Qwen-Image(クウェン・イメージ) は、画像生成AI(Text-to-Image、T2I)の長年の弱点だった「画像内の日本語・漢字」を正面から解決したオープンウェイトモデルだ。T2Iを触ったことがある人なら、一度は「文字」で泣いたことがあるはずだ。背景も構図も完璧なのに、ポスターに入れたはずの日本語のキャッチコピーが「文字のような模様」になってしまう。看板の店名は読めない別の漢字に化け、UIモックのボタンラベルは意味不明な記号列になる。SDXLもFLUXも、この「画像内の日本語」だけはどうにもならなかった。

そのQwen-Imageは、Alibaba(アリババ)のQwenチームが公開した20BパラメータのT2Iモデルで、GitHubスターは8,000を超える。最大の売りは、これまでのT2Iが最も苦手としてきた漢字を含むCJK(中国語・日本語・韓国語)文字の描画である。テキスト生成で実績のあるQwenチームが、その言語理解の資産を画像生成に持ち込んだ——というのがこのモデルの出自を一言で表す説明になる。本記事では、Qwen-Imageが「結局何ができて、何を解決し、何を代替するのか」を、公式リポジトリ・技術レポート・ベンチマークを一次ソースとして、実際の生成例とともに解説する。

オープンウェイトモデルの前提知識(アーキテクチャ・量子化・ローカル実行)は LLMとは?仕組み・主要モデル比較・ローカル実行・量子化を一気にまとめる2026年版 にまとめている。

30秒で分かるQwen-Imageのポイント

細部に入る前に、このモデルが「どんな課題を、どう解決するのか」を先に押さえておこう。

Qwen-Imageが解決する3つの課題

  1. 画像内の日本語・漢字が崩れる — テキスト理解に大規模言語モデル(Qwen2.5-VL)を使い、文字を「模様」ではなく「意味」として配置する。ポスター・看板・UIの文字が読める品質で出る
  2. 商用利用できるモデルが少ない — Apache-2.0ライセンスで公開。生成物の商用利用も、モデルの改変・再配布も自由。クラウド専用の商用モデルやFLUX.1[dev]の非商用制約に縛られない
  3. 文字と画質はトレードオフになりがち — Qwen-Imageは文字描画と一般的な画質(GenEval・DPGなどの汎用ベンチ)の両方でオープンモデル最上位クラス。文字のために絵を犠牲にしなくてよい
Qwen-Imageの生成例。中国語の店名看板、アニメ調シーンの文字、Qwen Coffeeのチョークボード、書の掛け軸、英語の映画ポスターなど、画像内テキストを含む多様な作例が並ぶ
Qwen-Image公式の生成例。店名看板・チョークボード・掛け軸・映画ポスターなど、画像に「読める文字」が入っているのが分かる(出典: QwenLM/Qwen-Image README

つまりQwen-Imageは、「日本語の文字が入った画像を、商用OKで、自分の環境でも作れる」という、これまで揃わなかった条件を一度に満たすモデルだ。

Qwen-Imageとは何か——Alibaba Qwenチームの20B画像基盤モデル

Qwen-Imageは、Alibaba CloudのQwen(通義千問)チームが開発する画像基盤モデル(image foundation model)である。テキスト言語モデルのQwenシリーズと同じチームが手がけており、2025年8月に技術レポート(arXiv:2508.02324)とともに初版が公開された。

コアとなるアーキテクチャは、名前にもある通りMMDiT(Multimodal Diffusion Transformer)だ。近年の高品質T2I(FLUXやStable Diffusion 3系)が採用している方式で、テキストと画像を同じトランスフォーマー内で相互に注意(attention)させながら拡散過程を進める。パラメータ規模は約20Bで、オープンなT2Iモデルとしては最大級である。

用語メモ:MMDiTとは

拡散モデルの「ノイズ除去」を担う中核ネットワークを、U-NetではなくTransformerで構築したものがDiT(Diffusion Transformer)。そこにテキストと画像の2つのモダリティを同じ層で扱えるようにしたのがMMDiT。テキストの条件付けが画像の隅々まで効きやすく、「指示どおりの文字を、指示どおりの位置に」置く精度が上がる。

