英語のドキュメントや論文、海外の技術記事を読むとき、こんな面倒を感じたことはないでしょうか。ページ全体を翻訳すると原文が消えて、訳が正しいか確かめられない。ブラウザ標準の翻訳はエンジンが固定で、専門用語では精度が物足りない。かといって、DeepLやChatGPTにいちいちコピペするのは手間——。KISS Translator(キス・トランスレーター)は、この不便をまとめて解消する、Webページを原文と並べて「対訳表示」できる、多エンジン対応のシンプルなオープンソース翻訳拡張です。名前の「KISS」は”Keep It Simple, Stupid”(シンプルにいこう)から。作者はfishjar、ライセンスはGPL-3.0で、GitHubで約11,200スター(2026年7月時点)を集めています。

この記事を読むと、①KISS Translatorで結局何ができるのか(Webを対訳表示し、選択・入力・字幕も翻訳、多数のエンジンを使い分ける)、②どんな課題を解決するのか(英語Webの壁と、単一翻訳エンジンの精度限界)、③何を代替できるのか(ページ全体を訳すGoogle翻訳、DeepL拡張、有料翻訳ツール)が分かります。翻訳エンジンにLLMを使う仕組みの背景を知りたい方は、LLM完全ガイド2026も、翻訳精度がなぜモデルで変わるのかの理解に役立ちます。

KISS Translator:Webページを原文と並べて対訳表示できる、Google・DeepL・OpenAI・Claude・Ollama・内蔵AIなど多エンジン対応のオープンソース翻訳拡張
KISS Translatorは、Webを丸ごと対訳にし、翻訳エンジンを自由に使い分けられるシンプルな拡張。
この記事のポイント
  • ・KISS Translatorは、Webを原文と並べて対訳表示するシンプルなOSS翻訳拡張(GPL-3.0・約11,200★)。
  • ・Google・DeepL・OpenAI・Claude・Gemini・Ollama・ブラウザ内蔵AIなど多数のエンジンを選べる。
  • ・ページ対訳のほか、選択翻訳(辞書・単語保存)・入力欄翻訳・YouTube字幕翻訳・ホバー翻訳に対応。
  • ・ブラウザ拡張(Chrome/Edge/Firefox/Safari)とユーザースクリプト(Tampermonkey)の両対応。モバイルも可。
  • ・無料エンジンから自前APIキーのLLM翻訳、ローカルOllamaまで、精度・コスト・プライバシーを自分で選べる。

1. KISS Translatorとは:Webを丸ごと対訳にするシンプルなOSS翻訳拡張

KISS Translatorの全体像:ページ対訳(原文を残したまま並べて表示)、多エンジン(Google/DeepL/OpenAI/Claude/Ollama/内蔵AI)、拡張+ユーザースクリプトで主要ブラウザとモバイルに対応
KISS Translatorの全体像。対訳表示・多エンジン・幅広い対応環境の3点が柱。

KISS Translatorは、公式の説明で「シンプルなオープンソースの対訳翻訳拡張&Greasemonkeyスクリプト」です。最大の特徴は、対訳表示(バイリンガル表示)。ページ全体を訳して原文を置き換えるのではなく、原文の下(または隣)に訳文を挿入して、両方を並べて読めるようにします。しかも原文の書式やリンクを保つため、レイアウトが崩れません。

対訳表示が効くのは、「訳が正しいか、原文と照らして確認できる」からです。全訳だけだと誤訳に気づけませんが、対訳なら原文と見比べて、怪しい箇所を自分で判断できます。英語学習にも、専門文書の精読にも向いた表示方式です。

