CAD(コンピュータ支援設計)を自然言語で生成する「text-to-cad」という名前のプロジェクトは、実は2つ存在します。1つはZoo.dev(旧KittyCAD)が提供するブラウザ完結のWebアプリ。もう1つが本記事で扱う、個人開発者earthtojake氏が公開するearthtojake/text-to-cad——Claude CodeやCodexに直接インストールする、STEP・URDF・SDFなどの設計ファイルを自然言語から生成するAgent Skillsライブラリです。GitHub star数は12,974(2026-08-07時点)に達しており、CADの専門知識を持たないエンジニアでも、エージェント経由で部品図やロボット記述ファイルを組み立てられる点が特徴です。AI CAD 生成をエージェントのワークフローに組み込みたい開発者にとって、選択肢の1つになります。
- ・正体:個人開発者earthtojake氏によるMITライセンスのOSS。Claude Code/Codexにインストールする11種のAgent Skills集で、Zoo.devのWebサービス「Text-to-CAD」とは別物。
- ・何ができる:自然言語からSTEP/STL/3MF/GLB形式のCADモデル、URDF/SDF/SRDF形式のロボット記述、DXF形式の2D図面まで生成できる。
- ・何を代替できる:簡易な部品設計やロボットの構造記述を手作業でCADソフトに打ち込む工程の一部。Fusion 360やSolidWorksのような本格CAD操作そのものは代替しない。
- ・実測:
npx skills install earthtojake/text-to-cadから11.8秒で11スキルが生成されるのを確認(本日Linux環境で計測)。 - ・注意:バージョンは0.3.x台のpre-1.0で仕様変更が速い。Codexプラグインは0.142.0以降でないと静かにスキップされる。
Claude CodeそのものやAgent Skillsの仕組みを先に押さえたい場合は、Claude Code|2026年版・インストールからCLAUDE.md・Hooks・本番運用までの実装手引きを参照してください。
text-to-cad(CAD Skills)とは|Zoo.devとの違い
text-to-cadは、CAD・CAE・CAM・ロボティクス向けの設計ファイルをエージェントに生成・検証させるためのAgent Skillsライブラリです。開発元はGitHubでtype: Userと表示される個人開発者earthtojake氏(個人サイト www.texttocad.dev )で、企業スポンサーやマネージド版の記載はREADME・公式サイトのどちらにも見当たりませんでした。
star数12,974に対し、contributor数は約13名、総コミット数は約358(GitHub APIのLink header概算)。直近のリリースも0.3.13(2026-07-31)→0.3.11(2026-07-30)→0.3.10(2026-07-29)と数日おきに続いており、個人開発でありながら開発ペースは速い部類です。pushed_atは2026-08-06で、記事執筆時点でも現役で更新が続いています。
「text-to-cad」で検索すると上位はZoo.dev版のWebサービス記事が占めます。Claude Code CADのAgent Skillsを探している場合は、リポジトリ名
earthtojake/text-to-cadまたはプロジェクト名「CAD Skills」で検索し直すと迷いません。
開発体制も個人プロジェクトらしい構成です。CONTRIBUTING.mdによれば開発はdevelopブランチで行われ、外部からのPRもmainではなくdevelop向けに送る運用になっています。本番導入時にインストール・クローンする対象は、生成済みのスキル出力を含むmainブランチである点に注意してください。
star数と中身の実体を照らし合わせても、極端な乖離は見られません。個人プロジェクトとしては規模と開発ペースが噛み合っている一方、直近の高頻度パッチリリース(0.3.10→0.3.13を数日で連続)は単一開発者主導のペースに見え、bot・依存更新コミットの混入比率までは確認できていません。企業スポンサーやマネージド版の記載も無く、star数の多さをそのまま「組織的な後ろ盾がある」根拠と読むのは早計です。実運用に組み込む前に、後述のバージョン要件と合わせてバス係数の高さを織り込んでおくと安心です。