モデルの内部フロー

Qwen-Imageの生成パイプラインは、大きく「テキスト理解 → 拡散生成 → 画像デコード」の3段で構成される。ここで効いてくるのが、テキストエンコーダにQwen2.5-VL(Qwenのビジョン言語モデル)を使っている点だ。単なるCLIP系エンコーダではなく、文章を深く理解できる大規模言語モデルがプロンプトを解釈するため、長く複雑な指示や、細かい文字の指定にも追従できる。

graph LR A["プロンプト
『看板に“千問”と書く』"] --> B["Qwen2.5-VL
テキストエンコーダ
(意味を深く理解)"] B --> C["MMDiT本体
20B・拡散生成
テキスト条件を全域に注入"] C --> D["潜在表現
(latent)"] D --> E["VAEデコーダ
画像へ復元"] E --> F["最終画像
文字が読める品質"]

このパイプラインの要点は、文字の指定がテキストエンコーダから拡散本体まで一貫して伝わることにある。一般的なT2Iでは、プロンプトの「文字を書け」という指示がぼやけて拡散に伝わり、結果として「文字っぽい模様」に落ちる。Qwen-Imageは言語モデル級のテキスト理解を入口に置くことで、この情報の目減りを抑えている。

派生モデルのラインナップ

Qwen-Imageは単体のモデルではなく、用途別にファミリー化されている。目的に応じて選べる。

Qwen-Image — 基本のテキスト→画像モデル。本記事の主役
Qwen-Image-Edit — 既存画像を指示文で編集するモデル。文字の差し替え・被写体の一貫性維持に強い
Qwen-Image-2512 — 人物のリアリティや自然物のディテールを強化した更新版
Qwen-Image-Edit-2511 — 複数画像の合成・人物一貫性を強化した編集版
Qwen-Image-Layered — レイヤー分離に対応した派生(2025年12月公開)

まず試すなら基本のQwen-Imageから入り、写真編集や商品画像の量産が目的なら編集系を選ぶ、という流れが分かりやすい。派生が増えても入口は共通なので、まずベースモデルの挙動を掴んでおけば応用が効く。

AI Arenaでの評価と開発の背景

Qwen-Imageの実力は、公式ブログや技術レポートの主張だけでなく、人間による直接比較でも裏づけられている。開発チームは、生成画像を人間が2枚並べて優劣を投票する「AI Arena」で1万回を超えるブラインド対戦を実施し、Qwen-Imageがオープンソース画像モデルの中で最上位に位置し、クローズドな商用システムとも競合できる水準にあると報告している。ベンチマークの数字は操作の余地があるという批判に対して、「人間が実際にどちらを選ぶか」で優位を示している点は評価に値する。

技術レポート(arXiv:2508.02324)によれば、Qwen-Imageの強さは単一の工夫ではなく、大規模で丁寧にキュレーションされた学習データ、テキストと画像を統合的に扱うMMDiT設計、そして生成と理解を橋渡しする学習の積み重ねから生まれている。とりわけ「文字を含む画像」を意図的に大量に学習させたことが、後述する文字描画の強さに直結している。

文字だけでなく、写真的な品質も世代を追って磨かれている。更新版のQwen-Image-2512では、人物の肌の質感や表情、自然物のディテールが基本モデルからさらに向上した。文字が読めることと写真として自然であることは両立しにくいが、Qwen-Imageは両方を同時に押し上げている。

Qwen-ImageとQwen-Image-2512の人物描写の比較。制服姿の学生のポートレートで、更新版のほうが髪や肌の質感が自然になっている
基本モデルと更新版2512の比較。世代ごとに人物のリアリティが向上している(出典: Qwen-Image README

商用利用とライセンス——Apache-2.0であることの意味

見落とされがちだが、Qwen-Imageの実務価値を決定づけているのがApache-2.0ライセンスだ。これは「生成した画像を商用製品に使ってよい」「モデルを改変して再配布してよい」「社内システムに組み込んでよい」という自由を意味する。画像生成の分野では、性能が高くてもライセンスが足かせになるケースが多い。FLUX.1[dev]は非商用ライセンスで、商用には別途プロプライエタリ版の契約が要る。IdeogramやGPT Imageはそもそもモデルが公開されておらず、APIの利用規約とクラウド依存から逃れられない。

Qwen-Imageは、この「性能とライセンスのトレードオフ」を崩した。デザイン制作会社が生成物を納品する、SaaSが画像生成を機能として組み込む、社内マニュアルの図版を量産する——いずれのケースでも、ライセンス面の不安なく本番投入できる。オープンウェイトであること自体が、性能と並ぶもう一つの競争力になっている。