特に技術文書や論文では、この「原文を残す」ことの価値が際立ちます。翻訳エンジンは専門用語や固有名詞、コードを含む文で誤訳しやすく、全訳だけを信じると意味を取り違える危険があります。対訳なら、「訳がおかしい」と感じた箇所ですぐに原文を確認でき、必要なら原文の方を正として読めます。翻訳を「答え」ではなく「補助線」として使う——この姿勢を自然に取れるのが、対訳表示の大きな利点です。また、英語学習の観点では、原文と訳が並んでいることで「この英語表現はこう訳すのか」という気づきが得られ、読みながら語彙や言い回しを吸収できます。

KISS Translatorが立っている場所を整理すると、次の3つを1つに束ねた点が魅力です。

対訳表示:原文を残したまま訳を並べ、書式も保つ
多エンジン:無料翻訳からLLM、ローカルAIまで、翻訳エンジンを自由に選べる
幅広い対応:主要ブラウザの拡張+ユーザースクリプト、さらにモバイルまで

「原文と訳を並べて読み、翻訳エンジンは自分で選ぶ」——このシンプルだが実用的な設計が、KISS Translatorが長く支持される理由です。

ひとことで
  • ・KISS Translator=Webを対訳表示し、翻訳エンジンを自由に選べるシンプルな拡張。
  • ・全訳でなく対訳だから、原文と照らして誤訳に気づける。学習・精読に強い。

2. なぜ必要か:英語Webの壁と単一エンジンの限界を、多エンジン対訳で解く

従来の翻訳の課題(ページ全体が原文で読めない・単一エンジンで精度頭打ち・字幕や入力欄は訳せない・APIキーを選べない)を、KISS Translator(対訳・多エンジン・字幕/入力/選択も翻訳・自前キーでLLM)で解決する対比図
KISS Translatorが解決するのは「英語Webが読みづらい」「翻訳エンジンを選べない」という不便。

KISS Translatorが解決するのは、Webの情報を母語以外で読むときの、2つの根深い不便です。

1つ目は英語Web(や他言語)の壁。良質な情報ほど英語で書かれていることが多く、原文のままだと読む速度が落ちます。かといって全訳すると原文が消え、ニュアンスや正確さを確かめられません。2つ目は単一エンジンの限界。ブラウザ標準やGoogle翻訳はエンジンが固定で、専門用語や文脈では精度が頭打ちになります。「この分野はDeepLが強い」「ここはLLMに文脈ごと訳させたい」という使い分けができません。

KISS Translatorは、これらを「対訳表示」と「多エンジンの使い分け」で解決します。従来の課題と、KISS Translatorによる解決を対応させると、こうなります。

従来の翻訳の課題 KISS Translatorでの解決
ページ全体が原文で読みづらい 対訳表示で原文と訳を並べて読める
単一エンジンで精度が頭打ち 多数のエンジンを状況で使い分け
字幕・入力欄・選択は訳せない YouTube字幕・入力欄・選択翻訳に対応
翻訳エンジンを選べない 無料〜LLM〜ローカルAIまで自分で選択
誤解しないでほしい点
  • ・翻訳精度は選んだエンジン次第。KISS Translatorは「エンジンを選べる箱」であり、翻訳そのものは各エンジンが担う。
  • ・クラウド翻訳を使うと、翻訳対象のテキストが外部サービスに送られる点は理解しておく。

この必要性が効いてくるのは、海外の情報を日常的に、かつ正確に読む人ほどです。たまに軽く読むだけなら全訳で十分ですが、技術文書・論文・海外ニュース・字幕を精読するなら、対訳表示とエンジンの使い分けが読解の質を大きく変えます。特に近年は、LLMによる文脈を踏まえた翻訳が精度で頭一つ抜けており、それを自分のAPIキーで使えるKISS Translatorの価値が高まっています。

エンジニアにとっては、この価値がさらに具体的です。最新の技術情報は、公式ドキュメント・GitHubのREADME・海外の技術ブログ・カンファレンス動画など、その多くが英語で発信されます。日本語の解説を待っていては、情報が半年古くなることも珍しくありません。KISS Translatorのようなツールで英語の一次情報を対訳でスラスラ読めるようになると、情報の鮮度という点で大きなアドバンテージになります。しかも、コードやコマンドを含む技術文書では、下手な全訳がコード部分まで壊してしまうことがありますが、対訳なら原文のコードをそのまま参照できます。「英語が読めないから一次情報を諦める」という壁を、実用的な精度で下げてくれるのが、この種のツールの本質的な価値です。