インストール方法と実機検証:11.8秒で11スキル
公式READMEが推奨するインストール方法はSkills CLI経由です。CAD Skillsを含むAgent Skillsはskills/配下のディレクトリ単位で配布されており、以下のいずれかのコマンドで導入します。
# 推奨:Skills CLI経由(対応エージェント全般)
npx skills install earthtojake/text-to-cad
# Claude Code向けプラグイン
claude plugin marketplace add earthtojake/text-to-cad
claude plugin install cad@text-to-cad
# Codex向けプラグイン(Codex 0.142.0以降が必須)
codex plugin marketplace add earthtojake/text-to-cad
codex plugin add cad@text-to-cad
検証環境:Ubuntu 24.04相当(Linux 6.17)、Node.js v22.23.2、npm 10.9.8、2026-08-07 JST。npx skills install earthtojake/text-to-cadを実行したところ、timeコマンドで11.8秒で完了し、.agents/skills/配下に以下の11スキルが生成されました。これはREADMEに記載の11スキルという数と一致します。
bambu-labs / cad / cad-viewer / dxf / gcode / implicit-cad /
sdf / sendcutsend / srdf / step-parts / urdf
Claude Codeでは.claude/skills/配下に.agents/skills/へのシンボリックリンクが作成され、既存のスキル運用と同じ形でそのまま認識されます。エージェントを再起動しても新しいスキルが認識されない場合は、README記載のとおりエージェントプロセスの再起動が必要です。
なおCADスキル自体を実際に動かすには、skills/cad/requirements.txtが指すcadpyパッケージ(build123d/OpenCascade系)とplaywrightが別途必要です。今回の検証ではインストールとスキル生成数の確認までを実施しており、STEP出力を伴う生成コマンドの実行時間までは計測していません(未計測の項目として明記します)。
11種のAgent Skills一覧:CAD・ロボティクス・製造まで
CAD Skillsという名前の通り、対象はCAD単体にとどまりません。設計・ロボティクス記述・製造出力の3系統に分けて整理すると全体像がつかみやすくなります。URDF 生成 AI としての側面も持っており、ロボットの構造とMoveIt向けの動作計画情報をセットで扱える点は、単発のCAD生成ツールとの違いです。
STEP/STL/3MF/GLB生成"] A --> C["URDF skill
ロボット構造記述"] C --> D["SRDF skill
MoveIt2プランニング"] A --> E["DXF skill
2D図面・カットデータ"] B --> F["CAD Viewer skill
ブラウザ内プレビュー"] E --> G["SendCutSend skill
発注前バリデーション"] B --> H["G-code skill
3Dプリンタ用スライス"] H --> I["Bambu Labs skill
プリンタへ送信"]
・CAD:平文または画像の指示からCADモデルを作成・編集し、STEPを主形式にSTL/3MF/GLBへも書き出す
・CAD Viewer:CAD・G-code・ロボットファイルをローカルブラウザでプレビューする
・step.parts:ねじ・ベアリング・モーター・コネクタなど既製STEP部品を検索する
・DXF:Pythonソースやジオメトリからプロファイル・テンプレート・ガスケット等の2D図面を作る
・URDF:リンク・ジョイント・可動域・慣性・メッシュを含むロボット構造ファイルを書く
・SRDF:URDFにMoveIt向けのプランニンググループ・エンドエフェクタ・姿勢・衝突ルールを追加する
・SDF:フレーム・物理・センサー・ライトを含むシミュレータ用モデル/ワールドを作る
