Clineの使い方を、2026年最新版で初心者向けに体系化した。オープンソースのAIコーディングエージェントであるClineの導入から、Plan/Actモードの基本操作、自分のAPIキーで使う料金体系、Cursor・Claude Codeなど他ツールとの違いまで、公式リポジトリの一次情報をもとに通しで解説する。

Clineは「AIによるコード補完」を超えて、コードを読み、複数ファイルを編集し、ターミナルでコマンドを実行し、テストが通るまで反復する自律エージェントだ。しかも特定のモデルやベンダーに縛られず、自分の選んだモデルとAPIキーで動かせる。本記事はその全体像を、無料で試す段階からチーム導入まで一本の地図として示す。

AIコーディングツール全体の選び方は GitHub Copilotの使い方|2026年最新版 もあわせてご覧ください。

30秒で理解するClineの使い方

まず要点だけ先に押さえる。細部はこのあとのセクションで順に掘り下げる。

・ClineはVSCode拡張・JetBrainsプラグイン・CLI・SDKとして使える、オープンソース(Apache 2.0)の自律コーディングエージェント
・モデル推論は持たず、Anthropic・OpenAI・Google・OpenRouter(200以上)など外部APIを呼ぶBYOK(自分のAPIキー持ち込み)方式
・Plan(方針を練る)とAct(実装する)の2モードを切り替えて使うのが基本操作
・ファイル編集とコマンド実行は標準で都度承認、差分プレビューとチェックポイント(巻き戻し)でユーザーが主導権を握る
・.clinerulesでプロジェクト規約を、MCPサーバーで外部システム連携を拡張できる

この記事のポイント
  • Clineの核心は「任意モデル × 承認ワークフロー × 拡張性」。ベンダーロックインを避けつつ自律性をコントロールできる
  • 基本操作はPlan→Actの2モード。簡単な作業はActだけ、複雑な作業はPlanから入るのがコツ
  • 料金はBYOK。月のAPI課金が約$40未満ならサブスク型より安く、ヘビーユーザーは逆転する分岐点を意識する
  • Cursor・Claude Code・Aider・Codex CLIとの違いを押さえると、Clineを選ぶべき場面が見える

Clineとは|特徴とClaude Codeとの違いから見る使い方

Clineは、VSCodeなどのエディタに統合されたAIコーディングエージェントだ。GitHubで6万を超えるスター(執筆時点で約62.9k)を集めるオープンソースプロジェクトで、ライセンスはApache 2.0と商用利用にも寛容だ。

AIエージェントそのものの仕組みを先に押さえたい人は AIエージェントとは?2026年版の基礎解説 を参照してください。

Clineの特徴は大きく3つに整理できる。

・任意モデル対応——Claude・GPT・Geminiから、OpenRouter経由の200以上のモデル、AWS Bedrock・Azure・Vertex、さらにOllama・LM Studioのローカルモデルまで自由に選べる
・承認ワークフロー——コード編集とコマンド実行は標準で都度承認。すべての変更が差分(diff)として表示され、チェックポイントでいつでも巻き戻せる
・高い拡張性——.clinerulesでプロジェクト規約を注入し、MCPサーバーでDB・API・クラウドと連携、SDKで独自ツールやフックを組み込める

Claude Codeとの違いはよく聞かれる。両者とも「自律的にコードを書くエージェント」だが、土俵が異なる。Clineはエディタ統合のGUIエージェントで、差分や承認ボタンを視覚的に操作できる。一方Claude Codeはターミナル中心のCLIエージェントで、シェルやスクリプトとの統合に強い。モデル面でも、Clineが200以上から自由に選べるのに対し、Claude CodeはClaude系が中心だ。

ひとことで言うと
「GUIで差分を見ながら、自分の好きなモデルで自律コーディングしたい」ならCline。ターミナルで完結させたい・Claude系のハーネス制御を細かくしたいならClaude Code。両者は併用も普通で、用途で使い分ければよい。