3. 主な機能:ページ対訳・選択/入力/字幕翻訳・訳のみ表示

KISS Translatorの主な機能:ページ対訳(書式・リンク保持)、選択翻訳+辞書+単語保存、入力欄翻訳(ショートカット)、YouTube字幕翻訳、ホバー翻訳、訳のみ表示モード
KISS Translatorの主な機能。読む・選ぶ・打つ・観る、あらゆる翻訳シーンをカバー。

KISS Translatorの機能は、「Webでテキストに触れるあらゆる場面」をカバーしています。主なものを見ていきましょう。

ページ対訳:ページ全体を、原文を残したまま対訳表示します。書式やリンクを保つため、読みやすさが損なわれません。

選択翻訳+辞書:テキストを選択すると翻訳し、辞書引きや単語の保存(単語帳)もできます。英語学習に便利です。読みながら知らない単語に出会ったらその場で選択して意味を確認し、覚えたい語は単語帳に保存——という学習の流れが、ページを離れずに完結します。翻訳ツールでありながら、語学学習ツールとしても機能する二面性が、この選択翻訳の特徴です。

入力欄翻訳:入力ボックスに書いた文章を、ショートカットキーで翻訳できます。海外サービスへの投稿や問い合わせに役立ちます。

YouTube字幕翻訳:YouTubeの字幕を翻訳し、スタイル(見た目)も調整できます。動画学習の強い味方です。

ホバー翻訳:マウスを乗せた箇所をその場で翻訳。さっと意味を確認したいときに。ページ全体を対訳にするほどではないが、特定の一文だけ意味を知りたい——というときに軽快です。読みの速度を落とさずに、引っかかった箇所だけをピンポイントで解消できます。

訳のみ表示モード:対訳ではなく、原文を隠して訳文だけを表示するモードもあります。原文が不要な場面で使えます。

これらの機能が1つの拡張にまとまっている価値は、使ってみると実感できます。多くの人は、ページ翻訳はブラウザ標準、選択翻訳は別の拡張、字幕翻訳はまた別のツール……と、シーンごとにバラバラのツールを使い分けているのではないでしょうか。KISS Translatorは、それらを1つの拡張・1つの設定・1つの翻訳エンジン選択に統合します。しかも、選んだ翻訳エンジンの設定は全機能で共有されるため、「ページも字幕も入力欄も、同じ高精度なLLM翻訳で」といった一貫した体験を作れます。ツールを増やさずに翻訳シーンを網羅できることは、日常的にWebで海外情報に触れる人にとって、地味だが確実な効率化になります。

設計思想が効くところ
  • ・「読む(ページ/ホバー)」「選ぶ(選択+辞書)」「打つ(入力欄)」「観る(字幕)」を一通りカバー。
  • ・対訳と訳のみを切り替えられ、精読にも流し読みにも対応する。
  • ・全機能で翻訳エンジン設定を共有。1つのツールで翻訳シーンを網羅できる。

4. 対応翻訳エンジン:Google・DeepL・OpenAI・Claude・Ollama・内蔵AI

KISS Translator最大の強みが、対応する翻訳エンジンの豊富さです。無料の機械翻訳から、文脈を読むLLM翻訳、ローカルで完結するAIまで、目的に応じて選べます。翻訳の流れを図にすると次のようになります。

flowchart LR Web["Webページ / 選択 / 字幕 / 入力"] --> KT["KISS Translator"] KT --> Sel{"翻訳エンジンを選択"} Sel -->|"無料・手軽"| Free["Google / Microsoft / 内蔵AI"] Sel -->|"高精度・専門"| Pro["DeepL / DeepLX"] Sel -->|"文脈を読むLLM"| LLM["OpenAI / Claude / Gemini / DeepSeek"] Sel -->|"ローカル完結"| Local["Ollama(自前)"] Free --> Out["対訳で表示"] Pro --> Out LLM --> Out Local --> Out

