「Ollamaでモデルをpullして、LM Studioでチャットする」——ローカルLLMの定番ワークフローは、これまでずっと人間が主役だった。Magnitude(magnitudedev/magnitude)は、その前提をひっくり返す。GitHubスター3,656・フォーク259、Apache-2.0ライセンスのOSSで、想定利用者は人間ではなくClaude Code・Codex・Cline等のコーディングエージェント。手元のハードウェアを自動で診断し、動くモデルを推薦し、対応ハーネスへワンプロンプトで接続する——「エージェント専用のローカル推論サーバー」という一点に振り切った設計を、実際にインストールして検証した。

Magnitudeのエコシステム構成図。Pi・OpenCode・Hermes・Codex・Claude Code・OpenClaw等の複数のコーディングエージェントが、中央のMagnitudeへ接続される構成
Magnitudeが対応する主なエージェントハーネスの構成図(出典: magnitudedev/magnitude 公式README)。Pi・OpenCode・Hermes・Codex・Claude Code・OpenClawなど、複数のコーディングエージェントが同じMagnitudeに接続できる。
30秒でわかるMagnitude(2026年9月時点)
  • ・正体:magnitudedev製のApache-2.0・OSSローカル推論サーバー。人間向けチャットUIは無く、コーディングエージェント接続専用。
  • ・何ができる:ハードウェアを自動診断し、動作可能なモデルをtok/s見積もり付きで推薦。Claude Code等の対応ハーネスへワンコマンドで接続する。
  • ・何を代替できる:Ollama・LM Studioの「人間が手動でモデルを選ぶ」工程。ただし人間向けチャット用途そのものは代替しない。
  • ・実測:検証環境(2 vCPU・7.8GB Linux VM)でnpm i -g @magnitudedev/cliから数十秒でサービスが起動し、ハードウェア診断・モデル推薦・ハーネス一覧まで動作を確認。
  • ・注意:pre-1.0(0.x系)。検証当日にnpmパッケージが非推奨マーク付きで新版公開、公式は無料デスクトップアプリへの移行を案内していた。

まず前提として、ローカルLLM全般のランタイム比較・VRAM要件・オープンウェイトモデルの選び方は、当サイトのローカルLLMとは?おすすめモデル・ツールの選び方と必要なPCスペック、無料で動かす方法【2026】にまとめてある。本記事はその中でも「エージェントの裏方として自動運用される推論サーバー」というMagnitudeならではの立ち位置を、実際にコマンドを叩いて掘り下げる。

Magnitudeとは何か|「人間ではなくエージェントのための」ローカル推論サーバー

Magnitudeを一言でいえば、「ハードウェアを自分で診断し、対応するコーディングエージェントへ自動接続する、OSSのローカル推論サーバー」だ。開発元はmagnitudedev(ドメインはmagnitude.dev)。READMEは「Free to run: no token costs, API keys, or rate limits」(トークン課金もAPIキーもレート制限も無い)と掲げるが、これはMagnitude自身の推論の話で、接続先ハーネスのサブスクやAPIコストとは別だ。

Magnitudeに接続するPi・OpenCode・Hermes・Codex・Claude Code・OpenClawなど複数エージェントの構成図(出典: 公式README)

・想定利用者が違う:OllamaやLM Studioは人間がモデルを選んでチャットするツール。Magnitudeはエージェントが推論を任せるためのツールで、チャットUIを持たない
・ハードウェア診断が組み込み:CPU・メモリ・アクセラレーションを自動検出し、動かせるモデルだけを提示する
・接続ハーネスが多い:Claude Code・Codex・Cline・OpenCode・Pi・Hermes・OpenClaw等への接続コマンドがある
・オフラインAI志向:推論は手元のマシンで完結し、コードやプロンプトを外部のクラウドAPIへ送らずに済む

Magnitudeの立ち位置は「賢いローカルモデルの提供」ではなく、「どのモデルなら動くかを自動で見極め、エージェントへの配線まで済ませるインフラ」。賢さは選ばれたモデル(Qwen3.5やLiquid LFM2.5等)が持ち込む。

