳しい処理です。GC(ガベージコレクション)による予測不能な停止がなく、ネイティブに近い速度で動くRustは、この「リアルタイム音声処理」という用途と相性が良い。Meetilyがリポジトリ名で「built on Rust」を掲げ、Parakeet/Whisperの文字起こしを従来比4倍高速とうたえるのは、この土台があってこそです。

4. ローカル文字起こしの心臓部 — WhisperとParakeet、デュアル音声パイプライン

Meetilyの文字起こしを支えるのは、2系統のローカル音声認識モデルです。

Whisper(whisper.cpp / whisper-rs 経由):OpenAIが公開した定番の多言語音声認識モデル。日本語を含む多言語に強い
Parakeet:NVIDIAが開発した高速な音声認識モデル。ONNX形式に変換されたものを利用し、Meetilyが「4倍高速」とうたう速度面の主役

Whisperの高速化そのものに関心がある方は、Insanely Fast Whisper完全ガイド や、話者識別付きのセルフホスト音声認識 WhisperLiveKit完全解説 も、同じ音声認識クラスタの記事として参考になります。Meetilyはこれらの「認識エンジン」を、議事録アプリという完成品に組み上げたもの、と捉えると位置づけが分かりやすいでしょう。

Meetilyのライブ文字起こし画面。会議の発言がリアルタイムでテキスト化されていく様子
ライブ文字起こしの様子。発話がリアルタイムにテキスト化される(出典: Zackriya-Solutions/meetily

デュアルパス音声パイプライン — 「録音用」と「認識用」を分ける

Meetilyの技術的に最も面白い部分が、オーディオパイプラインの設計です。公式の開発ドキュメントによれば、音声は2つの並列パスを通ります。単に「録音した音をそのまま文字起こしに流す」のではなく、目的の異なる2系統に分岐させているのです。

flowchart TD RAW["生音声
(マイク+システム音声)"] --> MGR["オーディオ・パイプライン
マネージャ"] MGR --> REC["録音パス
プロ品質ミキシング"] MGR --> TRANS["文字起こしパス
VADで発話区間を抽出"] REC --> SAVE["RecordingSaver
高音質な録音を保存"] TRANS --> WHIS["WhisperEngine
発話だけを認識"]

2つのパスは、それぞれ次の役割を担います。

録音パス(Recording Path):マイクとシステム音声を、RMSベースのダッキング(片方が大きいとき、もう片方を自動で下げる)とクリッピング防止を効かせて「プロ品質」にミキシングし、聴き返せる高音質な録音として保存する
文字起こしパス(Transcription Path)VAD(Voice Activity Detection=音声区間検出) で「実際に人が喋っている区間」だけを抽出し、無音や雑音を除いてWhisperに送る

なぜ分けるのか。理由はシンプルで、「良い録音の条件」と「良い文字起こしの条件」が違うからです。録音は連続した高音質であってほしい一方、文字起こしは無音まで律儀に処理すると遅く・不正確になります。VADで発話区間だけをモデルに渡すことで、推論負荷を減らしつつ精度を上げる——このデュアルパス設計が、リアルタイム文字起こしの実用性を支えています。

Meetilyのオーディオデバイス選択とミキシング設定画面
マイクとシステム音声を同時にキャプチャし、ダッキングとクリッピング防止でミックスする「プロ品質オーディオミキシング」(出典: Zackriya-Solutions/meetily

システム音声のキャプチャは、OSごとに最適な仕組みを使い分けています。macOSは ScreenCaptureKit、Windowsは WASAPI、Linuxは ALSA/PulseAudio という具合に、プラットフォーム固有の実装がモジュール化されています。ここまで踏み込んだ音声処理を、Rustでネイティブに書いているのがMeetilyの実装的な強みです。

GPUアクセラレーション — ビルド時に自動検出

文字起こしの速度を左右するGPU対応も充実しています。Meetilyは whisper-rs ライブラリを通じて複数のアクセラレーション・バックエンドをサポートし、ビルドスクリプトが環境を自動検出して適切なものを有効化します。