なぜ日本語・CJK文字の描画が強いのか

Qwen-Imageの中心的な価値は、繰り返しになるが「画像内の文字が崩れない」ことだ。ではなぜ、他のT2Iにはできないことができるのか。理由は魔法ではなく、学習データ・トークナイザ・テキストエンコーダという3つの構造的な違いに集約される。

一般的なT2IとQwen-Imageの文字描画の違いを比較した図。一般的なT2Iは英語中心の学習データ・文字を模様として学習するのに対し、Qwen-ImageはQwen2.5-VLをテキスト理解に採用しCJK文字を大量学習している
文字描画の強さは学習データとテキストエンコーダの設計で決まる。Qwen-ImageはCJK文字を「意味」として扱う

第一に、学習データの言語構成。多くの欧米製T2Iは英語中心のデータで学習されており、漢字やかなの出現頻度が低い。モデルにとって漢字は「めったに見ない複雑な模様」であり、正しく再現する動機づけが弱い。Qwen-Imageは中国語圏のチームが開発し、CJK文字を含む画像・テキストのペアを大量に学習しているため、漢字を「描くべき正確な形」として扱える。

第二に、トークナイザとテキスト理解の質。CLIP系の軽量エンコーダは、長い文章や込み入った文字指定を粗く圧縮してしまう。Qwen-Imageはテキスト理解にQwen2.5-VLを採用し、言語モデル並みの解像度でプロンプトを解釈する。これにより「上部に大きく“新春セール”、下部に小さく日付」といった、位置と内容を伴う複雑な指示にも追従できる。

第三に、文字を「意味」として配置する設計。Qwen-Imageは1,000トークン級の長い指示から、PPTスライドやポスター、インフォグラフィックといった「文字が主役の画像」を直接生成できるよう訓練されている。文字が装飾ではなく情報として扱われるため、読める品質が保たれる。

日本語に引き寄せて考えると分かりやすい。日本語の文字は、画数の多い漢字、丸みのあるひらがな、直線的なカタカナが混在し、しかも「日」と「目」、「未」と「末」のように一画の違いで意味が変わる。文字を単なるテクスチャとして学習したモデルは、この微妙な差を再現できずに別字を描いてしまう。Qwen-Imageのように文字を意味の単位として扱えるモデルは、「この位置にこの字を置く」という判断ができるため、漢字とかなが混じる日本語でも字形が保たれやすい。中国語で磨かれた漢字描画能力が、漢字を共有する日本語にそのまま効いてくるわけだ。

公式ベンチマークは中国語(ZH)中心で計測されている。日本語は漢字を共有するため恩恵が大きいが、かな・カタカナ・和文特有の言い回しは中国語と完全には一致しない。日本語で本番投入する前に、実際の見出しで一度テスト生成して字形を確認するのが最も確実だ。

他のT2Iモデルとの比較——文字描画で頭ひとつ抜ける

「文字が強い」を数字で確認しよう。公式技術レポートは、Qwen-Imageを主要なクローズド/オープンモデルと比較している。特にテキスト描画ベンチマーク(LongText-Bench、ChineseWord、TextCraftなど)では、Qwen-Imageが他を明確に上回る。

Qwen-ImageとGPT Image 1・Seedream 3.0・FLUX.1・BAGELの比較ベンチマーク。左が画像生成・編集、右が文字描画。中国語・英語のテキスト描画でQwen-Imageが最上位
左:生成・編集ベンチ、右:文字描画ベンチ。中国語(Chinese Rendering)でQwen-Imageが突出。LongText-Bench ZHで0.946(GPT Image 1は0.619)(出典: Qwen-Image README / arXiv:2508.02324

たとえば中国語の長文描画ベンチ「LongText-Bench (ZH)」では、Qwen-Imageが0.946を記録し、Seedream 3.0の0.878、GPT Image 1の0.619を上回る。「ChineseWord」でも0.583で、他モデルの0.3台を大きく引き離す。英語描画でも上位に位置しており、CJKに寄せた結果として英語を犠牲にしているわけではない。