対応エンジンを整理すると次のとおりです。用途に応じて、精度・コスト・プライバシーのバランスを自分で決められます。

系統 エンジン(例) 特徴
無料・機械翻訳 Google / Microsoft / Tencent / Volcengine 追加料金なしで手軽
高精度・専門 DeepL / DeepLX 自然な訳文に定評
LLM翻訳 OpenAI / Claude / Gemini / DeepSeek / OpenRouter 文脈を踏まえた翻訳(自前APIキー)
クラウドAI Azure AI / Cloudflare AI 各社のAI翻訳
ローカル完結 Ollama / Chrome内蔵AI(BuiltinAI) テキストを外に出さない

「この分野はDeepL、ニュアンス重視はClaude、機微な内容はローカルのOllama」——このように、1つのツールの中でエンジンを使い分けられるのがKISS Translatorの真骨頂です。特にローカルのOllamaやブラウザ内蔵AIを選べば、翻訳対象のテキストを一切外部に送らずに済むため、プライバシーが重要な場面でも使えます。ローカルLLMを翻訳に使う構成はローカルLLMツールガイド2026も参考になります。

なぜこれだけエンジンの選択肢が重要なのか。それは、翻訳エンジンによって得意分野がまったく違うからです。GoogleやMicrosoftの機械翻訳は速くて無料ですが、専門的な文脈では直訳的になりがちです。DeepLは自然な訳文で定評があり、ビジネス文書や一般的な文章に強い。そしてOpenAIやClaudeのようなLLMは、文脈全体を読んで訳すため、専門用語の扱いや意訳のさじ加減が優れています。たとえば技術記事のように「前後関係で意味が変わる用語」が多い文章では、LLM翻訳が一段上の精度を出すことがあります。KISS Translatorは、こうした「エンジンごとの得手不得手」を、ユーザーが状況に応じて選び分けられるようにした点で、単なる翻訳ツールを超えた柔軟性を持っています。

さらに、LLM翻訳を自分のAPIキーで使えることには、精度以外の意味もあります。それは「翻訳の指示(プロンプト)を自分で調整できる」可能性です。LLMは「この分野の専門家として訳して」「口語的に訳して」といった指示に応じられるため、単なる直訳を超えた、目的に合った翻訳を引き出せます。無料の固定エンジンでは得られない、この「訳し方を調整できる」自由度が、LLM翻訳を選ぶ大きな動機になります。

エンジン選びの注意
  • ・クラウド翻訳(Google/DeepL/OpenAI等)は、翻訳テキストが各サービスに送られる。機微な内容は避けるかローカルAIを使う。
  • ・LLM翻訳(OpenAI/Claude等)は自前APIキーで料金が発生する。無料志向ならGoogle/内蔵AI/Ollama。

5. 導入:拡張 or ユーザースクリプト(各ブラウザ・モバイル)

KISS Translatorの導入フロー:方式を選ぶ(拡張 or Tampermonkeyユーザースクリプト)→インストール(Chrome/Edge/Firefox/Safari)→翻訳エンジンを設定(無料 or 自前APIキー)→ページで翻訳
導入は拡張かユーザースクリプトを選ぶだけ。エンジンを設定すればすぐ対訳できる。

KISS Translatorの導入方法は、大きく2通りです。

① ブラウザ拡張:Chrome・Edge・Firefox・Safari・Thunderbirdに対応します。各ブラウザの拡張ストア、または公式リリースから入れます。手軽さ重視ならこちらです。