下の図は、Clineが1つのタスクを受け取ってからコードに反映するまでの流れを示したものだ。Plan(探索・方針立て)とAct(編集・実行)の2段階、そして各ステップに挟まる承認の位置関係を見てほしい。

flowchart TD U["ユーザー
タスクを自然言語で指示"] --> PLAN["Planモード
コードを読む・方針を練る
ファイルは変更しない"] PLAN --> SW{"方針に納得?"} SW -->|"はい"| ACT["Actモード
ファイル編集・コマンド実行"] SW -->|"いいえ"| PLAN ACT --> APV{"変更を承認?"} APV -->|"承認"| APPLY["差分を適用
テスト実行・エラー自動修正"] APV -->|"却下"| ACT APPLY --> CP["チェックポイント保存
いつでも巻き戻し可"]

導入手順|VSCode拡張でのClineの使い方(5分で開始)

普段使っているエディタへの拡張導入が最短だ。Cline本体は無料なので、まず動かしてからモデルや料金を判断すればよい。

VSCode拡張のインストール

VSCodeなら拡張機能ビュー(Ctrl/Cmd + Shift + X)で「Cline」を検索してインストールするだけだ。拡張IDは saoudrizwan.claude-dev。コマンドラインからも入れられる。

# VSCode 拡張をCLIから導入
code --install-extension saoudrizwan.claude-dev

インストール後、アクティビティバーのClineアイコン、または「Cline: Open In New Tab」コマンドでパネルを開く。最初にAPIプロバイダの設定(認証)を求められるので、使いたいモデルのAPIキーを入力する。

APIプロバイダ・モデルの設定

Clineはモデル推論を持たないため、最初に「どのプロバイダ・どのモデルで動かすか」を設定する。Cline設定画面でプロバイダ(Anthropic / OpenAI / OpenRouter / Google / Bedrock / Ollama など)を選び、APIキーを貼り付ければ準備完了だ。OpenRouterを選べば1つのキーで200以上のモデルを横断できる。

JetBrains / CLI / SDK

VSCode以外の使い方も用意されている。普段の環境に合わせて選べばよい。

・JetBrains——IntelliJ・PyCharm・WebStorm・GoLand向けにMarketplaceからプラグインを導入
・CLI——npm i -g cline でターミナルから対話・ヘッドレス実行・CI/CD連携が可能
・SDK——npm install @cline/sdk でプログラムからエージェントを組み込み、独自ツールやフックを登録
・Kanban——npm i -g kanban でWebのタスクボードから複数エージェントを並列実行(各カードが専用worktreeを持つ)

# CLI版をグローバル導入してヘッドレス実行(CI/CDで使う例)
npm i -g cline
cline "テストを実行して失敗箇所を修正して" --output json | jq '.summary'
最初の一歩
まずVSCode拡張+OpenRouterのAPIキーで始めるのが迷いにくい。1つのキーで複数モデルを試せるので、Claude SonnetとGPT、Geminiの出力品質を同じタスクで見比べてから常用モデルを決められる。

基本操作・コマンド|Plan/ActモードとClineの使い方

Clineの基本操作は、Plan(計画)とAct(実行)の2モードを軸に回る。手元のタスクがどの段階かを意識すると、無駄なAPI消費も減る。

Planモード:方針を練る

Planモードは「ファイルを変更せずに、探索して戦略を立てる」段階だ。公式も「Plan mode lets you explore and strategize without changing files」と説明している。Clineはコードを読み、検索し、実装方針を提案する。ここで作った文脈が、次のActモードの実装精度を左右する。

Planモードが向くのは次のようなケースだ。

・実装の当たりが付いていない新機能
・原因が不明確なバグの調査
・複数ファイルに影響するアーキテクチャ判断
・複雑なワークフローを変更前に理解したいとき

Actモード:実装する

Actモードに切り替えると、Clineは「完全な計画の文脈を保ったまま」ファイルを編集し、コマンドを実行し、戦略を実行する。会話履歴はモード切り替えで引き継がれるため、文脈を入れ直す必要はない。ルーティンな変更や明確な修正はActモードから直接入ってよい。

承認・差分・チェックポイント

Actモード中、Clineはファイル編集やコマンド実行のたびに承認を求める。変更はすべて差分(diff)で表示され、レビューしてから適用できる。さらにチェックポイント機能で各ステップの状態が保存され、気に入らなければ巻き戻せる。「AIに任せつつ、最終決定は人間が握る」設計だ。

# .clinerules の例(リポジトリ直下に置く)
# このリポジトリの方針
- 言語はTypeScript、any型は禁止
- テストはVitestで書く
- コメントは日本語、変数・関数名は英語
- 外部APIキーをコードに直書きしない
- 破壊的なシェルコマンド(rm -rf 等)は実行前に必ず確認

