Claude Codeの公式スキル集 anthropics/skills に、2026-08-17(日本時間 08-18 02:23)discernment-nudge という名前のスキルが静かに追加されました。日本語の解説はまだ見当たりません。やることは一行で言えます——Claudeが出した答えの末尾に、「その答え、ここは疑ったほうがいい」という質問を2〜3個くっつける。AIに、自分の答えを疑わせるスキルです。

スキル無効時と有効時の出力比較。無効時はClaudeがユーザーに追加情報を求めて終わるのに対し、有効時はユーザーがClaudeへ投げ返せる質問が並ぶ
同じプロンプト・同じモデル・同じCLI(2.1.241)で、プラグインの有無だけを変えた実測結果。末尾だけが入れ替わる(2026-08-24 本サイト実測)
30秒でわかる discernment-nudge(2026-08-24時点)
  • 正体:Anthropicが公式スキル集 anthropics/skills に2026-08-17に追加したAgent Skill。19スキル中の最新枠のひとつ
  • 何をする:助言・見積もり・データ解釈などユーザーが行動に移しうる答えの末尾に、検証を促す質問を2〜3個追加する。1会話1回まで
  • 実測:SKILL.mdは209行・10,592バイト。常駐約317トークン、発動時約3.1kトークン(Claude Code 2.1.241)
  • ELI5との差:あちらはコミュニティ配布・321バイト・発動時約60トークン。発動コストで約52倍の開き
  • 設計の主眼:本体は「いつ出すか」(29行)より「いつ黙るか」(94行)が3.2倍長い
  • 注意:指定されている固定リード文は実測では再現されなかった。挙動の方向は仕様どおりだが書式は揺れる

Claude Code本体のスキル・プラグイン機構そのものを先に押さえたい方は、Claude Code|2026年版・インストールからCLAUDE.md・Hooks・本番運用までの実装手引きに導入から運用までをまとめてあります。

discernment-nudgeとは——Anthropic公式スキルが「答えを疑わせる」仕組み

discernment-nudge は、Claudeの回答そのものには手を触れません。答えを最後まで普通に書かせたあと、その下に短い質問リストを足すだけのスキルです。

SKILL.mdの「Why this exists」節は、存在理由をこう説明しています。人はAIの答えをそのまま受け取りがちで、とくに自信たっぷりに、整った形で書かれているときはなおさらだ。たいていの場合それで困らないが、お金を使う・健康上の判断をする・どこかに引用する・計画にコミットする——そういう行動に移る答えについては、ほんの一瞬立ち止まるだけで、悪い前提や欠けた文脈を手遅れになる前に捕まえられる。

そして重要なのは、このスキルが説教をしない設計になっていることです。SKILL.mdは「三つの習慣を講義するのではなく実演する」と明記しています。その三つとは:

事実を確かめる(Checking facts)——この答えの中のどの主張が、何に照らして検証する価値があるか
推論を問う(Questioning reasoning)——論理のどこに、根拠を見せてほしい飛躍があるか
欠けた文脈に気づく(Noticing missing context)——ユーザーが言わなかったせいで、答えが仮定せざるを得なかったものは何か

この三つは Anthropic の AI Fluency フレームワークに出てくる「Discernment(識別)」という能力の構成要素です。Claude Academy にも同名の講座が置かれており、スキルはその概念を実際の会話に埋め込む実装、という位置づけになります。

discernment-nudge の狙いは「Claudeを賢くすること」ではなく、ユーザーを検証する側に立たせることにある。

出力されるものの実物

仕様上、出力はきわめて素朴です。答えの後に空行を1つ入れ、固定のリード文とプレーンな箇条書きを置く——それだけ。SKILL.mdが例示しているのはこの形です。

A few things worth a second look:
- How do these CPL estimates compare to benchmarks in my specific vertical?
- Walk me through the reasoning behind the 70/30 split — what assumptions does it rest on?