少人数・若いプロジェクトである点も押さえたい。GitHub実測でcontributorは6名、mainの総コミットは618、リリースは46、作成は2026-06-12。約3ヶ月で★3,656に達した新規プロジェクトで、618コミットの内訳までは未確認だ。

Magnitudeのインストールとサービス起動——実機で確認したもの

検証環境はLinux(2 vCPUコア・メモリ7.8GBの仮想マシン)。READMEはWindowsをネイティブ非対応とし、WSL経由のみをサポートすると明記している。

HOW IT WORKS接続までの流れ

診断から配線までをCLIが肩代わりする

  1. service start

    127.0.0.1:10100 で起動

  2. hardware

    CPU・メモリを診断

  3. catalog recommendations

    tok/s見積もり付きで推薦

  4. connections add

    ハーネスへ配線

出典: 本記事の実機検証(2026-09-17)。catalog pull と connections add の実行は未検証
# CLIをグローバルインストール
npm i -g @magnitudedev/cli

# バージョン確認
magnitude --version

インストールはadded 1 package in 839msで終わったが、想定外の出力が出た。

npm warn deprecated @magnitudedev/[email protected]:
npm warn deprecated ========================================================
npm warn deprecated MAGNITUDE HAS MOVED TO A FREE, OPEN SOURCE DESKTOP APP.
npm warn deprecated
npm warn deprecated THIS LEGACY CLI WILL NO LONGER RECEIVE UPDATES.
npm warn deprecated
npm warn deprecated DOWNLOAD THE DESKTOP APP:
npm warn deprecated https://magnitude.dev/download
npm warn deprecated ========================================================

magnitude --versionは0.0.15を返した。npm view @magnitudedev/cliによると、この版は検証の9時間前に公開されたばかりで、非推奨(deprecated)マークが付いている。詳細は「注意点」で扱う。

続いて、推論を担うバックグラウンドサービスを起動する。

magnitude service start

40.6MBのバイナリを取得し、数十秒で● Magnitude service is ready at 127.0.0.1:10100と表示された。

ハードウェア自動診断とモデル推薦——Magnitude LLMカタログの中身

サービス起動後、診断コマンドを叩く。

magnitude hardware
magnitude catalog recommendations

magnitude hardwareの実際の出力は次の通りだった。

Virtual Machine
  Linux · x86-64 · 2 logical CPU cores
  7.8 GB system memory

Memory
  System memory
  1.6 GB / 7.8 GB used
  Free          6.2 GB

Current model
  None

仮想マシンであることまで識別し、メモリの空きも把握している。magnitude catalog recommendationsでは、動くモデルが速度見積もり付きでランキング表示された。

magnitude catalog recommendationsの実測結果。2vCPU・7.8GB環境でLiquid LFM2.5 2.6B(Q4)が推定4.5tok/s、Qwen3.5 4B(Q4/Q5/Q6)が推定2〜2.5tok/sという結果
本記事の実測。検証環境(2 vCPU・7.8GB Linux VM、アクセラレーション無し)でmagnitude catalog recommendationsを実行した結果。上位候補はLiquid LFM2.5 2.6B(Q4)とQwen3.5 4B(各量子化)だった。
モデル 推定速度 メモリ コンテキスト 対応機能
Liquid LFM2.5 2.6B (Q4) 約4-5 tok/s 2.2GB 64K tools・structured output・reasoning
Qwen3.5 4B (Q4) 約2-3 tok/s 3.9GB 64K Vision・tools・structured output・reasoning
Qwen3.5 4B (Q5) 約2 tok/s 3.9GB 64K 同上(高精度)
Qwen3.5 4B (Q6) 約2 tok/s 4.0GB 64K 同上(最高精度)

出力には「Assessing 54 additional catalog models; recommendations may change.」(他54モデルを評価中。推薦は変わる可能性がある)という注記もあった。このtok/s見積もりはアクセラレーション無しのVMでの参考値だ。

