Kiro(キロ)は、AWS が提供するエージェント型の AI IDE だ。プロンプトをそのままコードにせず、要件・設計・タスクの3つのファイル(spec)を先に作ってから実装に進む「仕様駆動開発」を前面に出している。2025年に IDE として始まり、2026年10月の時点では IDE・CLI・Web・Mobile・Crew の5つの入口で同じ設定を使う形になった。この記事では spec の流れ、現在のクレジット制の料金、CLI の最新版と配布物を、公式の資料と実測で整理する。

WHAT IT CHANGES何が違うか

Kiro は仕様を先に書いてからコードに進む

チャットで直接書かせる

プロンプト → コード

  • 決めたことが会話に埋もれる
  • 要件の抜けは書いたあとで気づく

Kiro の spec

要件 → 設計 → タスク → 実装

  • requirements.md などがリポジトリに残る
  • タスクを1つずつ実行して進み具合を追える
出典: kirodotdev/Kiro README・kiro.dev/docs/specs(2026-10-18時点)

30秒でわかる Kiro(2026-10-18時点)

  • ・正体:AWS のエージェント型 AI IDE。製品のソースは非公開で、GitHub の kirodotdev/Kiro(★4,369)は issue の受付先
  • ・特徴:requirements.md・design.md・tasks.md を作ってから実装する spec。steering・hooks・MCP・カスタムエージェント
  • ・料金:Free は月50クレジット。有料は Pro 20ドル(1,000)から Power 200ドル(10,000)まで
  • ・実測:CLI の最新版は 2.32.0。Linux 向け zip は glibc 版と musl 版で約150〜160MB

AI コーディングの道具の全体像はVibe Codingとは?AIコーディングの始め方・ツール比較・実践ワークフロー2026にまとめている。「Kiro」で検索すると別のものも出てくるので、先に区別しておく。

名前 正体 この記事
Kiro(kiro.dev) AWS のエージェント型 AI IDE と CLI 扱う
Kiro Crew(kirodotdev/KiroCrew) Kiro の OSS の常駐ワークスペース(★4,475) 入口の1つとして触れる
Amazon Q Developer CLI Kiro CLI の前身 移行の節で触れる
KIRO 広島 by THE SHARE HOTELS など 同じ名前のホテル・店舗 扱わない

AWS のエージェント型 IDE「Kiro」と5つの使い場所

公式の README は Kiro を「計画・実装・レビューを助けるエージェント型の AI 開発プラットフォーム」と説明している。中心は Code OSS ベースの IDE で、VS Code の設定と、Open VSX にある拡張機能を使える。製品のソースは公開されておらず、GitHub の kirodotdev/Kiro はバグ報告と要望を受け付けるためのリポジトリだ(2025-06-17 作成、2026-10-18 時点で ★4,369)。

FIVE SURFACES使う場所

同じ spec と設定を5つの入口で使う

  1. IDE

    手元で書く

    エディタ・チャット・spec・hooks

  2. CLI

    ターミナルと CI

    kiro-cli。ヘッドレスの自動化

  3. Web・Mobile

    クラウドに任せて外から見る

    隔離したサンドボックスで実行し、Mobile で監視と PR のレビュー

  4. Crew

    常駐させる

    記憶とスケジュールを持つ OSS のワークスペース

出典: kirodotdev/Kiro README「Choose your Kiro surface」(2026-10-18時点)

README によると、5つの入口は同じエージェントの仕組みで動き、spec・steering・権限・hooks・MCP サーバー・カスタムエージェントを持ち回れる。Web から始めるクラウドセッションは、手元を離れても続けられ、IDE・CLI・Mobile から再開できる(README ではプレビュー扱い)。

機能 何をするか
Specs 要件・設計・タスクを作り、要件の矛盾や抜けを実装の前に調べる
Steering .kiro/steering/ に置いたファイルで、プロジェクトの規約や前提を渡す
Hooks ファイルの変更・ツールの使用・タスクの完了をきっかけに処理を動かす
Powers / MCP 必要なときだけ道具と知識を足す。外部のシステムとつなぐ
権限・.kiroignore エージェントが触れる範囲を決め、機密のパスを文脈に入れない
Checkpoints エージェントの変更を見直し、巻き戻す

Kiro の仕様駆動開発(spec)の流れ

SPEC-DRIVENspec の3ファイル

要件・設計・タスクの3つのファイルを順に作る

  1. requirements.md

    ユーザーストーリーと受け入れ条件(EARS)

  2. design.md

    構成と実装の方針

  3. tasks.md

    追跡できる実装タスク

  4. 実装

    タスクごとにエージェントが書く

出典: kiro.dev/docs/specs(Requirements-First の順。Design-First は設計から始める)

spec では1つの機能について3つのファイルを作る。requirements.md(バグ修正なら bugfix.md)にはユーザーストーリーと受け入れ条件、design.md には構成と実装の方針、tasks.md には追跡できる実装タスクが入る。受け入れ条件は EARS という書き方で、「ある条件のとき、システムはこう動く」を対にして、テストできる形にそろえる。

進め方は3つある。要件から始める Requirements-First、設計から始める Design-First、3つを1回で作る Quick Spec だ。README は要件を実行できる性質に変えて生成した入力で確かめる「プロパティベーステスト」による検証も挙げている。チャットで直接コードを書かせる場合と比べると、決めたことがリポジトリのファイルとして残るので、あとから読む人やほかのエージェントに同じ前提を渡せる。一方で、小さな修正にも3つのファイルを作ると手間が増えるので、spec を使うかはタスクの大きさで決めることになる。

Kiro の料金とクレジット

料金は2025年の告知にあった「Vibe」「Spec」のリクエスト数による方式から、クレジット制に変わっている。公式の料金ページ(2026-10-18 時点)の内容はこうだ。