主要なT2Iモデルを、日本語運用の観点で並べると次のようになる。

モデル 開発元 ライセンス 日本語/CJK文字描画 パラメータ ローカル実行
Qwen-Image Alibaba Qwen Apache-2.0 ◎ 最上位クラス 約20B ◯ 可能
FLUX.1 [dev] Black Forest Labs 非商用ライセンス △ 英語は可・日本語は弱い 約12B ◯ 可能
Stable Diffusion XL Stability AI OpenRAIL++ ✕ 文字は崩れやすい 約3.5B ◯ 可能
Ideogram 3.0 Ideogram クラウド専用 ◯ 英語に強い・日本語は限定的 非公開 ✕ 不可
GPT Image 1 OpenAI クラウド専用 ◯ 日本語もそこそこ 非公開 ✕ 不可
Seedream 3.0 ByteDance クラウド専用 ◯ 中国語に強い 非公開 ✕ 不可

この表から見える構図はシンプルだ。文字描画が得意なモデル(Ideogram・GPT Image 1・Seedream)はいずれもクラウド専用で、ローカル実行も商用の自由度も限られる。一方でローカル実行できるオープンモデル(FLUX・SDXL)は日本語の文字が弱い。「日本語が描けて、かつローカルで動いて、かつ商用OK」という3条件を同時に満たすのが、現状ほぼQwen-Imageだけという位置づけになる。

競合を一つずつ見ると、この構図がより鮮明になる。Stable Diffusion XLはエコシステム(LoRA・ControlNet・拡張機能)が圧倒的に充実しており、スタイルの作り込みでは今も強い。だが素の文字描画は最も苦手で、日本語はほぼ実用にならない。FLUX.1は写実性と英語の短い文字では優秀だが、[dev]の非商用ライセンスと日本語の弱さが実務では引っかかる。GPT Image 1は指示追従と日本語を含む文字のバランスがよく手軽だが、API課金とクラウド前提で、データを外に出せない用途には使いにくい。Ideogramは英語のロゴ・タイポグラフィで定評があるものの、日本語は限定的でモデルは非公開。Seedream 3.0はByteDance製で中国語に強いが、これもクラウド専用だ。Qwen-Imageは「文字(特にCJK)」と「オープン・ローカル・商用可」を同時に取りにいった、という点で立ち位置がはっきり異なる。

Ideogramのようなクラウド型と比べると、生成速度や手軽さでは商用サービスに分がある場面もある。だが、社内資料の大量生成やデータを外に出せない業務、生成物を自社製品に組み込む用途では、オープンウェイトであることそのものが代替不能な価値になる。

実際に日本語ポスター・バナーを作る——導入とプロンプト

ここからは手を動かす。Qwen-Imageを試す経路は3つある。手軽な順に、① Qwen Chat / Hugging Face Spaceで試す → ② Diffusersでコードから叩く → ③ ComfyUIでワークフロー化だ。

ノードベースのGUIでじっくり組みたい場合は、ComfyUI入門2026|ノードベースで画像生成ワークフローを組む完全ガイド で基礎を押さえてからQwen-Image用ワークフローを読み込むとスムーズだ。

まず触ってみる(環境構築なし)

コードを書かずに品質を確かめたいなら、公式のオンラインデモが早い。

Qwen Chatchat.qwen.ai)— チャットUIから画像生成を指示できる
Hugging Face Space(Qwen/Qwen-Image)— ブラウザ上で無料試用
ModelScope — 中国語圏向けの同等デモ

Diffusersでコードから生成する

本格的に使うならPythonのDiffusersが基本になる。最新のdiffusersと、Qwen2.5-VLをサポートするtransformers(4.51.3以上)が必要だ。

pip install git+https://github.com/huggingface/diffusers
pip install "transformers>=4.51.3" accelerate

基本の生成コードはこうなる。日本語の見出しを入れたポスターを作る例だ。

from diffusers import QwenImagePipeline
import torch

# GPUがあればbfloat16で高速に
dtype = torch.bfloat16 if torch.cuda.is_available() else torch.float32
device = "cuda" if torch.cuda.is_available() else "cpu"

pipe = QwenImagePipeline.from_pretrained(
    "Qwen/Qwen-Image", torch_dtype=dtype
).to(device)

prompt = (
    "縦型のイベントポスター。上部に大きく力強い日本語で「夏の音楽祭」、"
    "中央にステージのイラスト、下部に小さく「2026年8月10日 開催」と記載。"
    "背景は夕焼けのグラデーション、モダンでミニマルなデザイン"
)
# 崩れ防止のネガティブプロンプト
negative_prompt = "低解像度, 文字化け, 崩れた文字, 余分な文字, 歪んだ手"

image = pipe(
    prompt=prompt,
    negative_prompt=negative_prompt,
    width=928, height=1664,          # 9:16の縦ポスター
    num_inference_steps=50,
    true_cfg_scale=4.0,
    generator=torch.Generator(device=device).manual_seed(42),
).images[0]

image.save("poster.png")

