システム設計の定番GitHubリポジトリを並べた一覧は定期的に回ってくる。だがstarの多い順に並べた一覧は、そのリポジトリが今も使えるかを何も語らない。本記事では、よく挙がる10本を2026年9月21日に同じ手順でgit cloneし、最終コミット日・LICENSEファイルの実体・READMEの構造・リンク先のドメインを数えた。結果は分かれた。1本は取得できず、2本は更新が止まり、3本は社内資料に転載できないライセンスだった。

システム設計リポジトリ10本をcloneして実測した判定。10番目のAgentic Design PatternsはGitHubが451を返し取得不可、system-design-interviewとmachine-learning-systems-designは更新停止、system-design-101など3本はCC BY-NC-NDで社内利用不可、system-design-primerとawesome-scalabilityほかは現役
10本を同じ手順で測った判定。星の数ではなく「動いているか」「使ってよいか」で分けた。
30秒でわかる実測結果(2026年9月21日時点)
  • 1本は消えていた:10番目のAgentic Design Patternsは取得不可。GitHubが451を返し、匿名cloneは認証を要求。公開リポジトリ2本を陽性対照にして確認した。
  • 2本は更新が止まっている:system-design-interviewが2,099日前、machine-learning-systems-designが1,552日前。後者は著者自身がREADMEで書籍への移行を明記している。
  • 3本は社内資料に使えない:CC BY-NC-ND 4.0は非営利かつ改変不可。star 8.9万のsystem-design-101もここに入る。
  • 「リンク集」の中身は大きく違う:リンク先のユニークドメインは awesome-scalability が249、system-design-101 が6(419本が自社サイト)。
  • 日本語で読めるのは1本:system-design-primerは18言語を案内しているが、リポジトリ内に実体があるのは日本語・簡体字・繁体字の3つ。

検証環境と測り方:Linux x86_64/2026年9月21日(TZ=Asia/Tokyo date で実測)。各リポジトリを git clone --depth 1 し、最終コミット日は git log -1、ライセンスは LICENSE ファイルの本文、リンク数とドメインは README を grep で集計した。star と fork は api.github.com が検証環境から遮断されているためリポジトリページを読んで取得した。未検証:各リポジトリの本文の技術的な正確さ、リンク先1本ずつの生死、10番目の削除通知の現物。

同じ題材の単体解説として、2015年から続く別のリポジトリを扱ったsystem-design-and-architecture徹底解説:世界的に読まれるシステム設計の学習リポジトリがある。そちらが1本を深く読む記事なのに対し、本記事は10本を同じ物差しで測って選別する記事として書いた。

実測サマリ——starの順番と「今使えるか」は一致しない

まず全体像を1枚の表にする。starとforkはGitHubのリポジトリページを2026年9月21日に読んだ値、最終コミットはgit clone --depth 1で取得した既定ブランチの最新コミット日、ライセンスはバッジやREADMEの記載ではなくLICENSEファイルの中身を読んだ結果である。

# リポジトリ star 最終コミット 経過 ライセンス 判定
1 donnemartin/system-design-primer 371k 2026-03-19 186日 CC BY 4.0 現役
2 ByteByteGoHq/system-design-101 89.5k 2025-04-04 535日 CC BY-NC-ND 4.0 要注意
3 karanpratapsingh/system-design 46.2k 2026-07-07 76日 CC BY-NC-ND 4.0 要注意
4 ashishps1/awesome-system-design-resources 41.6k 2026-02-17 216日 GPL-3.0 現役
5 binhnguyennus/awesome-scalability 74.1k 2026-01-04 260日 MIT 現役
6 madd86/awesome-system-design 12.5k 2026-02-27 206日 CC0 1.0 現役
7 checkcheckzz/system-design-interview 23.7k 2020-12-22 2,099日 表記なし 停止
8 chiphuyen/machine-learning-systems-design 10.6k 2022-06-22 1,552日 表記なし 停止
9 systemdesign42/system-design-academy 28.9k 2026-09-20 1日 CC BY-NC-ND 4.0 要注意
10 sarwarbeing-ai/Agentic_Design_Patterns 取得不可 消滅

この表から読めることが3つある。

starと鮮度に相関がない。star 2.3万のsystem-design-interviewは5年9か月止まっている一方、star 1.2万のawesome-system-designは206日前に更新されている。順位で並べた一覧は、この差を隠してしまう
上位2本のライセンスが最も厳しい。star 8.9万のsystem-design-101はCC BY-NC-ND 4.0で、社内研修用に切り貼りすると条件に反する。皮肉なことに、最も引用したくなる図解ほど引用しにくい
ライセンス表記が無い本が2本ある。表記が無いことは「自由に使える」ではなく「著作権は全部著者に残る」を意味する。読む以外の用途には許諾が要る