プラン 月額 月のクレジット 超過・追加購入
Free 0ドル 50 どちらも不可
Pro 20ドル 1,000 1クレジット 0.04ドル
Pro+ 40ドル 2,000 同上
Pro Max 100ドル 5,000 同上
Power 200ドル 10,000 同上

クレジットはリクエストごとに小数で減り、短い指示や小さな編集ほど少なく済む。超過利用は既定で無効で、有効にすると月末に超えた分を請求される。前払いの追加クレジットは5ドル(125クレジット)からで、プランのクレジットを使い切ったあとに減り、購入から12か月で失効する。Free から初めて有料に上げる人には、最初の請求に20ドル分の割引が付く。対象国の学生には、1年間無料で月1,000クレジットを使えるプログラムがある。

クレジットを何に使うか:モデルと Auto

クレジットが減る速さは、選んだモデルと作業の大きさで変わる。チャットでは、Kiro がタスクごとにモデルを選ぶ Auto か、個別のモデルを選ぶ。公式のモデルの changelog では、Claude の各モデルが IDE・CLI・Web に順に加わり、CLI では DeepSeek・MiniMax・Qwen などのオープンウェイトのモデルが試験的に使える。新しいモデルは、最初は一部のプランやサインイン方法に限って出ることがある。使えるモデルの一覧はプランとサインイン方法によって変わるので、チャットのモデル選択の欄で確かめる。1つの spec でどれだけクレジットが減るかは、本記事では測っていない。Free の50クレジットで小さな機能の spec を1つ作り、減り方を見てからプランを決めるのが手堅い。

データの扱い

データの扱いも確かめておきたい。公式の FAQ は Free と、GitHub・Google・AWS Builder ID でサインインした個人の利用者について、内容をサービスの改善に使うことがあると書いている。業務のコードを扱うなら、IAM Identity Center での契約と組織の設定を確かめる。

Kiro の使い方:IDE と CLI の始め方

IDE は kiro.dev のダウンロードページから入れる。公式のインストール手順が挙げる対応環境は、macOS(Intel と Apple Silicon)、Windows 10/11(x64・ARM64)、Linux(Ubuntu 24 以降・Debian 13 以降・Fedora 40 以降・Arch・Mint 22 以降)だ。サインインは GitHub・Google・AWS Builder ID・IAM Identity Center から選ぶ。VS Code から移るときは、Open VSX にある拡張だけが引き継げ、VS Code Marketplace だけにある拡張は使えないことがある。

CLI(kiro-cli)は Amazon Q Developer CLI の後継で、q update か自動更新で切り替わる。公式の移行ガイドによると、Q Developer CLI のワークフロー・サブスクリプション・認証はそのまま使える。対応環境は macOS、Windows 11、Linux(glibc 2.34 以降、古い環境向けに musl 版)だ。CI で版を固定したいときは、配布元の manifest から最新版と配布物を確かめられる。

curl -fsS https://desktop-release.q.us-east-1.amazonaws.com/latest/manifest.json \
  | python3 -c 'import json,sys; d=json.load(sys.stdin); print("kiro-cli", d["version"]); [print(p["targetTriple"], p["fileType"], round(p["size"]/1e6), "MB") for p in d["packages"] if p["fileType"] in ("zip", "msi", "dmg")]'

2026-10-18 に実行した結果がこれだ。Linux の zip は glibc 版と musl 版がそれぞれ x86_64 と aarch64 にあり、Windows は msi、macOS は dmg で配られている。

kiro-cli 2.32.0
x86_64-unknown-linux-gnu zip 155 MB
aarch64-unknown-linux-gnu zip 150 MB
universal-apple-darwin dmg 349 MB
x86_64-unknown-linux-musl zip 160 MB
aarch64-unknown-linux-musl zip 152 MB
x86_64-pc-windows-msvc msi 268 MB

この manifest で分かるのは配布されている版と形式までで、手元に入っている版ではない。CLI 本体のインストールとサインイン、IDE の起動は試しておらず、この記事では未検証だ。

Kiro と Cursor・Claude Code の違いと選び方

観点 Kiro Cursor Claude Code
形 VS Code 系の IDE+CLI・Web・Mobile VS Code 系の IDE ターミナルのエージェント(IDE 連携あり)
計画の残し方 spec の3ファイルをリポジトリに残す ルールファイルとチャット CLAUDE.md とチャット
料金の単位 月のクレジット(超過は0.04ドル) プランごとの利用枠 プランか API の従量
提供元 AWS Anysphere Anthropic

要件が固まっていない機能をチームで作るなら、要件と設計がファイルで残る Kiro の spec が向いている。AWS の IAM Identity Center で契約や権限を管理している組織も入りやすい。小さな修正を素早く回したいだけなら、spec の手間が見合わないことがある。Cursor の料金とプランの違いはcursor 料金(Cursor pricing)2026|Hobby・Pro・Pro+・Ultraの違いと選び方、エディタ自体の比較はZedエディタとは?使い方・日本語設定・Windows対応とVS Code・Cursorとの違い【2026】で扱った。

参照ソース

・kirodotdev/Kiro — README(5つの入口・機能の一覧)、★4,369(2026-10-18 時点)
・Kiro Pricing — プランとクレジット(2026-10-18 時点)
・Kiro Docs: Billing — 超過利用・追加クレジット
・Kiro Docs: Specs — requirements.md・design.md・tasks.md と EARS
・Kiro Docs: Installation — 対応 OS
・Kiro Docs: Upgrading from Q CLI — Q Developer CLI からの移行
・Kiro FAQs — データの扱い
・kirodotdev/KiroCrew — Kiro Crew(★4,475)