書式の指定はかなり厳格で、引用ブロックも見出しも余計な枠組みも付けるな、プレーンテキストのみ、HTMLも見出しも絵文字も禁止と書かれています。「箱に入った警告」ではなく「軽い提案」として読ませたい、という意図です。さらに質問のあとに「掘り下げましょうか?」のような言葉を足すことも禁じられており、このリストが会話の締めになると明示されています。

質問の書き方にも条件があります。汎用的な問い(「その事実を検証できますか?」)は目的を裏切るので不可。価値は具体性にあるとして、答えの中の数字・名前の付いた手順・仮定を名指しすること、ユーザーがそのまま送り返せる一人称の疑問文であること、2〜3個まで、各120文字程度以内であることが指定されています。

読者の3つの問いへの答え
何ができる:Claudeの答えの末尾に、その答えを検証するための具体的な質問を2〜3個追加する。② 何を解決する:整った文章のAI出力をそのまま鵜呑みにして行動してしまう問題。③ 何を代替できる:「ファクトチェックして」と毎回自分で打つ手間。ただし後述のとおり、ユーザーが自分で検証を頼んだ場合はスキルの側が黙る設計になっている。

ELI5と何が違うのか——discernment-nudgeを配布元・サイズ・トークンで比較

同じ8月、Anthropic界隈でもう1つバズったスキルが ELI5スキルとは|Anthropic社員が公開した/eli5の中身は全文3行、導入手順と同名スキルの見分け方 で扱った /eli5 でした。わかりやすくするスキルと、わかった気にさせないスキル。並べて測ると、性格の違いが数字にそのまま出ます。

項目 ELI5 discernment-nudge
配布元リポジトリ anthropics/claude-plugins-community anthropics/skills一次スキル集
位置づけ コミュニティ投稿のミラー 公式スキル集の19本の1つ
マーケットプレイス claude-community anthropic-agent-skills
SKILL.md サイズ 321バイト / 実質3行 10,592バイト / 209行
LICENSE ファイル 同梱なし(マニフェストにMIT表記のみ) LICENSE.txt を同梱(11,345バイト)
常駐トークン 約66 約317
発動時トークン 約60 約3.1k
呼び出し方 /eli5 <トピック> と明示的に打つ 条件に合えば自動で発動

数字はすべて2026-08-24に Claude Code 2.1.241 で測り直したものです。発動時のコストは約52倍の開きがあります。

もっとも大きな違いは、実は表の一番下です。ELI5はユーザーがスラッシュコマンドで呼ぶスキルですが、discernment-nudge には呼び出しコマンドがありません。条件に合致したときにClaudeが自分で発動する。だからこそ「いつ発動するか」の線引きが、このスキルの本体になります。

discernment-nudgeの実測値。SKILL.mdは209行10,592バイト、常駐約317トークン、発動時約3.1kトークン
Claude Code 2.1.241 での実測値(2026-08-24・本サイト計測)。コンポーネント内訳はスキル1本のみで、エージェント・フック・MCPサーバーはいずれも0
ELI5の常駐トークンが前回記事と違う件
本サイトの2026-08-22の記事では、ELI5の常駐を約39トークン・発動時を約40トークンと記録していました。今回の再計測では約66/約60です。ELI5側の SKILL.md321バイトのまま変わっていないことを確認済みなので、差はプラグイン側ではなくClaude Code のバージョン差(2.1.220 → 2.1.241)に由来します。claude plugin details の数値はCLI自身が「見積もりであり実使用量とは異なる場合がある」と注記しているとおりの推定値で、バージョンをまたいだ絶対値の比較には使えません。本記事の比較はすべて同一バージョン・同一日で揃えてあります。

中身を読む——discernment-nudgeは「発動条件」より「黙る条件」が3倍長い

209行のSKILL.mdをH2ごとに数えると、このスキルの設計思想が一目でわかります。

SKILL.mdのセクション別行数。When not to(抑制条件)が94行で最長、When to offer(発動条件)は29行
SKILL.md 209行のセクション別内訳。抑制条件が発動条件の3.2倍を占める(2026-08-24 実測)
セクション 行数 内容
Why this exists 20 存在理由とAI Fluencyの3習慣
When to offer the nudge 29 発動する条件(6ケース)
When not to 94 発動を抑える条件(最長)
Writing the prompts 24 質問の書き方
Output format 21 出力書式の指定

発動条件29行に対し、抑制条件が94行。3.2倍です。プロンプトエンジニアリングの実務でよく言われる「AIに何をさせるかより、何をさせないかを書くほうが難しい」が、Anthropic自身の公式スキルでそのまま形になっています。