10本をcloneして数えた結果。cloneできたのは9本、最も更新が止まっている本は2099日前、system-design-101は419本すべてのリンクが自社サイトへ、日本語版が実在するのは1本
実測の要点。すべて2026年9月21日に同じ手順で測った値で、READMEの公称値は使っていない。

動いていない3本——1本は消滅、2本は更新停止

一覧の10番目に挙がっていた sarwarbeing-ai/Agentic_Design_Patterns は、実測時点で取得できなかった。ただしWeb検索の結果には依然として存在するものとして出てくる。一次ソースが食い違ったので、条件を変えて切り分けた。

確認方法 対象リポジトリ 公開リポジトリ(陽性対照)
ブラウザでリポジトリページ HTTP 451 Unavailable For Legal Reasons 200
匿名 git clone --depth 1 認証を要求could not read Username 成功
raw.githubusercontent.com のREADME 404 200(2本とも)
Web検索のインデックス 存在するものとして表示

陽性対照には、同じ一覧の6番目 madd86/awesome-system-design と1番目 donnemartin/system-design-primer を使った。同じ環境・同じ手順で公開リポジトリは200を返し、対象だけが落ちるので、これは検証環境のプロキシや認証の問題ではない。検索インデックスに残っているのはクロール時のキャッシュだと考えるのが自然だ。

HTTP 451はGitHubが法的理由でコンテンツを公開停止したときに返すコードである。このリポジトリはAntonio Gulliの書籍『Agentic Design Patterns』のPDFを同梱していたことが検索結果のファイル一覧から分かるので、権利者からの申し立てを受けた可能性が高い。ただし当記事では削除通知の現物を確認できていないため、理由の断定は避ける。確実に言えるのは「2026年9月21日時点で一般公開されていない」ことだけだ。なおこの書籍の内容そのものはAIエージェント設計パターン入門|プロンプトチェーンからマルチエージェントまで21の型を体系理解するで扱っている。

残る2本は、消えてはいないが動いていない。

checkcheckzz/system-design-interview の最終コミットは2020年12月22日で、実測日まで2,099日が経つ。READMEはリンク集が中心で、外部リンクは140本ある。5年半前のリンク集がそのまま生きている確率は高くない。面接対策の枠組み(制約の明確化→概要設計→コンポーネント設計)自体は古びないが、参照先を1本ずつ確認する前提で開くべきだ。

chiphuyen/machine-learning-systems-design は、READMEの冒頭で著者自身がこう書いている。

This booklet was my initial attempt to write about machine learning systems design back in 2019. My understanding of the topic has gone through significant iterations since then. My book Designing Machine Learning Systems (O’Reilly, June 2022) is much more comprehensive and up-to-date.

(この小冊子は2019年に機械学習システム設計について書こうとした最初の試みで、その後、著者の理解は大きく変わった。2022年6月のO’Reilly刊の書籍のほうがはるかに包括的で最新である、という趣旨)

最終コミットは2022年6月22日。つまりこのリポジトリは著者公認で役目を終えている。それでもstarは1.06万あり、一覧に載り続ける。star数が過去の評価の累積でしかないことが、この1本によく表れている。

ライセンスで割れる——社内資料に転載できるのは4本だけ

学習リソースを見つけたとき、多くの人は社内Wikiや研修資料に要約を貼る。そこで効いてくるのがライセンスだが、一覧記事はまず触れない。9本のLICENSEファイルを開いて読んだ結果は、きれいに2つに割れた。

ライセンスによる分類。転載・改変できない5本はCC BY-NC-NDの3本とライセンス表記なしの2本。条件つきで再利用できる4本はCC BY 4.0、MIT、CC0 1.0、GPL-3.0
LICENSEファイルの本文を読んで分類した。バッジやREADMEの記載では追加条件を見落とす。

再利用できる4本はこうなっている。system-design-primerはCC BY 4.0で、出典を表示すれば商用利用も改変もできる。awesome-scalabilityはMIT(Copyright (c) 2019 Nguyễn Quốc Bình)。awesome-system-designはCC0 1.0で、著作権を放棄している。awesome-system-design-resourcesはGPL-3.0だが、これはドキュメントに適用されたGPLなので、派生物を配布する際の扱いは法務に確認したほうがよい。

使えない5本のうち3本はCC BY-NC-ND 4.0である。karanpratapsinghのLICENSEはAttribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 Internationalと明記されている。NC(非営利)とND(改変不可)が両方つくため、営利企業の社内資料に要約して載せる行為は2つとも踏む。読んで学ぶのは自由だが、加工して配るのは別の話になる。

残る2本(system-design-interview、machine-learning-systems-design)にはLICENSEファイルそのものが無い。GitHubに公開されていることと、再利用が許諾されていることは別である。表記が無ければ既定で全ての権利が著者に留保される。