バックエンド 対象ハードウェア
CUDA NVIDIA GPU
Metal + CoreML Apple Silicon / 最近のIntel Mac
Vulkan AMD / Intel の最近のGPU
OpenBLAS CPU(GPUが無い場合の高速化)

検出の優先順位はCUDA → Metal → Vulkan → OpenBLASで、GPUが見つからなければCPUのみで動作します。macOSではMetalがデフォルトで有効化され、追加設定は不要です。「手元のマシンが何であっても、可能な範囲で一番速い方法を勝手に選んでくれる」という、親切な設計になっています。

5. Meetilyの要約とプロバイダ選択 — Ollamaローカルから Claude まで

文字起こしが「何を話したか」を記録する工程なら、要約は「結局何が決まったか」を抽出する工程です。Meetilyはこの要約エンジンで、プロバイダを自由に選べる柔軟性を持たせています。

Meetilyが生成した会議の要約画面。決定事項やアクションアイテムが整理されている
AI要約の生成結果。会議のトランスクリプトから要点・決定事項が自動抽出される(出典: Zackriya-Solutions/meetily

選べるプロバイダは次のとおりです。

Ollama(ローカル・推奨):要約もローカルLLMで行い、テキストを一切外に出さない。プライバシー最優先の構成
Claude / Groq / OpenRouter:クラウドAPIを使い、より高い要約精度を得る
カスタムOpenAI互換エンドポイント:社内に立てた自前のLLM基盤や、任意のOpenAI互換プロバイダを指定できる

ここに、Meetilyの思想がよく表れています。「完全ローカル」と「高精度クラウド」を二者択一にせず、ユーザーが自分のリスク許容度で選べるようにしているのです。極秘会議はOllamaでローカル要約、社内の定例はClaudeで高精度に、といった使い分けが同じアプリの中でできます。

MeetilyのカスタムOpenAI互換エンドポイント設定画面
カスタムOpenAI互換エンドポイントの設定。社内AI基盤や好みのプロバイダを指定できる(出典: Zackriya-Solutions/meetily

Ollamaを要約に使う場合、Meetily側で接続先を指定するだけでなく、Ollama自体を先にインストールしてモデルを取得しておく必要があります。おおまかには次のような手順です。

# 1. Ollama をインストール(macOS の例。公式サイトからも可)
brew install ollama

# 2. 要約に使うモデルを取得(軽量なモデルの例)
ollama pull llama3.2

# 3. Ollama サーバーを起動(デフォルトで localhost:11434 で待ち受ける)
ollama serve

あとはMeetilyの設定で要約プロバイダに「Ollama」を選び、取得済みのモデル名を指定すれば、会議終了後の要約がネットワークを一切使わずに生成されます。ローカルLLMで開発体験を完結させる発想については、Ollama 0.24でOpenAI Codex CLIがローカルLLMで動く でも詳しく扱っています。

Import & Enhance — 過去の録音も後から議事録化

v0.4系で加わった注目機能が 「Import & Enhance」(インポート&エンハンス、ベータ)です。これは、既存の音声ファイルをインポートして文字起こししたり、一度録音した会議を別のモデル・別の言語で再文字起こし(enhance)したりする機能です。

Import & Enhance機能のデモ。録音済みの音声を後からローカルで文字起こし・再処理できる(出典: Zackriya-Solutions/meetily

たとえば「リアルタイムでは軽量モデルで文字起こしし、後からもっと高精度なモデルで取り直す」「英語で録った会議を日本語モデルで解釈し直す」といった運用が可能になります。すべてローカル処理なので、過去の機密録音を後追いで議事録化する場合も、データを外に出さずに済みます。

6. Meetilyのインストールと使い方 — macOS / Windows / ソースビルド

Meetilyの導入は、多くのユーザーにとって「インストーラーを実行するだけ」で完了します。開発者向けにはソースからのビルドも用意されています。

macOS の場合:

1. Releases ページから meetily_0.4.0_aarch64.dmg をダウンロード
2. ダウンロードした .dmg を開く
3. Meetily を Applications フォルダにドラッグ
4. Applications から Meetily を起動

Windows の場合:

1. Releases ページから x64-setup.exe をダウンロード
2. インストーラーを実行

Linux/開発者向け(ソースからビルド):

Linuxはバイナリ配布がなく、ソースからのビルドになります。RustとNode.js(pnpm)が必要です。

git clone https://github.com/Zackriya-Solutions/meeting-minutes
cd meeting-minutes/frontend
pnpm install
./build-gpu.sh   # GPUを自動検出してビルド

初回起動時には、macOSなら画面収録・マイクの権限を求められます。これはシステム音声をキャプチャするために必要なもので、許可すると録音・文字起こしが使えるようになります。あとはホーム画面で録音を開始し、会議が終わったら停止して要約を生成する——基本の流れはこれだけです。

Meetilyの入力デバイス選択画面
入力デバイスの選択画面。マイクとシステム音声のソースをここで指定する(出典: Zackriya-Solutions/meetily
導入前に知っておきたい注意点

Meetilyは活発に開発中のプロジェクトで、リポジトリには2026年7月時点で270件超のオープンなIssueがあります。日本語の技術用語や固有名詞の誤認識は起こりえますし、ハイブリッド会議(会議室+リモート)の集音は環境依存で品質が変わります。話者識別(誰の発言かの分離)は、無料のCommunity Editionには含まれず有償のPRO向け機能として計画されている点も、導入前に把握しておくとよいでしょう。「READMEの理想」と「実運用の現実」を切り分けて評価するのが賢明です。

なお、公式が案内する完全なデモ動画も公開されています。実際のUIの動きを通しで確認したい場合は、こちらが分かりやすいでしょう。

Meetily公式のフルデモ動画(出典: Zackriya Solutions / YouTube

7. 他のローカルAI議事録・クラウドSaaSとの比較

Meetilyの立ち位置を、代表的な選択肢と並べて整理します。まずは、多くの人が現在使っているクラウド議事録SaaSとの比較です。

観点 Meetily(ローカルOSS) クラウド議事録SaaS(Otter / Fireflies 等)
音声データの保存先 自分のPC(外に出ない) 事業者のクラウドサーバー
料金体系 無料(Community Edition・MIT) 月額サブスクリプション(従量的に増える)
オフライン利用 可能 基本的に不可
会議プラットフォーム依存 なし(システム音声を直接取得) サービスごとの連携が必要な場合がある
カスタマイズ/改変 ソース公開で自由 不可(ブラックボックス)
要約AIの選択 Ollama / Claude / Groq 等を選べる 事業者指定のモデル
導入の手軽さ インストール必要(自分で管理) サインアップだけで即利用

次に、同じ「ローカル/セルフホスト」の思想を持つOSSとの比較です。Meetilyは「議事録という完成したアプリ」である点が、認識エンジン単体のツールと大きく異なります。

ツール 主眼 Meetilyとの違い
Meetily 会議の録音〜文字起こし〜要約を1アプリで完結 GUIの完成品。要約まで含む
Screenpipe 画面と音声を24時間ローカル記録する基盤 常時記録の土台。議事録に特化はしない
WhisperLiveKit 超低遅延のセルフホスト音声認識サーバー 認識エンジン。要約やUIは自前で用意
whisper.cpp 単体 Whisperを高速にローカル実行するライブラリ 部品。アプリ化は自分で行う

この比較から見えるのは、Meetilyの価値が「個々の技術を、非エンジニアでも使える議事録アプリに組み上げた統合力」にある、ということです。whisper.cppやParakeetといった強力な部品は既に存在しますが、それらを「録音ボタンを押すだけ」の体験に仕立てるには相応の実装が要ります。Meetilyはその最後の一マイルを埋め、しかもMITで公開している——ここに22,000スターが集まる理由があります。