ポイントはwidth/heightの指定だ。Qwen-Imageは学習済みの推奨解像度が決まっており、そこから外すと品質が落ちやすい。用途別に次の値を使うとよい。

# 公式が推奨するアスペクト比と解像度
ASPECT = {
    "1:1":  (1328, 1328),   # アイコン・正方形バナー
    "16:9": (1664, 928),    # スライド・サムネイル
    "9:16": (928, 1664),    # 縦ポスター・ストーリー
    "4:3":  (1472, 1104),   # 資料図版
    "3:4":  (1104, 1472),   # 書籍風カバー
}
w, h = ASPECT["9:16"]

文字をきれいに出すプロンプトには型がある。「どこに・どんな大きさで・何と書くか」を明示するのがコツだ。「日本語で『夏の音楽祭』と書く」のように、描かせたい文字列は必ずカギ括弧などで括って引用し、位置(上部/中央/下部)と相対サイズ(大きく/小さく)を添える。逆に、雰囲気だけを伝えて文字はモデル任せにすると、それらしい別の言葉が入り込みやすい。num_inference_stepsは40〜50が標準で、増やすほど精緻になるが生成時間も伸びる。true_cfg_scale(プロンプトへの忠実度)は4.0前後が扱いやすく、上げすぎると色や質感が硬くなる。まずは標準値で数枚出し、狙いに応じて微調整するのがよい。

プロンプトを自動で磨く

Qwen-Imageは、素のプロンプトよりも「情報が整理された指示」で本領を発揮する。リポジトリには、Qwen言語モデルでプロンプトを書き換える補助ツールが同梱されている。

from tools.prompt_utils import rewrite

raw = "夏祭りのポスター、日本語で"
better = rewrite(raw)   # 構図・文字位置・スタイルを補って詳細化

短い曖昧な指示を、レイアウトや文字の配置まで含んだ詳細プロンプトに膨らませてくれるため、特に「どう書けば文字がきれいに出るか分からない」段階で有効だ。

画像を編集する——Qwen-Image-Edit

Qwen-Imageのもう一つの柱が編集機能だ。既存画像に対して「この看板の文字を差し替えて」「この人物を別の背景に」といった指示を出せる。文字の書き換えと、人物・被写体の一貫性維持に強い。

Qwen-Image-Editの生成例。魔法使いの帽子とローブを着たクマのキャラクターが「Dreams」と書かれた本を持つイラスト。本のタイトル文字が正確に描かれている
Qwen-Image-Editの作例。本のタイトル「Dreams」の文字が正確に描かれ、キャラクターの一貫性も保たれている(出典: Qwen-Image README

編集モデルのDiffusersコードはT2Iとほぼ同じ流儀で、入力画像と指示文を渡す。

import torch
from PIL import Image
from diffusers import QwenImageEditPlusPipeline

pipe = QwenImageEditPlusPipeline.from_pretrained(
    "Qwen/Qwen-Image-Edit-2511", torch_dtype=torch.bfloat16
).to("cuda")

src = Image.open("input.png")
inputs = {
    "image": [src],
    "prompt": "看板の文字を「営業中」に書き換える。他はそのまま",
    "true_cfg_scale": 4.0,
    "negative_prompt": " ",
    "num_inference_steps": 40,
    "generator": torch.manual_seed(0),
}
with torch.inference_mode():
    out = pipe(**inputs).images[0]
    out.save("edited.png")

商品画像の文言差し替え、バナーの文字だけ日本語化、といった「デザインの微修正」を、元の質感を保ったまま自動化できるのが編集モデルの実務的な強みだ。

実運用のコツと失敗パターン

最後に、Qwen-Imageを日本語で安定運用するための勘所をまとめる。公式の推奨と、文字描画モデル特有の注意点を押さえておくと事故が減る。

日本語運用の実践Tips

  1. 文字は「短く・分けて」指示する — 長い一文より、「見出し=短い1行」「補足=別の短い1行」と分けたほうが崩れにくい。段落まるごとを画像に入れるのは今も苦手
  2. 推奨解像度を守る — 上のASPECT表の値から外さない。中途半端なサイズは構図も文字も乱れる
  3. ネガティブプロンプトで文字化けを抑える — 「崩れた文字・余分な文字・文字化け」を明示的に除外する
  4. 生成後に必ず字形を目視確認 — 特に固有名詞・日付・数字。1文字違いは自動では気づけない
  5. 速度が要るなら蒸留版 — Qwen-Image-Lightning/LightX2Vなどの少ステップ版は、数ステップで生成でき推論を大幅に高速化できる