全体像はmagnitude catalog listで見える。この環境では12モデルが「動作可能」と判定された(以下は抜粋)。

モデル メモリ 速度目安 Model ID
Gemma 4 E2B (Q4 QAT) 4.7GB 約4-5 tok/s gemma-4-e2b-it-qat:gguf:q4
Liquid LFM2.5 8B-A1B (Q4) 2.8GB 約5-6 tok/s lfm2.5-8b-a1b:gguf:q4
Qwen3.5 9B (Q4) 4.2GB 約1-2 tok/s qwen3.5-9b:gguf:q4

個別モデルはmagnitude catalog show <model-id>で見られる。Qwen3.5 4B(Q4)の出力は次の通り。

Qwen3.5 4B (Q4)
Compact dense model for machines where responsiveness and footprint matter most.
  Model ID      qwen3.5-4b:gguf:q4
  Released      March 2026
  Architecture  Dense - 4B
  Context       64K
  Capabilities  Vision, tools, structured output, reasoning

Distribution
  Download size  3.67 GB
  License        apache-2.0
  Source         https://huggingface.co/unsloth/Qwen3.5-4B-MTP-GGUF

配布元はHugging Faceで、モデル個別のライセンスも明示される。Magnitude本体のApache-2.0と、配布される個々のモデルのライセンスは別物なので、モデルごとにcatalog showで確認する。catalog pullは実行しておらず、magnitude models statusはNo local models are on this computer.を返した。実際の推論実行(トークン生成)は未検証だ。

読者の3つの問いへの答え
① 何ができる:ハードウェアを診断し、動作可能なモデルを速度・メモリ・対応機能付きで並べる。② 何を解決する:自分のマシンで動くモデルを手作業で調べる手間。③ 何を代替する:Ollama・LM Studioで人間が行う「モデルを見繕う」工程。

コーディングエージェントへの接続——対応ハーネス一覧を実測

Magnitudeの核心は、推薦したモデルをコーディングエージェントへ実際に配線する部分にある。対応ハーネスの一覧は次のコマンドで確認できる。

magnitude connections list

実行結果は次の通り。

HARNESS            ID           STATUS
Magnitude Harness  magnitude    Built in
Claude Code        claude-code  Available
Pi                 pi           Not installed
OpenCode           opencode     Not installed
Hermes             hermes       Not installed
OpenClaw           openclaw     Not installed
Codex              codex        Not installed
Oh My Pi           oh-my-pi     Not installed
Cline              cline        Not installed

Claude CodeがAvailable(接続可能)で、他は検証環境にCLIが無いためNot installedだった。接続はmagnitude connections add <harness>で行う設計(--helpで仕様を確認)だが、各ハーネスをセットアップしていないため、接続確立とモデルの応答は未検証だ。確認できたのは「配線コマンドが存在し、Claude Codeが認識される」ところまでになる。

magnitude CLI

connections add <harness>

Claude Code

Codex / Cline / OpenCode 等

素直に導ける利用シーンは次の通り。

・複数のコーディングエージェント(Claude Code・Codex・Cline等)を併用し、オフラインの推論バックエンドに切り替えたい開発者
・コードやプロンプトを外部APIへ送りたくない、またはネットワークが不安定な環境の開発者
・動くモデルを毎回自分で調べず、推薦をそのまま使いたい開発者

安定運用やApple SiliconのMLX専用チューニングを求めるなら、Ollamaや専用ランタイムに分がある。

MagnitudeとOllama・LM Studioとの違い——「人間向け」か「エージェント向け」か

当サイトのOllamaとllama.cppの違い2026|ローカルLLMはどちらで動かすべきか徹底比較やLM Studioとは|使い方・MCP連携・Ollamaとの違いまでローカルLLMをGUIで動かす完全ガイドは、主題が人間向けの実行環境だ。Magnitudeの軸は「コーディングエージェントの裏側で自動運用される推論サーバー」という利用文脈にある。