発動する6つのケース

見積もり・予測・数値を出したとき(コスト、期間、比率、確率)——もっともらしいがユーザー固有の状況に基づいていないもの
助言や推奨を出したとき——事業戦略・健康・法務・金融・キャリア・対人関係など、正解が持っていない文脈に強く依存する領域
事実や歴史的な主張を、ユーザーが行動や引用に使いそうな場面で出したとき
多段の推論や分析を通したとき——序盤の仮定が誤っていれば結論が変わるもの
データや研究をユーザーの代わりに解釈したとき
実用に供される成果物を起草したとき——目標、計画、ピッチ、提案書、メール

黙る条件のほうが精密

抑制条件は大きく3層に分かれています。第1層は素直な除外——創作(詩・物語・ブレスト・コピー)、雑談、ユーザーが実行するコード、単純な調べ物、純粋に教育目的の説明。ここで面白いのは、コードについて「実行することが検証そのものだから」と理由が添えられ、さらに「ただしアーキテクチャの助言は別だ。走らせて確かめる手段がないので、チーム規模・スタック・慣習についての仮定は表に出す価値がある」という例外の例外まで書かれている点です。

「純粋に教育目的の説明」の扱いも細かい。「Xとは何か」「XとYの違いは何か」は、金融・健康・法律のような重い領域であっても、ユーザーが自分の状況を語っていない限り除外とされます。SKILL.mdの例を借りれば——「Roth IRAとは何か」を説明するのは助言ではない。「私はどちらを開くべきか」は助言である。ただし説明の末尾が「……だからあなたはXすべきだ」で終わるなら、その推奨部分にはnudgeが付きうる。

第2層は「ユーザーが実質的に『やるな』と言っている」4パターンで、ここが最も長い記述になっています。

パターン 抑制する理由(SKILL.mdの論理)
「ダブルチェックして」「出典を出して」と頼まれた ユーザーは既に批判的な姿勢にある。上からnudgeを重ねるのは話を聞いていないという読まれ方をする。検証は答えの中でインラインでやれ
「手短に」「自分で調べるから」と言われた 足場を明示的に断られている。押しつけがましく着地する
「これ合ってる?」「レビューして」と頼まれた あなたの答えそのものが検証工程。再確認を促すのは循環になる
ユーザー自身の資料を渡された 要約・整形・抽出は、原本を持っているユーザーが判定者。あなたの要約についての反省を促すのは筋違い

そして見落としやすい5つ目として、「どう思う?」「あなたの見立ては?」と意見を求められたときが挙げられています。理由が秀逸で、「見解は検証するものではなく吟味するものだ。見解にnudgeをかけるのはカテゴリ錯誤である」と書かれています。

第3層は「1会話1回」という単純な上限。ただし条文は丁寧で、「このルールが制限するのは繰り返しだけである。まだ一度もnudgeしていないなら、何ターン目の答えであっても条件を満たせばnudgeが付く」と、誤読しやすい方向を先回りで潰しています。

スキルの実体は「質問を出す機能」ではなく、「出さない条件の網」である。だから本文の3分の2近くが抑制の記述に費やされている。

実際に発動させた——discernment-nudge有無のA/B比較と、仕様との3つのズレ

仕様を読んだだけでは、実際に効くかどうかはわかりません。同じプロンプト・同じモデル・同じCLI(2.1.241)で、プラグインの有無だけを変えるA/B比較を実施しました。プロンプトは発動条件の「見積もり・予測」と「助言」に真正面から当たるものを選んでいます。

個人開発のSaaSを月額1,980円で出そうと思っています。初年度の売上見込みを立ててください。

対照群(スキル無効)の末尾

両条件とも、本体の回答は3シナリオの試算表で、内容の質に大きな差はありませんでした。差が出たのは締め方です。スキル無効時、日本語での末尾はこうなりました。

・「精度を上げるには次の情報があると具体的な数字に落とし込めます」として、想定チャーン率・集客チャネル・転換率・年払いの有無の4点を列挙
・締めは「必要であれば教えてください」

つまりClaudeがユーザーに情報をねだって終わる形です。しかもこの締め方は、discernment-nudge が明示的に禁止している「掘り下げましょうか?」型のクローザーそのものでした。英語の対照群では、質問リスト自体が出ませんでした。