② ユーザースクリプト:Tampermonkeyやviolentmonkeyといったユーザースクリプトマネージャを入れたChrome・Edge・Firefoxで使えます。拡張が使えない環境や、スクリプトで管理したい人向けです。ユーザースクリプト版の利点は、ブラウザの拡張ストアの審査やポリシーに縛られず、常に最新版を素早く適用できることです。また、すでにTampermonkeyで他のスクリプトを管理している人にとっては、翻訳機能も同じ仕組みに統合できて管理が楽になります。一方、手軽さを重視するなら拡張版が向いています。どちらを選んでも機能は基本的に同じなので、自分の環境と好みに合わせて選べばよいでしょう。この「拡張でもスクリプトでも使える」二本立ては、幅広い環境のユーザーを取りこぼさないための配慮です。

さらに、モバイルでも動きます。Kiwi(Android)、Orion(iOS)、iOS Safariに対応します。設定は同期できるので、複数の環境で同じ設定を揃えられます。スマホで海外ニュースや技術記事を読むことが多い人にとって、PCとモバイルで同じ翻訳エンジン・同じ設定を使えるのは地味に嬉しいポイントです。通勤中にスマホで対訳を流し読みし、気になった記事はPCでじっくり——といった、デバイスをまたいだ一貫した読書体験を作れます。ブラウザ拡張の多くがPC専用にとどまる中で、モバイルまで視野に入れている点は、KISS Translatorの「使う場所を選ばない」思想をよく表しています。導入の流れをまとめると、こうなります。

・導入方式を選ぶ(拡張 or ユーザースクリプト)
・使うブラウザにインストールする
翻訳エンジンを設定する(無料エンジン or 自前APIキーのLLM/DeepL/Ollama等)
・Webページを開き、対訳翻訳をオンにする(字幕・選択・入力欄も設定可)

「拡張かユーザースクリプトを入れて、エンジンを設定するだけ」で、Webが対訳になります。最新版はv2.0.28(2026年6月)。JavaScript製で、設定同期にも対応しているため、PCとモバイルで一貫した翻訳環境を作れます。

6. 導入判断:向いている人・注意点

KISS Translatorの導入判断:英語Web/論文/字幕を読む人・LLM翻訳を自前キーで使いたい人に刺さる一方、GPL-3.0やAPIキー管理という注意点
導入判断の観点。緑は価値が出る条件、⚠️はエンジン選択・キー管理の注意点。

最後に、導入すべきかの判断材料を整理します。

KISS Translatorが向いている人

英語のWeb・論文・技術文書を日常的に、正確に読みたい
YouTube字幕や海外動画で学習したい
・翻訳エンジンを使い分けたい(DeepLの自然さ、LLMの文脈理解など)
LLM翻訳を自前APIキーで使い、精度とプライバシーを両立したい
ローカルAI(Ollama/内蔵AI)でテキストを外に出さず翻訳したい

慎重に判断すべきケース

・とにかくワンクリックの全訳だけで十分(対訳の設定が過剰に感じる場合)
GPL-3.0を組み込めない形での再配布を計画している
・APIキーの管理が負担(無料エンジンなら不要だが、LLM翻訳にはキーが要る)

いくつか具体的な注意点も押さえましょう。まず翻訳精度はエンジン次第であること。KISS Translatorは「エンジンを選べる器」であり、訳の良し悪しは選んだサービスに依存します。用途に合うエンジンを見つけるのがコツです。次にプライバシー。クラウド翻訳を使うと、翻訳対象のテキストがそのサービスに送られます。機微な内容なら、ローカルのOllamaやブラウザ内蔵AIを選ぶのが安全です。そしてAPIキーの管理。LLM翻訳やDeepLを自前キーで使う場合、キーの漏洩に注意し、必要なら利用上限を設定してください。