・SendCutSend:DXF・STEPファイルをSendCutSendへアップロードする前に検証する
・G-code:対応メッシュを実スライサーCLIでプリンタプロファイル済みのFDM .gcodeへスライスする
・Bambu Labs:検証済み.gcodeをBambu Labプリンタへドライラン・アップロード・慎重に印刷開始する
・Implicit CAD:GLSL符号付き距離場を使うブラウザネイティブの暗黙的CADモデルを作る(実験的機能扱い)
① 何ができる:CAD設計・ロボット記述・製造データの3系統を1つのAgent Skills集でカバーする。② 何を解決する:CAD/URDF/SDFそれぞれ別ツールを覚える手間と、エージェントに設計文脈を渡す手間。③ 何を代替できる:定型的な部品設計やロボット構造記述の下書き作業。専門的な公差設計や強度解析までは代替しない。
ベンチマークで見る生成精度:10種の実例
リポジトリにはbenchmarks/配下に10種類のベンチマーク(benchmark_01〜benchmark_10)が用意されており、それぞれ「プロンプト→生成結果」の組み合わせが360°回転するGIFで確認できます。1番目のベンチマークは「中心に100×60×20mmのブロックを置き、8mmの貫通穴を4つ、上面外周に2mmの面取りだけを追加する」という指示で、実際に狙い通りの穴位置と面取りが再現されています。
ベンチマーク一式はGit LFSで管理されており、通常のgit cloneでは取得されません。手元で全件を見たい場合は次のコマンドでLFSアセットだけを取得します。
git lfs pull --include="benchmarks/**"
assets/やbenchmarks/配下のGIFはraw.githubusercontent.comから直接取得しようとすると、実体ではなく133バイト程度のLFSポインタ(テキスト)しか返ってきません。実体を取得するにはmedia.githubusercontent.com/media/<owner>/<repo>/<branch>/<path>を使うか、上記のgit lfs pullでローカルにハイドレートする必要があります(本記事の検証で実測済み)。
7番目以降には放射エンジンシリンダーや遠心インペラー、遊星歯車段のような機械要素も含まれており、単純な直方体だけでなく曲面や複数パーツの組み合わせも試されています。10件のお題を一覧にすると、難易度がどう上がっていくかが分かります。
| # | お題(README原文の意訳) | 主な要求形状 |
|---|---|---|
| 1 | 4穴付き矩形キャリブレーションブロック | 直方体+貫通穴4つ+面取り |
| 2 | ボルト穴パターン付き円形フランジ | 中心貫通穴+ボルト穴6つ+外周フィレット |
| 3 | ガセット付きL字ブラケット | 縦横2方向の穴+三角ガセット2枚 |
| 4 | キー溝付き段付きシャフト | 3段の径違いシャフト+キー溝 |
| 5 | ボス付き電子機器用オープントップ筐体 | 中空筐体+内部スタンドオフ4本 |
| 6 | 軽量化カットアウト付きクレビスブラケット | 対称ラグ2つ+三角軽量化カット+補強リブ |
| 7 | 冷却フィン付きラジアルエンジン風シリンダー | 円筒+冷却フィン12枚+角度付きスパークプラグボス |
| 8 | 後方湾曲ブレード付き遠心インペラー | ハブ+貫通穴+湾曲ブレード12枚 |
| 9 | 螺旋手すり付きらせん階段 | 中心柱+踏み板20段+ヘリカル手すり |
| 10 | 簡易遊星歯車ステージ | 太陽・遊星・リング・キャリア・ピンの5部品構成 |
ただし全10件の生成精度・所要時間を横断比較した数値はREADME・BENCHMARKS等に見当たらず、本記事でも個別の成功例の紹介にとどめます。
類似ツールとの比較:Zoo.dev・flowful-ai/cad-skill
同じ「自然言語からCADを作る」領域には、実行環境も配布形態も異なるプロダクトがいくつかあります。star数・ライセンスとも裏取りできていない項目は「未確認」のまま記載します。
| 項目 | text-to-cad(本記事) | Zoo.dev Text-to-CAD | flowful-ai/cad-skill |
|---|---|---|---|
| 形態 | Claude Code/Codex用Agent Skills(OSS) | ブラウザ完結のSaaS | Claude Code用スキル(CadQueryベース) |