実験群(スキル有効)の末尾

同じプロンプトでスキルを有効にすると、末尾はこう変わりました。

・「想定している新規獲得ペース(月5〜25人)の根拠は何ですか?集客チャネルから逆算した数字と一致していますか?」
・「解約率の仮定(月4〜6%)は、類似のB2C/個人開発SaaSの実績値を参照したものですか、それとも一般的な目安ですか?」
・「この価格(1,980円)は競合や提供価値と比較して検証済みですか?」

向きが反転しています。対照群では「Claude → ユーザー」への質問だったものが、実験群では「ユーザー → Claude」へ投げ返せる質問になった。しかも回答本文に実際に登場した数字(月5〜25人、月4〜6%、1,980円)を名指ししており、SKILL.mdが要求する具体性の条件を満たしています。スキルは確かに出力を変えており、変化の方向は仕様の意図どおりでした。

ただし仕様との3つのズレ

一方で、書式は仕様どおりではありませんでした。

仕様の指定 実測
リード文は「A few things worth a second look:」をそのまま使う 英語では「A few things worth checking before you lean on this number:」に言い換えられた。日本語では固定リード文自体が出ず、地の文で導入された
水平線・見出し・余計な枠組みは付けない 英語出力で質問リストの直前に水平線(---)が挿入された
各質問は120文字程度以内 実測はいずれもそれを超過。日本語では1項目が2文になったものもあった
これをどう読むか
「スキルが壊れている」という話ではありません。Agent Skillはモデルへの指示であって、出力を機械的に強制する仕組みではない——書式の細部はモデル側の裁量に委ねられます。実務上の含意はむしろ逆で、固定文字列を目印にした後処理(ログ解析やnudge部分の自動抽出など)を組むと壊れるということです。日本語で使う場合はリード文自体が現れないので、なおさら文字列マッチには頼れません。

インストール手順と常駐コスト——公式19スキルの中でのdiscernment-nudgeの位置

ELI5のときと同じく2コマンドですが、マーケットプレイスが違います。ELI5がコミュニティ側だったのに対し、こちらはAnthropicの一次リポジトリです。

# 1. 公式スキル集のマーケットプレイスを追加
claude plugin marketplace add anthropics/skills

# 2. discernment-nudge を導入
claude plugin install discernment-nudge@anthropic-agent-skills

# 3. 常駐コストと構成を確認
claude plugin details discernment-nudge

3つとも Claude Code 2.1.241 で実行し、成功しました。details の出力は次のとおりです。

Component inventory
  Skills (1)  discernment-nudge
  Agents (0)   Hooks (0)   MCP servers (0)   LSP servers (0)

Projected token cost
  Always-on:   ~317 tok   added to every session
  component          always-on  on-invoke
  discernment-nudge       ~320      ~3.1k

エージェントもフックもMCPサーバーも持たない、スキル1本だけのプラグインです。ELI5と構成上は同じ形で、違うのは中身の分量だけということになります。

導入時のスコープにも触れておきます。上記のコマンドは既定でユーザースコープscope: user)に入り、そのマシンの全プロジェクトで有効になります。discernment-nudge は自動発動型なので、これは「常駐317トークンを全プロジェクトで払う」という意味でもあります。見積もりや戦略を扱うリポジトリでだけ効かせたいなら、プロジェクト単位で入れ直すほうが無駄がありません。Claude Code スキルのスコープ優先順位や settings.json 側での制御はClaude Code 設定ガイド|settings.jsonのスコープ優先順位とpermissions設計にまとめてあります。なお Anthropic 公式スキルは他のマーケットプレイスと併存できるので、ELI5(claude-community)と本スキル(anthropic-agent-skills)を同時に入れても衝突しません。

配布定義から読める「扱いの重さ」

.claude-plugin/marketplace.json を読むと、Anthropicがこのスキルをどう位置づけているかが見えます。マーケットプレイス anthropic-agent-skills には5つのプラグインが登録されていますが、内訳が非対称です。

プラグイン 収録スキル数 性格
document-skills 4(xlsx / docx / pptx / pdf) 文書処理スイート
example-skills 12 「例示」としてまとめられた束
claude-api 1 単独
academy-guide 1 単独
discernment-nudge 1 単独