VRAMについても現実的に見ておきたい。20Bモデルをbfloat16でフル搭載すると40GB前後を要求するため、A100/H100クラスが理想だ。手元のコンシューマGPU(VRAM 12〜24GB)で動かす場合は、DiffusersのCPUオフロード、量子化、あるいはLightning系の軽量版を組み合わせる。それも重ければ、まずはHugging Face SpaceやQwen Chatで品質を見極め、本番だけクラウドGPUを借りる、という段階的な進め方が無難だ。

ローカルでオープンウェイトモデルを動かす際のランタイム選定やVRAM要件の全体像は、ローカルLLMを動かす方法|2026年最新オープンウェイト・ランタイム・VRAM要件まで総まとめ が参考になる。画像モデルでも考え方は共通だ。

失敗パターンとして最も多いのは、「英語のノリで長い日本語文章をそのまま流し込む」ケースだ。Qwen-Imageは強いとはいえ万能ではなく、文章量が増えるほど誤字の確率は上がる。ポスターなら「キャッチコピー1行+日付1行」程度に情報を絞り、細かい本文は後処理でテキストレイヤーを重ねる——という「AIで下地、人間で仕上げ」の分業が、結局いちばん速くて確実だ。

次点で多いのが、フォントや書体を細かく指定しすぎて破綻するケース。T2Iは特定フォントを厳密に再現するのは苦手なので、「明朝体で」「ゴシックで」程度のざっくりした指定に留め、厳密なブランドフォントが必要なら生成後にデザインツールで置き換える。また、同じ文字列を画像内に何度も出す指定(同じロゴを4箇所など)も崩れやすい。繰り返しが必要なら1回だけ生成して複製する方が安全だ。これらは「モデルの限界を知って役割分担する」ことで、ほぼ回避できる。

どんな用途・チームに向いているか

Qwen-Imageが特に力を発揮するのは、次のような場面だ。

日本語の販促バナー・SNS画像の量産 — 文言差し替えを繰り返すルーティン作業を、崩れない文字で自動化できる
社内資料・マニュアルの図版生成 — データを外部APIに出せない環境でも、ローカル完結で図やカバー画像を作れる
プロダクトへの画像生成機能の組み込み — Apache-2.0なので、SaaSやアプリの一機能として合法的に搭載できる
ECの商品画像・広告クリエイティブ — 編集モデルと組み合わせ、背景差し替えや文言変更を一貫した品質で回せる

逆に、単発で1枚だけ凝った画像がほしい・GPUを用意する余力がない、という個人用途なら、まずクラウドのデモやQwen Chatで十分だ。「文字が要る」「数を回す」「外に出せない」「製品に組み込む」——このいずれかに当てはまるチームにとって、Qwen-Imageは費用対効果が跳ね上がる選択肢になる。

まとめ:日本語T2Iの選択肢を一段引き上げたモデル

Qwen-Imageは、「画像内の日本語は崩れるもの」という長年の常識をひっくり返した。20BのMMDiTアーキテクチャ、テキスト理解を担うQwen2.5-VL、CJKに寄せた大規模学習——この3点が噛み合い、ポスター・看板・UI・バナーの文字を「読める品質」で生成できる。しかもApache-2.0でローカル実行も商用利用も自由だ。

何ができる — 日本語・漢字を含む画像内テキストを高精度に生成/既存画像の文字や被写体を編集
何を解決する — 「日本語ポスター・UIモックの文字が崩れる」というT2I最大の弱点
何を代替する — 文字目的で使っていたクラウド専用サービス(Ideogram等)を、オープン・ローカル・商用可の環境に置き換える

まずはQwen ChatかHugging Face Spaceで日本語の見出しを一つ生成してみてほしい。これまでのT2Iとの差は、一枚出せばすぐに分かる。

参照ソース

QwenLM/Qwen-Image — GitHub公式リポジトリ(README・モデルカード・利用コード)
Qwen-Image Technical Report — arXiv:2508.02324(アーキテクチャ・ベンチマークの一次ソース)
Qwen-Image 公式ブログ — qwenlm.github.io(開発チームによる解説)
Qwen/Qwen-Image — Hugging Face(モデル本体・Space)