HUMAN OR AGENT想定利用者の違い

Ollama・LM Studioは人間向け、Magnitudeはエージェント向け

Ollama / LM Studio

人間がモデルを選んでチャットする

  • モデルは手動で選ぶ
  • チャットUIがある
  • 成熟度・コミュニティが大きい

Magnitude

エージェントの裏側で動く

  • ハードウェア診断と推薦が自動
  • チャットUIは無い
  • pre-1.0で変化が速い
出典: 本文の比較表
観点 Magnitude Ollama LM Studio
想定利用者 AIコーディングエージェント 人間(CLI操作) 人間(GUIチャット)
ハードウェア診断 自動(magnitude hardware) 手動でモデル選択 手動でモデル選択
モデル推薦 tok/s見積もり付きで自動ランキング 無し(自分で調べる) 無し(自分で調べる)
エージェント自動接続 ○(connections addで複数ハーネス対応) ×(変換プロキシが必要) △(MCP連携はあるが自動診断・自動接続は無し)
ライセンス Apache-2.0(本記事で実測確認) MIT(当サイト既存記事の記述を踏襲・本記事では再確認せず) プロプライエタリ(同上)
成熟度 pre-1.0(0.x系)。npm非推奨表記あり(本記事で確認) 安定・巨大コミュニティ 安定

Magnitudeの独自性は「モデル選定と接続の自動化」に集中している。人間向けチャットUIや成熟度ではOllama・LM Studioに分がある。

注意点——pre-1.0特有の変化とnpm非推奨表記

BEFORE ADOPTING採用前の確認

採用前に確かめる3つの変化点

  1. 1.npmパッケージが非推奨

    0.0.15は検証の9時間前に公開、公式はデスクトップアプリへ誘導

  2. 2.GitHubタグとnpm版のズレ

    タグ 0.0.12-alpha.0 に対し npm latest は 0.0.15

  3. 3.Windowsはネイティブ非対応

    WSL経由のみ(README明記)

出典: npm view と README(2026-09-17)
検証当日に確認した非推奨表記
2026-09-17にnpm i -g @magnitudedev/cliを実行すると、npmがdeprecated警告を表示した。文面は「MAGNITUDE HAS MOVED TO A FREE, OPEN SOURCE DESKTOP APP」「THIS LEGACY CLI WILL NO LONGER RECEIVE UPDATES」。0.0.15は検証の9時間前に公開されていた。本記事のコマンドは問題なく動いたが、公式が「レガシー」と位置づけている以上、更新が止まる可能性がある。移行先はhttps://magnitude.dev/download。

・バージョン表記のズレ:GitHub最新タグは@magnitudedev/[email protected](2026-09-05)、npmのlatestは同時点で0.0.11、検証当日には0.0.15(alpha: 0.0.15-alpha.1)。どちらが現在の安定版かは断定できない
・バス係数:contributor 6名・commit 618。内訳は未確認
・Windows非対応:ネイティブ対応は無く、WSL経由のみ(README明記)
・「無料」の範囲:Magnitude自体にトークン課金・APIキー・レート制限は無いが、接続先ハーネスの料金とは別
・企業サポート:商用版・マネージドクラウドの案内は、確認できた範囲のREADMEには見当たらない

まとめ
Magnitudeは、人間向けのOllama・LM Studioとは別軸のコーディングエージェント専用推論サーバーだ。ハードウェア診断・tok/s付き推薦・ハーネス一覧は実機で動作した。一方でpre-1.0で変化が速く、検証当日にnpmパッケージが非推奨となり、公式はデスクトップアプリへの移行を案内していた。採用は配布形態の行方を見て判断したい。

参照ソース

・magnitudedev/magnitude(公式リポジトリ・README) — 概要・インストール手順・ライセンス・対応ハーネスの一次情報
・@magnitudedev/cli(npm) — 配布パッケージ名・バージョン・非推奨(deprecated)表記を確認
・Magnitude公式ドキュメント — セットアップ手順の一次情報