「GitHubにあるから自由に使える」は成り立たない
ライセンスは静かに変わる。判定は必ず LICENSE ファイルの本文で行い、READMEのバッジやまとめ記事の記載を根拠にしないこと。当記事の判定も2026年9月21日時点のものなので、業務で使う前に各自で開き直してほしい。

自分で確かめる手順は短い。実際に本記事で走らせたコマンドをそのまま載せる。

# 鮮度とライセンスを同時に測る。最終コミット日とLICENSEの1行目が出る
git clone --depth 1 https://github.com/donnemartin/system-design-primer.git sd
cd sd && git log -1 --format='最終コミット: %cs' && head -8 LICENSE.txt

「リンク集」の中身を数える——キュレーションか、自社サイトへの目次か

10本のうち4本は自称リンク集だが、中身は同じではない。READMEに含まれるhttpsリンクをドメイン単位で集計すると、性格がはっきり分かれた。

リンク集4本のリンク先ユニークドメイン数の棒グラフ。awesome-scalabilityが249、awesome-system-design-resourcesが30、system-design-101が6、system-design-academyが5
ユニークドメイン数。小さいほど「外部の知見を集めた場所」ではなく「自社サイトへの目次」に近い。

binhnguyennus/awesome-scalability は249ドメインに散っている。内訳の上位はmedium.com(204本)、eng.uber.com(33本)、engineering.linkedin.com(31本)で、実在する企業のエンジニアリングブログを広く拾っている。READMEは976行中922行がリンク行(94%)だが、これは「リンク集として正しい姿」だ。本文で解説する代わりに、一次情報へ案内することに徹している。

対して ByteByteGoHq/system-design-101 のユニークドメインは6しかない。452行中419行がリンク行で、その419本すべてがbytebytego.comに向かう。さらにREADME内の画像埋め込み(![...])は0個だった。<img>タグは3つあるが、中身はバナー画像・バッジ・クリエイティブ・コモンズのアイコンである。つまり「複雑なシステムを図解で説明する」と掲げながら、リポジトリの中に解説図は1枚も入っていない。実体は自社サイトの目次であり、star 8.9万はその目次についた数字ということになる。

systemdesign42/system-design-academy も5ドメインで、newsletter.systemdesign.one(182本)とsystemdesign.one(19本)で201本を占める。こちらは説明文が「ニュースレターに登録しよう」と明示しているぶん、誘導であることを隠していない。更新は活発で、実測日の前日(2026-09-20)のコミットはInclude Claude Code - Part 3だった。

ashishps1/awesome-system-design-resources は30ドメインで、youtube.com(44本)に加えてalgomaster.io系が65本と、外部と自社がおよそ半々である。

この差は優劣ではなく用途の違いとして捉えるのが正しい。一次情報を広く漁りたいならawesome-scalability、体系立てて読み進めたいなら自前の本文を持つリポジトリ、というふうに分かれる。本文の厚みも数えておいた。

リポジトリ README総行数 リンク行 リンク率 性格
karanpratapsingh/system-design 5,698 393 6% 自前の教科書
donnemartin/system-design-primer 1,839 283 15% 自前の教科書+演習
madd86/awesome-system-design 347 121 34% 記事・書籍・動画の混成
systemdesign42/system-design-academy 510 196 38% 事例索引+自社誘導
checkcheckzz/system-design-interview 278 139 50% 面接手順+リンク
ashishps1/awesome-system-design-resources 193 142 73% リンク集
ByteByteGoHq/system-design-101 452 419 92% 自社サイトの目次
binhnguyennus/awesome-scalability 976 922 94% 外部キュレーション

リンク率が低いほど「読み物」、高いほど「索引」である。karanpratapsinghの5,698行・見出し611個は10本で最大で、OSI参照モデルから始めてUberやNetflixの設計まで一本道で進む構成になっている。ライセンスさえ許せば最有力だが、前述のとおりCC BY-NC-NDなので配布や加工はできない。

日本語で読めるのは1本、AIを扱うのは3本

日本語話者にとって重要な差が1つある。リポジトリ内に日本語版の実体があるのはsystem-design-primerだけだった。README-ja.mdは137,561バイトあり、冒頭は「# システム設計入門」で始まる。最終更新は英語版と同じ2026年3月19日で、翻訳が取り残されていない。

ただしここにも公称と実体の差がある。READMEの1行目は英語・日本語・簡体字・繁体字・アラビア語・ベンガル語・ポルトガル語・ドイツ語など18言語を並べているが、リンク先を追うと、リポジトリ内にファイルがあるのはREADME-ja.mdREADME-zh-Hans.mdREADME-zh-TW.md3つだけである。残り15言語の行き先はGitHubのIssue、つまり翻訳の募集スレッドだった。「18言語対応」と読める見た目だが、実際に読めるのは3言語しかない。日本語がその3つに入っているのは幸運な部類だ。