/deep-planning コマンドを使えば、体系的なコードベース探索を伴う拡張プランニングセッションに入れる。規模の大きいリファクタや新機能の前に使うと効果が大きい。

実践Tips|Clineを使いこなす効果的な使い方

同じClineでも、文脈の渡し方と承認設計で生産性が大きく変わる。初心者がすぐ効果を感じやすいテクニックを挙げる。

・.clinerulesを最初に整える——規約・前提・禁止事項を書いておくと、毎回指示しなくても提案に反映される
・Planから入る癖をつける——複数ファイルにまたがる変更は、いきなりActせずPlanで方針を固めてから実装する
・オートアプルーブは段階的に——最初は全承認、慣れたら読み取りやテスト実行など安全な操作だけ自動承認に広げる
・モデルをタスクで使い分ける——難所はClaude Opus系、定型作業はHaiku系やGPT mini系に切り替えてコストを最適化
・MCPサーバーで文脈を広げる——DBスキーマや社内APIのデータをエージェントに読ませると、的外れな提案が減る
・チェックポイントを恐れず使う——暴走しても巻き戻せる前提で、思い切ってタスクを任せると学習が早い

特に「モデルの使い分け」はBYOKならではの強みだ。1日中Opusを回すと費用がかさむが、Clineならタスクの難度に応じてモデルを切り替えられるため、品質とコストのバランスを自分で握れる。

オートアプルーブの落とし穴
承認を全自動にすると速いが、意図しないファイル削除や危険なコマンド実行のリスクが上がる。最初は必ず承認ありで挙動を確認し、信頼できる読み取り・テスト系の操作に限って自動承認を広げる。.clinerulesに「破壊的コマンドは実行前確認」と明記しておくのも有効だ。

料金・モデル選択|自分のAPIキーで使うClineの使い方

Clineの料金体系はサブスク型ツールと根本的に違う。Cline本体は完全無料・オープンソースで、課金は「使ったモデルのAPI料金」だけだ。これがBYOK(Bring Your Own Key)方式で、コストの透明性とモデル選択の自由が最大の利点になる。

API料金の目安は、選ぶモデルと作業量の掛け算で決まる。

・Claude Sonnet系で一日コーディング——おおむね$5〜$15のAPIトークン消費
・Claude Opus系で同等の作業——$15〜$40程度に上がる
・Haiku系などの軽量モデル——タスクあたりの単価を最小化できる
・ローカルLLM(Ollama / LM Studio)——APIの従量課金なしで動かせる(手元GPUの性能に依存)

損益分岐の目安はシンプルだ。月のAPI課金が約$40未満なら、月額$20前後のサブスク型ツールよりBYOKのClineが安く収まりやすい。逆に補完やエージェントを一日中フル稼働させるパワーユーザーは、月$200〜$500のAPI請求も珍しくなく、固定料金のサブスクが有利になる場面もある。

コスト設計のコツ
「設計や難所はOpus、量産・定型はHaiku/GPT mini、機密や試行はローカルLLM」とモデルを階層化すると、品質を落とさずにAPI費用を抑えられる。OpenRouterを使えばモデル切り替えがキー1つで完結する。

Cursor / Claude Code / Aider / Codex CLI との比較で見るClineの使い方

Clineを選ぶべきかは、他のAIコーディングツールとの相対比較で見えてくる。主要ツールを並べる。

ツール 料金モデル 形態 モデル選択 強み
Cline 無料+BYOK(API実費) VSCode/JetBrains拡張・CLI・SDK 200以上から自由 OSS・任意モデル・承認/差分・MCP拡張
Cursor Free / Pro $20〜 VSCodeフォークの独立エディタ 複数モデル選択可 Tab補完の速さ、エージェント並列
Claude Code Pro $20 / Max $100・$200 ターミナルCLIエージェント Claude系中心 ハーネス制御、SWE-bench高スコア
Aider 無料+BYOK(API実費) ターミナルCLI 複数プロバイダ git統合、軽量・低コスト
Codex CLI ChatGPT課金($20〜) ターミナルCLI OpenAI系中心 ChatGPT連携、OpenAIエコシステム