| ライセンス | MIT(GitHub API判定・確認済み) | 未確認 | 未確認 |
| 対応形式 | STEP/STL/3MF/GLB/DXF/URDF/SDF/SRDF等 | STEP/STL中心 | パラメトリック3Dモデル中心 |
| 対象領域 | CAD設計+ロボティクス記述+製造出力 | CAD設計(Web UI) | 3Dプリント用途中心(README記載から推定) |
| 実行場所 | 自分のマシン上のエージェント | Zoo.devのサーバー | 自分のマシン上のエージェント |
flowful-ai/cad-skillはREADME検索でヒットした近縁プロジェクトですが、star数・ライセンスとも本記事では未検証のため数値主張には使わず、存在の言及にとどめます。Zoo.devは同名の別会社・別プロダクトで、CADモデルをブラウザ上のチャットで生成しSTEP/STLとしてダウンロードするWebサービスです。エージェントに直接組み込みたいか、Web UIで完結させたいかで選択が分かれます。
選び方の軸は大きく2つです。1つは「生成物をエージェントの会話の中でそのまま次の工程(レビュー・修正・別スキルへの受け渡し)に使いたいか」。text-to-cadはCAD Viewer skillでその場にプレビューでき、URDF/SRDF/SDFへの展開もエージェント内で完結するため、この軸では優位です。もう1つは「CADの専門知識がない状態でとにかく形状を素早く確認したいか」。Zoo.devのようなWeb UIは、エージェント環境を用意する手間がない分、単発の確認作業には向いています。
・Claude Skillsとは|「スキル=フォルダ」の仕組みと作り方・使い方を徹底解説 — Agent Skillsそのものの仕組みを知りたい場合
・Browserbase Skills徹底解説|Claude Codeにブラウザ自動化10機能を授けるスキル集 — 別ドメインに特化したスキル集の実例
・cloudflare/skills|Claude Code・CursorでWorkers・Agents SDKを使いこなす — インフラ領域のドメイン特化スキル集の実例
まとめ:text-to-cadが向いている人・向いていない人
text-to-cadは、Claude CodeやCodexの中でCAD・ロボティクス・製造データの生成を完結させたいエンジニアには実用的な選択肢です。11スキルのインストールが10秒台で終わり、STEP/URDF/SDFといった実務でそのまま使える形式に対応している点は、個人開発のOSSとしては手厚い部類に入ります。
一方で、バージョンは0.3.x台のpre-1.0でコマンド仕様が変わりやすく、Codexプラグインは0.142.0以降でないと静かにスキップされる点、CAD skill自体の実行にはcadpy(build123d/OpenCascade系)やplaywrightといった追加の依存が必要な点は導入前に把握しておく必要があります。企業サポートやマネージド版は確認できておらず、個人開発プロジェクト特有の継続性リスクも織り込んだ上で採用を検討してください。
・向いている人:Claude Code/Codexのワークフローの中でCAD・ロボット記述・製造データまで自然言語で完結させたいエンジニア
・向いていない人:ブラウザだけで完結するSaaSを探している人(Zoo.dev版が該当)、公差設計や強度解析まで含む本格的なCAD実務を代替したい人
導入判断で迷ったら、まずはnpx skills install earthtojake/text-to-cadだけを試すのが低コストです。本記事の検証でも実測11.8秒でスキルが揃うため、CAD skill自体を動かすためのcadpy/playwright依存を入れるかどうかは、スキル一覧と各SKILL.mdを眺めてから判断しても遅くありません。0.3.x台のpre-1.0であることを踏まえ、本番のCI/CDパイプラインに組み込む前には、実行環境で一度手動生成を試して出力形式が想定通りか確かめることをおすすめします。
参照ソース
・earthtojake/text-to-cad(公式リポジトリ・README) — スキル一覧・インストール手順・ベンチマークを確認
・text-to-cad 公式サイト — プロジェクト概要を確認
・CAD skill(skills/cad/SKILL.md) — CADスキル単体の仕様を確認