はじめて使う人へのおすすめの進め方も添えておきます。まずは設定不要で使える無料エンジン(GoogleやMicrosoft、あるいはChrome内蔵AI)で対訳表示を体験し、この「原文と訳を並べて読む」スタイルが自分に合うかを確かめます。合うと感じたら、次に精度を上げたい場面でLLM翻訳(OpenAIやClaude)を自前キーで追加します。専門文書や機微な内容が多いなら、ローカルのOllamaを設定してプライバシーと精度を両立させる——というように、段階的に自分の使い方を育てていくのが失敗しないコツです。いきなり全部のエンジンを設定する必要はなく、無料の対訳から始めて、不満が出たところだけ強いエンジンに差し替えていけば十分です。オープンソースなので、使い込むほど自分好みの翻訳環境に育てられます。

導入前チェック
  • ・翻訳精度は選んだエンジン次第。用途(専門/口語/学習)に合うエンジンを選ぶ。
  • ・機微な内容はクラウド翻訳を避け、ローカルAI(Ollama/内蔵AI)を使う。
  • ・LLM/DeepLの自前キーは漏洩に注意。利用上限の設定も検討する。GPL-3.0。

まとめ

KISS Translatorは、「Webを対訳で読み、翻訳エンジンは自分で選ぶ」というシンプルな思想を、多機能かつ多環境で実現したオープンソースの翻訳拡張です。ページ・選択・入力・字幕とあらゆる翻訳シーンをカバーし、無料エンジンからLLM、ローカルAIまで自由に使い分けられる——「英語Webが読みづらい」「翻訳を選べない」という長年の不便に、素直に応えてくれます。特に、LLM翻訳という新しい選択肢が加わったことで、機械翻訳の直訳的な硬さから解放され、文脈を踏まえた自然な対訳で海外の情報を読めるようになりました。KISS Translatorは、その進化する翻訳AIの恩恵を、Webのあらゆる場面で受け取るための、シンプルで確かな入口です。

結論
  • ・KISS Translatorは、Webを対訳表示するシンプルなOSS翻訳拡張(GPL-3.0・約11,200★)。
  • ・Google・DeepL・OpenAI・Claude・Gemini・Ollama・内蔵AIなど多数のエンジンを使い分けられる。
  • ・ページ対訳のほか、選択・入力欄・YouTube字幕・ホバー翻訳、訳のみ表示に対応。
  • ・拡張とユーザースクリプトの両対応、モバイルも可。設定同期あり。
  • ・精度はエンジン次第。機微な内容はローカルAIを、LLM翻訳はキー管理に注意して使う。

最後に、KISS Translatorの立ち位置を一言で。これは「翻訳AIそのもの」ではなく、「あらゆる翻訳エンジンを、Webのあらゆる場面で使えるようにする器」です。翻訳AIの進化は目覚ましく、今後も新しいエンジンやモデルが登場するでしょう。そのとき、エンジンに縛られた専用ツールは古びていきますが、KISS Translatorのように「エンジンを差し替えられる器」は、新しい翻訳AIが出るたびにそれを取り込んで進化し続けられます。この「特定のエンジンに依存しない」設計こそが、オープンソースの翻訳拡張が長く使われる理由であり、KISS Translatorが約11,200スターを集める背景でもあります。翻訳の未来がどう変わっても、対応する器を1つ持っておく——その安心感が、このツールの隠れた価値です。

「英語のWebや論文を、原文と照らしながらサクサク読みたい」なら、KISS Translatorを入れて、まずは無料エンジンで対訳をオンにしてみてください。精度を上げたくなったら、自前APIキーでLLM翻訳を試すのが次の一手です。翻訳精度がなぜモデルで変わるのかはLLM完全ガイド2026を、ローカルAIでの翻訳はローカルLLMツールガイド2026を、それぞれ合わせて読むと理解が深まります。

参照ソース

fishjar/kiss-translator (GitHub) — 公式リポジトリ。機能・対応エンジン・対応ブラウザ・導入方法の一次ソース(GPL-3.0)。
KISS Translator リリース(v2.0.28ほか) — 最新版と変更点を追える一次ソース。