19本のうち12本は example-skills(例示スキル集)という1つの束に押し込まれています。discernment-nudge はそこに入らず、単独のプラグインとして登録されている。同じ扱いを受けているのは claude-apiacademy-guide だけです。「サンプルの1つ」ではなく「それ単体で入れて使うもの」として出されている、と読むのが自然でしょう。

なお git履歴上、このスキルはPR #15532026-08-17 10:23:10 PDT(JST 08-18 02:23)に1コミットで追加されており、以後修正はありません。ELI5が公開後6分のあいだに5コミットで推敲されたのとは対照的に、最初から完成した形で出ています。同じ作者が同日に academy-guide も追加し、翌日にPR #1605で改名しています。

公式19スキルの常駐トークン実測

「入れっぱなしにして重くないか」は、スキルを増やすときの実務的な関心事です。公式19スキルすべてを導入して claude plugin details を回した結果が下記です。

公式19スキルの常駐トークン実測。claude-apiが470で最大、discernment-nudgeは320で3位相当
常駐トークン(毎セッションに加算される分)の実測。19本からの抜粋(2026-08-24・Claude Code 2.1.241)
スキル 常駐 発動時
claude-api ~470 ~28.8k
xlsx ~330 ~3k
discernment-nudge ~320 ~3.1k
academy-guide ~320 ~2.2k
docx ~290 ~2.4k
pptx ~260 ~7.9k
pdf ~160 ~3k
doc-coauthoring ~150 ~5.3k
algorithmic-art / internal-comms ~120 ~6.7k / ~380
skill-creator ~110 ~11.3k
webapp-testing / frontend-design ~80 ~1.2k / ~2.8k

束ごとの合計は document-skills が約1,028トークン、example-skills 12本で約1,221トークン。discernment-nudge と academy-guide の2本だけで、例示スキル12本の合計の半分強(約640 / 約1,221)を占めます。19本すべて入れると常駐は概算で約3,360トークンになります。

常駐トークンを決めるのはdescriptionの長さだった

ここまでの数字を並べていて、直感に反する事実に行き当たりました。本文が最も長いスキルが、常駐コストでは最軽量クラスに入っているのです。

skill-creator のSKILL.mdは33,168バイト・485行——19本中で最大です。それでも常駐は約110トークンしかありません。一方 discernment-nudge は本文10,592バイトで、常駐は約320トークン。本文が3分の1以下なのに、常駐は3倍近い

理由は、Agent Skillsのプログレッシブ・ディスクロージャという仕組みにあります。毎セッションに読み込まれるのはSKILL.md全体ではなく、frontmatterの description だけ。本文はスキルが発動したときに初めて読まれます。だから常駐コストは本文の長さと無関係で、description の長さだけで決まる。

description文字数と常駐トークンの対応。文字数が多いスキルほど常駐トークンも大きい
棒の長さは frontmatter description の文字数、右の注記が実測の常駐トークン。本文の長さとは無関係に対応している(2026-08-24 実測)

実測を並べると、対応はほぼ線形です。

スキル description文字数 常駐トークン 本文サイズ
claude-api 1,157 ~470 75,707 B
academy-guide 1,101 ~320 7,755 B
discernment-nudge 1,098 ~320 10,592 B
xlsx 1,034 ~330 8,598 B
doc-coauthoring 464 ~150 15,815 B
skill-creator 353 ~110 33,168 B
webapp-testing 278 ~80 3,913 B

だいたい3.3〜3.5文字あたり1トークンで推移しており、本文サイズの列はまったく相関していません。

なぜ discernment-nudge の description が19本中で2番目に長いのか。読めば理由がわかります。このスキルの description は、説明文ではなく発動条件の要約そのものなのです。「助言や推奨、目標・計画・ピッチ・提案・メールといった起草物、見積もりや予測、データの分析や解釈、依拠されうる事実の主張、多段の論証——を出したあと、返答を確定する前にこのスキルを呼べ」という条件列挙に続いて、除外条件までひととおり書かれています。