選択の指針はこう整理できる。

・Clineを選ぶケース——OSSで任意モデルを使いたい、GUIで差分を見ながら承認したい、MCPで外部連携したい
・Cursorに向くケース——エディタ体験そのものを最優先し、Tab補完の速さを重視する
・Claude Codeに向くケース——ターミナルで完結させ、Claude系のハーネスを細かく制御したい
・Aiderに向くケース——軽量CLIでgit中心、APIコストを極限まで抑えたい
・Codex CLIに向くケース——既存のChatGPT課金圏内でOpenAIエコシステムに寄せたい

ClineとAiderはどちらもOSS・BYOKで近いが、ClineはGUI統合・MCP・SDK・マルチエージェントまで含む「拡張プラットフォーム」寄り、Aiderは「軽量で速いターミナルCLI」寄りという違いがある。これらは排他ではなく、補完はCursor、難所はClaude Code、OSSで自由に回したい部分はCline、と併用するのも現実的だ。

エンタープライズ用途|組織で使うClineの注意点

組織でClineを導入する場合、個人利用とは別の確認項目がある。OSS・BYOKという性質ゆえのチェックポイントがあるので、導入前に潰しておきたい。

・APIキーの管理——BYOKゆえ、誰のどのキーで動かすか、キーの配布・ローテーション・失効をどう統制するか
・データ送信先の把握——選んだプロバイダにコードが送られる。学習除外オプションやエンタープライズ契約の有無を確認
・機密コードの分離——外部に出せないコードはローカルLLM(Ollama等)バックエンドに振り分ける運用を検討
・.clinerulesの標準化——組織共通の規約・禁止コマンドをテンプレ化し、全リポジトリで承認設計を揃える
・コスト可視化——チームのAPI消費をプロバイダ側のダッシュボードで集計し、モデル選択ルールで上限を管理
・MCP接続の権限——DBや本番インフラに繋ぐMCPサーバーは、読み取り専用や最小権限から始める

OSS・BYOK特有のガバナンス
サブスク型ツールと違い、Clineは「APIキーとデータ送信先を自分たちで統制する」前提だ。まず一部チームでパイロット運用し、API費用の見込みとデータフローを実測してから本展開するのが安全。機密度の高いリポジトリはローカルLLM、一般開発はクラウドAPI、と二層構成にする組織も多い。

よくある落とし穴

初心者が踏みやすい失敗を先回りで挙げる。多くは「事前確認」で防げる。

・APIキー未設定でつまずく——Clineは本体だけでは動かない。最初にプロバイダとモデルの設定が必須だと知らずに迷う
・オートアプルーブの緩めすぎ——承認なしで連続実行を許し、意図しないファイル変更や削除を招く
・モデル固定でコスト膨張——常にOpus系を回してAPI請求が想定の数倍になる。タスクで使い分ければ防げる
・Planを飛ばして大規模変更——複数ファイルの改修をいきなりActし、文脈不足で的外れな実装になる
・.clinerules未整備——規約を渡さず、毎回プロンプトで同じ指示を繰り返してしまう
・MCPの権限過多——本番DBに書き込み権限で繋ぎ、誤操作のリスクを抱える

特にコスト面は、BYOKの自由と裏表だ。モデル選択を「難度に応じて切り替える」ルールにしておくだけで、月のAPI請求は大きく変わる。最初の数日はプロバイダ側のダッシュボードで消費量を毎日確認し、自分の使い方の相場観を掴むとよい。

まとめ:Clineの使い方を一枚で振り返る

Clineの2026年の使い方は、「任意モデル × 承認ワークフロー × 拡張性」という3本柱に集約される。

graph TB A["1. VSCode拡張を導入
本体は無料・OSS"] --> B["2. プロバイダ/モデルを設定
BYOK・OpenRouter推奨"] B --> C["3. Planで方針→Actで実装
差分を承認しながら進める"] C --> D["4. .clinerules/MCPで拡張
規約注入・外部連携"] D --> E["5. モデル使い分けでコスト最適化
他ツールと併用"]

本体は無料で気軽に、課金はAPIの従量制なのでモデル選択でコストを握る。複雑な作業はPlanから入り、承認とチェックポイントで主導権を保つ。この順序を押さえれば、初心者でもClineを安全に、コスト効率よく使いこなせる。

参考リンク