AIの扱いについても、期待される分だけ正直に書いておく。10本のうちAIやMLに触れているのは3本である。

systemdesign42/system-design-academy## AI Engineeringという独立セクションを持ち、AIエージェントやエージェント間プロトコルを扱う。更新も最も新しい
ByteByteGoHq/system-design-101AI and Machine LearningWhat is an AI Agent?といった項目があるが、いずれもリンク先は自社サイトで、リポジトリ内に解説は無い
chiphuyen/machine-learning-systems-design:MLシステム設計の専門だが、前述のとおり著者が書籍に引き継いでいる

残る6本(system-design-primer、karanpratapsingh、awesome-system-design-resources、awesome-scalability、awesome-system-design、system-design-interview)にAI固有の切り口は無い。awesome-scalabilityにはIntelligenceというセクションがあるが、これは大規模データ処理や機械学習基盤を実務のスケーリング文脈で扱うもので、生成AIやLLMの設計を解説するものではない。AIエージェントの設計を学ぶ目的でこの一覧を開くと、ほとんど空振りする。

用途別にどれを選ぶか

ここまでの実測を選択の手順に落とす。判断軸は「日本語が要るか」「社内で配るか」「読み物が欲しいか索引が欲しいか」の3つになる。

flowchart TD A["システム設計を学びたい"] --> B{"日本語で
通読したい?"} B -->|はい| C["system-design-primer
README-ja.md(CC BY 4.0)"] B -->|いいえ| D{"社内資料に
転載・加工する?"} D -->|する| E["CC BY・MIT・CC0 の4本から選ぶ
primer/awesome-scalability/awesome-system-design"] D -->|しない| F{"読み物か
索引か"} F -->|読み物| G["karanpratapsingh/system-design
5,698行の教科書(NC・ND注意)"] F -->|索引| H["awesome-scalability
249ドメイン・924リンク"] C --> I["開く前に git log -1 で
最終コミット日を確認"] E --> I G --> I H --> I

用途ごとの結論を短くまとめる。

日本語で体系的に学ぶ:system-design-primer一択。日本語版が実在し、英語版と同時に更新され、CC BY 4.0で引用もしやすい
英語で腰を据えて通読する:karanpratapsingh/system-design。5,698行・見出し611個は10本で最も厚い。ただし転載・改変は不可
実企業の設計事例を漁る:awesome-scalability。249ドメイン・924リンクで、MITなのでリンク集の再構成も許される
面接の型を押さえる:awesome-system-design-resources。難易度別の設計問題と回答フレームワークがある。GPL-3.0の扱いだけ確認する
AIエンジニアリングも一緒に追う:system-design-academy。更新頻度は最も高いが、内容の本体は自社ニュースレター側にある
避けたほうがよい:system-design-interview(2,099日停止)とmachine-learning-systems-design(著者が書籍に移行済み)。10番目のAgentic Design Patternsは取得できない

最後に、この記事の数値も半年後には古くなる。10本を一度に測り直すコマンドを置いておく。リンク先のドメイン分布まで数えれば、「リンク集」を名乗るものが本当に外を向いているかが分かる。

# READMEのリンク先をドメイン単位で集計し、自社誘導かキュレーションかを見分ける
grep -o "https\?://[^)/ ]*" README.md | sed 's|https\?://||' \
  | sort | uniq -c | sort -rn | head -5

star数は過去の評価の累積であって、現在の状態ではない。10本のうち3本が動いておらず、3本が転載できず、1本は消えていた。開く前にgit log -1とLICENSEを見る、それだけで一覧記事との距離は縮まる。

参照ソース

donnemartin/system-design-primer — CC BY 4.0。README-ja.md(137,561バイト)を含む3言語の翻訳実体
binhnguyennus/awesome-scalability — MIT。249ドメイン・924リンクの外部キュレーション
ByteByteGoHq/system-design-101 — CC BY-NC-ND 4.0。419本のリンクがbytebytego.comへ向かう
karanpratapsingh/system-design — CC BY-NC-ND 4.0。5,698行・見出し611個
ashishps1/awesome-system-design-resources — GPL-3.0
madd86/awesome-system-design — CC0 1.0。README のファイル名は小文字 readme.md
checkcheckzz/system-design-interview — ライセンス表記なし。最終コミット2020-12-22
chiphuyen/machine-learning-systems-design — ライセンス表記なし。READMEに書籍への移行を明記
systemdesign42/system-design-academy — CC BY-NC-ND 4.0。AI Engineeringセクションあり