これは自動発動型スキルの構造的な要請です。ユーザーが /eli5 と打つスキルなら、descriptionは短くていい——呼ぶかどうかを決めるのは人間だからです。しかし自動発動型では、モデルが毎ターン「今これを呼ぶべきか」を判定しなければならず、その判定材料は常駐している description しかありません。判定を精密にするほど description が伸び、常駐コストが上がる。

スキルを自作する人への実務的な含意
常駐コストを削りたいなら、削るべきは本文ではなく description です。逆に、本文をいくら厚く書いても毎セッションのコストは増えません。「スキルを入れすぎると重い」と感じたら、まず claude plugin details で常駐の内訳を見て、description が長い自動発動型スキルから見直すのが効率的です。Claude Skillsとは|「スキル=フォルダ」の仕組みと作り方・使い方を徹底解説にスキル自体の構造をまとめてあります。

発動判定の流れ

自動発動型スキルが1ターンの中でどう処理されるかを整理すると、次のようになります。

flowchart TD A["毎セッション開始時
descriptionのみ常駐
約317トークン"] --> B["ユーザーが質問"] B --> C["Claudeが答えを生成"] C --> D{"答えは行動に
移されうるか?
(発動6条件)"} D -- いいえ --> H["そのまま返す
追加コスト0"] D -- はい --> E{"抑制条件に
当たらないか?
(94行の網)"} E -- 当たる --> H E -- 当たらない --> F{"この会話で
既に発動済みか?"} F -- 済み --> H F -- 未 --> G["SKILL.md本文を読み込み
約3.1kトークン
質問2〜3個を末尾に追加"]

図のとおり、3つの関門をすべて通ったときだけ本文が読み込まれます。裏を返せば、多くのターンでは常駐の約317トークンしか消費されません。発動時の約3.1kトークンは、条件に合致した回答1回あたりのコストです。

まとめ

discernment-nudge の要点(2026-08-24時点)
・Anthropicが公式スキル集 anthropics/skills に2026-08-17に追加した、Claudeに自分の答えを疑わせるスキル。日本語の解説はまだほぼ無い
・SKILL.mdは209行・10,592バイト。うち94行が「発動を抑える条件」で、発動条件29行の3.2倍。設計の主眼は「いつ黙るか」にある
・実測で常駐約317トークン、発動時約3.1kトークン。ELI5(約66/約60)と比べ発動時で約52倍
・A/B比較でスキルは確かに出力を変えた。質問の向きが「Claude→ユーザー」から「ユーザー→Claude」へ反転するのが実際の効果
・ただし仕様の固定リード文は再現されなかった。書式に依存した後処理は組まないこと
・常駐コストは本文でなくdescriptionの長さで決まる。本文33KBの skill-creator が常駐約110トークンで済むのはこのため

「AIの答えを鵜呑みにするな」という一般論は、これまで人間の側の心構えとして語られてきました。discernment-nudge が面白いのは、その心構えをAI自身の出力仕様として書き下した点です。しかも書かれた分量の大半が「余計なことを言うな」の条件に費やされている。答えを疑わせる機能を作るとき、いちばん難しいのは疑わせ方ではなく、疑わせるべきでない場面を数え上げることだった——SKILL.mdの行数配分は、そう読めます。

入れておく価値があるかは用途次第です。見積もり・戦略・データ解釈をClaudeに任せることが多いなら、常駐317トークンは安い保険でしょう。逆に、コードを書かせるのが主用途なら発動条件からほぼ外れるので、常駐分を払うだけになります。プラグインの探し方そのものは claude-plugins-community解説|Anthropic公式プラグイン市場2,282件を中身から読む にまとめてあります。

参照ソース

anthropics/skills — discernment-nudge 本体 — SKILL.md全209行・LICENSE.txt・git履歴(PR #1553、2026-08-17 10:23:10 PDT)の一次情報
anthropics/skills — .claude-plugin/marketplace.json — 5プラグイン構成と、discernment-nudge が単独エントリである事実の出典
A closer look at Discernment — Claude Academy / AI Fluency — スキルが参照する AI Fluency フレームワークの「Discernment」定義
anthropics/skills PR #1553 — Add discernment-nudge skill — 追加コミット f379e5a(2026-08-17 10:23:10 PDT)の一次記録
anthropics/claude-plugins-community — eli5 — 比較対象。SKILL.md 321バイトと5コミットの推敲履歴