ポイント:Meetilyは「エンジン」ではなく「完成品」

WhisperやParakeetは高性能な音声認識エンジンですが、それ単体では会議の議事録にはなりません。Meetilyの本質的な価値は、音声キャプチャ・ミキシング・VAD・文字起こし・要約・ローカル保存という一連の工程を、インストールして起動するだけの一つのアプリに束ねた点にあります。「部品を自分で組む時間はないが、クラウドには送りたくない」——そのニーズにちょうど刺さる完成品です。

8. Community Edition と Meetily PRO — どこまで無料か

最後に、多くの人が気にする「どこまで無料なのか」を明確にしておきます。Meetilyには、無料の Community Edition(コミュニティ版) と、有償の Meetily PRO の2つがあります。

Meetilyのトランスクリプト・要約エディタ画面
トランスクリプトと要約を編集できるエディタ。生成物を手元で整えてから保存できる(出典: Zackriya-Solutions/meetily

公式は「Community EditionはMITで、これからも永久に無料・オープンソースである」と明言しています。ローカル文字起こし・AI要約・録音といったコア機能は、すべて無料版に含まれます。一方でPROは「別のコードベースで作られた、より高精度・チーム向けの製品」と位置づけられており、両者は役割が異なります。

機能 Community Edition(無料・MIT) Meetily PRO(有償)
ローカル文字起こし ○(より高精度なモデル)
AI要約(Ollama/Claude等) ○(カスタムテンプレート対応)
録音・ローカル保存
エクスポート 基本形式 PDF / DOCX / Markdown(書式付き)
話者識別(ダイアライゼーション) ×(PRO向けに計画) ○(提供予定)
会議の自動検出・自動参加 ×
セルフホスト・チーム展開 個人利用中心 ○(2〜100ユーザー)
GDPR対応・監査ログ

つまり判断基準はシンプルです。個人や小規模チームが「クラウドに送らない議事録」を無料で欲しいならCommunity Editionで十分。一方、話者ごとの発言分離、書式付きエクスポート、チームでのセルフホスト運用、コンプライアンス要件まで求める組織は、PROが選択肢になります。オープンソースを入り口に、必要な組織にだけ有償版で応える——という、持続可能なOSSの典型的なビジネスモデルです。

なお本記事は、無料のCommunity Edition(公式リポジトリで公開されているオープンソース部分)を対象に、公式ドキュメントの一次情報をもとに構成しています。PROの内部実装は公開されていないため、PRO固有の機能については公式の告知内容に基づく記載である点を、事実と区別して補足しておきます。

まとめ — Meetilyは「議事録の主権」を取り戻すOSS

Meetilyが提示しているのは、「AIの利便性」と「データの主権」はトレードオフではない、という一つの回答です。会議の録音・文字起こし・要約という、これまでクラウドに預けるのが当たり前だった工程を、Whisper/Parakeet+Ollamaという成熟したローカルAIと、Tauri+Rustという堅牢な土台の上に載せ替えることで、「便利なまま、外に出さない」を実現しました。

何ができるか:会議を録音し、ローカルでリアルタイム文字起こしし、AIで要約する
何を解決するか:クラウド議事録SaaSが抱える、機密音声の外部流出・従量課金・プラットフォーム依存
何を代替できるか:Otter/Firefliesのようなクラウド議事録AIを、プライバシーとコストの面で置き換えられる

もちろん、開発途上ゆえの粗さ(日本語の誤認識、ハイブリッド会議の集音、無料版での話者識別の欠如)はあります。それでも、「自社の会議の中身を、自分の管理下から一歩も出さずにAIで処理したい」という要求に対して、Meetilyは現時点で最も完成度の高いオープンソースの答えの一つです。まずはCommunity Editionをインストールし、自分の会議で文字起こしの精度を確かめてみることをおすすめします。

参照ソース